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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1167327
審判番号 不服2005-3107  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-23 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2002-138474「キャスター付きテーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月18日出願公開、特開2003-325234〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は平成14年5月14日の出願であって、平成17年1月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、本願の出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】移動用のキャスターが設けられているキャスター付きテーブルにおいて、
複数本の長さ調節機能付き脚が設けられ、該長さ調節機能付き脚は共通の駆動機構の駆動により下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能となっており、前記長さ調節機構付き脚の伸縮長にあっては、下部から突出する長さ調節機能付き脚の下端が、少なくとも前記キャスターが床面に当接する長さから該床面から離れる長さまでの範囲で調節可能となっていることを特徴とするキャスター付きテーブル。
【請求項2】(記載を省略する。)
【請求項3】(記載を省略する。)」
(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)


【2】引用刊行物とそれに記載された事項
〔1〕原査定における平成16年2月12日付けの拒絶理由通知書で引用文献1として引用し、本願出願前に国内において頒布された刊行物である実願昭50-89307号(実開昭52-4003号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「タイプライター用机」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「上部にタイプライター(2)を載置してタイプするタイプライター用の机の全べての支脚(3)(3)の下端に滑車(4)(4)…をそれぞれ取付けるとともに該滑車(4)(4)を包囲する筒体(5)(5)を上下摺動自在に嵌合し、該筒体(5)(5)の上部側面には軸棒(9)を側方に向つて突出させ、該軸棒(9)が嵌入する偏心溝(8)を有する回動体(7)をその近辺の支脚(3)(3)に軸止し、軸棒(9)には止着用の蝶ネジ(12)を螺合してなるタイプライター用机。」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「・・・筒体(5)は上下摺動自在で、下動したときは、滑車(4)の下面より更に下降し、上動したときは、滑車(4)の下面より僅かに上昇するようにする。(9)は、筒体(5)の上部の側面に、側方に向つて突出させた軸棒で、先部には螺溝が刻設され、蝶ナツト(12)が螺合される。(7)は回動板で、半月状を呈し、回動板(7)の偏心部は軸(6)により支脚(3)(3)の側面に軸着される。(8)は前記軸(6)に対して偏心している偏心溝で、該偏心溝(8)に前記軸棒(9)を挿入して蝶ナツト(12)により締付ける。(10)は下端が回動板(7)に接続したアームで、相対向するアーム(10)(10)の端部は把杆(11)により連結する。
本考案は以上の構成であるから、蝶ナツト(12)をゆるめ、把杆(11)を持つてこれを動かすとアーム(10)を介して回動板(7)を回動させ、回動板(7)は軸(6)を中心として回動し、溝(8)は軸(6)に対して偏心した溝であるため、これを嵌合している軸棒(9)を下方に押圧し、もつて、軸棒(9)を取付けた筒体(5)を第3図仮線のように下降させる。この状態で蝶ナツト(12)を締付けて、回動板(7)の回動を停止させれば、タイプライター机は筒体(5)の作用で床面に安定する。この場合、把杆(11)の回動を相当に大きくさせると、筒体(5)は大きく下降し、そのためタイプライター机は大きく上動し、使用者の座高に合わせて使用し易い状態とすることが出来る。
他方、蝶ナツト(12)をゆるめ、筒体(5)を上動させるように把杆(11)を回動させると、第2図に示したように筒体(5)は滑車(4)の下端より上方位置となるのでタイプライター机は自由に横動する状態となり、そのため、タイプライター机をタイプライター(2)を載せたまま目的の位置まで転動させることが出来る。」(明細書3頁2行?5頁5行)
これら(1)(2)の記載を含む刊行物1全体の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「全ての支脚(3)の下端に滑車(4)をそれぞれ取付けるとともにこれら支脚(3)に滑車(4)を包囲する筒体(5)を上下摺動自在に嵌合してなる脚が設けられたタイプライター用机において、
筒体(5)の上部側面に側方に向って突出させた軸棒(9)と、支脚(3)の側面にその偏心部を軸(6)により軸着し且つ軸(6)に対して偏心し軸棒(9)が嵌入する偏心溝(8)を有した回動板(7)と、回動板(7)にその下端を接続したアーム(10)と、相対向するアーム(10)の端部どうしを連結した把杆(11)とを備え、把杆(11)を持って筒体(5)を下動させるようにこれを回動させると、アーム(10)を介して回動板(7)が軸(6)を中心に回動して回動板(7)の偏心溝(8)に嵌入する軸棒(9)を下方に押圧して軸棒(9)を取付けた筒体(5)を下降させ、この状態で蝶ナツト(12)を締付けて回動板(7)の回動を停止させることでタイプライター机を筒体(5)の作用で床面に安定して設置できる状態にすることができ、この場合、把杆(11)の回動を大きくして筒体(5)を大きく下降させることでタイプライター机を大きく上動させて使用者の座高に合わせて使用し易い状態にすることができ、一方、蝶ナツト(12)をゆるめ把杆(11)を持って筒体(5)を上動させるようにこれを回動させると、筒体(5)の下端が滑車(4)の下端より上方位置となってタイプライター机をタイプライター(2)を載せたまま目的の位置まで自由に転動させることができる状態にすることができるようにした、タイプライター用机。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)


〔2〕同じく、平成16年2月12日付けの拒絶理由通知書で引用文献2として引用し、本願出願前に国内において頒布された刊行物である特開2001-231631号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「高さ調節機能付きテーブル」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)「【請求項1】天板の下面に複数本の高さ調節機能付き脚が固定され、前記各高さ調節機能付き脚は共通の駆動機構の駆動により同時に同じ長さだけ伸縮されるようになっていることを特徴とする高さ調節機能付きテーブル。・・・」(【特許請求の範囲】)
(2)「【発明の属する技術分野】本発明は、高さの変更が行える高さ調節機能付きテーブルに関するものである。」(段落【0001】)
(3)「本発明の目的は、天板の高さを簡単に上下させることができる高さ調節機能付きテーブルを提供することにある。本発明の他の目的は、脚の長さの調整が容易に行える高さ調節機能付きテーブルを提供することにある。本発明の他の目的は、各脚の長さを同時に同じ長さだけ伸縮可変できる高さ調節機能付きテーブルを提供することにある。・・・」(段落【0004】)
(4)「本例の高さ調節機能付きテーブルは、図1、図2に示すように、長方形の天板1を支持する枠体2の四隅にそれぞれ高さ調節機能付き脚3が固定されている。これら高さ調節機能付き脚3は、共通の駆動機構4の駆動により長さが同じ寸法だけ伸縮されるようになっている。」(段落【0014】)
これら(1)?(4)の記載を含む刊行物2全体の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「長方形の天板1を支持する枠体2の四隅にそれぞれ高さ調節機能付き脚3が設けられ、該高さ調節機能付き脚3は共通の駆動機構4の駆動により同時に同じ長さだけ伸縮可能となっている、高さ調節機能付きテーブル。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)


【3】対比・判断
〔1〕本願発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「全ての支脚(3)の下端に滑車(4)をそれぞれ取付けるとともにこれら支脚(3)に滑車(4)を包囲する筒体(5)を上下摺動自在に嵌合してなる脚が設けられたタイプライター用机」が、本願発明の「移動用のキャスターが設けられているキャスター付きテーブル」或いは「キャスター付きテーブル」に相当し、
また、刊行物1記載の発明の「全ての支脚(3)の下端に滑車(4)をそれぞれ取付けるとともにこれら支脚(3)に滑車(4)を包囲する筒体(5)を上下摺動自在に嵌合してなる脚」が、軸棒(9)と回動板(7)とアーム(10)と把杆(11)とからなる機構を用いて、筒体(5)を下降或いは上動させることができ、筒体(5)を下降させた場合には、タイプライター机を床面に安定して設置できる状態にしたりタイプライター机を大きく上動させて使用者の座高に合わせて使用し易い状態にすることができ、筒体(5)を上動させた場合には、タイプライター机をタイプライター(2)を載せたまま目的の位置まで自由に転動させることができる状態にすることができるようにしたものであるので、本願発明の「複数本の長さ調節機能付き脚」に相当し、したがって、刊行物1記載の発明の上記軸棒(9)と回動板(7)とアーム(10)と把杆(11)とからなる機構が、本願発明の「長さ調節機能付き脚」を伸縮駆動する「駆動機構」に相当し、
さらに、刊行物1記載の発明の「把杆(11)を持って筒体(5)を下動させるようにこれを回動させると、アーム(10)を介して回動板(7)が軸(6)を中心に回動して回動板(7)の偏心溝(8)に嵌入する軸棒(9)を下方に押圧して軸棒(9)を取付けた筒体(5)を下降させ、この状態で蝶ナツト(12)を締付けて回動板(7)の回動を停止させることでタイプライター机を筒体(5)の作用で床面に安定して設置できる状態にすることができ、この場合、把杆(11)の回動を大きくして筒体(5)を大きく下降させることでタイプライター机を大きく上動させて使用者の座高に合わせて使用し易い状態にすることができ、一方、蝶ナツト(12)をゆるめ把杆(11)を持って筒体(5)を上動させるようにこれを回動させると、筒体(5)の下端が滑車(4)の下端より上方位置となってタイプライター机をタイプライター(2)を載せたまま目的の位置まで自由に転動させることができる状態にすることができるようにした」が、上記各筒体(5)の上記各状態毎に支脚(3)から床方向への伸縮長を同じ長さにすることは明らかであるので、本願発明の「該長さ調節機能付き脚は駆動機構の駆動により下部から床方向に同じ長さだけ伸縮可能となっており、前記長さ調節機能付き脚の伸縮長にあっては、下部から突出する長さ調節機能付き脚の下端が、少なくとも前記キャスターが床面に当接する長さから該床面から離れる長さまでの範囲で調節可能となっている」に相当するから、両者は、
「移動用のキャスターが設けられているキャスター付きテーブルにおいて、
複数本の長さ調節機能付き脚が設けられ、該長さ調節機能付き脚は駆動機構の駆動により下部から床方向に同じ長さだけ伸縮可能となっており、前記長さ調節機能付き脚の伸縮長にあっては、下部から突出する長さ調節機能付き脚の下端が、少なくとも前記キャスターが床面に当接する長さから該床面から離れる長さまでの範囲で調節可能となっているキャスター付きテーブル。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
駆動機構について、本願発明が、「(複数本の)長さ調節機能付き脚は共通の駆動機構の駆動により下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能となって」いるのに対して、刊行物1記載の発明は、駆動機構が、「相対向するアーム(10)の端部どうしを連結した把杆(11)」により、複数本の長さ調節機能付き脚のうちの少なくとも2本毎を下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能にしているものの、複数本の長さ調節機能付き脚全体で共通のものではなく、したがって、複数本の長さ調節機能付き脚全体を下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能となっているものではない点。


〔2〕相違点についての検討
上記相違点について検討するために刊行物2をみると、刊行物2記載の発明は、上記【2】〔2〕で摘示したとおりのものと認められ、ここにおいて、刊行物2記載の発明の「長方形の天板1を支持する枠体2の四隅にそれぞれ」設けられた「高さ調節機能付き脚3」,「共通の駆動機構4」,「高さ調節機能付きテーブル」が、本願発明の「複数本の長さ調節機能付き脚」,「共通の駆動機構」,「テーブル」にそれぞれ相当し、また、「高さ調節機能付き脚3」の伸縮が「下部から床方向」に行われるものであることは明らかであるから、刊行物2記載の発明には、共通の駆動機構の駆動により複数本の長さ調節機能付き脚を下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能にするとの技術が開示されていると云うことができる。
ところで、刊行物2記載の発明は、キャスター付きテーブルに係るものではなく、したがって、長さ調節機能付き脚の伸縮がキャスターの床面への当接或いは床面からの離反に係るものではないものであり、この点において、審判請求人の「引用文献1に記載の滑車を床面に当接しあるいは離反させるために、引用文献2に開示された技術を適用することは困難です。」(審判請求書3頁20?21行)との主張や、「したがって、引用文献2に開示された技術を引用文献1に適用することにより、本願請求項1の発明に想到できるものではありません。」(審判請求書3頁27?28行)との主張は、一部首肯しうる(即ち、刊行物1記載の発明の長さ調節機能付き脚の脚自体の構成に刊行物2記載の発明の長さ調節機能付き脚の具体的構成を採用するのであれば、これにより直ちに、本願発明の構成を想到することは困難なものと思料される)ところではある。
しかしながら、本願発明においては、伸縮機構の点や下部にキャスターが設けられているか否かの点を含めた長さ調節機能付き脚の構成、及び、複数本の長さ調節機能付き脚を同時に同じ長さだけ伸縮可能とするための共通の駆動機構の構成については特に具体化されていないところ、刊行物1記載の発明には、複数本の長さ調節機能付き脚の伸縮とキャスターの床面への当接・離反との関連が開示されていることから、これにより、結果として、本願発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は上記のとおりのものとなったのであり、したがって、両者の相違点は、複数本の長さ調節機能付き脚を共通の駆動機構により伸縮させるか否かの点のみであり、当該相違点の検討に際しては、刊行物2記載の発明の長さ調節機能付き脚の具体的構成を考慮することを必要としない。
してみれば、刊行物2記載の発明には、上記相違点に係る本願発明の構成と一致する技術、即ち、共通の駆動機構の駆動により複数本の長さ調節機能付き脚を下部から床方向に同時に同じ長さだけ伸縮可能にするとの技術が開示されているのであるから、刊行物1記載の発明の長さ調節機能付き脚の駆動機構の構成に刊行物2記載の発明に開示された上記のような駆動機構の技術を採用して(この場合、例えば、刊行物1記載の発明の駆動機構における「相対向するアーム(10)の端部どうしを連結した把杆(11)」どうしを適宜連携するなどの工夫を施すようにして)、本願発明における上記相違点に係る構成を想到することは、当業者にとり格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたものと云わざるをえない。
(尚、キャスター付きテーブルの技術分野において、キャスターの床面への当接・離反を共通の駆動機構により同時に行うことができるようにすることは、例えば、実願昭60-169101号(実開昭62-76003号)のマイクロフィルム,実願昭60-115813号(実開昭62-24751号)のマイクロフィルム,特開平10-215953号公報に示すように周知慣用の技術であるから、本願発明における上記相違点に係る構成は、刊行物2記載の発明に開示された駆動機構の技術、及び、上記のような周知慣用の技術を考慮することによっても、当業者が容易に想到しえたものであると云うことができる。)


〔3〕作用効果・判断
そして、本願発明によって奏する効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明の技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別なものがあるとは認められない。


【4】むすび
以上のとおりであり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明の技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-20 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願2002-138474(P2002-138474)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 キャスター付きテーブル  
代理人 大塚 明博  

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