• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L
管理番号 1167004
審判番号 不服2005-24102  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-14 
確定日 2007-11-02 
事件の表示 特願2002-363142「漏れ検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日出願公開、特開2003-185075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成8年8月13日(国内優先権主張、平成7年8月18日)に出願した特願平8-213630号(以下、「原出願」という。)の一部を平成14年12月13日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月9日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「継手本体とナットとよりなる金属フレキシブル管用継手が一端に接続され、ガスを流す金属コルゲイト管の外面に合成樹脂層を被覆してなる金属フレキシブル管から漏れるガスを検出する漏れ検出方法において、
前記金属コルゲイト管より漏れ出たガスを、前記金属コルゲイト管と前記合成樹脂層との間の隙間を介して前記金属フレキシブル管用継手に到達させ、前記継手本体および/または前記ナットに設けられたガスの通気路を介して、ポリエチレン又は四フッ化エチレンからなる熱可塑性樹脂粉体を含む原料から形成され、かつガスは通すが水分は通さない性質をもち圧縮率を変えることで通気性が調節された選択透過性部材に通過させて積極的に外部へ排出させることを特徴とする漏れ検出方法。」

2.優先権について
原出願に係る国内優先権主張の基礎となった出願である特願平7-210575号の明細書及び図面には、少なくとも、選択透過性部材について「通気性が調節された」ものであることを窺わせる記載はなく、また、本願明細書の段落【0021】中の「選択透過性部材5bは圧入される形となり径方向に圧縮されるので、この圧縮率を変えることでも通気性を調節することが出来る」という記載(この記載は原出願の明細書の段落【0021】中の記載と同じである。)もない。
そうすると、本願発明における「圧縮率を変えることで通気性が調節された」選択透過性部材については、原出願の明細書において新たに追加された事項であるといえるから、新たに追加された事項を含む本願発明は、後述する「他の特許出願」との関係上、国内優先権の利益を享受することができず、新規性進歩性、先願などの判断基準日は原出願の実際の出願日である平成8年8月13日と認定される。

3.先願
これに対して、当審における平成19年6月8日付の拒絶理由通知で引用した、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平8-19822号(平成8年2月6日出願、特開平9-210274号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。

・「【0007】この発明は、・・・その目的とするところは、防水性能を維持しつつ、ガス漏れの検知を容易かつ確実に行うことができるフレキシブルチューブ用継手を提供することにある。」

・「【0014】図1に示すように、筒状本体11は一端外周の雄ネジ部12においてガス等の管体13に螺着され、その他端側内周には雌ネジ部14が形成されている。円筒部15は筒状本体11の他端部に突出形成されている。」

・「【0015】筒状の押し輪20は本体21の外周の雄ネジ部22において前記筒状本体11の雌ネジ部14に螺合され、その内端部の外周には係止溝23が形成されている。ナット部24は押し輪20の外端に形成され、その内周には環状溝25が形成されている。この環状溝25内にはシール部材としてのパッキン26が嵌着されている。」

・「【0016】図1?3に示すように、挿通孔29は押し輪20のナット部24のパッキン26より筒状本体11側において、一端がナット部24の内周面に開口され、他端がナット部24の外周面に開口されている。この挿通孔29の外表面側は拡径された拡大部29aとなり、その拡大部29aには円盤状のフィルタ30が装填されている。同フィルタ30は拡大部29aに圧入されるとともに、フィルタ30の周面が接着剤により拡大部29aの内面に接着される。
【0017】このフィルタ30は熱可塑性樹脂としてのポリエチレンの焼結成形体により形成され、0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過し、かつ0.01?1.0kg/cm2以下の圧力では液体が通過しないようになっている。そして、ガス漏れの検知と防水性能の維持を図ることができる。さらに、0.01kg/cm2以下の圧力でガスを通し、かつ0.05kg/cm2以下の圧力では液体を通さないのが好ましい。
【0018】ポリエチレンの焼結成形体は、いわゆる焼結成形法により成形される。すなわち、ポリエチレンの粒状体を金型内の所定形状を有する成形凹部に充填した後、加熱して200℃に保持し、ポリエチレンを焼結して成形する方法である。このようにして得られた焼結成形体は、ポリエチレンの粒子同士がそれらの表面で結合し、粒子間に20?100μmの微細な孔が形成され、そのような微細な孔によりガスが通過し、液体が通過しないものと考えられる。」

・「【0022】図1に示すように、フレキシブルチューブ41は金属よりなる蛇腹状のチューブ本体42と、そのチューブ本体42の外周に被覆された合成樹脂製の外被体43とから構成されている。・・・なお、外被体43はチューブ本体42との間にチューブ41の長さ方向に延びてガスを継手まで流通させる図示しない流通空間を有している。」

・「【0030】このフィルタ30は、0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過するようになっていることから、ガスはフィルタ30より外部へ放出される。従って、チューブ41からのガス漏れを検知することができる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると、上記先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「筒状本体11と押し輪20とよりなるフレキシブルチューブ用継手が一端に接続され、ガスを流す金属よりなる蛇腹状のチューブ本体42の外周に合成樹脂製の外被体43を被覆してなるフレキシブルチューブからのガス漏れの検知を行う方法において、
前記金属よりなる蛇腹状のチューブ本体42より漏れ出たガスを、前記金属よりなる蛇腹状のチューブ本体42と前記合成樹脂製の外被体43との間の流通空間を介して前記フレキシブルチューブ用継手まで流通させ、前記押し輪20に設けられたガスの挿通孔29を介して、熱可塑性樹脂としてのポリエチレンの粒状体が焼結成形体により形成され、かつ挿通孔29の拡大部29aに圧入され、0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過し0.01?1.0kg/cm2以下の圧力では液体が通過しないようになっているフィルタ30に通過させて外部へ放出させるガス漏れの検知を行う方法。」

4.対比
そこで、本願発明と先願発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「筒状本体11」が前者における「継手本体」に相当し、以下同様に、「押し輪20」が「ナット」に、「フレキシブルチューブ用継手」が「金属フレキシブル管用継手」に、「金属よりなる蛇腹状のチューブ本体42」が「金属コルゲイト管」に、「外周」が「外面」に、「合成樹脂製の外被体43」が「合成樹脂層」に、「フレキシブルチューブからのガス漏れの検知を行う方法」が「金属フレキシブル管から漏れるガスを検出する漏れ検出方法」に、「流通空間」が「隙間」に、「フレキシブルチューブ用継手まで流通させ」が「金属フレキシブル管用継手に到達させ」に、「押し輪20に設けられたガスの挿通孔29」が「継手本体および/またはナットに設けられたガスの通気路」に、「熱可塑性樹脂としてのポリエチレンの粒状体が焼結成形体により形成され」が「ポリエチレン又は四フッ化エチレンからなる熱可塑性樹脂粉体を含む原料から形成され」に、「フィルタ30」が「選択透過性部材」に、「外部へ放出させる」が「積極的に外部へ排出させる」に、「ガス漏れの検知を行う方法」が「漏れ検出方法」に、それぞれ相当している。
また、後者の「挿通孔29(通気路)の拡大部29aに圧入され、0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過し0.01?1.0kg/cm2以下の圧力では液体が通過しないようになっているフィルタ30(選択透過性部材)」は、選択透過性部材が、通気路の拡大部に圧入されることで、実際の使用状態において、0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過し0.01?1.0kg/cm2以下の圧力では液体が通過しないような通気性に調節されているものと解されるから、前者の「通気性が調節された選択透過性部材」に相当するといえる。

したがって、両者は、
「継手本体とナットとよりなる金属フレキシブル管用継手が一端に接続され、ガスを流す金属コルゲイト管の外面に合成樹脂層を被覆してなる金属フレキシブル管から漏れるガスを検出する漏れ検出方法において、
前記金属コルゲイト管より漏れ出たガスを、前記金属コルゲイト管と前記合成樹脂層との間の隙間を介して前記金属フレキシブル管用継手に到達させ、前記継手本体および/または前記ナットに設けられたガスの通気路を介して、ポリエチレン又は四フッ化エチレンからなる熱可塑性樹脂粉体を含む原料から形成され、かつガスは通すが水分は通さない性質をもち通気性が調節された選択透過性部材に通過させて積極的に外部へ排出させる漏れ検出方法。」
の点で一致し、次の点で一応相違している。
[相違点]
選択透過性部材の通気性の調節に関し、本願発明が、選択透過性部材の「圧縮率を変えることで」通気性を調節しているのに対し、先願発明は、選択透過性部材を通気路(挿通孔)の拡大部に圧入しているものの、かかる調節態様が明確にされていない点。

5.当審の判断
上記相違点について以下検討する。
先願発明において、選択透過性部材を通気路の拡大部に圧入する際には、選択透過性部材の寸法と通気路の拡大部の寸法との関係に応じて、選択透過性部材は圧縮を伴うものであり、この選択透過性部材の圧縮の程度である圧縮率の値としては、「0.01?0.1kg/cm2以下の圧力でガスが通過し0.01?1.0kg/cm2以下の圧力では液体が通過しない」との条件を満たす範囲内であれば、一つの特定値に限定されることなく、任意の値を選択し得るものと解されるため、結局、選択透過性部材の通気性は、選択された圧縮率に応じて変更されることになるのは明らかである。
したがって、選択された圧縮率に応じて選択透過性部材の通気性が変更されること、即ち、圧縮率を変えることで通気性が調節された選択透過性部材とすることは、先願発明の方法を実施しようとした際に必然的に付随して生ずる技術的事項というべきであり、先願発明の技術的範囲に含まれているものと解することができるから、上記相違点は実質的な相違点であるとはいえない。
そうすると、本願発明は、本願の出願の日前の他の特許出願に係る発明(先願発明)と実質的に同一であり、しかも、本願の発明者が上記他の特許出願に係る発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-23 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2002-363142(P2002-363142)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣谷口 耕之助  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 渋谷 善弘
丸山 英行
発明の名称 漏れ検出方法  
代理人 浅井 章弘  
代理人 浅井 章弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ