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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1167195
審判番号 不服2006-6128  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-03 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2002-218616「カーナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 61236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年7月26日の特許出願であって、平成18年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年1月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「道路地図データを格納する地図データ格納手段と、
出発地から目的地までの走行経路を前記地図データ格納手段に格納される道路地図データに基づいて探索し、この探索した走行経路に沿って前記目的地まで誘導する経路誘導手段と、
該経路誘導手段によって走行経路を誘導しているとき、現在地から前記目的地までの所要時間を算出し、この所要時間を利用して前記目的地への到着予想時刻を算出する到着予想時刻算出手段と、
該到着予想時刻を報知する報知手段とを備えるカーナビゲーション装置であって、
ユーザにより前記目的地への到着希望時刻を入力する到着希望時刻入力手段と、
該経路誘導手段によって走行経路を誘導している途中で、該到着希望時刻入力手段から入力された到着希望時刻に、予め設定されている正の超過許容時間を加算して算出した最終的な待ち合わせ時間と前記到着予想時刻とを比較して、前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過しているか否かを判断する超過判断手段と、
該超過判断手段によって前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過していると判断された場合、前記到着予想時刻が前記到着希望時刻を超過する可能性があることを前記報知手段から報知させる時間超過報知制御手段とを備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-86194号公報(以下「引用例1」という。)、特開平9-61185号公報(以下「引用例2」という。)及び特開平11-201766号公報(以下「引用例3」という。)には、それぞれ、図面と共に以下の事項が記載されている。

(1)引用例1
・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のナビゲーション装置では、現在位置から目的地までの経路を検索して目的地への到着予想時刻を算出し、訪問予定時刻までに目的地に到着できない場合には、搭乗者や訪問相手に遅れることを報知する方法等までは考慮されていなかった。」
・「【0008】請求項2記載の本発明によれば、訪問予定先の場所を目的地に設定して目的地への到着予想時刻を算出し、スケジュール登録手段に登録されている訪問予定時刻までに目的地に到着できない場合には、スケジュール登録手段に登録されている連絡先電話番号に発信することで、確実に訪問相手に報知することができる。」
・「【0010】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態に係るナビゲーションシステム1のシステム構成を示す図である。このナビゲーションシステム1は、車載されているナビゲーション装置3と、搭乗者が携帯する携帯端末50とから構成されるものである。」
・「【0014】CD-ROM(Compact-Disk as Read-Only Memory)駆動装置15は、CD-ROMを駆動するドライブ機構を有し、CD-ROMに記録されている緯度経度若しくはそれに準ずる形式を用いて位置を表す地図情報を駆動して読み出す装置である。CD-ROM駆動装置15により読み出した地図情報は、シリアル通信やパラレル通信等の伝送方法を用いてシステム制御部7に送られる。
【0015】表示制御部17は、システム制御部7とVRAM(Video Random Acess Memory) 部19との間で画像データのやりとりを行って画像データを描画処理してVRAM部19に記憶すると共に、VRAM部19に記憶された画像データを表示レートで読み出して表示部21に表示する。VRAM部19は、表示部21に表示可能な地図情報等を展開して記憶する。表示部21は、液晶表示パネル等を有し、表示制御部17で作成された表示データを表示する。」
・「【0026】次に、図2に示すフローチャートに基づいて本発明の第1の実施の形態に係るナビゲーションシステム1の動作を説明する。なお、本フローチャートに係る制御プログラムは、システム制御部7によって制御されるものである。」
・「【0029】ステップS20では、表示されたスケジュールリストの中から、操作者の操作によって所望のスケジュール情報が選択されると、選択されたスケジュール情報(訪問予定先の場所や訪問予定時刻、訪問相手の氏名、連絡先電話番号)が表示部21に表示される。
【0030】ステップS30では、表示されている訪問予定先の場所を目的地として設定するか否かが操作入力部25によって選択される。操作入力部25によって訪問予定先の場所を目的地として設定するように選択された場合には、ステップS40に進み、訪問予定先の場所の位置情報がシステム制御部7に入力され、訪問予定先の場所を目的地に設定する。一方、訪問予定先の場所を目的地として設定しないように選択された場合には、目的地の設定メニューを終了する。
【0031】目的地が設定されると、ステップS50では、経路探索を開始するか否かが操作入力部25によって選択される。操作入力部25によって経路探索を行うように選択された場合には、ステップS60に進む一方、経路探索を行わないように選択された場合には、目的地設定メニューを終了する。ステップS60では、到着希望時刻(訪問予定時刻よりも所定時間早い時刻)を演算する。次に、GPS受信機5で検出される現在位置情報をシステム制御部7に取り込む。そして、指定された目的地情報と現在位置情報に対応させ、周知のダイクストラ法等に基づいてCD-ROMに記録されているノードや道路リンクを検索して推奨すべき走行ルートのルートデータを作成する。さらに、その推奨経路を走行した場合の目的地への到着予想時刻を現在位置から目的地までの距離情報や交通情報受信機27で獲得した交通情報等に基づいて演算する。
【0032】ステップS70では、到着希望時刻と到着予想時刻とを比較して、到着希望時刻までに目的地に到着するルートが有るか否かを判断する。到着希望時刻までに到着可能なルートが有ると判断される場合には、ステップS80に進む一方、到着希望時刻までに到着不可能と判断される場合には、ステップS110に進む。
【0033】ステップS80では、システム制御部7は、現在位置周辺の狭域地図に対応する地図データをCD-ROM駆動装置15を介してCD-ROMから読み出し、表示制御部17を介してVRAM部19に狭域地図データを展開する。次に、表示制御部17を介してVRAM部19に記憶されている地図データ上にルートデータを重ね合わせて表示レートで読み出して表示部21に推奨ルートを表示させる。こうして、現在位置周辺の狭域地図上に推奨ルートと共に車両マークが表示部21に表示され経路誘導が開始される。
【0034】ステップS90では、GPS受信機5で検出される現在位置情報をシステム制御部7に取り込み、推奨経路を走行した場合の目的地への到着予想時刻を現在位置から目的地までの距離情報や交通情報等に基づいて演算する。そして、到着希望時刻と到着予想時刻とを比較して、到着希望時刻までに目的地に到着するか否かを判断する。到着希望時刻までに到着可能な場合には、ステップS100に進む一方、到着希望時刻までに到着不可能と判断される場合には、ステップS110に進む。ステップS100では、車両が目的地に到着したか否かを判断する。目的地に到着した場合には、経路誘導を終了する一方、目的地に到着していない場合には、ステップS90に戻り、経路誘導処理を繰り返す。
【0035】到着希望時刻までに到着不可能と判断される場合、ステップS110では、「訪問予定時刻に到着することが困難です。訪問相手と連絡をとりますか?」等の表示を行い、操作入力部25によって連絡をとるか否かが選択される。そして、操作入力部25によって連絡をとるように選択された場合には、ステップS120に進み、ハンズフリー電話モードに切り替え、スケジュールに登録された連絡先電話番号に発信するように通信装置53を制御する。通信装置53は、指定された連絡先電話番号に発信し、スピーカ24には通信網から出力される呼出音が出力される。ここで、通信装置53が相手の電話に接続されたときには、相手が発生する応答がスピーカ24から出力される。また、当方が発生する応答は、マイク23を介して相手に送信される。
【0036】ステップS130では、経路誘導を継続するか否かが操作入力部25によって選択される。経路誘導を継続するように選択された場合には、ステップS140に進み、現在位置周辺の狭域地図上に推奨ルートと共に車両マークが表示部21に表示され経路誘導が継続される。一方、経路誘導を終了するように選択された場合には、地図情報の表示を停止し、経路誘導を終了する。」
・「【0038】このように、携帯端末50のスケジュール保存部51から読み出した訪問予定先の場所や訪問予定時刻等のスケジュール情報をナビゲーション装置3に保存し、訪問予定先の場所を目的地に設定する。そして、経路検索・到着予想時刻の演算を行い、訪問希望時刻(訪問予定時刻よりも所定時間早い時刻)までに到着できない場合には、訪問予定先の場所への到着が遅れることを表示部21に表示すると共に、通信装置53によって訪問相手の連絡先電話番号に発信することで、搭乗者や訪問相手に確実に報知することができる。」

・図2には、経路誘導開始(S80)後に、到着希望時刻までに到着できるか否かを繰り返し判断(S90、S100)することが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「地図情報を記録するCD-ROMと、
出発地から目的地までの推奨経路を前記CD-ROMに記録される地図情報に基づいて作成し、この作成した推奨経路に沿って前記目的地まで誘導し、
推奨経路を誘導開始後に、現在位置から目的地までの距離情報や交通情報受信機で獲得した交通情報等に基づいて前記目的地への到着予想時刻を演算するシステム制御部と、
訪問予定先の場所への到着が遅れることを表示する表示部とを備えるナビゲーションシステムであって、
操作者により前記目的地への訪問予定時刻を選択する操作入力部と、
前記システム制御部によって推奨経路を誘導開始後に、該操作入力部から選択された訪問予定時刻よりも所定時間早い時刻の到着希望時刻と前記到着予想時刻とを比較して、前記到着希望時刻までに到着できるか否かを判断し、
前記到着予想時刻が前記到着希望時刻に到着できないものと判断された場合、前記到着予想時刻が前記訪問予定時刻に到着できないものであることを前記表示部から表示させるナビゲーションシステム。」

(2)引用例2
・「【0019】一方、情報センタ200のデータベース12bには交通情報やサービス内容等のサービス施設情報の他に、サービス開始時間に時間的制約があるか否かを示す旅行者の到着許容時間(許容データ)が蓄積されている。この許容データはサービス施設毎に標準的に定められた標準許容データと旅行者が任意に決定する任意許容データとがある。前記標準許容データは予め決められた目的地毎のデータで、例えばサービス内容がスポーツ観戦や観劇の場合はサービス開始時までにサービス施設である目的地に着かなければならないので、許容データは遅れ側到着許容時間を少なく設定している。例えば、目的地を『K劇場で観劇』とすると、それに対応する遅れ側到着許容時間の少ない許容データが示される。逆にサービス内容が景勝地の見学やホテルのチェックインの場合は目的地に到着しさえすればサービスを受けることができるので、許容データは遅れ側到着許容時間を多く設定している。例えば、目的地を『Iホテルチェックイン』とすると、それに対応する遅れ側到着許容時間の多い許容データが示される。また、前記任意許容データは標準許容データに旅行者が修正を加えて作成するものである。例えば、目的地を『P駅乗車』とすると、列車の発車時刻に合わせて、駅の標準許容データによって到着許容時間は遅れ側“ゼロ”に設定されるが、後続の列車が20分後にあり、この列車でも乗車可能な場合は許容データを例えば遅れ側“15分”に修正して任意許容データを作成することができる。また、サービス内容が観光地の場合、営業時間がある場合でも営業時間内に目的地に到着すればサービスを受けることができるので、観光地の標準許容データによって、到着許容時間は到着希望時刻の前後に例えば“1時間”に設定されるが、その観光地で他の旅行者と待ち合わせがある等の理由により、遅れが許されない場合は到着許容時間を遅れ側に例えば“10分”に設定することができる。」
・「【0027】このように目的地毎の到着許容時間に応じて、逸脱判定閾値を調整することによって、目的地に対して到着許容時間がない場合、つまり、必ず予定時刻に目的地に到着しなければならない場合、移動経路中で厳しい逸脱判定が行われ、移動計画からの逸脱を旅行者に知らせる。また、目的地に対して到着許容時間がある場合、つまり、目的地に到着しさえすればよい場合、甘い逸脱判定が行われ、必要以上に逸脱警告をせず旅行者に不快感を与えない。従って、旅行者に計画遂行の成否の誤認を起こさせることなく、適切な逸脱判定を行うことのできる。」

・図5には、到着余裕時間を到着希望時刻の前後に設ける点が示されている。

(3)引用例3
・「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決するために、自車の現在位置を検出して、車載の表示装置に自車の現在位置を含む地域の道路地図を表示し、該道路地図上に自車の目的地を登録し、交通渋滞情報や駐車場の空き情報やレストラン情報等の外部情報を受信して、目的地までの最適経路を誘導する装置において、レストラン、給油所、トイレなどの目的地までに立ち寄る経由地の属性を入力する手段と、トイレがある場所の種類や給油所メーカー名や使用可能なクレジットカード会社名などの前記経由地属性に関する詳細条件を入力する手段と、経由地及び目的地到着希望時間入力部と、出発地(現在地)から入力した目的地までのルートを想定した地域において入力した属性を満たす経由地候補を抽出する手段と、現在の外部情報に基づいて各経由地候補及び目的地への到達予想時間を算出する手段と、前記算出結果を基に入力された経由地属性の詳細情報に最も適した経由地を経由地候補群の中から選出する手段と、求められた経由地を通る最適経路を算出する手段と、最適経路及び各経由地及び目的地への到着予想時間を表示する手段とを有する構成とする。」
・「【0007】(第1の実施の形態)図1は、本発明による経路誘導装置の第1の実施の形態を示す図である。まず、図1を用いて構成を説明すると、自車の現在位置を検出して(12)、車載の表示装置に自車の現在位置を含む地域の道路地図を表示し、該道路地図上に自車の目的地を登録し(10)、交通渋滞情報や駐車場の空き情報やレストラン情報等の外部情報を受信して、目的地までの最適経路を誘導する装置において、レストラン、給油所、トイレなどの目的地までに立ち寄る経由地の属性を入力する手段(20)と、トイレがある場所の種類や給油所メーカー名や使用可能なクレジットカード会社名などの前記経由地属性に関する詳細条件を入力する手段(30)と、経由地及び目的地到着希望時間入力部(40)と、出発地(現在地)から入力した目的地までのルートを想定した地域において入力した属性を満たす経由地候補を抽出する手段(50)と、現在の外部情報(62)に基づいて各経由地候補及び目的地への到達予想時間を算出する手段(60)と、前記算出結果を基に入力された経由地属性の詳細情報に最も適した経由地を経由地候補群の中から選出する手段(70)と、求められた経由地を通る最適経路を算出する手段(80)と、最適経路及び各経由地及び目的地への到着予想時間を表示する手段(90)とを有する構成となっている。」
・「【0010】次に、立ち寄る経由地及び目的地への到着希望時間を入力する。入力例を、図3に基づいて説明する。経由地の属性入力として、レストラン、名所及びトイレの3ヶ所が入力された場合において、各経由地への到着希望時間を時刻指定か経過時間指定かを選択し、その選択に従い、時間を入力する。次に、その時間に対する許容範囲を指定する。その選択は、上記で指定した時間に対して「より前」(その時間より前○○分以内の意味)か「前後±」(その時間前後○○分の意味)か「以降」(その時間以降○○分までの意味)から選択する。更に、その経由地に滞在する予定時間を入力する。」
・「【0012】各種入力が終了したら、次に、入力属性を満たす経由地候補抽出を行う。この抽出方法に対するフローチャートを、図4に示す。まず、現在地(または出発地)から目的地までの最短ルートとそのルートにおける予想所要時間を算出する(ステップS100)。そして、算出された予想所要時間から目的地への到着予想時間を算出し、既に入力されている目的地到着希望時間と比較する(ステップS102)。」
・「【0014】そして、到着予想時間と比較して、到着希望時間までに余裕がある場合(希望時間も含む)(ステップS110)は、到着希望時間から到着予想時間を引いた値を求め、余裕時間αとして算出する(ステップS112)。」
・「【0032】具体的には、図9にフローチャートを示す。まず、現在選択されている経由地とその到達予想時間、及び目的地への到着予想時間が表示された画面において、次候補を見たい経由地を選択する(ステップS400)。そして、次候補の詳細情報と、その次候補を経由地とした時の最適経路と到着予想時間を表示する(ステップS402)。」

・図3には、許容範囲を「前後±○○」とあるように、時刻指定の前後の時間に設定することが示されている。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の事項が明らかである。
(ア)引用発明の「地図情報を記録するCD-ROM」は、引用発明の「地図情報」が本願発明の「道路地図データ」に相当し、以下同様に、「記録」が「格納」に、「CD-ROM」が「地図データ格納手段」にそれぞれ相当するから、本願発明の「道路地図データを格納する地図データ格納手段」に相当する。
(イ)引用発明の「システム制御部」の「出発地から目的地までの推奨経路をCD-ROMに記録される地図情報に基づいて作成し、この作成した推奨経路に沿って前記目的地まで誘導」する部分は、引用発明の「推奨経路」が本願発明の「走行経路」に相当し、同様に、「作成」が「探索」に相当するから、本願発明の「出発地から目的地までの走行経路を地図データ格納手段に格納される道路地図データに基づいて探索し、この探索した走行経路に沿って前記目的地まで誘導する経路誘導手段」に相当する。
(ウ)引用発明における「システム制御部」の「推奨経路を誘導開始後に、現在位置から目的地までの距離情報や交通情報受信機で獲得した交通情報等に基づいて前記目的地への到着予想時刻を演算する」部分は、引用発明の「推奨経路を誘導開始後に」が本願発明の「該経路誘導手段によって走行経路を誘導しているとき」に相当し、同様に、「演算」が「算出」に相当するから、本願発明の「経路誘導手段によって走行経路を誘導しているとき、現在地から目的地までの所要時間を算出し、この所要時間を利用して前記目的地への到着予想時刻を算出する到着予想時刻算出手段」とは、「経路誘導手段によって走行経路を誘導しているとき、前記目的地への到着予想時刻を算出する到着予想時刻算出手段」との概念で共通する。
(エ)引用発明における「訪問予定先の場所への到着が遅れることを表示する表示部とを備えるナビゲーションシステム」は、引用発明の「表示部」が本願発明の「報知手段」に相当し、同様に、「ナビゲーションシステム」が「カーナビゲーション装置」に相当するから、本願発明の「到着予想時刻を報知する報知手段とを備えるカーナビゲーション装置」とは、「報知手段とを備えるカーナビゲーション装置」の概念で共通する。
(オ)引用発明の「操作者により目的地への訪問予定時刻を選択する操作入力部」は、引用発明の「操作入力部」が本願発明の「到着希望時刻入力手段」に相当し、以下同様に、「操作者」が「ユーザ」に、「訪問予定時刻」が「到着希望時刻」に、「選択」が「入力」にそれぞれ相当するから、本願発明の「ユーザにより目的地への到着希望時刻を入力する到着希望時刻入力手段」に相当する。
(カ)引用発明における「システム制御部」の「推奨経路を誘導開始後に、操作選択部から選択された訪問予定時刻よりも早い時刻の到着希望時刻と到着予想時刻とを比較して、前記到着希望時刻までに到着できるか否かを判断」する部分は、引用発明の「到着希望時刻」が本願発明の「最終的な待ち合わせ時間」に相当し、同様に、「到着希望時刻までに到着できるか否か」が「最終的な待ち合わせ時間を超過しているか否か」に相当するから、本願発明の「経路誘導手段によって走行経路を誘導している途中で、到着希望時刻入力手段から入力された到着希望時刻に、予め設定されている正の超過許容時間を加算して算出した最終的な待ち合わせ時間と到着予想時刻とを比較して、前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過しているか否かを判断する超過判断手段」とは、「経路誘導手段によって走行経路を誘導している途中で、到着希望時刻入力手段から入力された到着希望時刻に、予め設定されている時間で演算した最終待ち合わせ時間と前記到着予想時刻とを比較して、前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過しているか否かを判断する超過判断手段」との概念で共通する。
(キ)引用発明の「システム制御部」の「到着予想時刻が到着希望時刻に到着できないものと判断された場合、前記到着予想時刻が訪問予定時刻に到着できないものであることを表示部から表示させる」部分は、引用発明の「到着希望時刻」が本願発明の「最終的な待ち合わせ時間」に相当し、同様に、「到着できない」が「超過している」に相当するから、本願発明の「超過判断手段によって到着予想時刻が最終的な待ち合わせ時間を超過していると判断された場合、前記到着予想時刻が到着希望時刻を超過する可能性があることを報知手段から報知させる時間超過報知制御手段」に相当する。

したがって、両者は、
「道路地図データを格納する地図データ格納手段と、
出発地から目的地までの走行経路を前記地図データ格納手段に格納される道路地図データに基づいて探索し、この探索した走行経路に沿って前記目的地まで誘導する経路誘導手段と、
該経路誘導手段によって走行経路を誘導しているとき、前記目的地への到着予想時刻を算出する到着予想時刻算出手段と、
報知手段とを備えるカーナビゲーション装置であって、
ユーザにより前記目的地への到着希望時刻を入力する到着希望時刻入力手段と、
該経路誘導手段によって走行経路を誘導している途中で、該到着希望時刻入力手段から入力された到着希望時刻に、予め設定されている時間で演算した最終待ち合わせ時間と前記到着予想時刻とを比較して、前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過しているか否かを判断する超過判断手段と、
該超過判断手段によって前記到着予想時刻が前記最終的な待ち合わせ時間を超過していると判断された場合、前記到着予想時刻が前記到着希望時刻を超過する可能性があることを前記報知手段から報知させる時間超過報知制御手段とを備えるカーナビゲーション装置。」

の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
到着予想時刻の算出に関し、本願発明では「現在地から目的地までの所要時間を算出し、この所要時間を利用して」求めているのに対し、引用発明では「現在位置から目的地までの距離情報や交通情報受信機で獲得した交通情報等に基づいて」算出している点。

[相違点2]
報知手段に関し、本願発明では、「到着予想時刻を報知する」のに対し、引用発明では「訪問予定先の場所への到着が遅れることを表示する」点。

[相違点3]
最終的な待ち合わせ時間に関し、本願発明では、予め設定されている「正の超過許容時間を加算して算出した」ものであるのに対し、引用発明では、かかる算出態様とされていない点。

5.判断

・相違点1について
目的地への到着時刻を演算するのにその時点の時刻に到着するまでの走行に要する所要時間を加算することは一般的な手法にすぎず、カーナビゲーション装置において、所要時間を利用して到着時刻を算出することは周知技術である(例えば、引用例3の【0012】を参照されたい。)。そうすると、引用発明において、到着予想時刻を算出する際に、そのような周知技術を適用することにより、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

・相違点2について
カーナビゲーション装置において、到着予想時刻を報知することは周知技術である(特に引用例3には、技術思想として、「3.引用例」に示す記載内容からみて、「到着予想時刻を報知する報知手段とを備えるカーナビゲーション装置」とする発明が開示されている。【0005】、【0032】等を参照。)。また、引用発明においても到着予想時刻を求めており、また、表示部を有している。そうすると、引用発明において、上記周知技術に基づき到着予想時刻を表示することが当業者にとって格別な技術的困難性を伴うものとは認められず、それにより格別な作用効果が生じるものとも認められない。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者にとって格別なものとは認められない。

・相違点3について
引用発明は、ユーザに対して到着時間の遅延を報知するカーナビゲーション装置に関するものであるといえる。
引用例2及び引用例3には、技術思想として、「3.引用例」に示す記載内容からみて、予め設定されている正の超過許容時間を加算して算出した最終的な待ち合わせ時間とする発明が開示されているといえる(特に、引用例2には、到着余裕時間を到着希望時刻の前後に設けることが、引用例3には、許容時間を時刻指定の前後の時間とすることが記載されている。)。引用例2には、それによる効果として「旅行者に計画遂行の成否の誤認を起こさせることなく、適切な逸脱判定を行う」なる課題が達成されることが明示されている。)
さらに、カーナビゲーション装置において「余裕時間」を考慮するのが望ましいこと、また、「余裕時間」には正の値及び負の値の両方が存在し、いずれを選択するかは当業者にとっては適宜選択可能であることは引用例2、3にも示されるようによく知られた事項であって、余裕時間を「予め設定されている正の超過許容時間」とすることも任意であり、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない(本願の【0011】にも同様の記載がなされている。)。
そうすると、引用発明において、「旅行者に計画遂行の成否の誤認を起こさせることなく、適切な逸脱判定を行う」との課題の下に、「予め設定されている正の超過許容時間を加算して算出した最終的な待ち合わせ時間と到着予想時刻とを比較」することにより、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も上記引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、上記引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2007-09-05 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願2002-218616(P2002-218616)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本庄 亮太郎  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 田中 秀夫
渋谷 善弘
発明の名称 カーナビゲーション装置  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  

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