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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1167104
審判番号 不服2005-20850  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-26 
確定日 2007-10-31 
事件の表示 平成8年特許願第86011号「コンクリートブロックによる水辺水路および水辺水路用コンクリートブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成9年9月22日出願公開,特開平9-250119〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成8年3月15日の出願であって,平成17年8月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年10月26日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成17年10月26日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1において,「コンクリートブロック」を「コンクリートブロック1」とし,「支持材」を「支持材2」とし,「保持部材」を「保持部材4」とし,「水制部」を「水制部9a」とし,「天然石材やブロック材およびヤシ繊維等の天然繊維で形成されるロールあるいは袋状の植生器材」を「天然石材、ブロック材およびヤシ繊維等の天然繊維で形成されるロールあるいは袋状の植生器材」とするものであり,また,同請求項2において,「支持材」を「支持材2」とし,「ロール状の可曲性保持部材」を「ロール状の可曲性保持部材4」とし,「水辺部」を「水辺部9」とし,同請求項3において,「支持材」を「支持材2」とし,「水制部や水辺部」を「水制部9aや水辺部9」とし,同請求項7において,「側壁あるいは底版を含めた全面」を「側壁あるいは底版」とするものである。
そして,これらの補正事項は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとともに,平成17年4月15日の拒絶理由通知書の理由1に対応するものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

3 本願発明について
以上のとおり,本件補正は認められるから,本願の請求項1?7に係る発明は,本件補正によって補正された明細書および図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「両側に側壁を対設すると共に底面をコンクリートによって一体あるいは一体的に形成したコンクリートブロック1の複数個を連設して構成された水路であって、前記コンクリートブロック1の底版部に支持材2を取付けると共に該支持材により保持部材4を取付け、天然石材、ブロック材およびヤシ繊維等の天然繊維で形成されるロールあるいは袋状の植生器材を充填した水制部9aを形成したことを特徴とするコンクリートブロックによる水辺水路。」

4 引用文献およびその記載事項
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-92231号(実開平6-82119号)のCD-ROM(以下,「引用文献1」という。)には,図面と共に,「ホタル魚床環境護岸コンクリート製品」に関して,以下の事項が記載されている。
(記載事項1-1)
「【請求項5】 側壁組立支台12.に前面支柱8-1.と貫通孔4-1.を有する多孔空胴筒材8-3.と1:3以上の法勾配を構築出来る様にし、この凹凸模様を有する土留側壁1.には、化粧を兼ねた凸部13.を設けて、ここに横桟木材8-2.を側壁1.と平行段状に取り付けこの部分に草花15.の生息とホタル幼虫の産卵が出来る様にしてなるホタル魚床環境護岸コンクリート製品(実施例図5.)」
(記載事項1-2)
「【0010】
実施例【図4】製品は、河川又は、水路の縦断勾配の大きい現場に適する製品であり、製品の土留側壁1.の構築後見える部分の表面構成と床版構成は、実施例【図1】製品で説示した如くであり、側壁の構造については、一方の土留側壁1-1.の壁厚を大きく構成させて突出させるか2重とし施工時この部分が水路流水内断面に製品交互又は、部分連続に突出させて水路の流速に応じた瀬と淵を構成する様にしてなるホタル魚床環境護岸とした製品である。」
(記載事項1-3)
「【0011】
実施例【図5】製品は、比較的法長が大きい河川又は、水路巾の大きい現場に適する製品であり、製品の安定上の転倒は、側壁1.の法勾配と図示していないが側壁止め支台壁7-1.と背面接地支台壁7-2.の取付け固定手段をもって側壁の転倒を確保する。」
(記載事項1-4)
「【0012】
土圧に対する製品滑動は、側壁組立支台ブロック12.の低版巾の大きさとコンクリート多孔空胴筒材8-3.の質量によって滑動の安定を図るものである。
この製品は、側壁組立支台ブロック12.の前面に前面支柱8-1.を現地で取付け、これと側壁低部間に貫通孔4-1.有する多孔質空胴筒材8-3.(節付き曲がりコンクリート擬木材)を空胴段重ねとする。」
(記載事項1-5)
「【0013】
法面側壁は、表面凹凸模様を有する土留側壁1.とすると同時に化粧を兼ねた凸部13.を同一線上に設けて、ここにも図示の如く横桟木材8-2.を側壁延長方向に平行段状に取付けこの部分に草花15.の生息とホタル幼虫の産卵が出来る様にしてなるホタル魚床環境護岸コンクリート製品である。・・・」
(記載事項1-6)
「【0020】
【符号の説明】
1 土留側壁
1-1 背面土留壁
2-1 床版
2-2 魚床床版」

上記各記載事項及び図1?5,特に図5の内容を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「両側に土留側壁1.を対設すると共に魚床床版2-2.および床版2-1.を一体化してなるコンクリート製品の複数個を連設して構成された水路であって,前記コンクリート製品の魚床床版2-2.に化粧前面支柱8-1.を取付け,前記化粧前面支柱8-1.と前記土留側壁低部間にコンクリート多孔空胴筒材8-3.を空胴段重ね,草花15.の生息とホタル幼虫の産卵が出来る様にしてなる横桟木材8-2.を側壁延長方向に平行段状に取付けたホタル魚床環境護岸コンクリート製品。」

また,同じく原査定の拒絶の理由に引用された実願平5-22234号(実開平6-79225号)のCD-ROM(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,「植物育成用材料」に関して,以下の事項が記載されている。
(記載事項2-1)
「【0008】
【課題を解決するための手段と作用】
すなわち、本考案の植物育成用材料は、麻の繊維を編織してなる袋体の内部に、多数のヤシ繊維またはシュロ繊維あるいはそれの混合繊維からなる繊維集合体を配したものである。」
(記載事項2-2)
「【0019】
植物育成用材料の形状としては、袋体の形状によって大きく左右され、例えばマット状、円柱状、角柱状、ブロック状など、様々な形状が挙げられる。マット状をなす場合、そのまま水辺に設置してもよいし、ロール状に巻回した状態で接地してもよい。」
(記載事項2-3)
「【0028】
上記構成の植物育成用材料(10)の多数を、例えば川岸や湖岸、あるいは池のほとりに列設する(図2及び図3参照)。この時、図に示すように、杭(K)や石(S)を使って固定しておくことが、水の流れによって位置ずれを起こさないという点で好ましい。」

5 本願発明と引用発明との対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ホタル魚床環境護岸コンクリート製品」,「土留側壁1.」,「魚床床版2-2.」および「化粧前面支柱8-1.」が,その機能および構造からみて,それぞれ,本願発明における「コンクリートブロックによる水辺水路」,「側壁」,「底版部」および「支持材2」に相当することは明らかである。
ところで,「充填」とは,一般的には「欠けているところや空いているところに,ものを詰めてふさぐこと」を意味するが,本願明細書段落【0015】の「ヤシ繊維等の天然繊維で形成されたロール状の可曲性保持部材4を・・・コンクリートブロック1群の側壁などにそって設けられるが、その可曲性を利用してブロック側壁との間に玉石などの天然石材またはポーラスで形成されたコンクリート材あるいは建設廃材のような詰物7が装填される・・・」との記載,同段落【0017】の「・・・図16は、支持材2aに本木あるいは擬木模様とした剛性保持部材5を横に併用して保持部材間にヤシ繊維等の天然繊維で形成されたロールあるいは袋状の植生器材10をセットして水制部9aを形成したもので、また図17のように剛性保持部材5を支持材2bにコの字状に配設して、箱状に側壁から突出させて形成した支持材2bとの間に天然石などの詰物7や植生器材10を保持せしめるような手法で水制部9aを適宜に形成される」との記載および同段落【0021】の「・・・図11の支持材12aと可曲性保持部材4とを組み合わせ側壁の間に自然石などの詰物7を設けた・・・」との記載からみて,本願発明における「充填」とは,「(支持材に取付けた保持部材とコンクリートブロックの側壁との間,または,支持材および複数の保持部材の間に)設置する」ものと解釈するのが相当である。そして,引用発明の「多孔質空胴筒材8-3.」は,「化粧前面支柱8-1.」と「土留側壁1.」との間に重ねられているのであるから,該「多孔質空胴筒材8-3.」は,設置したもの,すなわち,充填したものであるといえる。
また,「水制」とは「河川で,水勢を緩和したり、流れの向きを規制したりする目的で造られる工作物」を意味し,引用発明の「コンクリート多孔空胴筒材8-3.」および「横桟木材8-2.」も水路内に取付けられており,水勢の緩和や流れの向きの規制をすることが当業者には明らかであるから,該「多孔質空胴筒材8-3.」および「横桟木材8-2.」は,設置した(充填した)水制部であるといえる。なお,上記(記載事項1-2)の「・・・水路の流速に応じた瀬と淵を構成する様にしてなるホタル魚床環境護岸とした製品である。」との記載は,引用発明も図4の実施例と同様に水路の水流に影響を与えることを示唆しているといえる。
そして,引用発明の「横桟木材8-2.」は,「草花15.の生息とホタル幼虫の産卵が出来る様にしてなる」構成であるから,本願発明の「ヤシ繊維等の天然繊維で形成されるロールあるいは袋状の植生器材」とは,「植生材」である点で共通するといえる。また,「コンクリート多孔空胴筒材8-3.」も,「ブロック材」といえることが明らかである。
以上のことから,引用発明の「前記化粧前面支柱8-1.と前記土留側壁低部間にコンクリート多孔空胴筒材8-3.を空胴段重ね,草花15.の生息とホタル幼虫の産卵が出来る様にしてなる横桟木材8-2.を側壁延長方向に平行段状に取付けた」は,本願発明の「ブロック材および植生器材を充填した水制部9aを形成した」に相当することなる。

してみると,両発明は,
「両側に側壁を対設すると共に底面をコンクリートによって一体的に形成したコンクリートブロックの複数個を連設して構成された水路であって,前記コンクリートブロックの底版部に支持材を取付け,ブロック材および植生材を充填した水制部を形成したことを特徴とするコンクリートブロックによる水辺水路。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

相違点1:本願発明は,「支持材により保持部材4を取付け」るのに対して,引用発明は,そのような構成を有しない点。

相違点2:本願発明は,さらに「天然石材を充填した水制部を形成した」のに対し,引用発明は,そのような構成を有しない点。

相違点3:植生材が,本願発明においては,「ヤシ繊維等の天然繊維で形成されるロールあるいは袋状の植生器材」であるのに対し,引用発明においては,「横桟木材」である点。

6 判断
先ず,相違点1について検討する。
ところで,本願発明においては,「保持部材」と「ブロック材」,「天然石材」および「植生器材」との関係が特に特定されていないものの,「該支持材により保持部材4を取付け」を「該支持材を介して保持部材4を底版部に取付け」と解することが可能であり,本願発明の「保持部材」とは,水制部である「天然石材,ブロック材および植生器材」が水の流れ等で流されることのないように支持材に保持させるものであると解するのが相当である。
念のために,本願明細書を参照すると,上記「5 対比」にて摘記した段落【0015】,段落【0017】および段落【0021】に記載の「可曲性保持部材4」あるいは「剛性保持部材5」が本願発明の「保持部材」に相当し,該「可曲性保持部材4」あるいは「剛性保持部材5」は,水制部である「天然石材,ブロック材および植生器材」が水の流れ等で流されることのないように支持材に保持させるものであるといえることが明らかであるから,前記「保持部材」の解釈を裏付けている。
そして,そもそも,水制部に対して「保持部材」を設けることは,本願出願前周知の事項である。例えば,実公昭50-45887号公報には「保持部材」としてプラスチック製のパネルが記載されており,また,特開平5-9915号公報には「保持部材」として植生特殊材を接続した網状体が記載されている。
してみると,引用発明において,上記周知の「保持部材」を設け,相違点1における本願発明の構成とすることは,水路を設置する環境,あるいは「支持材」あるいは「水制部」の種類および量等の形態に応じて,当業者が適宜採用し得る設計的事項であるといわざるを得ない。

次に,相違点2について検討する。
水制を目的とする記載はないものの,川岸等に石を設置することは引用文献2に記載されており,そもそも,「天然石材を充填した水制部を形成」することは,特段,証拠を示すまでもなく従来より普通に行われている技術事項であって,川岸等に設置された引用文献2の「石」が,水勢の緩和や流れの向きの規制をする水制の機能を有することも明らかである。
してみると,引用発明において,引用文献2に記載の上記技術事項を付加して,相違点2における本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得る程度のことであるといえる。

さらに,相違点3について検討する。
引用文献2には,川岸等に設置する植生材として,ヤシ繊維等からなる繊維集合体を袋体の内部に配した植物育成材料を用いることが記載されている。
してみると,引用発明において,その植生材である「横桟木材8-2.」に代えて,引用文献2に記載の上記「植物育成材料」を採用することは,当業者にとって何ら困難なことでなく,当業者が容易になし得る程度のことであるといえる。

そして,本願発明の作用効果も,引用文献1,2記載の技術事項および周知の事項から当業者が予測できる範囲のものに過ぎないといえる。

したがって,本願発明は,引用文献1,2に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7 むすび
以上のとおりであるから,本願は,残余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,原査定の理由によって拒絶されるべきものである。


よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-30 
結審通知日 2007-08-31 
審決日 2007-09-12 
出願番号 特願平8-86011
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 秀彦深田 高義  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 宮川 哲伸
小山 清二
発明の名称 コンクリートブロックによる水辺水路および水辺水路用コンクリートブロック  

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