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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F27B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F27B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F27B |
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管理番号 | 1169886 |
審判番号 | 不服2006-4853 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-16 |
確定日 | 2007-12-21 |
事件の表示 | 特願2002-330429「加熱炉」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月10日出願公開、特開2004-163020〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年11月14日の出願であって、平成18年2月1日付けで拒絶査定され、これに対して、平成18年3月16日付けで拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年4月5日付けで手続補正されたものである。 第2 平成18年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 平成18年4月5日付けの手続補正を却下する。 【決定の理由】 [1]手続補正の内容 本件手続補正の内容は、次の(1)及び(2)である。 (1)補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除し、これに伴い、請求項2?3の項番を繰り上げて補正後の請求項1?2とするとともに、補正後の請求項1を従属形式から独立形式へ変更する。 (2)補正前の請求項2及び3の「処理品」を、「基板」に補正する。 [2]本件手続補正の適否 上記補正(1)は、請求項の削除を目的とした明細書の補正に該当する。 上記補正(2)は、補正前の請求項2及び3(補正後の請求項1及び2)に係る発明について、加熱炉で加熱する対象である「処理品」の内容を具体的に定めて「基板」に限定するものであって、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるあるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 〈独立特許要件について〉 [2-1]本願補正発明 本件補正後の発明は、補正後の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。 「基板を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉において、搬送される基板の左右両側の上面と下面にそれぞれシーズヒーターを搬送方向に沿って設置し、その発熱部を炉内の予熱昇温領域と本加熱昇温領域に位置させたことを特徴とする加熱炉。」 [2-2]引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-116283号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1a)「被加熱物を加熱する第1の加熱手段と、前記被加熱物を搬送するコンベアと、前記コンベアを支持する支持手段と、前記支持手段に設けられた第2の加熱手段とを備えた加熱装置。」(特許請求の範囲) (1b)「発明が解決しようとする問題点 ところがこの加熱炉では、ヒーター1a,1bにより被加熱物2が、加熱されても、被加熱物2とコンベア3a,3bの接触面より熱がコンベア3a,3bやコンベア受け金具4a,4bに逃げてしまい、被加熱物の温度分布は第4図に示すように、端の方が低くなってしまい、被加熱物2の温度分布を均一にすることが出来ない。 本発明はこのような従来の欠点を除去するものであり、被加熱物の温度分布を均一にすることにより、被加熱物の品質の向上や、生産性の向上を図ることを目的とする。」(第1頁左下欄第20行?右下欄第11行) (1c)「実施例 以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。 第1図に側断面図を示すように、コンベア受け金具4a,4bにシーズヒーター等の発熱体5a,5bを埋め込み、コンベア受け金具4a,4bを経て、コンベア3a,3bを加熱している。被加熱物2は、上下のパネルヒーター1a,1bによる加熱と共に、コンベア3a,3bからも端部が加熱される為、被加熱物2の温度分布は、第2図に示すように、均一な温度分布が得られ、高品質高生産性の被加熱物が得られる。」(第1頁右下欄第18行?第2頁左上欄第9行) [2-3]当審の判断 (1)刊行物1に記載された発明 刊行物1の(1a)には、「被加熱物を加熱する第1の加熱手段と、前記被加熱物を搬送するコンベアと、前記コンベアを支持する支持手段と、前記支持手段に設けられた第2の加熱手段とを備えた加熱装置。」が記載されており、この加熱装置は加熱炉ともいえるから、この記載を、本願補正発明の記載ぶりに則り整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているということができる。 「被加熱物を加熱する第1の加熱手段と前記被加熱物を搬送するコンベアを備えた加熱炉において、第2の加熱手段をコンベアの支持手段に設けた加熱炉。」 (2)本願補正発明と刊行物発明との対比 本願補正発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の加熱炉は、被加熱物を加熱する第1の加熱手段と被加熱物を搬送するコンベアを備えたものであるから、被加熱物を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉であるといえるし、また、刊行物発明の「第2の加熱手段」は、(1c)の 「・・・第1図に側断面図を示すように、コンベア受け金具4a,4bにシーズヒーター等の発熱体5a,5bを埋め込み、・・・」という記載からみて、シーズヒーターであることは明らかであり、そして、このシーズヒーターは、コンベアの支持手段(該支持手段が搬送される被加熱物の左右両側に搬送方向に沿って設置されていることは自明である)に設けられているのであるから、搬送される被加熱物の左右両側にそれぞれ搬送方向に沿って設置しているものといえる。 したがって、両者は、「被加熱物を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉において、搬送される被加熱物の左右両側にそれぞれシーズヒーターを搬送方向に沿って設置した加熱炉。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点; (イ)本願補正発明では、被加熱物が基板であると規定するのに対して、刊行物発明では、被加熱物が基板であるか否か不明である点。 (ロ)シーズヒーターの設置位置に関し、本願補正発明では、被加熱物の左右両側の上面と下面にそれぞれ設置するのに対して、刊行物発明では、被加熱物の左右両側に設置されるものの、その上面と下面にそれぞれ設置するものではない点。 (ハ)本願補正発明では、シーズヒーターの発熱部を炉内の予熱昇温領域と本加熱昇温領域に位置させるのに対して、刊行物発明では、シーズヒーターの発熱部を炉内の予熱昇温領域と本加熱昇温領域に位置させるか否か不明である点。 (3)相違点についての判断 相違点(イ)について 被加熱物を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱するために用いられる加熱炉の代表的なものとして、半田リフロー炉は広く知られているものであり、このような半田リフロー炉においては、被加熱物としてプリント基板や配線基板等の基板が加熱処理されていることは、本願出願前に当業者間において周知の技術事項であるから(実願昭59-120680号(実開昭61-36364号)のマイクロフィルム、特開平2-30373号公報、特開平2-41770号公報参照)、刊行物発明を半田リフロー炉として用いることを想到し、被加熱物が基板であることを規定する程度のことは、当業者が容易に想到することができたことである。 相違点(ロ)について 上記(1b)によれば、従来の加熱炉では、ヒーターにより被加熱物が加熱されても、被加熱物とコンベアの接触面より熱がコンベアやコンベア受け金具に逃げてしまい、被加熱物の温度分布は、端の方が低くなってしまい、被加熱物の温度分布を均一にすることが出来ないので、このような従来の欠点を除去して、被加熱物の温度分布を均一にするために、刊行物発明は、第2の加熱手段をコンベアの支持手段に設けたものであるところ、被加熱物を炉内のコンベアで搬送しながら加熱する加熱炉において、被加熱物の端部の温度低下を防止して温度分布を均一なものとするために、被加熱物の左右両側の上面又は下面若しくは上面と下面にそれぞれ第2の加熱手段を搬送方向に沿って設置することは、本願出願前に当業者間において周知の技術事項である(要すれば、上記相違点(イ)の項で挙げた実願昭59-120680号(実開昭61-36364号)のマイクロフィルム等参照)。 してみると、刊行物発明において、第2の加熱手段であるシーズヒーターを被加熱物の左右両側の上面と下面にそれぞれ設置するよう設計変更する程度のことは、当業者であれば容易になし得たことである。 相違点(ハ)について 半田リフロー炉の炉内が、クリーム半田乾燥領域、予熱昇温領域、予熱保温領域、本加熱昇温領域(リフロー領域ともいう)及び冷却領域からなることは、本願出願前に当業者が通常知る程度の技術事項であるし(例えば、特開平6-97644号公報の段落【0020】及び図1?2参照)、一方、被加熱物が加熱されても、被加熱物とコンベアの接触面より熱がコンベアやコンベア受け金具に逃げてしまうので、被加熱物の温度分布は、端の方が低くなってしまうという、刊行物1の(1b)の記載に基づけば、被加熱物とコンベアやコンベア受け金具との温度差が大きくなることが明らかな炉内の昇温領域において、熱の逃げが大きくなり被加熱物の温度分布の差が大きくなるであろうことは当業者が容易に予測することができることであるから、刊行物発明を半田リフロー炉として用いる際に、被加熱物の温度分布を均一なものとするために、、被加熱部の温度分布の差が大きくなることが予測される予熱昇温領域と本加熱昇温領域に、シーズヒーターの発熱部を位置させることは当業者であれば容易に想到することができたことといえる。 そして、上記相違点(イ)、(ロ)及び(ハ)に係る本願発明の特定事項によって、本願補正発明が予期できないほどの顕著な効果を奏するともいえない。 (4)小活 したがって、本願補正発明は、刊行物発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [2-4]むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての審決 [1]本願発明 平成18年4月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年1月13日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりでのものである。 「処理品を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉において、搬送される処理品の両側にシーズヒータを搬送方向に沿って設置したことを特徴とする加熱炉。」 [2]原査定の理由の概要 これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1(上記第2の[2-2]参照)に記載された発明であるか、又は刊行物1に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は同法29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 [3]引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の主な記載事項は、上記第2の[2-2]に記載したとおりである。 [4]当審の判断 刊行物1に記載された発明(刊行物発明)は、上記第2の[2-3](2)に記載されたとおりのものである。 本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の加熱炉は、被加熱物を加熱する第1の加熱手段と被加熱物を搬送するコンベアを備えたものであるから、被加熱物を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉であるといえるし、また、刊行物発明の「第2の加熱手段」は、(1c)の 「・・・第1図に側断面図を示すように、コンベア受け金具4a,4bにシーズヒーター等の発熱体5a,5bを埋め込み、・・・」という記載からみて、シーズヒーターであることは明らかであり、そして、このシーズヒーターは、コンベアの支持手段(該支持手段が搬送される被加熱物の左右両側に搬送方向に沿って設置されていることは自明である)に設けられているのであるから、搬送される被加熱物の左右両側にそれぞれ搬送方向に沿って設置しているものといえる。そして、刊行物発明の「被加熱物」は、加熱処理の対象となる処理品と言い換えることができる。 したがって、両者は、「処理品を炉内の搬送装置で搬送しながら加熱する加熱炉において、搬送される処理品の両側にそれぞれシーズヒーターを搬送方向に沿って設置した加熱炉。」である点一致しており、同一の発明であるといえる。 [5]むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-18 |
結審通知日 | 2007-10-24 |
審決日 | 2007-11-06 |
出願番号 | 特願2002-330429(P2002-330429) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F27B)
P 1 8・ 575- Z (F27B) P 1 8・ 113- Z (F27B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 浅井 雅弘、米田 健志 |
特許庁審判長 |
長者 義久 |
特許庁審判官 |
井上 猛 近野 光知 |
発明の名称 | 加熱炉 |
代理人 | 河▲崎▼ 眞樹 |