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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200518508 審決 特許
不服200424313 審決 特許
不服20051624 審決 特許
不服20056282 審決 特許
不服200625545 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1167265
審判番号 不服2006-24601  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-31 
確定日 2007-11-09 
事件の表示 平成8年特許願第42487号「脳血栓における運動麻痺の改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成9年9月2日出願公開、特開平9-227381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成8年2月29日の出願であって、平成18年8月4日付けで特許請求の範囲について補正がされ、平成18年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年11月8日付けで特許請求の範囲について補正がされたものである。

2.平成18年11月8日付けの手続補正の適否

(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?6は以下のとおりとなった。

【請求項1】
脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善する
ための下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤であって、該有効成分の1日投与量として20mgを、脳血栓症発症後72時間以内に初回投与されるように包装された製剤。

【請求項2】
さらに2?13日間、下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩の1日投与量として20mgで投与されるように包装された請求項1記載の製剤。

【請求項3】
脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善するための下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤であって、該有効成分の1日投与量として60mgを、脳血栓症発症後72時間以内に初回投与されるように包装された製剤。

【請求項4】
さらに2?13日間、下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩の1日投与量として60mgで投与されるように包装された請求項3記載の製剤。

【請求項5】
脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善するための下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤であって、該有効成分の1日投与量として120mgを、脳血栓症発症後72時間以内に初回投与されるように包装された製剤。

【請求項6】
さらに2?13日間、下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩の1日投与量として120mgで投与されるように包装された請求項5記載の製剤。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された「脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善するための下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤であって、脳血栓症発症72時間以内に1日投与量20?120mgで14日間以内投与されるように包装された製剤。」に基づくものである。
しかしながら、本件補正により、1の請求項が6の請求項に増項され、しかも補正後の請求項1、3、5に係る発明では補正前の請求項1に記載された投与期間の限定が削除されており、補正後の請求項に係る発明と補正前の請求項に係る発明が、一対一又はこれに準ずるような対応関係にないものとなっている。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当するとはいえない。
また、本件補正は、上記のとおり補正の前後で、発明の対象を大きく変更するものであるから、特許法第17条の2第4項に規定する「誤記の訂正」或いは拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする「明りょうでない記載の釈明」を目的としたものともいえない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

平成18年11月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成18年8月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

【請求項1】
「脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善するための下記一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤であって、脳血栓症発症72時間以内に1日投与量20?120mgで14日間以内投与されるように包装された製剤。」

(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特開平2-256617号公報(以下、「引用例」という。)には、以下のとおりの記載がある。

(a)
「一般式[I](式略)[式中、R1は水素・・・水酸基を表し、R1が水素のとき、・・・Aは無置換・・・炭素数2ないし6個のアルキレン基、・・・R4は水素原子・・・あるいはR2、R3は互いに直接結合して・・・無置換・・・炭素数4個以下のアルキレン基・・・を表す。R1が・・・水酸基のとき、Aは無置換・・・炭素数2ないし6個のアルキレン基、R2、R3は・・・互いに直接結合し、・・・エチレン基、トリメチレン基を表し、R4は水素原子・・・を表す。]で示される置換されたイソキノリンスルホンアミド誘導体またはその酸付加塩を有効成分とする脳機能改善剤。」
(特許請求の範囲)

(b)
「本発明の脳機能改善剤は、脳組織の機能、状態(代謝能を含む)の障害およびそれに伴う症状、後遺症を予防、改善し、もしくは当該症状の進行を緩やかにする薬剤として有望である。特に、脳代謝能の変化と関連する脳機能障害の予防、改善に有望である。さらに、脳細胞の壊死、脱落と関連する脳機能障害の予防、改善にも有望である。
より具体的に言えば、・・・脳血栓・・・、および上記疾患等による後遺症・・・の予防、改善薬・・・として有効に使用される。」
(2頁左下欄末行?右下欄下から2行)

(c)
「脳機能障害患者の臨床では、急性的な脳障害後何日か経過した後に、脳神経細胞が脱落、壊死に至り始める現象が、特に最近注目されている。この脳神経細胞の脱落、壊死は、脳組織の機能、状態(代謝能を含む)の障害やこれに伴う症状、後遺症、もしくは当該障害の進行と密接に関係している。・・・例えば、一過性に脳虚血状態にしたスナネズミの海馬領域において、虚血状態による直接的な細胞壊死と共に、この後血流が回復しても遅発性の細胞壊死、脱落を生じることが確認されている。」
(3頁左上欄3行?14行)

(d)
「一般式[I]で示される化合物が血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧降下作用を示し、血管拡張薬、脳循環改善剤・・・脳心血管系の血栓症の予防および治療等において有効な物質であることは既に公知である(特開昭57-156463・・・USP-4678783)。・・・本発明者らは、一般式(I)で示される化合物について研究を重ねた結果、該化合物が上記血管平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧降下作用からは全く予期できない脳機能改善効果を有しており、かつ麻酔作用を有していないことを見出し、本発明を完成した。」
(3頁右上欄下から5行?左下欄12行)

(e)
「本発明の一般式(I)で示される具体的化合物としては、次の化合物を挙げることができる。
(1)1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン・・・
(83)1-(1-ヒドロキシ-5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」(4頁右上欄5行?6頁左下欄5行)

(f)
「投与量は患者の年令、健康状態、体重、症状の程度、同時処置があるならばその種類、処置頻度、所望の効果の性質等により決定される。
治療量は一般に、非経口投与で0.01?20mg/kg・日、経口投与で0.02?40mg/kg・日である。・・・非経口的に筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射で投与する場合、・・・無菌溶液として使用される。・・・これらの注射液の場合には、通常0.01?20重量%、好ましくは0.1?10重量%の有効成分を含むようにすることがよい。・・・経口投与の液剤の場合、0.01?20重量%の有効成分を含む懸濁液またはシロップがよい。」(7頁右上欄11行?右下欄下から4行)

(g)
「一般式(I)で示される化合物およびその酸付加塩は、マウス低酸素脳障害モデルにおいて、エネルギー関連物質量を維持し、また、マウスの生存時間を延長した。スナネズミ海馬領域神経脱落モデルにおいては、遅発性の神経脱落を阻害した。さらにラット大脳から調製したミトコンドリア標本に働き、ミトコンドリア呼吸調節率を亢進した。」
(8頁左上欄3行?10行)

実施例1には、化合物(1)、(83)がラット脳ミトコンドリアの呼吸調節率を有意に増加すること、更に平滑筋弛緩作用、血流増加作用、血圧降下作用を有しているニカルジピンでは該呼吸調節率を増加しないことが記載されている。(特に表1参照)

実施例2には、化合物(1)が基準気圧低酸素症におちいらせたマウスの脳内エネルギー関連物質(ATP、クレアチリン酸等)を高める効果を有すること、ニカルジビン投与群ではATP、クレアチリン酸等は非投与群と有意差がなかったことが記載されている。(特に表2参照)

実施例3には、化合物(1)、(83)が基準気圧低酸素症におちいらせたマウスの生存時間を有意に延長すること、ニカルジビン投与群と非投与群では、生存時間に有意差がなかったことが記載されている。(特に表3(1)、(2)参照)

実施例4には、化合物(1)、(83)が、スナネズミの脳虚血モデルにおいて、脳神経細胞の壊死、脱落を抑制すること、ニカルジビン投与群と非投与群間では、神経細胞数に有意差がなかったことが記載されている。(特に表4参照)

(h)
「実施例7 製剤化例・・・
(1)錠 剤
以下の成分を含む錠剤を既知の方法により調整できる。
成 分 量
化合物(I)硫酸塩 20mg
結晶セルロース 25mg
乳 糖 98.5mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 5mg
計150.0mg

(2)無菌注射剤
以下の成分を蒸留水に溶解し、その後、水を添加し必要な最終重量にする。この溶液2mlをアンプルに密封し、加熱殺菌する。
成 分 量
化合物(I)硫酸塩 30mg
塩化ナトリウム 16mg
蒸留水 適量
全量 2mlとする。」
(12頁左上欄?右上欄)

(2)対比・判断
引用例には、一般式(I)として示される化合物、特に「1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」、「1-(1-ヒドロキシ-5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」またはその酸付加塩を有効成分とする脳機能改善剤(摘記事項(a)、(e)、(g))及び当該化合物の投与量が非経口投与で0.01?20mg/kg・日、経口投与で0.02?40mg/kg・日とすること(摘記事項(f))が記載されている。
そこで、本願発明(前者)とこの引用例に記載された「1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン又は1-(1-ヒドロキシ-5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンを有効成分とし、投与量が0.01?20mg/kg・日(非経口投与)又は0.02?40mg/kg・日(経口投与)である脳機能改善剤」の発明(後者)を対比すると、引用例の「1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」、「1-(1-ヒドロキシ-5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン」は、本願発明の一般式(I)で示される化合物のR1が水素原子である化合物、水酸基である化合物にそれぞれ相当するから、両者は「一般式(I)(式略)(ただし、式中R1は水素原子または水酸基を表す)で示される化合物またはその酸付加塩を有効成分として含有する製剤」である点で一致し、前者が、製剤の用途を「脳血栓症急性期において運動麻痺を呈する患者の運動麻痺を改善するための」ものと規定しているのに対し、後者が、「脳機能改善剤」としている点(相違点1)、及び前者が製剤を「脳血栓症発症72時間以内に1日投与量20?120mgで14日間以内投与されるように包装された」ものと規定するのに対し、後者では、投与量が「0.01?20mg/kg・日(非経口投与)又は0.02?40mg/kg・日(経口投与)」と言及するにとどまる点(相違点2)で相違している。

(相違点1について)
引用例によれば、「脳機能改善剤」とは、「脳組織の機能、状態(代謝能を含む)の障害およびそれに伴う症状、後遺症を予防、改善し、もしくは当該症状の進行を緩やかにする薬剤」、「脳血栓・・・、および・・・後遺症の予防、改善薬」を意味し、「脳細胞の壊死、脱落と関連する脳機能障害の予防、改善にも有望」(いずれも、摘記事項(b))と定義されるものであり、かかる医薬用途を実証するものとして、引用例には、本願発明の一般式(I)で示される化合物が、脳虚血モデルにおける脳神経細胞の壊死、脱落を抑制する作用(実施例4)を持つことや低酸素状態から脳を保護する作用(実施例1?3)を持つことが具体的に記載されている(摘記事項(g))。
一方、脳血栓症急性期において、運動障害(麻痺)、感覚障害、意識障害、言語障害等の後遺症が生じることは、本願出願日当時、当業界で広く知られた事項であり、こうした後遺症は、脳神経細胞の障害や脳血流量の低下、血中の酸素不足、低血糖等の代謝障害等に起因すると当業者に考えられていたのであるから(必要ならば、特開平5-86043号公報の段落【0008】、特開平5-239088号公報の段落【0002】を参照のこと。)、血流増加作用を持つとともに、脳神経細胞の壊死、脱落を抑制し、低酸素状態から脳を保護する作用も持つ引用例に記載の「脳機能改善剤」が、脳血栓症急性期における各種の後遺症の改善、予防に有効であることは当業者が容易に予見し得たものと認められる。
よって、引用例に記載の「脳機能改善剤」を、脳血栓症急性期の典型的な後遺症といえる「運動麻痺」の改善、予防のために臨床応用することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
引用例には、「脳機能障害患者の臨床では、急性的な脳障害後何日か経過した後に、脳神経細胞が脱落、壊死に至り始める現象が、特に最近注目されている。」、「この脳神経細胞の脱落、壊死は、脳組織の機能、状態(代謝能を含む)の障害やこれに伴う症状、後遺症、もしくは当該障害の進行と密接に関係している。」と記載されるから(いずれも摘記事項(c))、脳血栓症に伴う「後遺症を予防、改善し、もしくは当該症状の進行を緩やかにする」作用を持つ引用例に記載の「脳機能改善剤」を、例えば脳血栓症発症24時間以内又は発症48時間以内のように、脳神経細胞の脱落、壊死が重篤となる前の段階で投与を開始し、その後「運動麻痺」等の後遺症が予防、改善するまで、例えば3日間、7日間或いは14日間の間、投与を継続することは当業者が容易に想到することである。[なお、「脳神経,44(9),797-805頁、1992年」によれば、一般に脳循環代謝改善薬(脳機能改善剤)の評価期間は、3日、7日、14日、28日とされているところである。]
次に、投与量についてみれば、引用例には「投与量は患者の年令、健康状態、体重、症状の程度、同時処置があるならばその種類、処置頻度、所望の効果の性質等により決定される。」(摘記事項(f))と記載され、化合物(I)を20mg含有する錠剤及び化合物(I)を30mg含有する注射剤(摘記事項(h))の製造例が具体的に記載されている。(この製剤例は、本願明細書の段落【0024】に記載された30mg製剤、段落【0025】に記載された20mg製剤に対応するものである。)
そうすると、「0.01?20mg/kg・日(非経口投与)又は0.02?40mg/kg・日(経口投与)」の範囲内で(この範囲は、本願明細書の段落【0022】に記載のものと対応するものである。)、患者の年令、健康状態、体重、症状の程度等を勘案し、個々の患者に必要な1日当たりの最適投与量を、製剤例に記載された投与単位(30mg又は20mg)でもって、例えば20mg/日、40mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日等と設定し、日単位或いは患者単位等で包装することは当業者ならば容易になし得ることである。

ところで、請求人は、平成18年8月4日付け上申書に添付された参考文献[脳卒中の機能評価と予後予測、1991年5月30日第1版第1刷発行、医歯薬出版株式会社」のp14記載の表1-9(脳卒中患者の機能的帰結に関する重回帰分析の結果)]等には、「機能的帰結」即ち「後遺症」と、「運動障害」「上肢機能障害」「下肢機能障害」の関係が分析されており、これらに相関関係が無いことが明瞭に記載され、この参考文献が引用例の阻害要因として働くと主張する。
しかし、上記参考文献には、「判別分析は発症初期の段階で最終的な帰結(自立レベル、退院先など)を予測するために行われた。予測変数は年齢、性、・・・動機づけの強さなど多岐にわたっていた。一方、最終的な帰結は完全自立、自宅で介助を要する生活、施設入所、死亡の4種類であった。・・・これにより、発症初期の段階でも、機能的帰結はある程度の精度で予測できることが明らかになった。しかし、先に述べたように、予測の的中率は機能レベルで大きな差がある。非常によい帰結(完全自立)や非常に悪い帰結(死亡、全介助)では的中率が高いのに対して、その中間レベルの帰結に関する予測の的中率は劣っていたのである。」(15頁3行?18行)との記載があり、「機能的帰結」が「自立レベル、退院先」、「完全自立、自宅で介助を要する生活、施設入所、死亡」、「完全自立、死亡、全介助」等を意味することは理解できるが、「機能的帰結」が「後遺症」であることを示す記載、更には「後遺症」と「運動障害」、「上肢機能障害」、「下肢機能障害」とに相関関係が無いこと示す記載は上記参考文献に一切存在しない。
そうすると、上記参考文献は、本願発明についての進歩性の判断を左右するものではない。
また、請求人は、引用例には、平成18年12月1日付け上申書で示された悪化を顕著に抑制するという改善効果の開示または暗示も引用例には一切ない、と主張する。
しかしながら、引用例に記載の「脳機能改善剤」は、「症状、後遺症を予防、改善し、もしくは当該症状の進行を緩やかにする薬剤」(摘記事項(b))であるから、請求人の主張する悪化を顕著に抑制するという改善効果も引用例の記載から当業者が予測し得るものである。
したがって、上記請求人の主張は、いずれも理由がない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-13 
結審通知日 2007-08-15 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願平8-42487
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 57- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長部 喜幸  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 森田 ひとみ
福井 悟
発明の名称 脳血栓における運動麻痺の改善剤  
代理人 小林 和憲  

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