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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G
管理番号 1169781
審判番号 不服2005-9919  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-26 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 平成7年特許願第2778号「車両用サスペンションアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成8年7月23日出願公開、特開平8-188022〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年1月11日の出願であって、平成16年3月30日付けの拒絶理由通知書に記載した理由によって平成17年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成17年6月27日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年6月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成17年6月27日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)は、平成16年6月7日付けの手続補正書により全文補正された明細書を補正しようとするものであって、本件手続補正により補正しようとする請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)は、次のとおりである。

「【請求項1】 荷重の入力面と略平行に配置される平板状の本体部(1_(3))と、この本体部(1_(3))の両側縁に沿って連設された補強部(1_(2))とを備えていて、鋼板をプレス加工することにより形成され、内端が相互に間隔をあけた二ヶ所で車体(B)にそれぞれ連結される車両用サスペンションアームであって、
前記補強部(1_(2))は、その補強部(1_(2))が前記本体部(1_(3))の前記入力面に沿う中心面の上下に跨がって且つその中心面より下側に下端を位置させて分布するように略パイプ状に形成されると共に、その補強部(1_(2))の自由端の端縁は、該補強部(1_(2))の外端よりも内側に在って、該端縁と該本体部(1_(3))の前記一側縁の下面との間には隙間が形成されていることを特徴とする、車両用サスペンションアーム。」

上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「補強部(1_(2))」について、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した技術的事項に基づいて「その補強部(1_(2))が前記本体部(1_(3))の前記入力面に沿う中心面の上下に跨がって且つその中心面より下側に下端を位置させて分布するように」略パイプ状に形成されるとし、「隙間」が補強部(1_(2))の「自由端の」端縁と本体部(1_(3))の一側縁「の下面」との間に形成されているとの限定を付加するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由(平成16年3月30日付けの拒絶理由通知書に記載した理由)に引用文献1として引用された特公平3-20607号公報(以下、同様に「引用文献1」という)には、「リンク及びその製造方法」に関して、第1?10図とともに次の事項が記載されている。
ア.「(産業上の利用分野)
本発明は、自動車の懸架装置におけるアツパアーム又はロアアームのように、他部材に対して相対回転可能に連結されるリンク及びそのリンクの製造方法に関する。」(第1頁第1欄第24行?同頁第2欄第2行)

イ.「(実施例)
図面のうち、第1図は本発明のリンクの第1実施例を示し、このリンク1は、自動車の懸架装置におけるロアアームとして使用されるもので、アーム本体2、車体に枢着する筒体3、ボールジヨイント取付座4を備える。
アーム本体2は、第2図、第3図に示すようにウエブ5とフランジ6,6からなる断面コ字形をなすもので、一端においてフランジ6,6にボアリング加工により短い管縁7,7と取付穴8,8が形成してある。」(第2頁第3欄第37行?同頁第4欄第3行)

引用文献1の上下揺動自在に枢着された自動車の懸架装置におけるロアアームに、荷重が車体前後方向及び車体左右方向、すなわちウエブ5と略平行な方向に作用することは当業者にとって自明な事項であることから、上記記載事項ア、イの記載及び第1?3図の記載を総合すると、引用文献1には、
「荷重の入力面と略平行に配置される平板状のウエブ5と、このウエブ5の両側縁に沿って連接されたフランジ6,6とを備えていて、内端が筒体3で車体に連結される自動車の懸架装置におけるロアアーム。」
の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

(2)同じく引用文献2として引用された仏国特許出願公開第2556389号明細書(以下、同様に「引用文献2」という)には、「ELEMENT PORTEUR METALLIQUE POUR STRUCTURE DE BATIMENT NOTAMMENT」に関して、図1?6bとともに次の事項が記載されているものと認められる。
ウ.「本発明に従う、図2に示される形鋼20は、連続金属帯の冷間ロール形成によって得られ、最終形態で、心線22と、同様に、心線22に垂直で、心線の両側に伸び、折り曲げ線によって心線につながる2つの翼24と26とを示す。特に、翼24、26と心線22との間に接続幕28と30を準備する。各幕28(30)は、一方、折り曲げ線29(31)によって鈍角で、好ましくは135°付近で心線22につながり、他方、心線22に平行に延びる中間帯32(34)によって対応する翼24(26)につながり、結果として、翼24(26)と幕28(30)との間の折り曲げ角度は、鋭角になり、好ましくは45°付近である。変体として、翼24、26は、帯32、34を除いて、幕28,30に直接つながることを想定できる。

更に、各翼24(26)は、その自由端にフラップ36(38)を備え、翼は、心線22にほぼ平行に伸びる中間舌片40(42)によってフラップにつながり、結果として、フラップ36(38)と翼24(26)は、その間で鋭角をなし、好ましくは45°付近である。ここで更に、変体として、舌片40、42を除くことができることを想定でき、その場合、フラップ36、38は、折り曲げ線によって翼24、26に直接つながる。

形鋼の形態は、形鋼に優れた曲げ及び捩れ強度特性を与え、少なくとも図1で示されたような“I”型の標準形鋼の強度と同等であり、重量はより軽く、とりわけ簡素な冷間ロール形成の装置を使って、連続金属片から製造できることに留意する。」(第4頁第23行?第5頁第22行)

エ.図2には、心線22の両側端部の形状が略パイプ状となったものが記載されている。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「フランジ6,6」は断面コ字形のアーム本体2の折り曲げられた部分であって(記載事項イ、第3図参照)、平板の側端部を折り曲げると平板の強度が増加することは当業者にとって自明な事項であるから、引用発明の自動車の懸架装置におけるロアアームは、折り曲げられた部分である「フランジ6,6」により強度が増加するものと認められる。よって、引用発明の「フランジ6,6」は、本願補正発明の「補強部」に相当する。
また、引用発明の「ウエブ5」、「自動車の懸架装置におけるロアアーム」は、それぞれ、本願補正発明の「本体部」、「車両用サスペンションアーム」に相当する。

したがって、両者は、
【一致点】
「荷重の入力面と略平行に配置される平板状の本体部と、この本体部の両側縁に沿って連設された補強部とを備えていて、内端が車体に連結される車両用サスペンションアーム。」
に係る発明である点で一致し、次の3点で相違する。

【相違点1】
車両用サスペンションアームについて、本願補正発明では、「鋼板をプレス加工することにより形成」と限定しているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。

【相違点2】
車両用サスペンションアームの内端と車体との連結について、本願補正発明では、「相互に間隔をあけた二ヶ所で」、「それぞれ」連結されるのに対して、引用発明では筒体3で、すなわち「一カ所で」連結される点。

【相違点3】
補強部について、本願補正発明では、「その補強部(1_(2))が前記本体部(1_(3))の前記入力面に沿う中心面の上下に跨がって且つその中心面より下側に下端を位置させて分布するように略パイプ状に形成されると共に、その補強部(1_(2))の自由端の端縁は、該補強部(1_(2))の外端よりも内側に在って、該端縁と該本体部(1_(3))の前記一側縁の下面との間には隙間が形成されている」と限定しているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1について検討する。
車両用サスペンションアームを鋼板をプレス加工することにより形成することは、従来周知の技術であるから(例えば、実願昭62-188769号(実開平1-93108号)のマイクロフィルム参照)、引用発明において、自動車の懸架装置におけるロアアーム(車両用サスペンションアーム)を、上記相違点1に係る本願補正発明の構成のごとく、鋼板をプレス加工することにより形成することに、格別の技術的困難性があるとは認められない。

(2)上記相違点2について検討する。
車両用サスペンションアームの内端と車体を相互に間隔をあけた二ヶ所でそれぞれ連結することは、従来周知の技術であるから(例えば、実願昭62-188769号(実開平1-93108号)のマイクロフィルム参照)、引用発明において、自動車の懸架装置におけるロアアーム(車両用サスペンションアーム)の内端と車体を、相互に間隔をあけた二ヶ所でそれぞれ連結するようにし、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることに、格別の技術的困難性があるとは認められない。

(3)上記相違点3について検討する。
引用文献2の形鋼20は、板材(金属帯)からなるもので、その側端部の形状が心線22の中心面の左右(図2における左右)に跨って且つその中心面より左側に先端を位置させて分布するように略パイプ状に形成されると共に、その自由端の端縁は、パイプ状の部分(幕28,30、中間帯32,34、翼24,26、中間舌片40,42、フラップ36,38)の外端よりも内側に在って、該端縁と心線22の左側の面との間には隙間が形成されているから(記載事項ウ、エ参照)、引用文献2の形鋼20は、本願補正発明の補強部と同様の形状をした略パイプ状の側端部を有するものと認められる。そして、このように板材の側端部を略パイプ状に形成すると板材の剛性が高まることは、従来周知の技術事項である(例えば、記載事項ウ、特開平2-187225号公報、実願平3-44341号(実開平6-14393号)のCD-ROM参照)。
したがって、引用発明において、板材からなる自動車の懸架装置におけるロアアーム(車両用サスペンションアーム)の剛性を高めるために、側端部にあるフランジ6,6の形状を引用文献2にも記載されている従来周知の略パイプ状に形成し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることに、格別の技術的困難性があるとは認められない。

(4)また、上記相違点1?3で指摘した構成を併せ備える本願補正発明の作用効果は、引用文献1、2の記載事項及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。

(5)よって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願の発明について
1.本願の発明
平成17年6月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年6月7日付けの手続補正書により全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 荷重の入力面と略平行に配置される平板状の本体部(1_(3))と、この本体部(1_(3))の両側縁に沿って連設された補強部(1_(2))とを備えていて、鋼板をプレス加工することにより形成され、内端が相互に間隔をあけた二ヶ所で車体(B)にそれぞれ連結される車両用サスペンションアームであって、
前記補強部(1_(2))は略パイプ状に形成されて、前記本体部(1_(3))の前記入力面に沿う中心面の上下に跨がって且つその中心面より下側に下端が位置するように分布すると共に、その補強部(1_(2))の端縁は、該補強部(1_(2))の外端よりも内側に在って、該端縁と該本体部(1_(3))の前記一側縁との間には隙間が形成されていることを特徴とする、車両用サスペンションアーム。」

2.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、前記「第2.2.引用文献とその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から、隙間を形成する補強部の端縁と本体部の一側縁についての限定事項である「自由端」、「下面」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4.当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2?5に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-08 
結審通知日 2006-11-08 
審決日 2006-11-21 
出願番号 特願平7-2778
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60G)
P 1 8・ 121- Z (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘三澤 哲也  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
ぬで島 慎二
発明の名称 車両用サスペンションアーム  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  

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