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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1167323
審判番号 不服2005-1810  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-03 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2004-132875「柱状パターン付キャリヤ金属箔」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月28日出願公開、特開2004-304196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年1月31日に出願した特願平6-9671号の一部を平成16年4月28日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1?3に係る発明は、平成16年9月17日付け手続補正書の特許請求の範囲1?3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】キャリヤ金属箔と、金属箔と、前記キャリヤ金属箔と前記金属箔との間に配置された前記金属箔とはエッチング条件の異なる金属薄層とを備えた3層金属箔の、前記金属箔をエッチングすることにより柱状パターンを形成し、前記金属薄層の前記柱状パターンを形成した面に、前記柱状パターンの頭頂部を超える絶縁層を形成した後、前記柱状パターンが露出するまで前記絶縁層を研磨して除去してなる柱状パターン付きキャリヤ金属箔」

[2]引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願前に頒布された刊行物である特開平5-299816号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、同じく特開平4-282893号公報(以下、「引用刊行物2」という。)、同じく特開平3-108798号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、夫々下記の事項が記載されている。

[2-1]引用刊行物1:特開平5-299816号公報
[1a]「【請求項1】(1A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、
(1B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、・・・
(1C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、
(1D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する、ことを特徴とする配線板の製造法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
[1b]【課題を解決するための手段】として、【図1】が示されるとともに、「【0006】・・・図1により本発明の一実施例を説明する。キャリヤ金属箔1の片面にキャリヤ金属箔1とエッチング条件が異なる金属薄層2を設ける(図1(a))。キャリヤ金属箔1としては銅箔が一般的である・・・次に、金属薄層2上に金属薄層2とエッチング条件が異なる金属層3を設け3層箔を形成する(図1(b))。この場合、3層箔(金属箔1/金属薄層2/金属層3)の組合せとしては、例えば、銅箔/ニッケル薄層/銅層が挙げられる。なお、3層箔の各層厚さについては、特に限定はされないが、金属薄層2については、キャリヤ金属層1と金属層3に対するエッチング時のバリヤー効果が要求されるため、1?3μm程度の膜厚が必要である。
【0007】次に、3層箔の金属層3面に所定の配線パターン形成用のレジストパターン4とキャリヤ金属箔1面に所定の位置合わせ用パターン形成用のレジストパターン5をそれぞれ形成し(図1(c))、化学エッチングにより所定の配線パターン6及び位置合わせ用パターン7を形成後(図1(d))、レジストパターン4、5を剥離する(図1(e))。・・・
【0008】次に、配線パターン6及び位置合わせ用パターン7が形成されたキャリヤ金属箔1を配線パターン6を内側にして絶縁基材8と重ね合わせて配線パターン6を絶縁基板8内に埋め込む(図1(f))。・・・次に、キャリヤ金属箔1の露出面9を機械的に研磨し、レジスト層を形成後、位置合わせ用パターン7を基準にフォトマスクを使用して所望する領域のレジスト層を感光させ、現像により所定のレジストパターン10を形成した(図1(g))。続いて、化学エッチング法により所望する部分のキャリヤ金属箔及び金属薄層を除去して所定のパターン11を形成した(図1(h))。この場合、キャリヤ金属箔及び金属薄層をエッチング加工してなるパターン11はそのまま表面配線(配線パタ-ン)として利用できる他、例えば、更に多層化が必要な場合は、配線パターン6と上部配線層との接続部としても利用可能である。・・・
【0012】次に、キャリア基板12を除去し(図2(f))、配線パターン15の絶縁保護のためにカバー材17をラミネートし、所望するフレキシブルプリント配線板(図2(g))を得る。こうして得られた配線板は、配線パターン15が絶縁フィルム基材16内に埋め込まれ平滑なパターンになることから、微細パターンへのはんだ接続時のブリッジ不良を発生しにくくすることができ、なおかつローラー圧延された金属箔配線パターンであることから繰り返し屈曲するような用途にも適用可能である。」(段落【0006】?【0008】、【0012】)、
[1c]【実施例】として、「プレス後、キャリヤ銅箔面を機械研磨し、前述のトンボマークを基準点として再び所定のレジストパターンを形成した。レジストパターン形成条件は、前記の条件と同じである。更に、前述のアルカリエッチャントを用いてキャリヤ銅箔の所定の部分をエッチングした後、塩化メチレンでレジストパターンを剥離して所望する表面配線を得た。こうして得られた表面配線と既に形成されていた配線パターンとの位置精度は良好であた。以上は、キャリヤ銅箔を表面配線として使用する例であるが、多層板の層間接続部として使用することも可能である。その場合には、例えばキャリヤー銅箔をピラー状に加工し、更に絶縁樹脂層を設け、ピラー頭頂部を露出させた後、上部配線を形成する方法などが使用できる。」(段落【0022】)が記載されている。

[2-2]引用刊行物2:特開平4-282893号公報
[2a]「【請求項2】絶縁層(60)を挟んで上下部に配設された上層導体配線(66)と下層導体配線(52a)とが、バイヤ(55)により層間接続された薄膜多層基板の製造方法において、基板母材(51)上に前記下層導体配線(52a)を形成する下層導体配線形成工程(21)と、前記下層導体配線(52a)上に前記絶縁層(60)を形成する前に、前記バイヤ(55)を前記下層導体配線(52a)上に形成するバイヤ形成工程(22)と、前記絶縁層(60)を、前記下層導体配線(52a)及び前記バイヤ(55)の形状の影響を受けることなく平坦とされる第1の表面(60a)を形成し得る厚さ寸法で、前記基板母材(51)上に形成する絶縁層形成工程(23)と、前記絶縁層(60)を、該第1の表面(60a)から前記バイヤ(55)の先端部が露出するまで均一にエッチングし、前記バイヤ(55)の先端部か露出する高さにおいて、平坦とされる前記絶縁層の第2の表面(60b)を形成する絶縁層エッチング工程(24)と、該第2の表面(60b)に、前記バイヤ(55)と接触させて前記上層導体配線(66)を形成する上層導体配線形成工程(25)とを有することを特徴とする薄膜多層基板の製造方法。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)、
[2b]【実施例】として、「【0037】次にドライエッチング工程39を行う。これは、RIE(Reactive Ion Etching=反応性イオンエッチング)装置にて、酸素ガス(O2)又は、(O2+CF4)ガスを使い、有機材である上記絶縁層60をエッチングする。この時、図4(D)に示すように絶縁層60の平坦な表面60aに反応性イオン58の照射方向が正対するように基板を装置内に設置して行う。このようにすると、エッチングによる絶縁層60の侵食が当初の表面60aから均一に進み、絶縁層60がエッチングされて形成される新たな表面は、当初の表面60aと平行であり、且つ平坦な面が常に維持される。
【0038】そして図4(D)に実線で示すように、エッチングされてできた新たな表面60bから、バイヤ55の先端部に設けられた金属膜56が露出した時点でこのドライエッチング工程39が完了する。このドライエッチング時において、バイヤ55は金属膜56に保護されて侵食が防止される。
【0039】ここで、絶縁層60は母材51上に均一に塗布されているため、当初の表面60aは母材51の上面51aと平行である。従って、上記の如くドライエッチング工程39によりエッチングされた絶縁層60の新たな表面60bは、母材51の上面51aと平行、且つ平坦な面となり、しかもバイヤ55の一部を露出した構成となっている。」(段落【0037】?【0039】)が記載されている。

[2-3]引用刊行物3:特開平3-108798号公報
[3a]「2)(a)セラミック基板の主面上にポリイミド樹脂の絶縁層を形成し、
(b)該絶縁層上に第1層の配線層を形成し、
(c)該第1層の配線層上にパターンメッキで導体柱を形成し、
(d)前記第1層の配線層および前記導体柱を覆って、前記絶縁層上に再度ポリイミド樹脂の絶縁層を形成し、
(e)該絶縁層の表面を研磨して前記導体柱の頭頂面を露出させ、
(f)研磨された前記絶縁層上に、前記導体柱の頭頂面を露出させた状態でポリイミド樹脂膜を形成し、
(g)該ポリイミド樹脂膜上に、前記導体柱と電気的に接続された第2層の配線層を形成し、
(h)以後、前記導体柱を形成する工程以降を繰り返して多層配線を形成する多層配線基板の製造方法。」(特許請求の範囲第2項)、
が記載されている。

[3]当審の判断
[3-1]引用刊行物1に記載された発明
摘記[1a]によれば、引用刊行物には、
(1A)第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に第一の金属とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を形成し、
(1B)第二の金属による薄層の面に第二の金属とエッチング条件が異なる第三の金属による所定の配線パターンを形成し、
(1C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔を配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ配線パターンを絶縁基材内に埋め込み、
(1D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する配線板の製造法が記載されている。
また、この製造法によって製造された配線板の全体、のみならず部分構造も記載されているといえる。このことは、本願発明が、多層配線板の製造法の発明を記載した原出願の明細書及び図面から、その部分構造としての本願発明を分割出願したことと軌を一にしている。
そして、摘記[1b]によれば、上記「(1C)所定の配線パターンが形成されたキャリヤ金属箔」には、「キャリヤ金属箔1の片面にキャリヤ金属箔1とエッチング条件が異なる金属薄層2を設け・・・次に、金属薄層2上に金属薄層2とエッチング条件が異なる金属層3を設け3層箔を形成する(図1(b))・・・次に、3層箔の金属層3面に所定の配線パターン形成用のレジストパターン4・・・を・・・形成し(図1(c))、化学エッチングにより所定の配線パターン6・・・を形成後(図1(d))、レジストパターン4・・を剥離」した3層箔が含まれている。
また同じく、摘記[1b]によれば、上記「(1D)第一の金属によるキャリヤ金属箔及び第二の金属による薄層の所望の部分をエッチング除去する」とは、「化学エッチング法により所望する部分のキャリヤ金属箔及び金属薄層を除去して所定のパターン11を形成」することを意味しており、該「パターン11」には、「更に多層化が必要な場合は、配線パターン6と上部配線層との接続部としても利用可能」(摘記[1b]段落【0008】)なものが含まれ、更に摘記[1c]に、「多層板の層間接続部として使用することも可能である。その場合には、例えばキャリヤー銅箔をピラー状に加工し」(摘記[1c]段落【0022】)と記載されているので、「ピラー状」のパターン、即ち層間接続用ピラー状パターンも含まれることが明らかである。
そして、上記3層箔のキャリヤ金属箔及び薄層の所望の部分を化学エッチングにより層間接続用ピラー状パターンとし、且つ上記3層箔の金属層を化学エッチングにより所定の配線パターンとし、該配線パターン面を絶縁基材と重ね合わせ、該配線パターンを絶縁基材内に埋め込んだものは、上記「配線板の製造法」によって製造された配線板に該当するので、該絶縁基材内に埋め込まれ、上記層間接続用ピラー状パターンを担持した配線パターンは、該配線板の部分構造であるといえる。

これらの事項を総合すると、引用刊行物1には、
「第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に該キャリヤ金属箔とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を設け、該薄層上に該薄層とエッチング条件が異なる第三の金属による金属層を設けた3層箔の、該金属層面に所定の配線パターン形成用のレジストパターンを形成し、化学エッチングにより所定の配線パターンを形成後、該レジストパターンを剥離した3層箔を、該配線パターン面が内側になるようにして絶縁基材と重ね合わせ、該配線パターンを該絶縁基材内に埋め込み、上記キャリヤ金属箔及び上記薄層の所望の部分をエッチング除去して該配線パターンと上部配線層との層間接続用ピラー状パターンを形成することにより、上記絶縁基材内に埋め込まれ、上記層間接続用ピラー状パターンを担持した配線パターン」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[3-2]対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「第一の金属によるキャリヤ金属箔の片面に該キャリヤ金属箔とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を設け、該薄層上に該薄層とエッチング条件が異なる第三の金属による金属層を設けた3層箔」における「第一の金属によるキャリヤ金属箔」は、その所望の部分をエッチング除去して、上記層間接続用パターンを形成する「3層箔」の一部分であるから、本願発明1における、エッチングすることによりパターンを形成する「金属箔」に相当する。
また、上記「第二の金属による薄層」は、「キャリヤ金属箔の片面に該キャリヤ金属箔とエッチング条件が異なる第二の金属による薄層を設け、該薄層上に該薄層とエッチング条件が異なる第三の金属による金属層を設け」ているのであるから、本願発明1における「前記キャリヤ金属箔と前記金属箔との間に配置された前記金属箔とはエッチング条件の異なる金属薄層」に相当する。
また、引用発明の「金属層面に所定の配線パターン形成用のレジストパターンを形成し、化学エッチングにより所定の配線パターンを形成・・」における「配線パターン」は、上記層間接続用パターンを担持する「3層箔」の一部分である。そして、引用刊行物1の段落【0008】に、化学エッチングにより位置合わせ用パターンを形成したものが「キャリヤ金属箔」と表記され、また同段落【0012】に、「配線パターン15」が「金属箔配線パターン」と表記されているように(摘記[1b]参照)、金属箔の一部分を取り除き、配線パターンの形状としたものも、金属箔であることに変わりはないのであるから、上記「配線パターン」は、本願発明1における「パターン付きキャリヤ金属箔」に相当するものといえる。
このことは、本願明細書に「金属箔」を定義する特段の記載がなく、該「金属箔」がエッチングによって特定の形状としたものを含まないとする合理的な理由がないことからもいえることである。
なお、上記「配線パターン」は、絶縁基材内に埋め込まれたものであるが、本願発明1における「パターン付きキャリヤ金属箔」も、本願明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載され、又は図示されているのは、絶縁基材内に埋め込まれたもののみであり、この絶縁基材内に埋め込まれた態様を含むことは明らかであるから、引用発明における「配線パターン」とは相違しない。
更に、引用発明の「エッチング除去して該配線パターンと上部配線層との層間接続用ピラー状パターンを形成する」における「ピラー状パターン」は層間接続するものであって、その形状からしても、次に示すとおり周知である層間接続するための「柱状パターン」に相当することも自明である。

(「柱状パターン」について)
配線板において、層間接続を行う部材を柱状にすることはスルーホール導体、並びにめっき法による柱状パターン(必要ならば、特開昭63-244793号公報:特許請求の範囲1「・・(B)電気めっき法により該レジストホール部に柱状パターンを形成する・・」、特開昭58-184794号公報:「・・第2層回路との接続を行うために第1層回路12に部分的に銅メッキを施し、これによつて導電性の柱13を形成する。」(2頁左下欄末行?右下欄3行)参照)にみられるように通常行われていることであって、また特に上下配線層間の接続部をエッチングにより柱状に形成することは、次の周知例1、2にも記載されているように、本願の原出願前周知の事項であると認められる。

周知例1:特開平5-152764号公報
(周1a)「(1C)層間接続予定部にキャリヤ金属箔による層間接続用柱が残るようにキャリヤ金属箔をエッチングし、」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
(周1b)「【実施例】実施例1・・・層間接続予定部分を円形パターンとして残るように露光・現像し、続いてアンモニウムアルカリ系のエッチング液にて銅箔のみをエッチング除去した。これによって、基板上は層間接続用の60μm径、18μm高円柱を除くと平坦化した。」(段落【0014】)と記載されており、
(周1c)【図1】には、層間接続用柱14が図示されている。

周知例2:特開平5-291744号公報
(周2a)「(2B)多層金属層の上層の金属層を、後の工程で層間接続用金属柱となる部分を残してそれ以外の部分を、下層の金属層とのエッチング条件の違いを利用して除去し、」(【特許請求の範囲】【請求項2】)、
(周2b)「層間接続用金属柱上にもエポキシ樹脂層が薄く形成されたが、これは表面研磨で除去でき、表面が平坦で、層間接続部分のみに金属柱の頭部が現れた状態が形成できた(図2(e))。」(段落【0014】)、
(周2c)【図2】には、層間接続用金属柱25が図示されている。

そうすると、両者は、「キャリヤ金属箔と、金属箔と、前記キャリヤ金属箔と前記金属箔との間に配置された前記金属箔とはエッチング条件の異なる金属薄層とを備えた3層金属箔の、前記金属箔をエッチングすることにより柱状パターンを形成した柱状パターン付きキャリヤ金属箔」の点で一致し、次の点で相違する。

(イ)本願発明1では、金属薄層の柱状パターンを形成した面に、該柱状パターンの頭頂部を超える絶縁層を形成した後、該柱状パターンが露出するまで該絶縁層を研磨して除去するのに対し、引用発明では、そのように記載されていない点。

[3-3]相違点の検討
上記相違点(イ)について検討する。
層間接続用の柱状パターンを形成した面に、該柱状パターンの頭頂部を超える絶縁層を形成した後、該柱状パターンが露出するまで該絶縁層を研磨して除去することは、引用刊行物2に「前記絶縁層(60)を、前記下層導体配線(52a)及び前記バイヤ(55)の形状の影響を受けることなく平坦とされる第1の表面(60a)を形成し得る厚さ寸法で、前記基板母材(51)上に形成する絶縁層形成工程(23)と、前記絶縁層(60)を、該第1の表面(60a)から前記バイヤ(55)の先端部が露出するまで均一にエッチングし」(摘記[2a]参照)と、引用刊行物3に「(d)前記第1層の配線層および前記導体柱を覆って、前記絶縁層上に再度ポリイミド樹脂の絶縁層を形成し、(e)該絶縁層の表面を研磨して前記導体柱の頭頂面を露出させ」(摘記[3a]参照)と夫々記載されている他、前掲の周知例2にも、「層間接続用金属柱上にもエポキシ樹脂層が薄く形成されたが、これは表面研磨で除去でき、表面が平坦で、層間接続部分のみに金属柱の頭部が現れた状態が形成できた」(摘記(周2b)参照)と記載されているように、本願の原出願前周知の事項であると認められる。
してみると、引用発明における配線パターンを多層化するべく、該配線パターンの上部配線層との層間接続用ピラー状パターンを形成した面に、該ピラー状パターンの頭頂部を超える絶縁層を形成した後、該ピラー状パターンが露出するまで該絶縁層を研磨して除去することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、上記相違点(イ)に係る本願発明1の特定事項によってもたらされる効果も、引用刊行物1?3の記載、及び上記周知の事項から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物1?3に記載された発明、及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-06 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願2004-132875(P2004-132875)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 正山 旭
市川 裕司
発明の名称 柱状パターン付キャリヤ金属箔  
代理人 三好 秀和  

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