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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1169645 |
審判番号 | 不服2005-18739 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-29 |
確定日 | 2008-01-09 |
事件の表示 | 特願2002- 45834「シールドキャップ付電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 5日出願公開、特開2003-249789、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 この出願は、平成14年2月22日に出願されたもので、平成17年5月31日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年8月2日付け手続補正書が提出されたものの、同年8月22日付けで拒絶査定されたものである。 そして、この審判請求は、この拒絶査定に対してなされたもので、上記明細書又は図面についての平成17年10月31日付け手続補正書が提出され、また、平成18年1月4日付け前置報告書が作成されている。 2.原査定 原査定の拒絶の理由は、概要、以下の理由A及びBであると認める。 理由A)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由B)この出願の請求項2又は3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1;特開2001-15976号公報 2;特開2001-127480号公報 3;特開2000-332478号公報 4;特開平11-87984号公報 3.当審の判断 3-1.平成17年10月31日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について 3-1-1.本件補正の内容 本件補正は、以下の補正事項a及びbからなるものと認める。 補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下の(CL)を(cl)に補正する。 (CL); 「【請求項1】 上面に電子部品素子の装着される回路基板と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着され、回路基板上の電子部品素子を覆うようにされた金属シールドキャップ本体とを有するシールドキャップ付電子部品において、金属シールドキャップ本体が天井壁部分と、回路基板上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分と、回路基板から離間されて回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分とを備え、金属シールドキャップ本体の少なくとも天井壁部分及び回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面に絶縁物層を形成したことを特徴とするシールドキャップ付電子部品。 【請求項2】 絶縁物層が、金属シールドキャップ本体の天井壁部分の内側表面、回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面及び回路基板上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分の半分の高さより上の部分の内側表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシールドキャップ付電子部品。 【請求項3】 絶縁物層が、金属シールドキャップ本体の内側表面全体に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシールドキャップ付電子部品。」 (cl); 「【請求項1】 上面に電子部品素子の装着される回路基板と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着され、回路基板上の電子部品素子を覆うようにされた金属シールドキャップ本体とを有するシールドキャップ付電子部品において、金属シールドキャップ本体が天井壁部分と、回路基板上面又は側面に接着剤又はろう材或いは半田によって接着又は固着される前後の対向側壁部分と、回路基板から離間されて回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分とを備え、金属シールドキャップ本体の少なくとも天井壁部分及び回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面に絶縁物層を形成したことを特徴とするシールドキャップ付電子部品。 【請求項2】 絶縁物層が、金属シールドキャップ本体の天井壁部分の内側表面、回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面及び回路基板上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分の半分の高さより上の部分の内側表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシールドキャップ付電子部品。 【請求項3】 絶縁物層が、金属シールドキャップ本体の内側表面全体に形成されることを特徴とする請求項1に記載のシールドキャップ付電子部品。」 補正事項b;段落【0007】の記載を、 「【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本発明によれば、上面に電子部品素子の装着される回路基板と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着され、回路基板上の電子部品素子を覆うようにされた金属シールドキャップ本体とを有するシールドキャップ付電子部品において、金属シールドキャップ本体が天井壁部分と、回路基板の上面又は側面に接着剤又はろう材或いは半田によって接着又は固着される前後の対向側壁部分と、回路基板から離間されて回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分とを備え、金属シールドキャップ本体の少なくとも天井壁部分及び回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面に絶縁物層が形成される。」と補正する。 なお、ここ「3-1」では、本件補正前の請求項1を「旧【請求項1】」といい、本件補正後の請求項1を「新【請求項1】」といい、他の請求項も同様とする。 3-1-2.本件補正の目的又は記載根拠について (1)補正事項aについて この補正は、特許請求の範囲においてする補正であって、旧【請求項1】に記載されていた「回路基板上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分」を「回路基板上面又は側面に接着剤又はろう材或いは半田によって接着又は固着される前後の対向側壁部分」と補正することにより、旧【請求項1】?旧【請求項3】に係る発明の、いわゆる、発明特定事項であった、前後の対向側壁部分が回路基板上面又は側面に接着又は固着されるものであることにおける、その接着又は固着を、接着剤又はろう材或いは半田によるものと、技術的に限定するものといえ、また、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における記載上の根拠は、「シールドキャップ本体13は、前後の対向側壁部分13a、13bの先端部を例えば接着剤又はろう材或いは半田により回路基板11の上面に接着又は固着することにより取り付けられ、回路基板11の上面におけるそれぞれの電子部品素子12を覆うように構成されている。」(当初明細書等の段落【0010】、参照。)にあるといえる。 してみると、この補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、また、いわゆる、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項の規定及び同条第4項の規定に適合するものである。 (2)補正事項bについて 当初明細書等の段落【0007】は、以下のとおりに記載されていたものと認められる。 「【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本発明によれば、上面に電子部品素子の装着される回路基板と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着され、回路基板上の電子部品素子を覆うようにされた金属シールドキャップ本体とを有するシールドキャップ付電子部品において、金属シールドキャップ本体が天井壁部分と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分と、回路基板から離間されて回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分とを備え、金属シールドキャップ本体の少なくとも天井壁部分及び回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面に絶縁物層が形成される。」 そして、この補正は、当初明細書等の上記段落【0007】に記載されていた「回路基板上面又は側面に接着又は固着される前後の対向側壁部分」を「回路基板上面又は側面に接着剤又はろう材或いは半田によって接着又は固着される前後の対向側壁部分」と補正することにより、補正事項aと同様に、前後の対向側壁部分が回路基板上面又は側面に接着又は固着されていることにおける、その接着又は固着を、接着剤又はろう材或いは半田によるものと、技術的に限定するもので、同じく補正事項aと同様に、当初明細書等における記載上の根拠は、その段落【0010】にあるといえる。 してみると、この補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 3-1-3.本件補正の独立特許要件について 新【請求項1】?新【請求項3】に係る発明(以下、「補正発明1」?「補正発明3」という。)は、これら新【請求項】に記載の事項により特定されるものであって、これら新【請求項】の記載は、先に「3-1-1」で(cl)として記載したとおりのものと認める。 そして、補正発明1?3について検討すると、これら発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。 これに対し、平成18年1月4日付け前置報告書には、補正発明1?3は、以下の理由a及びbにより、特許出願の際独立して特許を受けることができないとの報告が為されている。 理由a)補正発明1は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由b)補正発明2又は3は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1;特開2001-15976号公報 刊行物2;特開2001-127480号公報 刊行物3;特開2000-332478号公報 刊行物4;特開平11-87984号公報 そこで、理由a及びbについて検討する。 (1)理由aについて 1)刊行物1には、以下の記載1ア?1ウが、また、刊行物2には、以下の記載2ア?2イが認められる。更に加えて、刊行物3には、以下の記載3アが、また、刊行物4には、以下の記載4ア?4イが認められる。 刊行物1;特開2001-15976号公報 1ア;「【請求項1】 配線基板の実装部に素子を搭載するとともに、該配線基板の接合部に該素子搭載部の少なくとも一部を覆うように接合されたシールドキャップを有する配線基板であって、 該接合部と該実装部とが配線基板の同一平面上に形成されるとともに、該シールドキャップの側面に開口部を有することを特徴とするシールドキャップ付き配線基板。」 1イ;「【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、シールドキャップの接合部と素子の実装部とが配線基板の同一平面上に形成されるとともに、該シールドキャップの側面に開口部を有するシールドキャップ付き配線基板を要旨とする。かかる構成によれば、一度のスクリーン印刷でシールドキャップの接合部と素子の実装部に同時にハンダペーストを塗布することができ、シールドキャップ接合も素子搭載と同時に行え、ハンダリフローも一回リフロー炉に通すだけですむ。・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。)。 【0010】シールドキャップ側面の開口部の数は1以上であれば特に制限されないが、ハンダリフロー時の対流伝熱効率やガス抜け性を良好にするために、2以上の開口部を設けることが好ましい。この場合、請求項2に記載の発明のように、2以上の開口部を有する一つのシールドキャップが2以上の接合部に接合された構造(図4を参照)の配線基板となる。」及び【図4】 1ウ;「【0027】(2)シールドキャップ 用いるシールドキャップの外径寸法は、幅4.6×長さ6.3×高さ0.3(単位;mm)とする。開口形状は、図1、図2及び図3に示す3種類の形状とする。材質は洋白(亜鉛-銅-ニッケル合金)である。」 刊行物2;特開2001-127480号公報 2ア;「【特許請求の範囲】 【請求項1】プリント基板を内蔵した電子機器のシールド構造であって、 電子機器のケースの外側に導電性のシールド部材を取り付けたことを特徴とする電子機器のシールド構造。 【請求項2】前記シールド部材の一部に凸部、あるいは折り曲げ部を設け、電子機器のケースの一部に貫通部を設け、前記貫通部に前記凸部または折り曲げ部を挿入して前記シールド部材を前記ケースの外側に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の電子機器のシールド構造。 【請求項3】プリント基板に搭載される部品に対向するケースの該当部分または該当部分を含む所定の部分を切り欠き、切り欠き部に前記プリント基板の部品が入るようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の電子機器のシールド構造。 【請求項4】プリント基板に搭載される部品に対向するケースの該当部分または該当部分を含む所定の部分の肉厚を薄くしたことを特徴とする請求項1または2記載の電子機器のシールド構造。 【請求項5】前記折り曲げ部は前記シールド部材の端部を折り曲げて構成することを特徴とする請求項2記載の電子機器のシールド構造。 【請求項6】前記シールド部材の凸部または折り曲げ部を前記貫通部に挿入し、前記凸部または折り曲げ部を前記プリント基板のアースに接続したことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の電子機器のシールド構造。 【請求項7】前記シールド部材の凸部または折り曲げ部を前記貫通部に挿入し、導電性のバネにより前記凸部または折り曲げ部をプリント基板のアースに接続することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の電子機器のシールド構造。」 2イ;「【0003】図5(A)は、電子機器のプラスチック性のケース11の内側に導電性のアルミ蒸着層12を形成してノイズをカットするようにした従来例のシールド構造を示す図である。 【0004】この場合、ケース11の厚さを薄くすると、プリント基板13に搭載された部品の先端がアルミ蒸着層12に接触する可能性があるので、両者の間に絶縁シート14を挟むようにしている。」及び【図5】の(A) 刊行物3;特開2000-332478号公報 3ア;「【特許請求の範囲】 【請求項1】 天板および側板を有する一方の解放された箱形状を呈し、前記側板の解放縁部を基板の接地パターンに接触させて設置され、上記基板に設けた電子部品を覆うシールドケースであって、 樹脂材料により天板および側板を有する一方の解放された箱形状に形成されたケース本体と、 弾性および導電性を備え、上記ケース本体の天板および側板に倣い、かつ上記ケース本体における側板の解放縁部より突出するシールド体とから成り、 上記ケース本体と上記シールド体とを互いに一体に成形して成ることを特徴とするシールドケース。」 刊行物4;特開平11-87984号公報 4ア;「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも一主面の所定領域に電子部品が搭載・実装され、かつ一主面に一部が導出する接地層を備えた配線板本体と、 前記電子部品の搭載・実装領域を含む配線板本体の一主面を被覆する絶縁性樹脂層-導電層系シールドとを有し、 前記導出した接地層に、シールド層を成す導電層の一部が絶縁性樹脂層を貫通して電気的に接続された構成を採っていることを特徴とする実装回路装置。 【請求項2】 絶縁性樹脂層-導電層系シールドは、主として液晶ポリマーで絶縁性樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の実装回路装置。」 4イ;「【0010】また、上記配線板本体の電子部品を実装した一主面上に、配置されるシールド層は、絶縁性樹脂層-導電層系であり、接着・絶縁性樹脂層を支持基材とし、これに導電層を一体的に積層配置した構成を採っている。ここで、導電層としては、たとえば銅箔やアルミニウム箔などの厚さ 5?35μm 程度の導電性金属層、あるいは厚さ50? 100μm 程度の導電性樹脂層などである。なお、支持基材を成す絶縁性樹脂は、たとえば液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂のような熱硬化性樹脂などである。」 2)刊行物1には、記載1アによれば、「配線基板の実装部に素子を搭載するとともに、該配線基板の接合部において、該素子を搭載した部位の少なくとも一部を覆うように、接合されたシールドキャップを有する配線基板であって、該接合部と該実装部とが配線基板の同一平面上に形成されるとともに、該シールドキャップの側面に開口部を有するシールドキャップ付き配線基板」の発明が記載されていると認められる。 そして、上記発明におけるシールドキャップは、記載イ、特に、その【図4】によれば、天井壁といえる部分と、シールドキャップの側面の一部を構成する、互いに対向する側壁といえる部分とを有しているのものを採用でき、この側壁といえる部分が配線基板の接合部にハンダで接合されることにより、上記発明における配線基板の同一平面上に接合されていることが見て取れ、更に、上記シールドキャップは、記載1ウによれば、その材質が亜鉛-銅-ニッケル合金のものを採用できることも見て取れる。また、上記発明における素子が電子部品素子であることは、刊行物1の記載全体から明らかである。 してみると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 刊行物1発明;「配線基板の実装部に電子部品素子を搭載するとともに、該配線基板の接合部において、該電子部品素子を搭載した部位の少なくとも一部を覆うように、接合されたシールドキャップを有する配線基板であって、該接合部と該実装部とが配線基板の同一平面上に形成されるとともに、該シールドキャップの側面に開口部を有するシールドキャップ付き配線基板において、上記シールドキャップは、天井壁といえる部分と、その側面の一部を構成する、互いに対向する側壁といえる部分とを有し、この側壁といえる部分が配線基板の接合部にハンダで接合されることにより、配線基板の上記同一平面上に接合されて、更に、上記シールドキャップは、その材質が亜鉛-銅-ニッケル合金である、上記シールドキャップ付き配線基板」 3)次に、補正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「配線基板」及び「互いに対向する側壁といえる部分」が、補正発明1の「回路基板」及び「前後の対向側壁部分」に相当し、両者は、「上面に電子部品素子の装着される回路基板と、回路基板の上面又は側面に接着又は固着され、回路基板上の電子部品素子を覆うようにされた金属シールドキャップ本体とを有するシールドキャップ付電子部品において、金属シールドキャップ本体が天井壁部分と、回路基板上面又は側面に接着剤又はろう材或いは半田によって接着又は固着される前後の対向側壁部分とを備えたシールドキャップ付電子部品」で一致し、以下の相違点a及びbで相違していると認められる。 相違点a;補正発明1は、回路基板から離間されて回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分を備えるのに対し、刊行物1発明は、シールドキャップの側面に開口部を有する点。 相違点b;補正発明1は、少なくとも天井壁部分及び回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分の内側表面に絶縁物層を形成した点。 4)そこで、まず、相違点aが容易に為し得るかについて検討する。 刊行物1発明のシールドキャップにおいて、その側面に開口部を構成するために、配線基板から離間されて備えられた横方の対向側壁部分を設ける理由は、刊行物1の記載全体を見ても、見当たらない。むしろ、わざわざ、横方の対向側壁部分を設けるより、天井壁といえる部分と配線基板とによって、開口部を画定し、これを構成すると考えるのが、自然であるが、いずれにしても、上記理由は見当たらないのである。 また、刊行物2には、記載2アによれば、電子機器のシールド構造に係る発明が記載されていると認められるものの、該発明からは、刊行物1発明において、その開口部を構成するために、回路基板から離間されて備えられた横方の対向側壁部分を設けることが容易に為し得るとする理由は、何ら、見当たらない。なお、念のために、刊行物3及び4を見ても、同様である。 よって、相違点aが容易に為し得るということはできない。 5)相違点bが容易に為し得るかについて検討する。 相違点aが、先に「4)」で述べたように、容易に為し得るということはできない以上、回路基板の上面との間に開口部を画定する横方の対向側壁部分をその内容として有する相違点bが容易に為し得るといえないのは明らかであるが、ここでは、進んで、刊行物1発明におけるシールドキャップの内側表面に絶縁物層を形成することが容易に為し得るかについて、検討してみることにする。 5-1)刊行物1には、刊行物1発明のシールドキャップの内側表面に絶縁物層を形成することを動機付ける記載は見当たらないし、また、刊行物2には、記載2イによれば、従来例のシールド構造として、プリント基板を内蔵したケース11に導電性のアルミ蒸着層12を形成することにより、該ケース11にノイズをシールドする機能を持たせる技術が記載され、更に、ケース11とプリント基板との間に絶縁シート14を配置させる技術が記載されていると認められるものの、この技術は、プリント基板上にシールドキャップが接合されたシールドキャップ付きプリント基板に関する技術ではなく、しかも、絶縁シート14を上記ケース11の内側表面に絶縁物層として配置させる技術でもないから、当業者が、これら技術に接したからといって、刊行物1発明のシールドキャップ内側表面に絶縁物層を形成することが容易に為し得るということはできない。 5-2)念のために、刊行物3及び4についても、見てみることにする。 刊行物3には、記載3アによれば、シールドケースについての発明が記載さていると認められるものの、絶縁という機能に着目した記載は見当たらず、刊行物3に記載の発明に基づいても、刊行物1発明のシールドキャップ内側表面に絶縁物層を形成することが容易に為し得るということはできない。 刊行物4には、記載4アによれば、電子部品の搭載・実装領域を含む配線板本体の一主面を被覆する絶縁性樹脂層-導電層系シールドについての発明が記載され、この絶縁性樹脂層-導電層系シールドは、記載4イによれば、支持基材としての役割を有する接着・絶縁性樹脂層に導電層を一体的に積層配置したシールドであって、絶縁性樹脂層は、導電層に対して付加的に設けられたものではない。 これに対し、刊行物1発明におけるシールドキャップは、そのそれ自体がシールドという機能を有し、何ら、これを支持する基材を必要としないもので、また、これが必要であることを示唆する記載も刊行物1にはない。 してみると、刊行物1には、先に「5-1)」で述べたように、刊行物1発明のシールドキャップの内側表面に絶縁物層を形成することを動機付ける記載も見当たらないことから、刊行物4に記載の、絶縁性樹脂層を導電層に対して付加的に設ける技術ではない上記発明に基づき、刊行物1発明におけるシールドキャップに絶縁性樹脂層を形成することが容易に為し得るということはできない。 5-3)よって、刊行物1発明におけるシールドキャップの内側表面に絶縁物層を形成することが容易に為し得るとする理由はないが、いずれにしても、相違点bが容易に為し得ないことには変わりはない。 (2)理由bについて 補正発明2又は3は、補正発明1を更に技術的に限定するものであることは明らかで、補正発明1が、先に「(2)」で述べたように、容易に発明をすることができたものであるといえない以上、これら発明も、容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3)まとめ 補正発明1?3が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらないから、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 3-1-4.結び 本件補正は、認められるものである。 3-2.原査定の拒絶理由について 原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 4.結語 この出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2007-12-13 |
出願番号 | 特願2002-45834(P2002-45834) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川内野 真介 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
近野 光知 井上 猛 |
発明の名称 | シールドキャップ付電子部品 |
代理人 | 森田 哲二 |
代理人 | 平井 輝一 |
代理人 | 浜野 孝雄 |