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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1168255
審判番号 不服2004-4200  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-03 
確定日 2007-11-19 
事件の表示 特願2001- 33275「人事考課プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-236787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月9日の出願であって、平成15年10月22日付で手続補正がなされ、平成16年2月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月3日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
平成16年3月3日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段と、考課者群の考課者における妥当な考課をし得る立場に応じて考課データに乗じる重み付けである考課者ウェイトを人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を前記考課者ウェイトを参照して人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段とを備えたコンピュータを、
前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データから初期の平均値と初期の標準偏差を算出する手段、この初期の平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整する手段、かつ前記初期の標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能させるための人事考課プログラム。
【請求項2】基準値考課者は妥当な人事考課データを得るために人間がコンピュータを操作して選択した基準値考課者とするとともに、基準値考課者による基準値の設定に際しては被考課者群全体に対する全ての考課項目を考課した考課データを対象とすることを特徴とする請求項1記載の人事考課プログラム。」
と補正された。

(2)補正の目的
補正前の請求項1-3の記載と、補正後の請求項1及び2の記載からみて、本件補正により、補正前の請求項1は削除され、補正前の請求項2は補正されて補正後の請求項1とされ、補正前の請求項3は補正されて補正後の請求項2とされたと認められる。
補正後の請求項2に係る本件補正は、補正前の請求項3が補正前の請求項1のみを引用していることからみて、「考課者群の考課者における妥当な考課をし得る立場に応じて考課データに乗じる重み付けである考課者ウェイトを人間がコンピュータを操作して設定する手段と」との記載を付加する補正事項を含むと認められる。
この補正事項は「考課者群の考課者における妥当な考課をし得る立場に応じて考課データに乗じる重み付けである考課者ウェイトを人間がコンピュータを操作して設定する手段」を追加するものであり、この追加された「考課者群の考課者における妥当な考課をし得る立場に応じて考課データに乗じる重み付けである考課者ウェイトを人間がコンピュータを操作して設定する手段」は、補正前の請求項3、及び請求項3で引用された請求項1に記載された「人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段」、「前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定する手段」、「前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段」のいずれかの手段の下位概念でなく、これらの手段と同位の概念と認められるので、本件補正により新たに追加されたものであり、当該補正事項は、特許請求の範囲を限定的に減縮するものとは認められないので、当該補正事項は特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた事項を目的とするものとは認められない。
また、当該補正事項が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた「規定する請求項の削除」、同項第3号に掲げられた「誤記の訂正」、同項第4号に掲げられた「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」の事項のいずれをも目的としないことは明らかである。
したがって、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるので、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は拒絶理由通知及び拒絶査定の記載からみて、以下のとおりである。
(1)特許法第29条柱書の規定に関する理由(以下「理由1」という。)
『この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。



請求項1-3には、出願人が所望する作用・機能・動作が単に記述されているのみであり、請求項1-3において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工が実現されておらず、請求項1-3に記載されたシステムは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することにより構築された情報処理システムとはいえないので、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。』

(2)特許法第36条第6項の規定に関する理由(以下「理由2」という。)
『この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。


請求項1-3には、出願人が所望する作用・機能・動作が単に記述されているのみであり、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いてどのように具体的に実現されているのかが不明であり、請求項1-3に係る発明を把握することができない。』

(3)特許法第29条第2項の規定に関する理由(以下「理由3」という。)
『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1-3について
引用文献1
(中略)
引 用 文 献 等 一 覧

1.特開平8-161396号公報』

4.理由1について
請求項1に係る発明のプログラムは、コンピュータを所定の手段として機能させるコンピュータ・ソフトウエアであるので、請求項1に係る発明は、いわゆる、コンピュータ・ソフトウエア関連発明である。
こうしたコンピュータ・ソフトウエア関連発明が、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、発明は、そもそも一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって、所定の技術的課題を解決できるような特有の構成が具体的に提示されている必要があるというべきである。
そこで、請求項1の記載を便宜上以下のとおりの(a)?(c)に分けて、ソフトウエアにより実現される機能がハードウエア資源を用いてどのように実現されるかが具体的に提示しているか否か検討する。
(a)「より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段とを備えたコンピュータを、」
(b)「前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、」
(c)「この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能させるための人事考課プログラム。」

上記(a)の記載について検討すると、上記(a)の記載は、コンピュータが備えるハードウエア資源を「人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段」と「前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段」に特定するに留まる。

上記(b)の記載について検討すると、上記(b)には、ハードウエア資源について何ら記載されていないので、上記(b)の記載は、コンピュータの機能を「前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する」ことに特定するに留まり、上記(b)の記載では、当該調整する機能がハードウエア資源を用いてどのようにして実現されるか具体的に提示されているとは認められない。

上記(c)の記載について検討すると、上記(c)には、ハードウエア資源について何ら記載されていないので、上記(c)記載は、コンピュータの機能を「この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する」ことに特定するに留まり、上記(c)の記載では、当該集計する処理がハードウエア資源を用いてどのようにして実現されるか具体的に提示されているとは認められない。

全体としても、請求項1の記載は、コンピュータの機能を特定するに留まり、請求項1の記載では、コンピュータを機能させるためのソフトウエアによる処理がハードウエア資源を用いてどのように実現されるか具体的に提示されているとは認められない。

以上の検討によれば、プログラムにより機能するコンピュータの機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって、どのようにして実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、その情報処理が、請求項1の記載から当業者にとって自明であるとは認められるものではない。
したがって、請求項1に係る発明は、その技術的課題を解決できるような特有の構成を具体的に提示するものではなく、一定の技術的課題の解決手段であるとはいえないから、特許法第2条でいう「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するとは認められないため、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。

5.理由2について
(1)請求項1の記載
上記のとおり、平成16年3月3日付の手続補正は却下されたので、請求項1の記載は、平成15年10月22日付で補正された、以下のとおりのものである。
「より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段とを備えたコンピュータを、
前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、
この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能させるための人事考課プログラム。」

(2)判断
上記の請求項1の記載について以下に検討する。
「前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段」の記載では、基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データの平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データについてどのような情報処理を実行して調整を行うのか不明である。
また、「この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段」の記載では、調整された考課データについてどのような情報処理を実行して被考課者群全体について被考課者別考課データを集計するのか不明である。
したがって、請求項1の記載では、「前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する」機能及び「この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する」機能が単に記述されているのみであり、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、当該機能が具体的に実現されているかどうか不明である。
よって、請求項1に係る発明が明確であるとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

6.理由3について
(1)本願発明
平成16年3月3日付の手続補正は却下されたので、請求項1に係る発明は、平成15年10月22日付の手続補正書に補正された以下のとおりのものである。
「より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として人間がコンピュータを操作して入力する手段とを備えたコンピュータを、
前記基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の基準値考課者以外の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、
この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能させるための人事考課プログラム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開平8-161396号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0010】
【実施例】図1は、本発明装置の一実施例の全体構成であって、外部記憶装置1には、給与体系フアイルと同フアイルの任意項目を定義付け、細目設定を行う役職マスタ、家族マスタ、勤務地マスタ、資格諸手当マスタと、社員データ・マスタ、部門マスタ、群マスタの諸マスタ・フアイルと、考課体系、考課定義、考課値集合、考課値計算フアイルの諸データ・フアイルの記憶領域があり、本装置の各種処理内容の説明情報、処理選択案内情報、入力データおよび計算処理データを表示する表示装置2、各種処理を指令入力する、また、データを入力する入力装置3、マスタ・フアイルのデータ、入力考課値データ、同計算処理データを印字する出力装置5、以上の処理、諸計算の総てを処理制御する中央処理装置4より構成される。
【0011】図2は、本発明装置のもつ処理機能の流れの全体像である。21の給与体系処理は、給与を構成する諸手当、その合計、賞与等、給与賞与の項目名および、その属性を定義設定、更新する処理であり、後述する社員マスタ、反映計算、賃金分布、年度更新処理時のデータ参照、登録、更新、転送の共通指標となる。任意項目を家族、役職、勤務地、資格諸手当の補助マスタを設定することにより、個別データ管理をより簡便に、正確に取り扱うことを可能にしている。
【0012】22の社員マスタ処理は、人事考課に必要な氏名、生年月日、給与、賞与他の個人データを登録更新処理するものであり、給与賞与のデータ、家族、役職、勤務地、資格諸手当は、21の給与体系の設定に従って登録され、そのデータは、年齢、部門、群他の指定順序に並べ換え、指定の制限条件で、諸データの印字出力を行う。
【0013】23の部門、群マスタ処理は、人事考課において考課者、被考課者の関係になり得る職域、組織を抽出し、部門として設定、各人を各部門に登録、後述考課集団設定の参考データ、誤設定検出に生かす。群は、人事考課で相互比較が意味をもつ各級同水準、同資格を抽出設定し、考課集団の被考課者構成の参考データとする他、時給、年俸等、給与形態の異なる集団の区分けをする。
【0014】24の考課集団登録フアイル生成は、22の社員マスタから、23の部門、群のデータを参照し、被考課者と考課者で構成する集団を設定、25で設定される考課体系を含んで、各考課集団別の考課データ・フアイル群として生成、各考課者が人事考課を行う時の基本データ・フアイルとなる。
【0015】25の考課体系処理は、各考課集団の職種、職位に合わせた、考課項目と項目ウエイトの設定更新処理を行い、考課項目別の考課の観点、考課内容の定義を定義フアイルに設定する。
【0016】26の元データ処理は、考課データの入力処理と、27の集計計算処理を行う前に、その元データである各考課者の各被考課者に対する考課値を、考課者別に、あるいは被考課者別に、図示、印字し、集計計算設定条件の検討を助ける。その結果、必要に応じて考課者ウエイトの設定を行う。
【0017】27の集計計算処理は、各考課者の考課値を元データとして、項目ウエイト、考課者ウエイトにより、集計計算し、各被考課者の考課点を算出する。計算結果は点数順リスト、分布図として、表示、印字することができる。考課者ウエイトを変え、この結果の点数が妥当なものであると判断したとき、決定値としてマスタ登録する。被考課者への個別の明細報告書出力も行う。」(第3頁右欄第5行-第4頁左欄第16行)

(b)「【0025】図5は、4の考課集団登録生成と5の考課体系処理のフロー・チヤートを示し、図15に考課集団設定例、図16に考課体系設定例を示す。考課集団は、人事考課に際して、全体をどのような被考課者の集団に分けるかの設定であり、それに基づいて、各集団の被考課者を設定、この被考課者を考課すべき考課者を設定する。また、各集団別に考課体系、考課定義フアイルを設定して、考課者が人事考課を専用装置で考課するのに必要なデータ・フアイルを生成する。図23は、各部門の各考課者が、どの考課集団を考課するかの考課者リスト出力例である。
【0026】5の考課体系処理は、各考課集団の職務に合わせて、考課内容を設定し、考課項目、項目ウエイト、項目定義内容を登録する。ここで設定されたフアイルは、各考課集団別に選択登録される。図16は、考課体系およびその定義の設定例である。
【0027】図6の、6は考課されたデータの集計計算される前の元のデータを確認、考課者ウエイト設定を行うフロー・チヤートであり、7は各員の考課点数を計算し、結果を出力するフロー・チヤートである。図17に、考課者別に考課結果への影響力を左右する、考課者ウエイトの設定例と、特定考課者が、被考課者をどのように考課したか、また、特定被考課者が、複数考課者からどのように考課されているかを図示した例を示す、データ入力は、各考課者の考課データを入力装置より入力する処理であり、図22は、その入力要領表示および入力時の表示画面例である。
【0028】本装置への考課データ入力は、前述の入力方法の他、既述の考課集団フアイル生成により生成されたデータ・フアイル群により、各考課者が人事考課装置により入力したデータを、本装置外部記憶装置の考課値集合フアイルにデータ転送することにより、入力を完了することができる。
【0029】7の集計計算処理において、図中に示す06-6、考課点集計計算の、詳細フロー・チヤートを図9に示す。09-2の調整除外項目設定とは、売上粗利益ランクあるいは、付加価値生産額ランク、有資格ランクなど、考課者の考課に関係しない項目を調整から除外するものである。考課者被考課者選択は、同一考課集団にあっても、組織、業務の関係から、考課データが複数集団に分離しており、かつ、相互に甘辛の差が見られる場合、別集団として、分離して反映まで処理することで異集団相互の調整を行うものである。
【0030】特定被考課者hの考課項目iの点数TE(h,i)は、考課項目ウエイトW(i)、考課者kのウエイトF(k)、考課ランク値をAG(h,i,k)、考課有無をAC(h,i,k)とすれば、計算式は数式1のようになる。この式で、Σは全考課者kの合計を表す。
【数1】(省略)
【0031】この計算式の点数を全考課項目で合計すれば、各被考課者の考課点数が導き出されるが、考課者の被考課者に対する考課ランクの与え方に、考課者による差があり、数式1での集計結果では、不公平を生ずる危険性を含んでいる。特定集団で、ある考課者が、全被考課者を考課せず、他の考課者と比して甘いあるいは辛い考課をなした場合である。また、被考課者相互の差を大きくする考課者と小さくする考課者が存在する場合、大きくする考課者が結果を大きく左右することとなる。
【0032】この不公平を是正するため、数式1で、全被考課者のデータ算出後、全考課者の考課者別の考課点の平均値、標準偏差と、同一対象の被考課者集団に、全考課者の出した平均値と標準偏差(平均偏差でも同様の効果をもつ)を算出し、数式2で、考課者別のデータの分布の大きさBU(k)と数式4で、甘辛の度合いを表すAM(k)を計算する。
【数2】(省略)
【数3】(省略)
【数4】(省略)
【0033】考課者が被考課者各々を考課者の平均値に対して、どう位置付けたかの値を偏りKA(h,k)として、数式3で算出し、最終的に、考課者の各考課ランク値調整値CH(h,k)を数式5にて求める。この式の意味は、甘辛に対しては、その値だけ平行移動し、各被考課者に対する考課者の出した相互差は生かし、その分布の大きさは、考課者全体の値に合わせるということである。
【数5】(省略)
【0034】甘辛調整計算は、前述調整値を入れて、数式6により計算される。なお、考課者の考課が、特定被考課者において、全項目考課されない場合の補正として、考課者の出している平均値HEt(k)、対応する全考課者の平均値HE(k)は考課された考課項目ウエイトを全項目ウエイトで除した値で除した数値である。
【数6】(省略)
【0035】図18は甘辛調整計算結果の出力例であり、上から分布図、点数順リスト、特定被考課者データの表示である。分布図での氏名との対応はランクを色で分け、かつ、氏名は点数順配列としてあり、多くは、この表示のままで各対応の識別が可能であるが、カーソルとリターン・キーの操作で、指定被考課者のマークを塗りつぶし表示し、確認することができる。」(第4頁右欄第15行-第6頁右欄第49行)

また、上記摘記事項(b)からみて、引用例1に記載された事項において、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを設定しているので、「中央処理装置(4)」は、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを設定する手段を備えていることは明らかである。

してみれば、引用例1には、
『より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを設定する手段と、前記考課者群の全考課者による被考課者の考課データを初期値として入力する「入力装置(3)」とを備え、
前記全考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が全考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記全考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、
この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能する「中央処理装置(4)」。』
との発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本願発明と引用例発明とを比較すると、引用例発明の「入力装置(3)」、「中央処理装置(4)」は、それぞれ、本願発明の「入力する手段」、「コンピュータ」に相当するので、両者は、
「より妥当な人事考課データを得るために、人事考課の対象として考課される被考課者群と、該被考課者群に対応した考課を行う考課者群と、その考課する項目である考課項目群とを設定する手段と、前記考課者群の基準値考課者を含む全考課者による被考課者の考課データを初期値として入力する手段とを備え、
前記基準値の算出に用いられる考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、前記考課者群の各考課者の初期の考課データを算出した上でその平均値が前記基準値算出に用いられた考課者の考課データの平均値と一致するように調整し、かつその標準偏差が前記基準値算出に用いられた考課者の考課データの標準偏差と一致するようにばらつきを調整する手段、
この調整された考課データに基づいて被考課者群全体について被考課者別考課データを集計する手段として機能するコンピュータ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、コンピュータを機能させるプログラムに関する発明であるのに対し、引用例発明は、コンピュータに関する発明である点。

(相違点2)
本願発明では、考課者群内に考課の基準とする1又は複数の基準値考課者を人間がコンピュータを操作して設定し、前期基準値考課者の考課データの平均値と標準偏差を基準値として、考課者群の基準考課者以外の各考課者の考課データの平均値と標準偏差を調整するのに対し、引用例発明では、全考課者の考課データの基準値と標準偏差を基準値としているため、そのようなことは行っていない点。

(相違点3)
本願発明では、被考課者群と考課者群と考課項目群とを設定する際、及び被考課者の考課データを入力する際に、人間がコンピュータを操作して設定や入力を行うのに対して、引用例発明では、考課者群と考課項目群を設定する際、及び被考課者の考課データを入力する際に、人間がコンピュータを操作して設定や入力を行うかどうか明記されていない点。

(4)判断
(相違点1について)
プログラムによりコンピュータを機能させることは周知技術であるので、引用例発明のコンピュータをプログラムにより機能させることは当業者が容易に考えられる事項である。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

(相違点2について)
基準値を算出にどの考課者のデータを用いるかは、考課者の考課経験の多少や考課者の組織における立場の相違などの考課者の状況に応じて、当業者がが設定できる事項であるから、基準値算出に考課者全員のデータを用いるか、基準値の算出に全考課者から設定された1又は複数の考課者のデータを用いるかは当業者が適宜選択できる設計的事項であり、また、考課者全員の考課データの平均値と標準偏差を調整するか、基準考課者以外の考課者の考課データの平均値と標準偏差を調整するかは当業者が適宜選択できる設計的事項であり、人間がコンピュータを操作してデータを入力することにより、所定のデータを設定することは一般的に行われて周知技術であるので、引用例発明において、全考課者の中から所定の考課者を基準値考課者として人間がコンピュータを操作して設定し、前期基準考課者の考課データの平均値と標準値を基準値とし、基準考課者以外の考課データの平均値と標準偏差を調整することは当業者が容易に考えられる事項である
よって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

(相違点3について)
人間がコンピュータを操作して、所定のデータを入力したり、所定のデータを設定することは一般的に行われている周知技術であるので、引用例発明において、被考課者群と考課者群と考課項目群とを設定する際、及び被考課者の考課データを入力する際に、人間がコンピュータを操作して設定や入力を行うは当業者が容易に考えられる事項である。
よって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7.結び
上記4.で述べたとおり、請求項1に係る発明は、特許法上の発明である「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するとは認められないので、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。
また、仮に、請求項1に係る発明が特許法上の発明である「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するとしても、上記5.で述べたとおり、請求項1に係る発明が明確であるとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
さらに、仮に、請求項1に係る発明が明確であるとしても、上記6.で述べたとおり、請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-11 
結審通知日 2007-09-18 
審決日 2007-10-01 
出願番号 特願2001-33275(P2001-33275)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 537- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 田川 泰宏
森次 顕
発明の名称 人事考課プログラム  
代理人 田辺 敏郎  

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