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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1167290 |
審判番号 | 不服2004-5101 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-11 |
確定日 | 2007-11-08 |
事件の表示 | 平成6年特許願第80317号「多層配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成7年10月31日出願公開、特開平7-288386号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年4月19日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成19年8月20日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 複数層の導体回路層が絶縁層を介して積層接着され、所定の導体回路層間を導体化された穴で電気的に接続してなる少なくとも3層以上の導体回路層を有する多層配線板において、X及びY方向の線膨張率が13ppm/℃以下のガラスクロス補強樹脂製の絶縁層を1層以上有し、最外層の絶縁層のみが、ガラスクロスを含有しないエポキシ樹脂フィルムであることを特徴とする多層配線板。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物とその記載事項 これに対して、当審が平成19年6月14日付けの拒絶理由通知で引用した特開平2-189997号公報(以下「刊行物1」という。)には、「多層プリント配線板」に関して、図面第1図?第3図とともに次の事項が記載されている。 ア 「本発明は基板としての熱膨張係数が低く、従ってセラミックチップ等の表面実装に適し、またスルーホール信頼性の高い多層プリント配線板に関するものである。」(第1頁左下欄第12?15行) イ 「(7)はスルーホール金属メッキ部を示し、外層パターン(1a),(1b)および内層パターン(2b)と接続している。」(第1頁右下欄第9?11行) ウ 「本発明に係る多層プリント配線板は、内層および外層に金属による配線パターンを有し、その間を繊維強化プラスチックで絶縁を行う多層プリント配線板において、絶縁層としてノンクリンプ布帛を用いた繊維強化プラスチックを用いたものである。」(第2頁右上欄第2?7行) エ 「第1図は実施例の多層プリント配線板としての四層プリント配線板の垂直断面図、第2図はノンクリンプ布帛の平面図であり、図において、第3図と同一符号は同一または相当部分を示す。ノンクリンプ布帛(11)は、ガラス繊維等からなるタテ糸(4)およびヨコ糸(5)がいずれも真直に配列されており、通常の平織クロスのように互いに乗りかかることがないように配列されている。」(第2頁左下欄第4?11行) オ 「外層パターン(1a),(1b)、内層パターン(2a),(2b)間に設けられた絶縁層(3)は上記ノンクリンプ布帛(11)からなる強化繊維が樹脂層(6)に埋設された構造となっている。他の構成は第3図と同様である。」(第2頁左下欄第20行?右下欄第4行) カ 第3頁左下欄の表1には、実施例1の絶縁層の熱膨張係数(×10-6℃-1)がX方向11.4、Y方向12.7であること、及び、実施例2の絶縁層の熱膨張係数(×10-6℃-1)がX方向10.6、Y方向11.3であることが記載されている。 上記各記載事項及び図面の記載によれば、刊行物1記載の多層プリント配線板は、それぞれ2層の外層パターン(1a),(1b)及び内層パターン(2a),(2b)が絶縁層3を介して積層接着されたものと認められ、これら外層パターン(1a),(1b)及び内層パターン(2a),(2b)は4層の配線パターンといえるものである。また、上記記載事項イ及び第1図の記載によれば、上記外層パターン(1a),(1b)及び内層パターン(2b)はスルーホール金属メッキ部(7)で電気的に接続されているものと認められる。更に、上記記載事項ウ?カ及び第1図の記載によれば、上記絶縁層3は、ノンクリンプ布帛を用いたガラス繊維等強化プラスチック製のもので3層有り、当該絶縁層3のX方向及びY方向の熱膨張係数は、いずれも13×10-6℃-1以下であるものと認められる。 よって、刊行物1には、 「4層の配線パターンが絶縁層3を介して積層接着され、外層パターン(1a),(1b)及び内層パターン(2b)をスルーホール金属メッキ部(7)で電気的に接続してなる4層の配線パターンを有する多層プリント配線板において、X方向及びY方向の熱膨張係数が13×10-6℃-1以下のノンクリンプ布帛を用いたガラス繊維等強化プラスチック製の絶縁層3を3層有する、多層プリント配線板」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「配線パターン」、「絶縁層3」、「スルーホール金属メッキ部(7)」及び「多層プリント配線板」は、それぞれ、本願発明の「導体回路層」、「絶縁層」、「導体化された穴」及び「多層配線板」に相当する。また、引用発明の「配線パターン」は4層であるから、本願発明の「複数層の導体回路層」及び「少なくとも3層以上の導体回路層」と一致する。更に、引用発明の「スルーホール金属メッキ部(7)」で「外層パターン(1a),(1b)及び内層パターン(2b)を電気的に接続してなる」ことは、本願発明の「所定の導体回路層間を導体化された穴で電気的に接続してなる」ことと一致する。更に、引用発明は、「X方向及びY方向の熱膨張係数が13×10-6℃-1以下のノンクリンプ布帛を用いたガラス繊維等強化プラスチック製の絶縁層3を3層有する」から、当該引用発明の限定事項は、本願発明の「X及びY方向の線膨張率が13ppm/℃以下のガラスクロス補強樹脂製の絶縁層を1層以上有」することに一致する。 よって、本願発明と引用発明とは、 【一致点】 「複数層の導体回路層が絶縁層を介して積層接着され、所定の導体回路層間を導体化された穴で電気的に接続してなる少なくとも3層以上の導体回路層を有する多層配線板において、X及びY方向の線膨張率が13ppm/℃以下のガラスクロス補強樹脂製の絶縁層を1層以上有する、多層配線板」 である点で一致し、次の点で相違する。 【相違点】 本願発明では、「最外層の絶縁層のみが、ガラスクロスを含有しないエポキシ樹脂フィルムである」のに対して、引用発明では、「最外層の絶縁層も、ノンクリンプ布帛を用いたガラス繊維等強化プラスチック製の絶縁層3である」点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点について以下で検討する。 最外層の絶縁層のみを、基材を含まない接着フィルムとすることは、周知の技術(上記当審の拒絶理由通知で引用した特開平5-102664号公報(刊行物3)、参照)であるし、また、絶縁層としてエポキシ樹脂フィルムは一般的に用いられるものであって、板厚を薄くし、表面層の耐熱性に優れたものを得るために、最外層の絶縁層のみを、ガラスクロスを含有しないエポキシ樹脂フィルムとすることも、周知の技術(例えば、特開平4-142793号公報の第2頁左上欄第18?20行、第2頁右上欄第17行?左下欄第9行及び第3頁左上欄第1行?右上欄第6行、参照)である。 そうすると、最外層の絶縁層としてどのような材質のものを採用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものといえるし、また、最外層の絶縁層としてのエポキシ樹脂フィルムの厚さを薄いものとした場合に、「配線板全体の線膨張率を増加させない」(本願明細書の段落【0010】、参照)という効果は、当業者であれば容易に予測し得る効果であるから、引用発明において、上記後者の周知の技術を採用して、最外層の絶縁層のみが、ガラスクロスを含有しないエポキシ樹脂フィルムとすることは、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 また、本願発明が奏する作用効果も、引用発明及び上記各周知の技術から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-05 |
結審通知日 | 2007-09-11 |
審決日 | 2007-09-25 |
出願番号 | 特願平6-80317 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
佐藤 正浩 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | 多層配線板 |
代理人 | 三好 秀和 |