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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
管理番号 1170094
審判番号 不服2004-11267  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-31 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 平成6年特許願第107064号「低周波振動洗濯装置の洗濯物挟まり防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年5月30日出願公開、特開平7-136373号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月20日(パリ条約による優先権主張1993年5月24日、大韓民国)の出願であって、平成16年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、平成19年1月11日付けで当審による拒絶理由が通知されたものであり、その請求項1に係る発明は、平成19年7月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「多状媒質が収容され、内部表面を有する洗濯槽と、
上側端と下側端とを有し、前記上側端は前記内部表面を通じて前記洗濯槽の内部に一定の長さだけ延長され、前記下側端は前記洗濯槽の内部表面下でそこに設けられた駆動手段と連結される軸と、
前記駆動手段により駆動するため、前記軸の上側端に接続され、前記多状媒質に共振現象を生じるディスクと
を備える低周波振動型洗濯機であって、
前記ディスクと前記洗濯槽の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止するため、前記隙間を少なくとも部分的に埋めるための柔軟性遮断材を備える
ことを特徴とする低周波振動洗濯装置の洗濯物挟まり防止装置。」

2.引用例
これに対して、当審において平成19年1月11日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭63-156462号(実開平2-75083号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「この洗濯機1では、上方が開口した洗濯槽2の内部に、パンチングメタルなどから形成された円筒形の遠心脱液槽である脱水槽3が配設されている。ここで、この脱水槽3は、ウオータシール4及びボールベアリング5を介して前記洗濯槽2の底面に取付けられた中空構造の回転軸6に支持されており、この回転軸6がベルト機構7によつてモータ8と連結されて、回転自在になつている。一方、この脱水槽3の底部には、多数の通液孔9が形成された平板状の撹拌手段である揺動板10が配設されている。ここで、この揺動板10は、ウオータシール11及びスライドベアリング12を介して前記回転軸6内を貫通したスライドロツド13に支持されており、このスライドロツド13がクランク機構14を介してモータ15と連結されて、上下動自在になつている。」(明細書4ページ2?17行)
(b)「この洗濯機1では、前記揺動板10はパンチングメタルなどから形成された底板16によつて蓋われており、脱水槽3内の洗濯物(図示せず)と接触することがないようになつている。」(明細書4ページ18行?5ページ1行)
(c)「このような構成において、この洗濯機1で洗濯を行なう場合は、まず、洗濯槽2内に洗濯物と洗浄液17とを投入する。そこで、モータ15を作動させてクランク機構14を駆動すると、揺動板10はスライドロツド13を介して上下動される。すると、洗浄液17は、第3図に例示するように上下動する揺動板10と洗濯槽2との間隙に連続的に吸引圧縮され、通液孔9や揺動板10の周囲から噴出するなどして流動する。そこで、この流動する洗浄液17により、洗濯物は手揉み洗いと同様に、穏やかに洗濯されることになる。」(明細書5ページ4?14行)
(d)第1図には、スラストロツド13が上側端と下側端とを有し、前記上側端は脱水槽3の内部表面を通じて前記脱水槽3の内部に一定の長さだけ延長され、前記下側端は前記脱水槽3の内部表面下でそこに設けられたクランク機構14を介してモータ15と連結される点が図示されている。
(e)第1図には、揺動板10と脱水槽3の内部表面との間に隙間が存在することが図示されている。
(f)第2図には、スライドロツド13の上側端に接続された円盤状の揺動板10が図示されている。

底板16は、上記(b)に摘記したように、揺動板10と脱水槽3の洗濯物とが接触するのを防止するという働きがあるから、「揺動板10と脱水槽3の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止する」機能を有しているということは明らかである。
また、上記(c)に摘記したように、「モータ15を作動させてクランク機構14を駆動すると、揺動板10はスライドロツド13を介して上下動される」ことから、揺動板10が上下振動を生じることは明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、
「洗浄液17が収容され、内部表面を有する脱水槽3と、
上側端と下側端とを有し、前記上側端は前記内部表面を通じて前記脱水槽3の内部に一定の長さだけ延長され、前記下側端は前記脱水槽3の内部表面下でそこに設けられたクランク機構14を介してモータ15と連結されるスラストロツド13と、
前記モータ15により駆動するため、前記スラストロツド13の上側端に接続され、上下振動を生じる揺動板10と
を備える洗濯機であって、
前記揺動板10と前記脱水槽3の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止するための底板16を備える
洗濯機。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「洗浄液17」が前者における「多状媒質」に相当することは明らかであり、また、後者における「脱水槽3」は、その機能又は構造からみて、前者における「洗濯槽」に相当し、以下同様に、「モータ15」が「駆動手段」に、「スラストロツド13」が「軸」に、それぞれ相当する。
引用発明における「揺動板10」は、「駆動手段により駆動するため」「軸の上側端に接続され」る「円盤状部材」の限りにおいて、本願発明における「ディスク」と共通する。
また、引用発明は、上記「2.(c)」に摘記したように、モータ15を作動させてクランク機構14を駆動すると、揺動板10がスライドロツド13を介して上下動することからみて、引用発明における「洗濯機」は「低周波振動型洗濯機」あるいは「低周波振動洗濯装置」と言い得るものである。
さらに、引用発明における「底板16」は、円盤状部材(揺動板10)と洗濯槽の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止するためのものであるから、「洗濯物挟まり防止装置」ということができ、引用発明における「底板16」と本願発明における「柔軟性遮断材」とは、どちらも円盤状部材と洗濯槽の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止するための「遮断手段」であるという点で共通する。

してみると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、
「多状媒質が収容され、内部表面を有する洗濯槽と、
上側端と下側端とを有し、前記上側端は前記内部表面を通じて前記洗濯槽の内部に一定の長さだけ延長され、前記下側端は前記洗濯槽の内部表面下でそこに設けられた駆動手段と連結される軸と、
前記駆動手段により駆動するため、前記軸の上側端に接続される円盤状部材と
を備える低周波振動型洗濯機であって、
前記円盤状部材と前記洗濯槽の内部表面との間の隙間に洗濯物が挟まることを防止するための遮断手段を備える
低周波振動洗濯装置の洗濯物挟まり防止装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明における円盤状部材は、「多状媒質に共振現象を生じるディスク」であるのに対して、引用発明における円盤状部材(揺動板10)は、上下振動を生じるものの、多状媒質に共振現象を生じるかどうか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明における遮断手段は、「前記隙間を少なくとも部分的に埋めるための柔軟性遮断材」であるのに対して、引用発明における遮断手段は、底板16である点。

4.判断
次に、上記相違点1,2について検討する。
(相違点1について)
振動洗濯装置において、円盤状部材を振動させて多状媒質に共振現象を生じさせることにより洗濯物を洗濯することは、例えば特開昭62-292191号公報(特に2ページ右上欄3?13行の記載参照)などに見られるように従来周知であるから、引用発明において、振動周波数を適宜選択することによって円盤状部材(揺動板10)を多状媒質に共振現象を生じるものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(相違点2について)
洗濯装置において、相対的に運動する部材間の隙間に洗濯物が挟まるのを防止するため、前記隙間を埋めるための柔軟性遮断材を設けることは、例えば特開平1-146576号公報(特に1ページ右下欄8?13行、2ページ左上欄19行?右上欄3行、2ページ右上欄6?11行、2ページ右上欄12?13行の記載参照)などに見られるように従来周知であり、しかも、振動洗濯装置において、円盤状部材と洗濯槽の内部表面との間の隙間に該隙間を埋めるための柔軟性遮断材を設けることも、例えば実願昭61-165103号(実開昭63-73187号)のマイクロフィルム(Oリング14を参照)などに見られるように従来周知であるから、引用発明の底板16に代えて従来周知の柔軟性遮断材を採用し、上記相違点2に係る本願発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-07 
結審通知日 2007-08-10 
審決日 2007-08-21 
出願番号 特願平6-107064
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 川本 真裕
増沢 誠一
発明の名称 低周波振動洗濯装置の洗濯物挟まり防止装置  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  
代理人 勝沼 宏仁  

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