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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1166992
審判番号 不服2005-6013  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2007-11-02 
事件の表示 平成 6年特許願第275354号「車両用エンジンマウント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月28日出願公開、特開平 8-132890〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年11月9日の出願であって、平成16年3月24日付けの手続補正書により補正がなされ、さらに平成16年11月8日付けで手続補正書が提出されたところ、原審において平成17年2月28日付けで該手続補正書による補正について特許法第53条第1項の規定により補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
【2】本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年3月24日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 エンジンと該エンジンの一端に連結した変速機とから成る駆動ユニットを該駆動ユニットの長手方向が車長方向と直交するように横置きに搭載する車両用のエンジンマウント装置であって、駆動ユニットを支持するマウント部材のうち、駆動ユニットの長手方向に直交する幅方向両側に分設する駆動ユニットの静荷重が入力される2個のマウント部材を、該両マウント部材の配置部を結ぶ線が駆動ユニットのトルクロール軸にほぼ直交するように配置したことを特徴とする車両用エンジンマウント装置。」(以下「本願発明」という。)

【3】引用例とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭63-140528号(実開平2-60615号)のマイクロフィルム(以下「第1引用例」という。)には、「自動車のパワーユニット支持装置」に関して、図面とともに次のイ?ハの事項が記載されている。
イ 「本考案は、エンジン、トランスミッション、ディファレンシャルギヤ等を備えた横置式パワーユニットの支持装置に関する。」(明細書第2頁第2行?同第4行)
ロ 「パワーユニット4は、トランスファケース5内にトランスミッション6とディファレンシャルギヤ7とが並列に配置されたトランスファ8と、エンジン9とから成っており、トランスミッション6の出力軸・・・と、この出力軸と同軸上のエンジン出力軸10が車体1の左右方向を向くよう横置きに配置されて、パワーユニット4における略トルクロール軸T上の両端部に配置の第1のマウント部材11と第2のマウント部材12、およびトルクロール軸Tの中途部分に配置の第3のマウント部材13と第4のマウント部材14によって支持されている。」(明細書第7頁第16行?第8頁第7行)
ハ 「第3と第4のマウント部材13、14は主にパワーユニット4のトルクロール軸Tまわりの回転振動の吸収、およびロール規制を行うものであって、トルクロール軸Tから離れた位置に配置されており、第3のマウント部材は、トランスファケース5のディファレンシャルギヤ7配置側とシリンダブロック9a、鋳造成形のオイルパン9bとに締結された補強部材19の固定部20に締結されていて、トルクロール軸Tと第3のマウント部材13の振動入力部(中心部)PとはLの距離程離れている。また、上記第3のマウント部材13が締結されている上記固定部20は、トランスファ8とエンジン9との衝合面21よりエンジン9側に位置しており、パワーユニット4の曲げ振動モード・・・、およびねじり振動モード・・・のノード付近に位置している。さらに、第4のマウント部材14はトランスファケース5に締結され、第3のマウント部材13とともにパワーユニットマウントメンバー3に締結されている。」(明細書第8頁第14行?第9頁第12行)
また、「第3のマウント部材13が締結されている上記固定部20は、トランスファ8とエンジン9との衝合面21よりエンジン9側に位置して」いる(記載事項ハ)点および第1図を参酌すると、第3のマウント部材13が締結されている固定部20と、第4のマウント部材14が締結されているパワーユニットマウントメンバー3の箇所とは、互いにエンジン出力軸10方向に沿って離間しているのが見て取れ、更に両マウント部材の離間している方向は、第3のマウント部材13の締結箇所と第4のマウント部材14の締結箇所とを結ぶ線がパワーユニット4のトルクロール軸Tとほぼ直交するように傾く方向であることも見て取れる。
よって、上記各記載事項を総合すると、第1引用例には、
「エンジン9と該エンジン9の一端に連結したトランスミッション6とから成るパワーユニット4を該パワーユニット4の長手方向が車長方向と直交するように横置きに搭載する車両用のパワーユニットの支持装置であって、パワーユニット4を支持する各マウント部材11、12、13、14のうち、パワーユニット4の長手方向に直交する幅方向両側に分設する第3のマウント部材13および第4のマウント部材14を、該両マウント部材の配置部を結ぶ線がパワーユニット4のトルクロール軸Tにほぼ直交するように配置した車両用パワーユニットの支持装置。」
の発明が記載されていると認められる。
(2)また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平3-51519号(実開平5-29825号)のCD-ROM(以下「第2引用例」という。)には、「自動車用パワーユニットの支持装置」に関して、次のニの事項が記載されている。
ニ 「上記のように構成した自動車用パワーユニットの支持装置においては、2つの主マウンチング部材31、32を、パワーユニット1の重心Gを通る線T上に配置したので、パワーユニット1のほヾ80%以上の重量が2つの主マウンチング部材31、32により支持され、その残りの重量(20%未満)が2つの副マウンチング部材33、34により支持されるようになる。」(【0011】段落)

【4】発明の対比
(1)本願発明と第1引用例に記載の発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「エンジン9」は本願発明の「エンジン」に相当し、以下同様に、「トランスミッション6」は「変速機」に、「パワーユニット4」は「駆動ユニット」に、「パワーユニットの支持装置」は「エンジンマウント装置」に、「パワーユニット4を支持する各マウント部材11、12、13、14」は「駆動ユニットを支持するマウント部材」に、「パワーユニット4の長手方向に直交する幅方向両側に分設する第3のマウント部材13および第4のマウント部材14」は「駆動ユニットの長手方向に直交する幅方向両側に分設する2個のマウント部材」に、「トルクロール軸T」は「トルクロール軸」にそれぞれ相当する。
(2)以上の対比から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点]「エンジンと該エンジンの一端に連結した変速機とから成る駆動ユニットを該駆動ユニットの長手方向が車長方向と直交するように横置きに搭載する車両用のエンジンマウント装置であって、駆動ユニットを支持するマウント部材のうち、駆動ユニットの長手方向に直交する幅方向両側に分設する2個のマウント部材を、該両マウント部材の配置部を結ぶ線が駆動ユニットのトルクロール軸にほぼ直交するように配置した車両用エンジンマウント装置。」である点。
[相違点]本願発明は駆動ユニットの長手方向に直交する幅方向両側に分設する2個のマウント部材に駆動ユニットの静荷重が入力されるのに対して、引用発明は第3のマウント部材13および第4のマウント部材14にパワーユニット4の静荷重が入力されるか明らかでない点。

【5】当審の判断
(1)相違点について
第2引用例に記載された2つの副マウンチング部材33、34は、第1図を参酌するとパワーユニット1の慣性主軸周りのローリング振動を受けるものであることは当業者にとって明白であり、該2つの副マウンチング部材33、34はパワーユニット1の重量の一部を受けるものである(記載事項ニ)から、第2引用例には、「駆動ユニットの長手方向に直交する幅方向両側に分設する駆動ユニットの静荷重が入力される2個のマウント部材」が記載されているといえる。そして、係る第2引用例記載の事項を引用発明に適用することにより、この相違点に係る本願発明の構成とすることに、格別の困難性は要しない。
(2)作用効果等について
上記の相違点に係る構成を備える本願発明の作用効果についてみても、上記引用発明及び第2引用例に記載された事項から、当業者が容易に予測しうる域を超えるものがあるとは認められない。
したがって、本願発明は、上記引用発明及び第2引用例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【6】むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び第2引用例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-31 
結審通知日 2007-09-05 
審決日 2007-09-20 
出願番号 特願平6-275354
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 卓志  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 佐藤 正浩
柿崎 拓
発明の名称 車両用エンジンマウント装置  
代理人 磯野 道造  
代理人 吉岡 正志  

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