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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27M
管理番号 1166861
審判番号 不服2004-6922  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-07 
確定日 2007-11-15 
事件の表示 平成 8年特許願第150142号「竹材を用いた構造用集成材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月 4日出願公開、特開平 9- 57714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

この出願は、平成8年5月21日(国内優先権主張平成7年6月14日)の出願であって、平成16年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月6日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年5月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
「木造建築物の梁、柱、構造用パネル等の構造部材として用いられる構造用集成材において、
高温かつ高圧の蒸気でのプレスにより割れ目付きの平板状に成形した割竹と、製材からなる単板又は構造用合板とを交互に複数積層し、割竹の引き並べ方向が順次直交するように集成接着し、前記平板状割竹と単板又は構造用合板との積層面に前記割れ目が空隙として存し、単板又は構造用合板が最外側面に位置することを特徴とする竹材を用いた構造用集成材。」
(【請求項2】については省略)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「割竹」に関して「割れ目付きの」との限定を、また「構造用集成材」に関して「前記平板状割竹と単板又は構造用合板との積層面に前記割れ目が空隙として存し、単板又は構造用合板が最外側面に位置する」との限定をそれぞれ付加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-39103号(実開平1-142715号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(イ)「2.実用新案登録請求の範囲
木造建築物の梁や柱等の構造部材として用いられる構造用集成材であって、複数の木製ラミナが集成接着されてなるラミナ積層体の外層部に、炭素繊維等の高剛性繊維の長繊維をそのラミナ積層体の周方向に沿わせた状態でラミナ積層体の全長にわたって配し、それら長繊維をラミナ間に挟み込んで接着してなることを特徴とする構造用集成材。」
これらの記載及び図面の内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。
「木造建築物の梁や柱等の構造部材として用いられる構造用集成材であって、
複数の木製ラミナが集成接着されたラミナ積層体からなる構造用集成材。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
上記摘記事項(イ)によれば、引用発明の「構造用集成材」は、「複数の木製ラミナが集成接着されたラミナ積層体からなる」ものであるから、「木製ラミナ」を「複数積層し、集成接着した」ものであるといえる。
また、引用発明における「木製ラミナ」と、本願補正発明における「平板状に成形した割竹」及び「製材からなる単板又は構造用合板」とは、ともに「木質の板材」である点で共通している。
そうすると、両者は、
「木造建築物の梁や柱等の構造部材として用いられる構造用集成材であって、
木質の板材を複数積層し、集成接着した構造用集成材。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
構造用集成材の積層態様に関して、本願発明においては、高温かつ高圧の蒸気でのプレスにより割れ目付きの平板状に成形した割竹と、製材からなる単板又は構造用合板とを交互に複数積層し、割竹の引き並べ方向が順次直交するように集成接着し、前記平板状割竹と単板又は構造用合板との積層面に前記割れ目が空隙として存し、単板又は構造用合板が最外側面に位置するのに対して、引用発明においては、製材からなる単板のみを積層している点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
竹材は、木材に比して安価であること、及び、繊維方向に割裂性を有する等の異方性が顕著であることが広く知られていて、引き並べ方向を順次直交させて積層して木材の代替材として用いることが普通に行われているから(例えば、特開平6-39806号公報参照)、引用発明の集成材において、木材である製材からなる単板の一部を竹材に替えてこれらを交互に複数積層し、竹材の引き並べ方向を順次直交させることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、高温かつ高圧の蒸気でのプレスにより平板状に成形した割竹は竹材として従来周知のものであるから、竹材としてこのような割竹を用いることに格別の困難性は認められない。割竹を平板状に成形する際に割れ目が生じることは従来から広く知られていることにすぎず(例えば、特開平6-182713号公報(特に段落【0007】)参照)、この割竹の割れ目によって積層面に空隙が存するようにすることは、自明な事項であるといえる。
また、単板を集成材の最外側面に使用することは従来から行われていることであり、2種類の木板材を積層する際に、集成材の最外側面の板材として単板を選択することは、当業者が適宜なし得た設計的事項であるといえる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

3.本願発明について

平成16年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年2月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】木造建築物の梁、柱、構造用パネル等の構造部材として用いられる構造用集成材において、
高温かつ高圧の蒸気でのプレスにより平板状に成形した割竹と、製材からなる単板又は構造用合板とを交互に複数積層し、割竹の引き並べ方向が順次直交するように集成接着したことを特徴とする竹材を用いた構造用集成材。」
(【請求項2】は省略)

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、本願補正発明から「割竹」に関して「割れ目付きの」との限定を、また「構造用集成材」に関して「前記平板状割竹と単板又は構造用合板との積層面に前記割れ目が空隙として存し、単板又は構造用合板が最外側面に位置する」との限定をそれぞれ省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上の通り、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-19 
結審通知日 2006-09-21 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願平8-150142
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27M)
P 1 8・ 575- Z (B27M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 森次 顕
西田 秀彦
発明の名称 竹材を用いた構造用集成材及びその製造方法  
代理人 板谷 康夫  
代理人 板谷 康夫  

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