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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01F
管理番号 1167043
審判番号 不服2005-18786  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-29 
確定日 2007-10-29 
事件の表示 平成 8年特許願第317554号「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月16日出願公開、特開平10-155355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成8年11月28日の出願であって、平成17年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月2日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

(本願発明)
「【請求項1】 車台(1)上の脱穀装置(2)の側部に、この脱穀装置(2)の穀粒取出オーガ(3)から取出される穀粒を収容しながら袋詰できるグレンホッパー(4)を、このグレンホッパー(4)の後端外側部(A)の支軸(5)の回りに水平方向に開閉回動可能にして支持し、この支軸(5)部に対してほゞ対角線方向に位置するグレンホッパー(4)の前端内側部(B)と、該脱穀装置(2)の穀粒取出オーガ(3)との間には、このグレンホッパー(4)の開閉位置を係止、解除可能のロック機構(6)を設けて構成し、さらに、前記グレンホッパー4は、下部に前後左右の四個所に各々シャッターを有する漏斗状の排穀口32、33を形成したことを特徴とするコンバイン。」


2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願平5-53189号(実開平7-22630号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、「移動脱穀機の穀粒回収装置」に関して、図1?4とともに、下記の記載がある。
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はコンバイン或いはハーベスター等の移動脱穀において、穀粒貯留用のホッパーを機体外側方へ開動することのできる穀粒回収装置に関する。」
(ロ)「【0005】
また穀粒が貯留されるホッパーは大重量となるので、これを片持ち状態で支持する縦軸の支持構成を長大な支柱や厚肉な取付部材で製作する必要があり、構造が複雑となる上機体重量が大きくなる等の問題があった。
本考案は上記従来の問題点を解消するとともに、機体重量を過大とすることなく簡潔な構成でメンテナンス作業を容易に行なうことのできる移動脱穀機の穀粒回収装置の提供を目的とするものである。」
(ハ)「【0007】
【作 用】
穀粒が貯留されるホッパー6は縦軸7で支持されるとともに、揚穀筒13の吐出口13bとホッパー6の入口6d部分とを接合させたので、穀粒重量や機体の振動等に耐えることができるように強固に安定支持される。
更にホッパー6と揚穀筒13との接合を解除してホッパー6を縦軸7の周りに横外側方に開動させると、脱穀機4の伝動機構4a等を覆うカバー体16も前記ホッパー6とともに一体的に旋回開動できるので、この部を広く解放することができて、ホッパー6やカバー体16に支障されることくメンテナンス作業等を適確且つ速やかに行なうことができる。
【0008】
【実 施 例】
本考案の構成を図面に基づいて説明する。
Aは移動脱穀機の一実施として示すコンバインであり、クローラ式走行装置1を有する機台2の後部に排藁切断装置3を備えた脱穀機4を搭載するとともに、この脱穀機4の側方に袋詰装置5を有するホッパー6の後部を縦軸7を支点として機体の横外側方に旋回開動可能に設け、機台2の前方には刈取部8を昇降自在に支持し、その後方で前記ホッパー6との間に運転席9を設置している。
【0009】
上記ホッパー6は漏斗面6aにより2又状に形成されてシャッター6bを有する排出筒6c,6cを備えて数袋分の穀粒を貯留可能としたタンク状に構成しており、その後壁部位に固着した上支枠10a及び下支枠10bの先端に形成した軸環10を、機台2の後部に立設したパイプ状の縦軸7周りに回動可能に嵌挿枢支させるとともに、ホッパー6の前壁部位にローラ11a付の支軸11を固着して運転席9の後部の立枠9aに横設したコ字状のガイドレール12に支受させて穀粒回収状態となるように構成している。」
(ニ)「【0012】
更に前記ホッパー6の漏斗面6a内にはプラスチック膜17を貼ったり、又はコーティング処理を施して平滑面とすることにより、従来の非処理ホッパーによる安息角の漏斗面6eより小安息角の漏斗面6aとすることによってホッパー6を大幅に大容量としている。
またホッパー6と揚穀筒13との接合部の構成は図4に示すように、載置部14をホッパー6外方に突設して吐出筒13a上に載置するとともに、両者をフック18で締着し固定するようにしてもよい。
【0013】
上記構成による本考案の穀粒回収装置を備えたコンバインで立毛穀稈の刈取脱穀が行なわれると、穀粒は揚穀筒13で揚穀され吐出口13b及び入口6dを経てホッパー6内に貯留され、シャッタ6bを開くことにより穀粒袋K内に袋詰めされる。
そして上記コンバイン作業の中途或いは定期的な点検で伝動機構4aや扱室4c内の保守点検又は修理清掃等を要する場合には、ホッパー6と揚穀筒13との接合をフック18等の固定具を解除して分離させた状態で、ホッパー6の前部を横外側方に引くとホッパー6の前部はガイドレール12に案内されながら縦軸7を支点として横外側方に円滑に旋回開動して図3の点線に示す状態となり、ホッパー6及びカバー体16は脱穀機4の伝動機構4a部ならびに側板4b部分を広く解放し露出することができる。
【0014】
従って袋詰装置5の内奥にある上記メンテナンス作業対象ヶ所をホッパー6やカバー体16に支障されることなく適確且つ容易に危険を伴うことなく能率よく行なうことができる。
また、前記実施例においてはホッパー6はその穀粒入口6d部分と脱穀機4側に、既設の揚穀筒13の吐出口13d部分に載置された状態で強固に接合保持されている。従って、接合部における振動や穀粒の漏出のない状態で、前記縦軸7部分支持構成を簡潔で軽量なものとすることができて高性能な移動脱穀機の穀粒回収装置を提供することができる。」
(ホ)図1、図3及び図4には、揚穀筒(13)をホッパー(6)のやや前方内側部に設けた点、揚穀筒とホッパーとの間に載置片(14)、フック(18)等から成る固定機構を設けて構成した点が記載されている。

これらの記載事項および図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
(引用例1記載の発明)
「機台2上の脱穀機4の側部に、この脱穀機4の揚穀筒13から取出される穀粒を収容しながら袋詰めできるホッパー6を、このホッパー6の後端外側部の縦軸7の回りに水平方向に開閉回動可能にして支持し、この縦軸7部に対して対向方向に位置するホッパー6のやや前方内側部と揚穀筒との間には、載置片14、フック18等から成るホッパー6の固定機構を設けて構成し、さらに、ホッパー6は、下部にシャッターを有する漏斗状の排出筒6cを形成したコンバイン。」

同じく、特開平7-87838号公報(以下、「引用例2」という。)には、「コンバインのグレンタンク」に関して、図1?図6とともに下記の記載がある。
(ヘ)「【0007】
【実施例】まず、その構成について述べる。走行車体1は、クロ-ラ8によって走行できる構成とし、脱穀装置2を搭載している。グレンタンク3は、上記脱穀装置2の側部位置に併設しており、脱穀装置2から一番揚穀装置9を介して、脱穀、選別後の穀粒が供給され貯溜できる構成としている。そして、グレンタンク3は、底部に穀粒排出螺旋4を軸装し、該穀粒排出螺旋4の先端部に従動ジョイント部5を形成している。
【0008】そして、揺動支持杆10は、下端部分を走行車体1に回動自由に支持させ、上部を揚穀筒11に取り付けた回動支杆12に固着している。グレンタンク3は、この揺動支持杆10の先端部に回動可能に枢着支持して設け、揺動支持杆10の基部と先端部との2か所において回動できる構成としている。
【0009】したがって、グレンタンク3は、揺動支持杆10の先端部分で一次回動でき、続いてその揺動支持杆10の基部、すなわち、回動支杆12を支点にして二次回動ができる構成になっている。そして、上述の揚穀筒11は、前記グレンタンク3の後方の走行車体1上に直立状に設け、揚穀螺旋6を内装して構成している。そして、揚穀螺旋6の伝動構成は、図3に基づいて説明すると、揚穀筒11の下部に伝動軸13を軸装し、この伝動軸13の外側に伝動プ-リ14を軸着すると共に他端の内側に駆動ジョイント部7を固定し、中間部に軸着したベベルギヤ15に噛合するように設けたベベルギヤ16を揚穀螺旋6の軸に装備して伝動される構成となっている。」
(ト)「【0014】そして、上部ロック装置24は、グレンタンク3の上部と一番揚穀装置9に上部との間において、グレンタンク3の上部に固定した係止具25を一番揚穀装置9に設けた係止レバ-26によって係脱自由に係止できる構成としている。次にその作用について説明する。まず、グレンタンク3は、脱穀装置2によって脱穀処理された穀粒が一番揚穀装置9によって揚穀搬送されて順次貯溜される。」


3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「機台1」、「脱穀機4」、「揚穀筒13」、「ホッパー6」、「縦軸7」、「載置片14、フック18等から成るホッパー6の固定機構」及び「排出筒6c」は、それぞれ、本願発明の「車台(1)」、「脱穀装置(2)」、「穀粒取り出しオーガ(3)」、「グレンホッパー(4)」、「支軸(5)」、「このグレンホッパ-(4)の開閉位置を係止、解除可能のロック機構(6)」及び「排穀口32,33」に相当する。
また、引用例1記載の発明の載置片14、フック18等から成る固定機構が、ホッパー6の開閉位置を係止、解除可能にしていることは、明らかである。
さらに、本願発明の「支軸(5)部に対してほゞ対角線方向に位置するグレンホッパー(4)の前端内側部(B)」と引用例1記載の発明の「縦軸7部に対して対向方向に位置するホッパー6のやや前方内側部」とは、支軸部に対して前方内側部の点で共通する。

してみると、両者は、
「車台上の脱穀装置の側部に、この脱穀装置の穀粒取り出しオーガから取出される穀粒を収容しながら袋詰めできるグレンホッパーを、このグレンホッパーの後端外側部の支軸の回りに水平方向に開閉回動可能にして支持し、この支軸部に対して前方内側部と穀粒取り出しオーガとの間には、このグレンホッパーの開閉位置を係止、解除可能のロック機構を設けて構成し、さらに、グレンホッパーは、下部にシャッターを有する漏斗状の排穀口を形成したコンバイン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:ロック機構を、本願発明では、支軸部に対してほゞ対角線方向に位置するグレンホッパーの前端内側部と、脱穀装置の穀粒取出オーガとの間に設けているのに対して、引用例1記載の発明では、グレンホッパーのやや前方の内側部と、脱穀装置の穀粒取り出しオーガとの間に設けているものの、設けている位置が、本願発明のように支軸部に対してほゞ対角線方向ではない点

相違点2:グレンホッパの下部に、シャッターを有する漏斗状の排穀口を、本願発明では、前後左右の4箇所に設けているのに対して、引用例1記載の発明では、前後左右の4箇所に設けていない点

そこで、上記相違点につき、以下検討する。
相違点1について
引用例2には、グレンタンクを揺動支持杆10の先端部分、または回動支杆12を支点にして回動ができる構成が記載されているとともに、グレンタンクの上部と一番揚穀装置9との間において係止具25及び係止レバー26によって係脱自由に係止できる構成が記載されている。前記「回動」の「支点」となる部位、「係止具25及び係止レバー26」及び「一番揚穀装置9」は、本願発明の「支軸部」、「ロック機構」及び「穀粒取り出しオーガ」にそれぞれ相当するものであり、また「回動」の「支点」となる部位と係止具25及び係止レバー26が設けられた部位とは、グレンタンクにおいてほゞ対角線方向に位置するものといえるとともに、図1を参酌すると一番揚穀装置9は、グレンタンクの前端内側の部位に配置されているものといえる。
よって、引用例2に記載されたロック機構は、支軸部に対してほゞ対角線方向に位置するグレンタンクの前端内側部と、脱穀装置の穀粒取出オーガとの間に設けているものといえる。
そして、引用例1記載の発明のグレンタンクと引用例2に記載されたグレンホッパーとは、ともに脱穀、選別後の穀粒を一時的に貯溜して以後の搬送に資するものであるという同一の技術分野に属するものであるから、引用例1記載の発明に引用例2の技術を適用し、相違点1に係る本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

相違点2
グレンホッパの下部に、漏斗状の排穀口を、前後左右の4箇所に設けることは、従来から周知の技術(例えば、特公平6-20392号公報、実公平3-47479号公報、実願平3-85971号(実開平5-37035号)のCD-ROM等参照)であるので、引用例1記載の発明に、前記周知技術を適用し、相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものということができない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の事項及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-13 
結審通知日 2007-08-07 
審決日 2007-08-20 
出願番号 特願平8-317554
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 圭伸  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 コンバイン  

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