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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1168039 |
審判番号 | 不服2006-22672 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-05 |
確定日 | 2007-11-15 |
事件の表示 | 特願2002-264073「電力用半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年4月2日出願公開、特開2004-103846〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成14年9月10日の出願であって、平成18年2月14日付で拒絶理由通知がなされ、同年4月21日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成18年2月14日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、同年9月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月6日付で手続補正書が提出されたものである。 [2]平成18年11月6日付手続補正についての補正却下の決定 <補正却下の決定の結論> 平成18年11月6日付手続補正を却下する。 <理由> [2-1]補正の内容 平成18年11月6日付手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。 「【請求項1】ベース板と、該ベース板の主面に搭載された絶縁基板と、該絶縁基板上の回路パターンに搭載された電力用半導体チップと、前記絶縁基板及び前記電力用半導体チップを囲繞するとともに前記ベース板の前記主面と対向する開口端縁が接着材を介して前記主面に接着された樹脂製のケースと、前記絶縁基板及び前記電力用半導体チップを被うようにして前記ケース内に充填されたゲル状材料と、前記ベース板及び前記ケースと協働して前記ゲル状材料を密封する手段とを備えた電力用半導体装置において、 前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とが設けられていて、前記ベース板側対向面に、上記ケース側対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間に間隙を形成する凸部が形成され、前記ケース側対向面と前記ベース板側対向面との間に前記接着材が収容されていることを特徴とする電力用半導体装置。」 [2-2]補正の目的 上記補正後の請求項1は、補正前の請求項1の「前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とのうちの一方の対向面に、他方の対向面に当接して・・・凸部が形成され」において、上記「ケース側対向面」、「ベース板側対向面」のうちのどちらかに選択し得るように記載されていた「凸部が形成され」る「一方の対向面」を「ベース板側対向面」のみとし、「前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とが設けられていて、前記ベース板側対向面に、上記ケース側対向面に当接して・・・凸部が形成され、」と限定するものである。 したがって、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 [2-3]独立特許要件 次いで、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 (1)補正後の本願発明 上記補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成18年11月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記[2-1]の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。 (2)引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された下記の刊行物(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。 引用刊行物:特開昭64-17455号公報 (a)「半導体素子を内蔵し放熱板上に接着され封止用樹脂が注入される外囲ケースを備え、前記放熱板および外囲ケースにおけるそれぞれの接着面に互いに異なる断面形状をもつて形成された凹溝とこの凹溝内に臨み支承される突条とを接着面に沿つて一連に設け、この放熱板と外囲ケースは突条によつて離間されていることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)、 (b)〔従来の技術〕として、第5図?第8図が示されるとともに、「第5図はトランジスタモジュールをその一部を破断して示す斜視図、第6図は一部を拡大して示す断面図である。これらの図において、1は外部放熱器(図示せず)に取付けられ、後述する半導体素子が発する熱を外部放熱器(図示せず)へ放熱するための放熱板で、銅等の熱良導性材料によつて形成されている。2は絶縁基板で、この絶縁基板2はセラミツク等によつて形成され、前記放熱板1上に半田等のろう材によつて固着されている。またこの絶縁基板2上には後述する半導体素子を固着し、リードを接続するための金属パッド(図示せず)が設けられた支持板3が固着されている。4は半導体素子、5はそのリードで、これらは前記支持板3の金属パッド(図示せず)に半田付けされている。・・・6は前記半導体素子4、リード5、支持板3および絶縁基板2を囲む枠部6aと、前記放熱板1に対接する接着部6bとからなる外囲ケースで、この外囲ケース6はPBT等の合成樹脂によつて形成され、前記放熱板1上に接着剤7によつて接着されている。・・・9および10は封止樹脂としての緩衝材とエポキシ樹脂で、この緩衝材9はシリコンゲルからなり、前記半導体素子4およびリード5を覆うように前記外囲ケース6の枠部6a内に充填され、さらにエポキシ樹脂10によつて覆われている。」(第1頁左下欄末行?第2頁左上欄14行)、 (c)〔発明が解決しようとする問題点〕として、第9図?第11図が示されるとともに、「しかるに、このように構成された半導体装置においては、放熱板1と外囲ケース6を接着する際に接着剤7の塗布量が均一になるように塗布することは困難で、部分的に過不足が生じる場合が多く、接着剤7が多く塗布された場合には・・・余分な接着剤7は押し出され・・・放熱板1の側面に沿つて垂れることになる。・・・垂れた接着剤7は拭き取らなければならず、この拭き取り作業に時間がかかつていた。・・・接着剤7が少ないと・・・外囲ケース6と放熱板1とが確実に接着されず、封止樹脂が漏れるという問題があつた。」(第2頁左下欄)、 (d)〔作用〕として、「突条が凹溝内に臨み支承されることにより、放熱板と外囲ケースは離間された状態で接着される。」(第2頁右下欄9?10行)、 (e)〔実施例〕として、第1図?第4図が示されるとともに、「符号21は放熱板1に形成された凹溝、22は外囲ケース6に形成された突条である。・・・この突条22の突出寸法は、その局面22aと凹溝21の傾斜面21aとが当接することによつて放熱板1の上面と外囲ケース6の下面との間に間隙が生じる寸法に形成されている。 すなわち、・・・凹溝21あるいは突条22に接着剤7を塗布し、放熱板1に外囲ケース6を被冠させると、凹溝21の傾斜面21aに突条22の周面22aが当接し、この突条22によつて外囲ケース6は放熱板1に支承された状態で接着されることになる。 したがって、接着剤7が多く塗布された場合には、放熱板1の上面と外囲ケース6の下面との間に生じた間隙に接着剤7が漏れ出て留まり、接着剤7の塗布量が少ない場合でも凹溝21の内側で接着剤7が突条22に作用する。・・・ また、本発明に係る半導体装置においては、放熱板1側に突条22を、外囲ケース6側に凹溝21を設けてもよいことはいうまでもない。」(第2頁右下欄19行?第3頁右上欄17行)が記載されている。 (f)第1図?第5図には、放熱板1主面と対向する外囲ケース6の開口端縁が接着剤7を介して該主面に接着され、該主面と対向し該開口端縁の一部をなす外囲ケース6側の接着面と、該外囲ケース6側の接着面と対向し該主面の一部をなす放熱板1側の接着面間が突条によって離間され、その離間間隙に接着剤が収容されている点が図示されている。 (3)対比・判断 摘記(a)(e)によれば、引用刊行物には、「半導体素子を内蔵し放熱板上に接着され封止用樹脂が注入される外囲ケースを備え、前記放熱板および外囲ケースにおけるそれぞれの接着面に互いに異なる断面形状をもつて形成された凹溝とこの凹溝内に臨み支承される突条とを接着面に沿つて一連に設け、この放熱板と外囲ケースは突条によつて離間されている半導体装置」が記載されており、突条の突出寸法は、凹溝に当接して放熱板の上面と外囲ケースの下面間に間隙が生じる寸法に形成され、特に摘記(e)に「放熱板1側に突条22を、外囲ケース6側に凹溝21を設けてもよいことはいうまでもない。」と記載されているから、放熱板側に突条を、外囲ケース側に凹溝を設ける態様を含むものといえる。 また、摘記(b)(c)(d)によれば、従来のトランジスタモジュール等の半導体装置では、銅等の熱良導性材料によつて形成された放熱板上に絶縁基板が固着され、該絶縁基板上に半導体素子、リードを接続するための金属パッドが設けられた支持板が固着され、合成樹脂によつて形成された外囲ケースが接着剤によつて前記放熱板上に接着され、該外囲ケースの枠部内には前記半導体素子およびリードを覆うようにシリコンゲルからなる緩衝材が充填され、さらにエポキシ樹脂で覆って封止されているが、このような半導体装置においては、放熱板と外囲ケースを接着する接着剤を均一に塗布することは困難で、部分的に過不足が生じ、接着剤が多く塗布された場合には余分な接着剤は押し出され、放熱板1の側面に沿つて垂れることになり、また、接着剤が少ない場合には外囲ケースと放熱板とが確実に接着されず、封止樹脂が漏れるという問題があったので、外囲ケースと放熱板の接着面において、上記突条を上記凹溝内に臨ませて支承させ、該突条によって放熱板と外囲ケースを離間した状態で接着するようにしたものであることが明らかである。 そして、これらの事項、及び摘記(a)?(f)を総合すると、引用刊行物には、「銅等の熱良導性材料によって形成された放熱板上に絶縁基板が固着され、該絶縁基板上に半導体素子、リードを接続するための金属パッドが設けられた支持板が固着され、合成樹脂によって形成された外囲ケースの開口端縁が接着剤によって前記放熱板主面に接着され、該外囲ケースの枠部内には前記半導体素子及びリードを覆うようにシリコンゲルからなる緩衝材が充填され、さらにエポキシ樹脂で覆って封止されているトランジスタモジュール等の半導体装置において、放熱板主面側の接着面と対向する、外囲ケースの開口端縁の一部をなす接着面に凹溝を、また、該外囲ケース側の接着面と対向する、放熱板主面の一部をなす接着面に、該凹溝内に臨み支承される突条を、それぞれの接着面に沿つて一連に設け、該突条の突出寸法は、該凹溝に当接して放熱板主面側の接着面と外囲ケース側の接着面間に間隙が生じる寸法に形成され、放熱板と外囲ケースの接着面は該突条によつて離間され、その離間間隙に接着剤が収容されているトランジスタモジュール等の半導体装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「銅等の熱良導性材料によつて形成された放熱板」は、本願補正発明における「ベース板」に相当し、引用発明における「放熱板上に絶縁基板が固着され、該絶縁基板上に半導体素子、リードを接続するための金属パッドが設けられた支持板が固着され」の「半導体素子」は、該絶縁基板上の金属パッドに接続されて該絶縁基板上に設けられており、該金属パッドは該絶縁基板上の回路パターンの少なくとも一部といえるから、放熱板の主面に搭載された絶縁基板上の回路パターンに搭載された半導体チップに他ならない。 また、引用発明における「合成樹脂によつて形成された外囲ケースの開口端縁が接着剤によつて前記放熱板主面に接着され、該外囲ケースの枠部内には前記半導体素子およびリードを覆うようにシリコンゲルからなる緩衝材が充填され、さらにエポキシ樹脂で覆って封止されている」の「外囲ケース」は、絶縁基板及び半導体素子を囲繞するとともに放熱板の主面と対向する開口端縁が接着材を介して前記主面に接着された樹脂製のケースに他ならず、同じく「シリコンゲルからなる緩衝材」は、本願補正発明における「ケース内に充填されたゲル状材料」に相当し、同じく「エポキシ樹脂」は、本願明細書の段落【0013】に「シリコーンゲル8の上側表面を覆うエポキシ樹脂9が配設されている。つまり、エポキシ樹脂9は、放熱板1及びケース7と協働して、シリコーンゲル8を密封している。」と記載される「エポキシ樹脂9」と格別な差異はなく、本願補正発明における「ゲル状材料を密封する手段」に相当する。 また、引用発明における「放熱板主面側の接着面と対向する、外囲ケースの開口端縁の一部をなす接着面に凹溝を、また、該外囲ケース側の接着面と対向する、放熱板主面の一部をなす接着面に、該凹溝内に臨み支承される突条を、それぞれの接着面に沿つて一連に設け、該突条の突出寸法は、該凹溝に当接して放熱板主面側の接着面と外囲ケース側の接着面間に間隙が生じる寸法に形成され、放熱板と外囲ケースの接着面は該突条によつて離間され、その離間間隙に接着剤が収容されている」の「放熱板主面側の接着面と対向する、外囲ケースの開口端縁の一部をなす接着面」、「外囲ケース側の接着面と対向する、放熱板主面の一部をなす接着面」は、それぞれ本願補正発明における「前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面」、「前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面」に相当する。また、上記「突条」は、「外囲ケース側の接着面と対向する、放熱板主面の一部をなす接着面に、該凹溝内に臨み支承され・・・接着面に沿つて一連に設け、該突条の突出寸法は、該凹溝に当接して放熱板主面側の接着面と外囲ケース側の接着面間に間隙が生じる寸法に形成され、放熱板と外囲ケースの接着面は該突条によつて離間され、その離間間隙に接着剤が収容」されるのであるから、本願補正発明における「前記ベース板側対向面に、上記ケース側対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間に間隙を形成する凸部が形成され、前記ケース側対向面と前記ベース板側対向面との間に前記接着材が収容」される「凸部」に相当する。 そうすると、両発明は、「ベース板と、該ベース板の主面に搭載された絶縁基板と、該絶縁基板上の回路パターンに搭載された半導体チップと、前記絶縁基板及び前記半導体チップを囲繞するとともに前記ベース板の前記主面と対向する開口端縁が接着材を介して前記主面に接着された樹脂製のケースと、前記絶縁基板及び前記半導体チップを被うようにして前記ケース内に充填されたゲル状材料と、前記ベース板及び前記ケースと協働して前記ゲル状材料を密封する手段とを備えた半導体装置において、 前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とが設けられていて、前記ベース板側対向面に、上記ケース側対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間に間隙を形成する凸部が形成され、前記ケース側対向面と前記ベース板側対向面との間に前記接着材が収容されている半導体装置。」の点で一致し、次の点のみで相違する。 (イ)本願補正発明では、半導体チップ及び半導体装置が電力用とされているのに対し、引用発明では、電力用とはされていない点。 (4)相違点の検討 上記相違点(イ)について以下検討する。 本願明細書において、【従来の技術】として、「【0002】・・・電力用半導体装置は、・・・近年、パワーデバイスとして広く用いられている。この種の電力用半導体装置は、一般に、絶縁基板を介して電力用半導体チップを搭載している金属製の放熱板に樹脂製のケースが接着された構造を有している(例えば、特許文献1?4参照)。 【0003】図9(a)は、従来のこの種の典型的な電力用半導体装置の立面断面を示し、図9(b)はこの電力用半導体装置における放熱板とケースとの接着部を拡大して示している。 図9(a)、(b)に示すように、この従来の電力用半導体装置では、金属製の放熱板101の1つの主面(上側表面)に、接着材102を用いて樹脂製のケース103が接着されている。そして、放熱板101とケース103とによって形成されたケース内空間部にはシリコーンゲル104が注入・硬化(キュア)されている。このシリコーンゲル104は、放熱板101上に配置された図示していない絶縁基板、電力用半導体チップ等を被っている。また、シリコーンゲル104の上端部は、エポキシ樹脂105で封止されている。」(段落【0002】、【0003】)と述べられており、また、本願明細書段落【0002】、【0004】に電力用半導体装置の例として示されている「特許文献3」、「特許文献4」(以下、「周知例1」、「周知例2」という。)にも、それぞれ以下のように記載されているように、電力用半導体チップを搭載する電力用半導体装置は、本願出願前周知のものといえる。 周知例1(特許文献3):特開平7-58282号公報 「【0002】・・・鉄道車輌用のインバータ装置など、比較的高電圧で大電力の装置に使用するダイオード、トランジスタ、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)、GTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)などのパワー半導体素子としては、・・・近年、絶縁容器に封入してモジュール化した、いわゆるパワー半導体モジュールが提案され使用されるようになってきており、・・・」(段落【0002】)が記載されている。 周知例2(特許文献4):特開平9-45852号公報 「【0001】・・・本発明はパワー半導体素子、制御用集積回路素子等を内蔵したインテリジェントパワーモジュールと呼ばれるモーター制御に利用される樹脂封止型半導体装置に関し、・・・」(段落【0001】)、 「【0008】図1は本実施例の樹脂封止型半導体装置を示す構成図であり、導電材である金属基板1上にパワー半導体素子2、制御用集積回路素子3を搭載し、金属細線4で結線したものを樹脂ケース5で包囲収容し、封止樹脂6で封止したものであり、・・・」(段落【0008】)が記載されている。 そして、引用発明の「トランジスタモジュール等の半導体装置」も、「銅等の熱良導性材料によって形成された放熱板上に絶縁基板が固着され、該絶縁基板上に半導体素子、リードを接続するための金属パッドが設けられた支持板が固着され、合成樹脂によって形成された外囲ケースの開口端縁が接着剤によって前記放熱板主面に接着され、該外囲ケースの枠部内には前記半導体素子及びリードを覆うようにシリコンゲルからなる緩衝材が充填され、さらにエポキシ樹脂で覆って封止され」ており、本願明細書段落【0002】、【0003】で述べられている電力用半導体装置の基本構造を有するので、引用発明の半導体装置が、電力用半導体素子を搭載する電力用半導体装置の態様を含むことは明らかである。 そうすると、上記相違点(イ)は、引用発明の上記態様において実質的な相違点とはならず、本願補正発明と引用発明とは、構成において実質的に異なるところがない。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明であると認められるので、特許法第29条第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないため、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 [3]本願発明 平成18年11月6日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成18年4月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】ベース板と、該ベース板の主面に搭載された絶縁基板と、該絶縁基板上の回路パターンに搭載された電力用半導体チップと、前記絶縁基板及び前記電力用半導体チップを囲繞するとともに前記ベース板の前記主面と対向する開口端縁が接着材を介して前記主面に接着された樹脂製のケースと、前記絶縁基板及び前記電力用半導体チップを被うようにして前記ケース内に充填されたゲル状材料と、前記ベース板及び前記ケースと協働して前記ゲル状材料を密封する手段とを備えた電力用半導体装置において、 前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とのうちの一方の対向面に、他方の対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間の間隙を調整する凸部が形成され、前記ケース側対向面と前記ベース板側対向面との間に前記接着材が収容されていることを特徴とする電力用半導体装置。」 [4]引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物には、上記[2-3](2)に摘記した事項が記載されている。 [5]対比・判断 本願発明は、上記[3]で認定したとおり、本願補正発明における「前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とが設けられていて、前記ベース板側対向面に、上記ケース側対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間に間隙を形成する凸部が形成され、」を「前記開口端縁の一部をなし前記主面と対向するケース側対向面と、前記主面の一部をなし前記ケース側対向面と対向するベース板側対向面とのうちの一方の対向面に、他方の対向面に当接してケース側対向面とベース板側対向面との間の間隙を調整する凸部が形成され、」としたものに相当する。 そうすると、本願補正発明において、凸部を形成する「一方の対向面」が「ベース板側対向面」のみであったものが、本願発明では「ケース側対向面」又は「ベース板側対向面」のどちらでもよいものとなり、また、本願補正発明における「ケース側対向面とベース板側対向面との間に間隙を形成する」と本願発明における「ケース側対向面とベース板側対向面との間の間隙を調整する」とに実質的な差異はないので、本願発明は、本願補正発明を包含する発明であるといえる。 そして、上記[2-3](3)(4)で説示したとおり、本願発明に包含される本願補正発明が、引用刊行物に記載された発明であると認められるので、本願発明も、本願補正発明と同様、引用刊行物に記載された発明であると認められる。 [6]むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-06 |
結審通知日 | 2007-09-11 |
審決日 | 2007-09-28 |
出願番号 | 特願2002-264073(P2002-264073) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷部 智寿 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 前田 仁志 |
発明の名称 | 電力用半導体装置 |
代理人 | 石野 正弘 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 川端 純市 |
代理人 | 田中 光雄 |