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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1167302 |
審判番号 | 不服2004-15290 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-22 |
確定日 | 2007-11-08 |
事件の表示 | 特願2001-267958「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月11日出願公開、特開2003-71054〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月4日の出願であって、平成16年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月22日に拒絶査定に対する審判が請求されたものであり、その発明は、平成16年4月19日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「所定条件の成立に基づき遊技者にとって有利な特定遊技状態又は特定遊技状態よりもさらに有利な特別遊技状態になるか否かを決定する遊技状態決定手段と、前記特定遊技状態になる特定表示を示すリーチ態様と特別遊技状態になる特別表示を示すリーチ態様とを含む複数の変動パターンを有し、前記複数の変動パターンの中からいずれかの変動パターンを選択する変動パターン選択手段と、選択された前記変動パターンに基づく前記各リーチ態様を含む図柄を可変表示する可変表示部と、前記図柄が可変表示される表示時間を比較的短く表示するか長く表示するかを決定する表示時間決定手段と、前記各リーチ態様の図柄とリーチ態様以外の図柄とを含む複数の図柄を有し、前記複数の図柄の中から可変表示する図柄を選択する表示図柄選択手段と、を備え、前記表示図柄選択手段は、前記遊技状態決定手段で特定遊技状態及び特別遊技状態にならない決定がされ、前記変動パターン選択手段で前記リーチ態様が選択され、かつ前記表示時間決定手段で長い表示時間が選択された場合、前記特定表示を示すリーチ態様の図柄を選択する選択比率が前記特別表示を示すリーチ態様の図柄を選択する選択比率より大きくなるように設定されていることを特徴とする遊技機。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成13年2月6日に頒布された特開2001?29585号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 記載事項1: 「本発明は、識別情報を変動表示せしめ、最終的に所定の停止態様にて停止表示可能な可変表示装置を備えたパチンコ機等の遊技機に関するものである。」(【0001】段落) 記載事項2: 「リーチ状態を経た後に遊技者に有利な状態となる「特別遊技状態(大当たり状態)」、リーチ状態を経た後に特別遊技状態とはならない「外れリーチ状態」、又は、リーチ状態を経ず、かつ、特別遊技状態ともならない「外れ状態」が発生させられる。」(【0003】段落) 記載事項3: 「図7から図11のフローチャートは、制御装置24によって実行される各種ルーチンを示している。」(【0065】段落) 記載事項4: 「内部乱数カウンタCIは、特別図柄表示装置13での大当たり状態を決定するためのものである。また、外れリーチ乱数カウンタCOは外れリーチ状態時の表示を行うか否かを決定するためのものである。」(【0067】段落) 記載事項5: 「制御装置24は、・・・ステップS901において、内部乱数カウンタCIの値が大当たり値であるか否かを判定する。」(【0088】段落) 記載事項6: 「ステップS903において、外れリーチ乱数カウンタCOの値が予め定められた外れリーチ値と同じであるか否かを判定する。」(【0089】段落) 記載事項7: 「ステップS905においては、リーチパターンを取得する。すなわち、上述した「ノーマルリーチ」、「フラッシュリーチ」、「拡大リーチ」、「コマ送りリーチ」等の種々のリーチパターンのうちのいずれかを決定する。」(【0093】段落) 記載事項8: 「制御装置24によって大当たり報知表示がなされるとともに、モード判定処理が実行される。より詳しくは、今回の大当たり状態における大当たり図柄が奇数の場合には、大当たり終了後次回の遊技において確変モードとするべく遊技モードフラグが「1」に設定され、大当たり図柄が偶数の場合には、大当たり終了後次回の遊技において通常モードとするべく遊技モードフラグが「0」に設定される等の処理が行われる。」(【0100】段落) 記載事項9: 「先にリーチパターンを決定し、その後、各リーチパターンに基づいて外れリーチ図柄を決定することとしてもよい。この場合、各リーチパターン毎に、テーブルを用意しておき、各テーブルを参酌することにより外れリーチ図柄を決定することとしてもよい。(b)また、外れリーチ時以外においても、例えば外れ時や、大当たり時においても、上記のような図柄決定方法及び演出表示パターンを決定してもよい。」(【0113】-【0114】段落) これら記載事項によると、引用刊行物には、 「制御装置と、図柄を変動表示した後に所定の停止態様にて停止表示可能な可変表示装置とを備えた遊技機において、 制御手段は、 (a) 内部乱数カウンタの値が大当たり値であるか否に基づいて大当たり状態を決定する処理、及び、大当たり図柄が奇数の場合には次回の遊技を確変モードとし、大当たり図柄が偶数の場合には次回の遊技を通常モードとする処理と、 (b) リーチ状態を経た後に遊技者に有利な状態となる「特別遊技状態」、リーチ状態を経た後に特別遊技状態とはならない「外れリーチ状態」、リーチ状態を経ず、かつ、特別遊技状態ともならない「外れ状態」を有し、外れリーチ乱数カウンタの値に基づいて、外れリーチ状態時の表示を行うか否かを決定する処理と、 (c) 「ノーマルリーチ」、「フラッシュリーチ」、「拡大リーチ」、「コマ送りリーチ」等の種々のリーチパターンのうちのいずれかを決定する処理と、 (d) 外れリーチ時において、リーチパターンを決定した後にリーチパターン毎に用意されたテーブルに基づいて外れリーチ図柄を決定する処理、及び、外れ時及び大当たり時においても同様に図柄を決定する処理と、 を行うようにされている遊技機。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用発明とを比較すると、 (1) 引用発明の遊技機には、次回の遊技を通常モードとする大当たりと、確変モードとする大当たりとがあり(構成a)、これらはそれぞれ本願発明の「遊技者にとって有利な特定遊技状態」と、「特定遊技状態よりもさらに有利な特別遊技状態」に相当する。そして、これらの遊技状態になるか否かについて、引用発明が、内部乱数カウンタの値が大当たり値であるか否か、及び大当たり図柄が奇数か偶数かに基づいて決定している点は、本願発明が「所定条件の成立に基づいて」決定している点に相当する。 上記決定は、引用発明では制御手段が行っており、引用発明の制御手段が有する当該決定機能は、本願発明の遊技状態決定手段、すなわち「所定条件の成立に基づき遊技者にとって有利な特定遊技状態又は特定遊技状態よりもさらに有利な特別遊技状態になるか否かを決定する遊技状態決定手段」に相当する。 (2) 引用発明における図柄の変動パターンとして、リーチ状態を経た後に大当たりとなる場合、リーチ状態を経た後に外れとなる場合、リーチ状態を経ずに外れとなる場合があり(構成b)、また、種々のリーチパターンのリーチ態様があり(構成c)、さらに、奇数と偶数の各図柄でのリーチ態様、すなわち「特定遊技状態」と「特別遊技状態」のリーチ態様があることは明らかであるから、引用発明も本願発明と同様に、「特定遊技状態になる特定表示を示すリーチ態様と特別遊技状態になる特別表示を示すリーチ態様とを含む複数の変動パターン」を有しているものである。 そして、引用発明では、制御手段が当該複数の変動パターンの中からいずれかの変動パターンを決定しており、引用発明の制御手段が有するこのような決定機能は、本願発明の変動パターン選択手段、すなわち「特定遊技状態になる特定表示を示すリーチ態様と特別遊技状態になる特別表示を示すリーチ態様とを含む複数の変動パターンを有し、前記複数の変動パターンの中からいずれかの変動パターンを選択する変動パターン選択手段」に相当する。 (3) 引用発明の「可変表示装置」が、選択された変動パターンに基づいて図柄を「変動表示」すなわち「可変表示」することは明らかであるから、引用発明の「図柄を変動表示した後に所定の停止態様にて停止表示可能な可変表示装置」は、本願発明の「選択された変動パターンに基づく各リーチ態様を含む図柄を可変表示する可変表示部」に相当する。 (4) 引用発明の制御手段は「外れリーチ時において、リーチパターンを決定した後にリーチパターン毎に用意されたテーブルに基づいて外れリーチ図柄を決定する処理、及び、外れ時及び大当たり時においても同様に図柄を決定する処理」を行うものであり、引用発明の制御手段が有するこのような図柄決定機能は、本願発明の表示図柄選択手段、すなわち「各リーチ態様の図柄とリーチ態様以外の図柄とを含む複数の図柄を有し、前記複数の図柄の中から可変表示する図柄を選択する表示図柄選択手段」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「所定条件の成立に基づき遊技者にとって有利な特定遊技状態又は特定遊技状態よりもさらに有利な特別遊技状態になるか否かを決定する遊技状態決定手段と、前記特定遊技状態になる特定表示を示すリーチ態様と特別遊技状態になる特別表示を示すリーチ態様とを含む複数の変動パターンを有し、前記複数の変動パターンの中からいずれかの変動パターンを選択する変動パターン選択手段と、選択された前記変動パターンに基づく前記各リーチ態様を含む図柄を可変表示する可変表示部と、前記各リーチ態様の図柄とリーチ態様以外の図柄とを含む複数の図柄を有し、前記複数の図柄の中から可変表示する図柄を選択する表示図柄選択手段とを備えた遊技機。」 の点で一致し、次の点において相違する。 (1) 本願発明は「図柄が可変表示される表示時間を比較的短く表示するか長く表示するかを決定する表示時間決定手段」を有しているが、引用刊行物には、図柄が可変表示される表示時間を決定する旨の記載はない点。(以下、相違点1という。) (2) 遊技状態決定手段で特定遊技状態及び特別遊技状態にならない決定がされ、変動パターン選択手段でリーチ態様が選択された場合(以下、「ハズレリーチ」の場合という。)における表示図柄選択手段の機能として、本願発明では、「表示時間決定手段で長い表示時間が選択された場合、特定表示を示すリーチ態様(以下、「通常図柄リーチ」という。)の図柄を選択する選択比率が特別表示を示すリーチ態様(以下、「確変図柄リーチ」という。)の図柄を選択する選択比率より大きくなるように設定されている」のに対し、引用発明では、「リーチパターン毎に用意されたテーブルに基づいて外れリーチ図柄を決定する」としている点。(以下、相違点2という。) 4.当審の判断 上記各相違点について検討する。 4-1.相違点1について 引用発明に例示された種々のリーチパターンに表示時間の長短があることは当業者において明らかであるといえ、あるいは、表示時間に長短がある周知のリーチパターン(後記参照)を引用発明に採用することは設計的事項にすぎないといえるから、これら表示時間に長短があるリーチパターンのうちいずれかを決定する引用発明の制御手段(構成c)は、図柄が可変表示される表示時間を比較的短く表示するか長く表示するかを実質的に決定するものといえる。 してみると、引用発明の制御手段が有しているリーチパターンの決定機能は、本願発明の表示時間決定手段に実質的に相当することになり、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成の如く「図柄が可変表示される表示時間を比較的短く表示するか長く表示するかを決定する表示時間決定手段」を備えるとすることは、当業者が容易に為し得たことである。 < リーチパターンに表示時間の長短があることについて > 例えば、特開平10-272230号公報(以下、「周知例1」という。)の【図10】及びその説明箇所、特開平10-127892号公報(以下、「周知例2」という。)の【図11】及びその説明箇所、特開2001-218959号公報の【0003】-【0004】段落の記載を参照されたい。 4-2.相違点2について ハズレリーチとする場合に、「通常図柄リーチ」又は「確変図柄リーチ」のいずれとするかの選択と、表示時間の異なる複数のリーチパターンのいずれとするかの選択とを関連付けて、各々の組合わせの選択比率を予め設定しておくことは周知技術である(例えば、上記周知例1の【図32】及びその説明箇所、上記周知例2の【図13】及びその説明箇所参照)。 そして、その各組合わせの選択比率の大小関係は、遊技者にどのような遊技上の期待感を与えるかに応じて、当業者が任意に設定し得る事項にすぎないと認められる。例えば、上記周知例1では、「遊技者の期待感が確変リーチに比べて低くなりがちな非確変リーチが出現した時点でも期待感を損なわせないようにする」目的で、通常図柄リーチを選択した場合にスーパーリーチの選択比率を高く設定しており、一方、上記周知例2では、「確変大当たりになり易い印象を遊技者に与える」目的で、先の例とは逆に、確変図柄リーチを選択した場合にスーパーリーチの選択比率を高く設定している(周知例1の【0092】段落、周知例2の【要約】を参照)。 引用発明は、リーチパターン毎に用意されたテーブルに基づいて外れリーチ図柄を決定しているから(構成d)、各リーチパターンに応じて「通常図柄リーチ」と「確変図柄リーチ」の選択比率が実質的に設定されるものであるが、上述のとおり、その選択比率の大小関係は、遊技者にどのような遊技上の期待感を与えるかに応じて当業者が任意に設定し得る事項にすぎない。すなわち、引用発明において、遊技者に遊技上の期待感を与えることを目的として、長い表示時間のリーチパターンに用意されたテーブルの外れリーチ図柄として、「通常図柄リーチ」を選択する選択比率を「確変図柄リーチ」を選択する選択比率より大きく設定しておくことは、当業者が任意に為し得た設計的事項にすぎない。 してみると、引用発明の制御手段において、相違点2に係る本願発明の構成の如く「表示時間決定手段で長い表示時間が選択された場合、特定表示を示すリーチ態様の図柄を選択する選択比率が特別表示を示すリーチ態様の図柄を選択する選択比率より大きくなるように設定する」ことは、当業者が容易に為し得たことである。 本願発明の作用効果は、引用発明、及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 本願発明が「可変表示時間の長短を事前に決定してから、特定図柄/特別図柄の選択比率を決定」していることにより「時間の設定次第で遊技特性が互いに異なるように定める設計ができる」という作用効果については、引用発明も、リーチパターンを決定してから外れリーチ図柄を決定しているから、同様の作用効果を有することは明らかである。 一方、本願請求項1に記載された発明は、ハズレリーチの場合で、且つ、表示時間決定手段で長い表示時間が選択された場合に限って、「通常図柄リーチ」と「確変図柄リーチ」の選択比率の大小を特定したものにすぎないから、当該請求項1の発明特定事項だけでは奏し得ない作用効果、例えば、当たりの場合や短い表示時間が選定された場合も含めた全体としての選択比率のバランスにより生じる作用効果や、表示時間と当選確率の高低のバランスにより生じる作用効果は、本願請求項1に係る発明の作用効果とは認められない。 したがって、本願請求項1に係る発明は、引用発明、及び本願出願前の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、第1引用刊行物に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-05 |
結審通知日 | 2007-09-11 |
審決日 | 2007-09-26 |
出願番号 | 特願2001-267958(P2001-267958) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
榎本 吉孝 林 晴男 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 永田 豊 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 遠山 勉 |