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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62M
管理番号 1166945
審判番号 不服2005-6226  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2007-11-01 
事件の表示 特願2002-271722号「人力三輪自転車」拒絶査定不服審判事件〔平成16年4月8日出願公開、特開2004-106687号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年9月18日の出願であって、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成17年1月26日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 車体と、
この車体に回転可能に設けられた1つの前輪及び一対の後輪と、
上記車体に揺動可能に設けられたハンドルと、
このハンドルの揺動に連動して回転する駆動スプロケットと、
上記前輪と一体的に設けられ上記駆動スプロケットの回転にチェーンを介して連動することで上記前輪又は後輪を上記車体が前進する方向にだけ回転させる従動スプロケットと、
上記後輪に設けられこの後輪を利用者が上肢によって上記車体を後退する方向に回転させることを可能とするハンドリムと、
を具備したことを特徴とする人力三輪自転車。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平3-189286号公報(以下「刊行物」という。)には、「手動自転車駆動装置」に関して、第1?11図とともに次のような記載がある。
A 「本発明は、自転車の手動による駆動装置に関するものである。」(第2頁左上欄第15?16行)
B 「従来の技術においては、クランクアームにペダルを設けてあるため、足の不自由な人用には適さないものであった。」(第2頁右上欄第13?14行)
C 「手動で作動させるように従来のクランクアームをクランクレバーと成し、車椅子などにも使用出来るようにした。」(第2頁右上第18?20行)
D 「その実施態様を詳細に説明すると、第1図に示す様に、車輪駆動輪へ2個の並列フリーギヤー(1)(2)を適度な間隔を有する様に設置する。
フリーギヤー(1)と一線上に位置する様にクランクレバー(3)を設けたクランクギヤー(4)を軸支する。
次に、フリーギヤー(1)(2)とクランクギヤー(4)との間に位置する様に並列に、固着した中間ギヤー(5)(6)を回動自在に軸支する。
フリーギヤー(1)とクランクギヤー(4)とを自転車用チェーン(7)にて連結する。この際、自転車用チェーン(7)の外周に接する様に中間ギヤー(5)に折曲状態に掛け渡す。
フリーギヤー(2)と中間ギヤー(6)とを自転車用チェーン(8)で連結した構造を有するものである。」(第2頁左下第1?14行)
E 「実施態様第1の作用を説明する為に、2連の自転車用チェーン(7)(8)を図面、第4図、第5図に分けて説明する。また、フリーギヤーは公知であるラチェット機構を有するものであり、一方向の回転においては空転し、逆回転においてロックして軸を回転させる構造のものとして説明する。本発明の場合、フリーギヤーが時計回り方向に回転したときにラチェット機構がロックする事を前提として説明する。
まず第4図に示す様に、クランクレバー(3)を時計回り方向へ傾ける事でクランクギヤー(4)が時計回りに回転し、自転車用チェーン(7)を介してフリーギヤー(1)を時計回りに回転させる。この時、中間ギヤー(5)は時計回りとは逆方向に回転する。この中間ギヤー(5)の回転は、第5図に示す中間ギヤー(6)へと伝達され、自転車用チェーン(8)を介してフリーギヤー(2)を時計回りとは逆に回転させる。この際フリーギヤー(1)が車軸を駆動させる事に成る。次に図示はしないが第4図に示したクランクレバー(3)を時計回りとは逆方向に傾けた場合、前記とは全てのギヤーが逆回転と成り、フリーギヤー(2)が車軸を駆動させる事に成る。」(第2頁右下欄第20行?第3頁左上欄第19行)
F 「以上の装置を具体的な三輪自転車の実施例として説明する。
実施態様第1に関し、第10図に示す様にハンドル(30)を有する三輪自転車に椅子(31)と足置き台(32)及びブレーキ(33)を設け、本発明実施態様に示した装置と、クランクレバー(26)を設けた構造である。
これを使用する場合には、椅子(31)に座り左手でハンドル(30)を握り、右手でクランクレバー(26)を操作する。クランクレバー(26)の前後動を繰り返すことにより前進する。停止する際にはブレーキ(33)を左手で操作する。」(第3頁左下欄第2?12行)

上記記載事項F及び第10図の記載によれば、三輪自転車は、車体と、1つの前輪及び一対の後輪とを具備しているものと認められ、当該1つの前輪及び一対の後輪が上記車体に回転可能に設けられることは技術常識である。また、上記記載事項Fの「第10図に示す様にハンドル(30)を有する三輪自転車に・・・クランクレバー(26)を設けた構造である。」、「右手でクランクレバー(26)を操作する。」及び「クランクレバー(26)の前後動を繰り返すことにより前進する。」との記載から、上記車体にはクランクレバー(26)が揺動可能に設けられているものと認められ、また、上記三輪自転車は、当該クランクレバー(26)を右手で操作することにより前進する人力三輪自転車であるといえる。
また、上記記載事項D,E及び第4,5図の記載によれば、クランクレバー(3)は上記クランクレバー(26)と同じものと認められ、当該クランクレバー(3)の揺動に連動してクランクギヤー(4)が回転するものと認められ、更に、当該クランクギヤー(4)の回転に自転車用チェーン(7)(8)を介して連動することで、上記後輪の車輪駆動軸と一体的に設けられたフリーギヤー(1)(2)が上記後輪を上記車体が前進する方向にだけ回転させるものと認められる。
よって、上記記載事項A?F及び第1?11図の記載を総合すると、上記刊行物には、
「車体と、
この車体に回転可能に設けられた1つの前輪及び一対の後輪と、
上記車体に揺動可能に設けられたクランクレバー(3)(26)と、
このクランクレバー(3)(26)の揺動に連動して回転するクランクギヤー(4)と、
上記後輪の車輪駆動軸と一体的に設けられ上記クランクギヤー(4)の回転に自転車用チェーン(7)(8)を介して連動することで上記後輪を上記車体が前進する方向にだけ回転させるフリーギヤー(1)(2)と、
を具備した人力三輪自転車。」
の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「クランクギヤー(4)」、「自転車用チェーン(7)(8)」、「フリーギヤー(1)(2)」は、それぞれ、本願発明の「駆動スプロケット」、「チェーン」、「従動スプロケット」に相当する。また、刊行物記載の発明の「クランクレバー(3)(26)」も本願発明の「ハンドル」も、車体を前進させるために、手によって揺動させることができるように車体に揺動可能に設けられた「操作部材」である点では同じである。
よって、本願発明と刊行物記載の発明とは、
「車体と、
この車体に回転可能に設けられた1つの前輪及び一対の後輪と、
上記車体に揺動可能に設けられた操作部材と、
この操作部材の揺動に連動して回転する駆動スプロケットと、
上記駆動スプロケットの回転にチェーンを介して連動することで上記後輪を上記車体が前進する方向にだけ回転させる従動スプロケットと、
を具備した人力三輪自転車。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点1>
本願発明では、「操作部材」が「ハンドル」であるとともに、「従動スプロケット」が「前輪と一体的に設けられ」るものであって、また、「前輪」又は後輪を車体が前進する方向にだけ回転させるものと限定されているのに対して、刊行物記載の発明では、「操作部材」がハンドル(30)とは別に設けられた「クランクレバー(3)(26)」であるとともに、従動スプロケットに相当する「フリーギヤー(1)(2)」が「後輪の車輪駆動軸と一体的に設けられ」るものであって、また、「前輪」を車体が前進する方向にだけ回転させることの言及がない点。
<相違点2>
本願発明は、「後輪に設けられこの後輪を利用者が上肢によって車体を後退する方向に回転させることを可能とするハンドリム」を具備するものであるのに対して、刊行物記載の発明では、そのようなハンドリムについて言及がない点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
車体に揺動可能に設けられる「操作部材」を人力車両の操舵機能と推進機能とを兼ね備えた「ハンドル」とするとともに、「従動スプロケット」を「前輪と一体的に設け」て、「前輪」を車体が前進する方向にだけ回転させるようにすることは、周知の技術である(例えば、原査定の拒絶査定で例示した特表平4-505143号公報の第3頁右上欄第2?末行及び図1?3の「ハンドルバー24」、「車輪スプロケット26」及び「前輪16」に関する記載、参照)。
そして、本願発明の出願時の技術水準を考慮すれば、車体に揺動可能に設けられる「操作部材」を「ハンドル」として操舵機能と推進機能とを持たせる(上記周知の技術)か、「ハンドル」以外の別部材を設けることにより推進機能を持たせる(刊行物記載の発明)かは、また、「従動スプロケット」を「前輪と一体的に設け」て、「前輪」を車体が前進する方向にだけ回転させるようにする(上記周知の技術)か、「従動スプロケット」を「後輪と一体的に設け」て、「後輪」を車体が前進する方向にだけ回転させるようにする(刊行物記載の発明)かは、それぞれ、当業者が適宜選択しうる設計事項といえる。
そうすると、刊行物には「ハンドル(30)」を具備することが記載されている(上記記載事項F及び第10図参照)ことから、刊行物記載の発明の「クランクレバー(3)(26)」及び「フリーギヤー(1)(2)」に関する構成事項に代えて、上記周知の技術を適用することによって、上記相違点1の本願発明と同様の、車体に揺動可能に設けられる「操作部材」を上記「ハンドル(30)」として操舵機能と推進機能とを持たせるとともに、「従動スプロケット」を「前輪と一体的に設けられ」るものとして、「前輪」を車体が前進する方向にだけ回転させるものとすることは、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

(2)相違点2について
車椅子において、車輪に設けられこの車輪を利用者が上肢によって車体を後退する方向に回転させることを可能とするハンドリムを具備することは、周知の技術(例えば、原査定の拒絶査定で例示した特開平11-128277号公報の段落【0016】の「操作リング13」に関する記載、同じく特開2002-65756号公報の段落【0014】の「左右両側輪(11)」に関する記載、参照)である。
刊行物記載の発明は、足の不自由な人用に適さないという課題を解決するものであって(上記記載事項B参照)、車椅子などにも使用出来るようにしたものである(上記記載事項C参照)から、車椅子における上記周知の技術を採用することが格別困難であるとはいえず、刊行物記載の発明において、後輪に設けられこの後輪を利用者が上肢によって車体を後退する方向に回転させることを可能とするハンドリムを具備することは、当業者であれば容易に想到することができた事項である。

(3)作用効果について
そして、本願発明が奏する作用効果は、刊行物記載の発明及び上記各周知の技術から予測される程度以上のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び上記各周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-30 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願2002-271722(P2002-271722)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒瀬 雅一  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 佐藤 正浩
山内 康明
発明の名称 人力三輪自転車  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 橋本 良郎  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
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