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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01K
管理番号 1168583
審判番号 不服2005-9028  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-12 
確定日 2007-11-28 
事件の表示 特願2001-358277「粒状の排泄物処理材及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月 3日出願公開、特開2003-158932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年11月22日の出願であって、平成17年3月31日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成17年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年6月13日に手続補正がなされたものであって、当審より、平成19年6月28日付で拒絶理由および平成17年6月13日付の手続補正を却下する補正の却下の決定を通知したところ、平成19年8月30日付で手続補正書および意見書が提出されたものであって、請求項1?20に係る発明のうち、その請求項12に係る発明は、平成19年8月30日付手続補正で補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「5ミリメートル以下の粒度の粉状のプラスチック材料に、吸水した吸水性樹脂から回収された自重の50倍以上の水を含有する含水吸水性樹脂及び添加物質を混合し、この混合物を造粒して、1ミリメートル以上の粒度の造粒物を形成し、この造粒物の表面の少なくとも一部を、被覆材料、吸水性樹脂及び添加物質を含有する混合物により被覆して被覆粒状物とし、この被覆粒状物を乾燥して、前記造粒物に対して、1重量%以下の含有率で少量の吸水性樹脂を含有し、前記被覆粒状物に対して、12重量%以下の含有率で水分を含有する乾燥被覆粒状物とすることを特徴とする粒状の排泄物処理材の製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物に記載された事項
(2-1)当審より通知した拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2001-157525号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「動物の排泄物処理材及びその製造方法」に関して、次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】・・・・
【請求項18】 芯部及び該芯部を覆う被覆層部により形成されており、前記芯部は、5mm以下の粒度に粉砕されたプラスチック廃材粉砕物、5mmの粒度以下の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物、該廃木材粉砕物に比して少量の接着剤及び該接着剤より少量の配合物質を含む混合物により粒状に形成されており、前記被覆層部は、0.5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物、該廃木材粉砕物より少ない量の接着剤及び該接着剤より少ない量の配合物質を含む混合物により形成されていることを特徴とする動物の排泄物処理材。・・・・
【請求項23】 芯部において、接着剤が、5重量パーセント未満の含有率で含有される一種以上の高吸水性樹脂及び10重量パーセント以下の含有率で含有される一種以上の糊剤であることを特徴とする請求項15乃至17並びに請求項21及び22の何れか一項に記載の動物の排泄物処理材。・・・・
【請求項38】 廃木材粒子を、5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子に解繊して、前記繊維状廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物を形成し、この形成された前記繊維状廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物を二分し、二分された一方の廃木材粉砕物に、5mm以下の粒度に粉砕されたプラスチック廃材粉砕物を加えて混合し、この混合物に、接着剤、配合物質及び水を加えて、繊維状廃木材粒子、接着剤、配合物質及び水を含有する造粒用混合物を形成し、この形成された造粒用混合物を造粒して造粒物粒子を形成し、二分されたもう一方の廃木材粉砕物については、0.5mm以下の粒度に粉砕して、0.5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物を形成し、この廃木材粉砕物に、接着剤及び配合物質を混合して、被覆用混合物を形成し、この被覆用混合物を、前記造粒された造粒物粒子の表面に供給して、前記造粒物粒子の表面上に被覆層を形成することを特徴とする廃木材からの動物の排泄物処理材の製造方法。・・・・
【請求項40】 5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を含む廃木材粉砕物に、接着剤を混合し、次いで混合物に水を噴霧して湿潤状態の粉状混合物を形成し、この湿潤状態の粉状混合物を押出し造粒して造粒物粒子を形成することを特徴とする請求項35乃至38の何れか一項に記載の廃木材からの動物の排泄物処理材の製造方法。
【請求項41】 造粒物粒子の表面上に被覆層を形成した後に、被覆層の表面に界面活性剤溶液を噴霧し、乾燥して、被覆層の表面に界面活性剤を付着させることを特徴とするする請求項35乃至38の何れか一項に記載の廃木材からの動物の排泄物処理材の製造方法。
【請求項42】 接着剤は、一種以上の高吸水性樹脂若しくは一種以上の糊剤又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項35乃至38の何れか一項に記載の動物の排泄物処理材の製造方法。・・・・
【請求項47】 プラスチック廃材粉砕物は、粒度が5mm以下の粉砕物であり、紙おむつ廃材粉砕物、乳パッド廃材粉砕物、尿パッド廃材粉砕物及び生理用ナプキン廃材粉砕物若しくはラミネート紙廃材粉砕物又は前記廃材粉砕物の一以上から分離された、主成分としてプラスチック物質を含有する分離粉砕物又は前記粉砕物の二以上の組み合わせであることを特徴とする請求項35乃至38の何れか一項に記載の動物の排泄物処理材。」
(イ)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、動物、特に猫科及び犬科動物並びにその他愛玩動物等の動物の粒状の排泄物処理材及びその製造方法に関し、特に、建築現場などで既に使用済みの廃木材の有効利用を図る、動物、特に猫科及び犬科動物並びにその他愛玩動物等の動物の粒状の排泄物処理材及びその製造方法に関する。」
(ウ)「【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、粒状の動物の排泄物処理材は、5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物、5mm以下の粒度に粉砕されたプラスチック廃材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の接着剤を含む混合物により粒状物に形成することができる。また本発明において、粒状の動物の排泄物処理材は、上記のように作られた造粒物を芯部とし、該芯部を覆って、被覆層部を形成して形成することができる。・・・・本発明の動物の排泄物処理材において、接着剤は、粒状物に対し、粒状物に対し、5重量パーセント未満の含有率の一種以上の高吸水性樹脂及び粒状物に対し10重量パーセント以下の含有率の一種以上の糊剤であるのが好ましい。しかし5重量パーセント未満の含有率の一種以上の高吸水性樹脂若しくは粒状物に対し5重量パーセント以下の含有率の一種以上の糊剤又はこれらの組み合わせとすることができる。・・・・本発明の動物の排泄物処理材において、糊剤としては、ポリアクリルアミド、α-澱粉、ポリビニルアルコール、コンスターチ、小麦粉若しくはカルボキシメチルセルロース又はこれら二以上のものを組み合わせたものを使用することができる。
【0009】本発明の動物の排泄物処理材において、造粒物の吸水速度を増すために、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、中性イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤等の界面活性剤を使用することができる。廃木材が松等の水を弾く材料である場合、界面活性剤の使用は、水を弾く材料を濡れさせることができ、廃木材粉砕物の吸水性及び保水性を増加させると共に、また、本発明の動物の排泄物処理材において、使用される繊維状の廃木材粉砕物は、粒度が5mm以下、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下とすると、吸水性能及び保水性能が大きくなり、また造粒することが容易となるので好ましい。本発明の動物の排泄物処理材の粒状物の粒度は、2mm以上であるのが、粉状物が少なくなるので好ましいが、6mm以下とするのが使用上好ましい。」
(エ)「【0012】本発明において、芯部の廃木材粉砕物は、主として、2乃至5mmの粒度の繊維状の廃木材粒子を含有する廃木材粉砕物である。本発明において、芯部の廃木材粉砕物は、主として、5mm以下の粒度、好ましくは、3mm以下の粒度、さらに好ましくは2mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を含有するものである。被覆層部において、繊維化された廃木材粉砕物は、例えば0.5mm以下の粒度に細かくすることにより、被覆することを容易にさせることができ、例えば0.1mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する繊維化された廃木材粉砕物とするのが好ましい。細かい微粒子は、保存時において剥落し易いので、被覆層部の繊維化されたの廃木材粉砕物が、0.1乃至0.5mmの粒度、好ましくは、繊維状の廃木材粒子を含有する廃木材粉砕物とするのが好ましい。本発明において、芯部は、2mm以上の粒度、好ましくは3mm以上の粒度とすることができる。動物の排泄物処理材は、3mm以上の粒度に形成することができ、また6mm以下の粒度に形成することができる。」
(オ)「【0014】本発明において、5mm以下の粒度、3乃至5mmの粒度及び3mm以下の粒度の廃木材の繊維状粒子は、高吸水性樹脂及び水と混合して、押出し造粒される。繊維化されない廃木材粉砕物は、高吸水性樹脂との混合物としても、粒状に造粒することが困難である。本発明において、木粉を繊維化することにより、高吸水性樹脂の使用を減少させることができる。本発明において、高吸水性樹脂の使用量は、排泄物処理材としての吸水能力、保水能力及び濡れた造粒された粒子相互の付着能力を保持するに足りればよい。造粒粒子相互の付着及び繊維状粒子の付着を容易にするためには、高吸水性樹脂に代えて糊料を使用することができる。このような糊料としては、ポリアクリルアミド、α-澱粉、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの接着剤を使用することができる。本発明においては、ポリアクリルアミド及びα-澱粉を繊維状に粒子の付着に使用するのが好ましい。
【0015】本発明において、プラスチック廃材粉砕物として、パルプ、高吸水性樹脂及びプラスチック物質を含有するプラスチック廃材粉砕物を使用することができる。このようなプラスチック廃材粉砕物としては、不良紙おむつの粉砕物、不良乳パッドの粉砕物、不良尿パッドの粉砕物及び不良生理用ナプキンの粉砕物並びに不良衛生シーツの粉砕物やこれら衛生シーツの製造時に発生する衛生シーツの裁断屑の粉砕物があり、またこれらの他に、前記プラスチック廃材の粉砕物に含有されて入るパルプ及び高吸水性樹脂を分級して回収された回収残渣のプラスチックに富む粉砕物などがある。本発明において、プラスチック廃材粉砕物として、プラスチック物質及びパルプを含有する不良ラミネート紙の粉砕物及びラミネート紙製造時に発生するラミネート紙廃材の粉砕物並びに使用済みラミネート容器などの使用済みラミネート紙廃材の粉砕物を使用することができる。本発明において、プラスチック廃材粉砕物は、上記のプラスチック廃材粉砕物の他に、例えば、使用済み及び不良品のペットボトル等のポリエチレンテレフタレート樹脂廃材の粉砕物、塩化ビニル樹脂廃材の粉砕物、ポリエチレン樹脂廃材の粉砕物、ポリプロピレン樹脂廃材の粉砕物、ポリスチレン樹脂廃材の粉砕物、ポリエステル樹脂廃材の粉砕物、アルキド樹脂廃材の粉砕物、ABS樹脂廃材の粉砕物、SAN樹脂廃材の粉砕物、メタクリル酸メチル樹脂廃材の粉砕物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂廃材の粉砕物、エポキシ樹脂廃材の粉砕物、合成ゴム廃材の粉砕物及びその他のプラスチック廃材の粉砕物を包含し、プラスチック容器等の一般的なプラスチック製品及び使用済みプラスチック製品の廃棄物の粉砕物を包含する。
【0016】・・・・本発明において、動物用の粒状の排泄物処理材は、粒度が2mm以上、例えば2mm、3mm、4mm又は5mm以上の粒子に造粒することにより製造され、例えば、水分が10%以下、好ましくは、5%以下の乾燥状態で保存される。本発明において、粒状の動物用排泄物処理材は、水分含有率を15重量%以下、好ましくは10重量%となるように乾燥することにより、保管時の黴の発生を防止することができるので、20重量%以上の含水率で造粒するときは、最終段階で10重量%以下の含水率になるまで乾燥するのが好ましい。」
(カ)「【0037】例1.建築現場から集められ、破砕機で50?100mmの粒度に破砕され、粗砕機で5?30mm粒度に粉砕されたたヒバ系廃木材を、解繊機により、3.5mm以下の粒度に粉砕し、繊維化した。この繊維化されたヒバ系廃木材粉砕物を、二分し、二分された一方のヒバ系廃木材粉砕物7.4kgを第一ホッパー7に入れ、第一ホッパー7で、第一ホッパー7に供給されたプラスチック廃材粉砕物2.1kgと混合した。この混合物は、第一スクリューフィーダー10に供給し、高吸水性樹脂供給部12で高吸水性樹脂1.0kgを混合し、水供給部12で水2リットルを混合して形成された造粒用混合物を、第一スクリューフィーダー8から、押出し造粒機9に送り、押出し造粒して、3mm以上の径で長さが5mm以上の造粒物とした。押出し造粒され形成された造粒物は、円形篩機15で2mm以下の粒度の造粒物が篩分けにより除去された。円形篩機15の篩上は、少量の水が噴霧されて、被覆装置25に送られた。他方、3.5mm以下の粒度の繊維化されたヒバ系廃木材粉砕物の中の1.5kgを解繊機6から、一次微粉砕解繊機17に供給し0.5mm以下の粒度に解繊し、次いで二次微粉砕解繊機18で0.35mm以下の粒度に解繊した。0.35mm以下の粒度に解繊された廃木材粉砕物を第二ホッパー19に集め、混合機23に供給した。一方、高吸水性樹脂700gを被覆用高吸水性樹脂供給ホッパー20からスクリューフィーダー22に供給すると共に、ポリアクリルアミド200gを被覆用ポリアクリルアミド供給ホッパー21から、前記スクリューフィーダー22に供給し、前記混合機23に供給し、繊維化された廃木材粉砕物と混合した。繊維化された廃木材粉砕物、被覆用高吸水性樹脂及び被覆用ポリアクリルアミドの被覆用混合物は、被覆装置25に送られて、繊維化された廃木材粉砕物の造粒物の上に散布された。本例においては、この被覆作業は数段に分けて行われた。被覆工程を終えた被覆造粒物は、円形篩機26で2mm以下の粒度の被覆造粒物を除去した。円形篩機26の篩上は、乾燥機27に送られて乾燥され、篩分けられ、猫のトイレ砂として製品化された。」

上記(ア)?(カ)に記載された事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「5mm以下の粒度に粉砕されたプラスチック廃材粉砕物、不良紙おむつなどから回収された高水吸水性樹脂、廃木材粉砕物、配合物質及び水を混合し、この混合物を造粒して、2ミリメートル以上の粒度の造粒物を形成し、この造粒物の表面を、0.5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物、高吸水性樹脂及び配合物質を含有する混合物により被覆して被覆粒状物とし、この被覆粒状物を乾燥して、前記造粒物に対して、5重量%未満の含有率の高吸水性樹脂を含有し、前記被覆粒状物に対して、10重量%以下の含有率で水分を含有する乾燥被覆粒状物とする粒状の排泄物処理材の製造方法。」

(2-2)当審より通知した拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、国際公開第97/27739号パンフレット(以下、「引用文献2」という。)には、「動物用排泄物処理材及びその製造方法」に関して、次の記載がある。
(ア)「技術分野
本発明は、紙おむつ廃材を原料とする動物用排泄物処理材の製造方法に関し、紙おむつ及び生理用ナプキンの製造過程で生じる不良品の紙おむつ及び生理用ナプキン廃材を原料とする保水機能及び防虫機能を有し、使用後の含水状態で焼却処理可能な動物用排泄物処理材の製造方法に関する。」(パンフレット1頁3?8行)
(イ)「発明の開示
本発明者は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン不織布及びゴムを4mm以下、特に2mm以下の粒度に粉砕すると、これらの粉末の吸水及び保水性が向上することを発見し、また、紙おむつ廃材を動物用排泄物処理材の原料とすると、紙おむつ廃材中に含有される吸水性樹脂により、排泄された尿が保持されるために発熱量が低下して、焼却処理に適する廃物となることを発見し、本発明に至った。
本発明は、高発熱量の紙おむつ廃材を原料として、有効に活用することにより、使用後の含水状態においても、焼却処理可能な粒状の動物用排泄物処理材を提供することを目的としている。
即ち、本発明の動物用排泄物処理材は、造粒物で形成されている芯部と該芯部を被覆する被覆部とを有する動物用排泄物処理材において、芯部の主たる含有物が、4mm以下の粒度のプラスチック廃材粉であり、芯部を取り囲む被覆部の主たる含有物が紙粉及び吸水性樹脂であることを特徴とし、高発熱量の紙おむつ廃材を、焼却処理可能な粒状動物用排泄物処理材として、有効に活用するものである。また本発明の動物用排泄物処理材の製造方法は、紙おむつ粉砕物を分級して、紙粉及び高吸水性樹脂の含有率の高い部分とプラスチック材料の含有率の高い部分とに分離し、前記分離されたプラスチック材料の含有率の高い部分を4mm以下の粒度に粉砕し、この粉砕物を押出し造粒して、3mm以上の粒度の造粒物を形成し、該造粒物を、前記分離された部分の1mm以下の粒度の粉砕物の、紙粉及び/又は吸水性樹脂の含有率の高い部分で被覆することを特徴とし、紙おむつ廃材を原料として、焼却処理可能な粒状動物用排泄物処理材として、有効に活用するものである。」(パンフレット2頁18行?3頁18行)
(ウ)「本発明において、動物用排泄物処理材は、水分含有率を15重量%以下、好ましくは13重量%となるように乾燥することにより、保管時の黴の発生を防止することができる。
被覆層部に、吸水性樹脂を配合すると、吸水性樹脂は、排泄時に粒状芯部の周囲から吸水して、膨潤し、保水するように作用するので、被覆部の湿度を調整することができ好ましい。
紙おむつに使用される吸水性樹脂には、高吸水性樹脂以外の吸水性樹脂及び高吸水性樹脂が使用されているところから、本発明において、吸水性樹脂とは、吸水性樹脂及び高吸水性樹脂を意味する。
本発明において、高吸水性樹脂は、自重の数十倍から二百倍程度の水を吸収しても、形を保持できる樹脂であり、例えば、ビニルエステルとエチレン系不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体鹸化物、澱粉とアクリル酸のグラフト重合体、ポリアクリル酸の架橋物、ビニルアルコールとアクリル酸の共重合体、ポリアクリロニトリルの部分加水分解物、カルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリエチレングリコールの架橋物、キトサンの塩又はプルランのゲルなどがあり、これらは、分級された紙粉に単独で又はこれら2種以上を混合して被覆材料として使用される。
本発明において、高吸水性樹脂以外の吸水性樹脂としては、吸湿して又は吸湿しないで、吸水倍率が20g/g未満、好ましくは吸水倍率が50g/g未満と吸水性能の乏しい吸水性樹脂がある。このような吸水性能の低い吸水性樹脂としてのポリアクリル酸樹脂及び澱粉アクリル酸樹脂は、粒径が、600μm以上のものと、10μm以下、例えば10μm乃至5μmと微細なものがあり、これらの吸水性樹脂は、例えばおむつ廃材から分級して得られるか、又はポリアクリル酸樹脂の規格外の製品として入手することができる。粒径が600μm以上のものは、粒状芯部に使用するのが好ましく、10μm以下の微細なものは被覆部に使用するのが好ましい。」(パンフレット9頁3行?10頁3行)

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
a.引用発明の「5mm以下の粒度に粉砕されたプラスチック廃材粉砕物」は、本願発明の「5mm以下の粒度を有するプラスチック材料粉砕物」に相当する。
b.引用発明の「不良紙おむつなどから回収された高水吸水性樹脂」と、本願発明の「吸水した吸水性樹脂から回収された自重の50倍以上の水を含有する含水吸水性樹脂」とは、「回収された吸水性樹脂」である点で共通する。
c.引用発明の「廃木材粉砕物」および「配合物質」は、「造粒物」を形成する際に混合されるものであるとともに、造粒物の表面を被覆する際にも用いられるものであることから、本願発明の「添加物質」に相当する。
d.引用発明の「2mm以上の粒度に形成された造粒乾燥物を含む芯部」と本願発明の「1ミリメートル以上の粒度に形成されている乾燥造粒物を含む芯部」とは、「所定値以上の粒度に形成されている乾燥造粒物を含む芯部」である点で共通している。
e.引用発明の「造粒物に対して、5重量%未満の含有率の高吸水性樹脂を含有し」と、本願発明の「造粒物に対して、1重量%以下の含有率で少量の吸水性樹脂を含有し」とは、「造粒物に対して、所定値以下の含有率で吸水性樹脂を含有する」点で共通している。
f.引用発明の「被覆粒状物に対して、10重量%以下の含有率で水分を含有する」は、本願発明の「被覆粒状物に対して、12重量%以下の含有率で水分を含有する」に含まれている。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「5ミリメートル以下の粒度の粉状のプラスチック材料に、回収された吸水性樹脂及び添加物質を混合し、この混合物を造粒して、所定値以上の粒度の造粒物を形成し、この造粒物の表面の少なくとも一部を、被覆材料、吸水性樹脂及び添加物質を含有する混合物により被覆して被覆粒状物とし、この被覆粒状物を乾燥して、前記造粒物に対して、所定値以下の含有率で吸水性樹脂を含有し、前記被覆粒状物に対して、12重量%以下の含有率で水分を含有する乾燥被覆粒状物とすることを特徴とする粒状の排泄物処理材の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]造粒物を形成する際に用いられる回収された吸水性樹脂が、本願発明では、吸水した吸水性樹脂から回収された自重の50倍以上の水を含有する含水したものであるのに対して、引用発明では、吸水性樹脂が高吸水性樹脂であって、自重に対してどの程度水を含有できるものであるのか明らかではなく、含水した状態のものではない点。
[相違点2]芯部の粒度が、本願発明では1ミリメートル以上としているのに対して、引用発明では2ミリメートル以上としている点。
[相違点3]吸水性樹脂の含有率が、本願発明では造粒物に対して、1重量%以下の少量としているのに対して、引用発明では5重量%未満としている点。

4.判断
[相違点1について]
引用文献1に「この混合物は、第一スクリューフィーダー10に供給し、高吸水性樹脂供給部12で高吸水性樹脂1.0kgを混合し、水供給部12で水2リットルを混合して形成された造粒用混合物を、第一スクリューフィーダー8から、押出し造粒機9に送り、押出し造粒して、3mm以上の径で長さが5mm以上の造粒物とした。」(上記2.(2-1)(カ)の段落【0037】参照)と記載されているように、引用発明においても、造粒物を形成する際に、プラスチック材料と吸水性樹脂と添加物質を混合したものに水を添加することで、吸水性樹脂が水を含水した状態として造粒用混合物を形成することが行われていることから、造粒物を形成する際に用いる吸水性樹脂として、あらかじめ含水した状態のものを用いるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項であるということができる。
そして、引用文献2に「高吸水性樹脂は、自重の数十倍から二百倍程度の水を吸収しても、形を保持できる樹脂であり、・・・・」(上記2.(2-2)(ウ)参照)とあるように、排泄物処理材に用いる吸水性樹脂として、自重の数十倍から二百倍程度の水を吸収できるものを用いることも普通に行われている事項であることから、引用発明において、自重の50倍以上の水を含有するような吸水性樹脂を用いることも、当業者が適宜選択し得る事項である。
[相違点2について]
本願発明において、粒状物の粒度を1ミリメートル以上としている点について、本願明細書の記載を参照すると、段落【0025】に「本発明において、吸水性樹脂を含有させた有機質材料廃棄物の粉砕物の乾燥造粒物又は乾燥された被覆粒状物は、その侭、動物の排泄物処理材として使用することかできるが、この場合、粒状物の崩壊又は剥離等により粉塵となって飛散するのを避けるために、例えば、0.1ミリメートルより小さい粒径の細かい粉状部分を分離しておくのが好ましい。本発明において粒状の排泄物処理材は、0.1ミリメートル以下の粒度の有機質材料廃棄物粉砕物の乾燥物等の微細な粉塵の発生を極力避けるために、例えば1ミリメートル以上の粒径の造粒物に造粒されるのが好ましいが、3ミリメートル以上の粒径の粒子に造粒すると、例えば、トイレ用の箱から室内に散り難くなり、仮令散ったとしても、粒子を拾い集めるのが容易であり、室内の衛生を保つ上で好ましい。しかし、これらの場合、1ミリメートル以下の粒子の存在や、3ミリメートル以下の粒子の存在を完全に排斥するものではない。」と記載されているように、粉塵の発生防止と取扱いのし易さから、下限を決めたことが示されている。 さらに、本願の実施例として造粒物の粒度を4mmとすることが記載されている。
一方、引用文献1には、粒状物の粒度について、「本発明の動物の排泄物処理材の粒状物の粒度は、2mm以上であるのが、粉状物が少なくなるので好ましいが、6mm以下とするのが使用上好ましい。」(上記2.(2-1)(ウ)の段落【0009】参照)としていることから、本願発明と引用発明における粒状物の粒度については、その数値範囲の意味するところにおいて両者の間に実質的な差異はないということができる。
[相違点3について]
本願発明において、吸水性樹脂の粒状物に対する含有量を1重量%以下としている点について、本願明細書の記載を参照すると、段落【0027】に「しかし、この含水吸水性樹脂は、吸水性の高い高吸水性樹脂で、高倍率で水を吸収して、液状乃至ゲル状となつているものは、粉状プラスチック材料、又は粉状プラスチック材料及び有機質材料廃棄物粉砕物の混合物といった被造粒材料に、造粒前に混合するのに扱い易いので好ましく、また、多くの水を吸収しているので吸水性樹脂の使用量を少なくできて好ましい。このような含水吸水性樹脂は、5ミリメートル以下の粒度の粉状プラスチック材料、又は5ミリメートル以下の粒度の粉状プラスチック材料及び5ミリメートル以下の粒度の有機質材料廃棄物粉砕物を含む被造粒材料に混合して、造粒装置で造粒するときの潤滑材として機能する。高吸水性樹脂の場合は、高吸水性樹脂の量が形成される粒状芯部の1重量%以下の量であっても、含水してゲル状又は溶液状となつているので、潤滑作用を発揮することができる。」といった記載があるに止まっており、特に1重量%以下に限定した点に格別の技術的意義があるとは認められない。
一方、引用文献1には、吸水性樹脂の粒状物に対する含有量について、「接着剤を、高吸水性樹脂とする場合には、粒状物に対し、30重量パーセント以下の含有率の一種以上の高吸水性樹脂であるのが好ましいが、粒状物に対し、5重量パーセント未満の含有率の一種以上の高吸水性樹脂とすることができる。」と粉状プラスチック材料や配合物質も吸水性を有することが記載されている(上記2.(2-1)(ウ)参照)。さらに、引用文献2には、前述のとおり吸水性樹脂として自重の数十倍から二百倍程度の水を吸収しても、形を保持できる樹脂を使用できることが記載されていることから、引用発明において、用いる吸水性樹脂の吸水力や用いる粉状プラスチック材料や配合物質の種類や量に応じて、吸水性樹脂の粒状物に対する含有量を1重量%以下とすることは、格別の技術的意義を有せず、当業者が適宜設計変更することができる範囲の事項であるということができる。

そして、本願発明があらかじめ含水した状態の吸水性樹脂を混合することによる作用効果が、材料を混合後、水を供給して吸水性樹脂に含水させることと比較して優れていることは、本願明細書に特に記載されておらず、本願発明の作用効果も、引用発明、および引用文献2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、および引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上の通り本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-19 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願2001-358277(P2001-358277)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 宮川 哲伸
山口 由木
発明の名称 粒状の排泄物処理材及び製造方法  
代理人 中里 浩一  
代理人 滝口 昌司  
代理人 川崎 仁  

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