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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1166823
審判番号 不服2006-2734  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 特願2001-100198「密閉型電動圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 9日出願公開、特開2002-295367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月30日の出願であって、平成18年1月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月14日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年3月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月14日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「密閉容器内に圧縮要素とこの圧縮要素を駆動する電動要素とを備えて成る密閉型電動圧縮機において、
前記電動要素は、前記密閉容器に固定され、固定子巻線を備えた固定子と、当該固定子内で回転する回転子とから構成され、
この回転子は、回転子継鉄部の周辺部に設けられた2次導体と、前記回転子継鉄部に埋め込まれた永久磁石と、
前記密閉容器のエンドキャップ部に設けられた密閉ターミナルとを備え、
該密閉ターミナルに温度保護手段を直接接続して前記密閉容器内に配置すると共に、該温度保護手段は、前記密閉容器内部の所定の温度上昇により前記電動要素への通電を断つことを特徴とする密閉型電動圧縮機。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「密閉容器」について「エンドキャップ部に設けられた密閉ターミナルとを備え」との限定を付加し、同じく「温度保護手段」について「密閉ターミナルに温度保護手段を直接接続して前記密閉容器内に配置する」との限定、及び、「密閉容器内部の所定の温度上昇により電動要素への通電を断つ」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-180687号公報(以下「引用文献」という。)には、「密閉型電動圧縮機」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0002】
【従来の技術】従来、この種の密閉型電動圧縮機(以下、圧縮機)は、主なコイル温度保護方法として、コイル間にサーモスタットを設置し、コイル温度が設定値以上になると、サーモスタットを動作させて回路をOFFさせて、圧縮機運転を停止させているだけであった。」
・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の圧縮機は、図6、7に示すように過負荷運転時において、電動機1のコイル2焼損防止のために、コイル温度が上昇した場合、コイル2に卷かれているサーモスタット3を動作させることにより、電動機1への通電を止めたり、また、吐出管4上に設置された吐出温度サーミスタ5により、吐出温度が基準以上となった場合に電動機1への通電を止めたり、電動機1の回転周波数を落とし、吐出温度を落とし、コイル温度異常上昇保護を行っていた。」

また、図6には、密閉容器内に圧縮機要素とこの圧縮機要素を駆動する電動機とを内蔵した密閉型電動圧縮機において、密閉容器のエンドキャップ部に密閉ターミナルが備えられた構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容によれば、引用文献には、従来例として、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「密閉容器内に圧縮機要素とこの圧縮機要素を駆動する電動機とを内蔵した密閉型電動圧縮機において、
前記電動機は、コイルを有し、
前記密閉容器のエンドキャップ部に設けられた密閉ターミナルを備え、
サーモスタットをコイル間に配置すると共に、コイル温度が設定値以上になると、前記サーモスタットを動作させて回路をOFFさせる密閉型電動圧縮機。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「圧縮機要素」はその作用・機能からみて、前者の「圧縮要素」に相当し、以下同様に「電動機」は「電動要素」に、「内蔵した」は「備えて成る」に、「コイル」は「固定子巻線」に、それぞれ相当する。
また、後者において、電動要素は、密閉容器に固定され、固定子巻線を備えた固定子と、固定子内で回転する回転子とから構成されていることは自明である。
そして、後者の「サーモスタット」は、温度が設定値以上になると回路をOFFさせるものであるから、「温度保護手段」を構成するものであり、回路をOFFさせることは、「電動要素への通電を断つ」ことに相当するといえるので、後者の「サーモスタットをコイル間に配置すると共に、コイル温度が設定値以上になると、前記サーモスタットを動作させて回路をOFFさせる」と、前者の「密閉ターミナルに温度保護手段を直接接続して前記密閉容器内に配置すると共に、該温度保護手段は、前記密閉容器内部の所定の温度上昇により前記電動要素への通電を断つ」とは、「密閉容器内に温度保護手段を配置すると共に、該温度保護手段は所定の温度上昇により電動要素への通電を断つ」との概念で共通している。
したがって両者は、
[一致点]
「密閉容器内に圧縮要素とこの圧縮要素を駆動する電動要素とを備えて成る密閉型電動圧縮機において、
前記電動要素は、前記密閉容器に固定され、固定子巻線を備えた固定子と、当該固定子内で回転する回転子とから構成され、
前記密閉容器のエンドキャップ部に設けられた密閉ターミナルを備え、
前記密閉容器内に温度保護手段を配置すると共に、該温度保護手段は所定の温度上昇により電動要素への通電を断つ密閉型電動圧縮機。」である点で一致し、

[相違点]
(イ)「電動要素」が、本件補正発明では、「回転子は、回転子継鉄部の周辺部に設けられた2次導体と、前記回転子継鉄部に埋め込まれた永久磁石」から成るのに対して、引用発明では、このような特定をしていない点、
(ロ)温度保護手段の配置に関して、本願発明では、「密閉ターミナルに」「直接接続」しているのに対し、引用発明では、「コイル間に配置」している点、及び
(ハ)「所定の温度上昇」の検出対象が、本願発明では、「密閉容器内部」の温度であるのに対して、引用発明では、「コイル温度」である点で相違している。

(4)相違点に対する判断
相違点(イ)について
電動要素としての回転子を、回転子継鉄部の周辺部に設けられた2次導体と、前記回転子継鉄部に埋め込まれた永久磁石から成る構成とすることは、特開2000-287395号公報、特開2000-333422号公報、及び特開昭60-28758号公報に記載されており、周知技術と認められる。
したがって、引用発明において電動要素として上記周知技術を適用することで相違点(イ)に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜設計し得る事項と認めざるを得ない。

相違点(ロ)及び(ハ)について
密閉型電動圧縮機において温度保護手段を密閉ターミナルに直接接続して密閉容器内に配置し、密閉容器内部の所定の温度上昇により電動要素への通電を断つように構成することは、特開2000-41331号公報、及び特開平10-89254号公報に記載されており、周知技術と認められるので、引用発明においても、かかる周知技術を採用することで相違点(ロ)及び(ハ)に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者に容易である。

また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知技術から予測しうる程度のものと認められる。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年3月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「密閉容器内に圧縮要素とこの圧縮要素を駆動する電動要素とを備えて成る密閉型電動圧縮機において、
前記電動要素は、前記密閉容器に固定され、固定子巻線を備えた固定子と、当該固定子内で回転する回転子とから構成され、
この回転子は、回転子継鉄部の周辺部に設けられた2次導体と、前記回転子継鉄部に埋め込まれた永久磁石とを備え、
前記密閉容器内に、所定の温度上昇により前記電動要素への通電を断つための温度保護手段を設けたことを特徴とする密閉型電動圧縮機。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記2.で検討した本件補正発明から「密閉容器」について「エンドキャップ部に設けられた密閉ターミナルとを備え」との限定、同じく「温度保護手段」について「密閉ターミナルに温度保護手段を直接接続して前記密閉容器内に配置する」との限定、及び、「密閉容器内部の所定の温度上昇により電動要素への通電を断つ」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願2001-100198(P2001-100198)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F04B)
P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 丸山 英行
渋谷 善弘
発明の名称 密閉型電動圧縮機  
代理人 雨笠 敬  

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