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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1170458
審判番号 不服2003-21791  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-10 
確定日 2008-01-09 
事件の表示 特願2000-562155「産業廃棄物を主材とする人工礁の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月10日国際公開、WO00/06314、平成14年 7月16日国内公表、特表2002-521047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年7月28日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成15年8月7日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成15年12月10日付で手続補正がなされたものであって、当審よりの平成18年4月14日付の審尋に対して、平成18年10月18日付で回答書が提出されたものであって、その後当審より通知された平成19年1月29日付の拒絶理由通知書に対して、平成19年7月30日付で意見書および手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成19年7月30日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「レッドマッドよりなり、50?100重量%未満の主原料と、
高炉スラグ、鉱山物精製工場からのスラッジ、ガラス破砕片、石材又は骨材採取場の石粉、上下水終末処理場のスラリー、生活ごみ焼却炉からの灰、パルプスラッジ及びスラリー、火力発電所の石炭灰、及び採炭副産物から構成されるグループから選択され、0重量%超過?50重量%の副原料と、10重量%?25重量%の可塑剤と、3重量%?5重量%の鉱化剤を含む組成物を1000℃?1300℃の温度で焼成して形成することを特徴とする人工礁。」(以下、「本願発明」という。)

3.刊行物とそれに記載された発明
(3-1)当審より通知された拒絶理由通知書で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、特開平9-100153号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「セラミックス原料組成物とその組成物から成形したセラミックス成形物およびその成形物を製造する方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】石炭灰、リン酸アルミニウム、水および硬化調節剤を含有してなることを特徴とするセラミックス原料組成物。
・・・
【請求項6】前記請求項1?請求項5のいづれか1項に記載のセラミックス原料組成物を30℃から180℃で5分間から30時間乾燥してなることを特徴とするプレセラミックス組成物
【請求項7】前記請求項1?請求項5のいづれか1項に記載のセラミックス原料組成物を成形、乾燥後、または、乾燥、成形後に150℃から600℃の温度で焼結してなることを特徴とするセラミックス成形物。」
(ロ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス原料組成物およびそれからなるセラミックスの製造方法に関するものであり、さらに詳細には産業廃棄物として大量に排出される石炭灰を有効活用できるセラミックス原料組成物とその組成物から成形したセラミックス成形物およびその成形物を製造する方法に関するものである。」
(ハ)「【0026】〔セラミックス成形体の利用分野〕・・・石炭灰を含有するセラミックス成形品(成形物)が、代替可能なコンクリート製品を下記に列記する。・・・
【0032】(6)海洋製品
(A)港湾用
消波・根固めブロック、直立消波ブロック、防波堤ブロック、ポンツーン、フェロセメント船
(B)魚礁類
魚礁、単純角形および単純円筒形魚礁用石炭灰/リン酸アルミニウムブロック、組み立て形魚礁用石炭灰/リン酸アルミニウムブロック
(C)築磯
コンブ礁、ウニ礁、ウニ稚仔沈着礁、アワビ礁、イセエビ礁、アカガイ礁、ヤナギダコ産卵礁」

(3-2)同じく、特開平4-317477号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「セラミック焼結体の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】けい砂製造工場で原砂を水洗する際に発生する廃棄泥分を脱水する工程と、脱水した廃棄泥分とカレット製造工場でカレット製造の際に発生する廃棄ガラス屑であるガラス粉末を混合混練する工程と、その混練物を成形機又は造粒機にて成形又は造粒する工程と、その成形物又は造粒物を乾燥し、前記ガラス粉末の溶融点より高い温度で焼成する工程とからなることを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。」
(ロ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、廃棄物から多孔質のセラミック焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多孔質のセラミック焼結体は、吸着材、触媒担体、保水材等として使用される他、土壌改良材や魚礁材等の特定用途にも使用され、その利用分野は非常に広範囲であり、従来、種々の製造方法が提案されている。」
(ハ)「【0023】(乾燥及び焼成工程)各成形試料を250℃の温度下で約1時間乾燥した後、立形電気炉により800℃、900℃、1100℃の3段階に分けた焼成を行った。焼成条件は、焼成温度に達するまでの昇温時間を各々4.0hr、4.5hr、5.0hrとし、各焼成温度につき3hrの焼成を行った後、自然放冷により24hr後に取り出し、各焼成試料とした。
【0024】この焼成過程において、各試料はガラス粉末の溶融温度を越える750℃前後よりガラスが溶融し始め、ガラス内のガスが膨張して泡状となり、次いでその泡が破裂して細かい多数の気孔を有する焼結体が得られた。その気孔は、特に保水性に好都合な連通した状態で形成されていることが確認された。」

(3-3)同じく、特開昭62-212260号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「廃棄物のセラミック化方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「2.特許請求の範囲
(1)産業廃棄物である石炭灰及び/若しくは重油灰と下水道汚泥廃棄物とを適宜の比率で混合し、焼成若しくは溶融手段を施すことによって得ることを特徴とする廃棄物のセラミック化方法。
(2)使用をする下水道汚泥廃棄物が、下水汚泥の脱水ケーキ、乾燥した下水汚泥、焼成によって得られた下水汚泥、下水汚泥の溶融品のうちの一つ若しくはこれらの複数を混合したものである特許請求の範囲第1項に記載の廃棄物のセラミック化方法。
(3)混合された廃棄物に、粘土質鉱物を混合したことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第2項のいずれか一つに記載の廃棄物のセラミック化方法。
(4)混合された廃棄物に、珪酸質鉱物を混合したことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項の何れか一つに記載の廃棄物のセラミック化方法。
(5)廃棄物に粘結材を混合したことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第4項の何れか一つに記載の廃棄物のセラミック化方法。」(公報1頁左欄4行?右欄5行)
(ロ)「〔産業上の利用分野〕
本発明は廃棄物、特に下水道スラッジ等の下水汚泥廃棄物、及び石炭灰、重油灰などの産業廃棄物を主たる原料として利用しながらそれらをセラミック化する方法に関するものである。」(公報2頁左上欄4?8行)
(ハ)「〔実施例〕
本発明は、産業廃棄物である石炭灰及び/或いは重油灰等と、下水廃棄物である下水汚泥とを主たる配合素材として混合したものを焼成または溶融することにより、原料廃棄物をセラミック化させることを特徴とするものである。
本発明において、前記した廃棄物をセラミック化するに際して、これらをそのままの状態で用いることが最もシンプルな方法であるが、成形体のハンドリングを容易にするためには、これらに、可塑性に富んだ粘土或いは粘結材を加えて成形体とすることができる。」(公報3頁左下欄4?15行)
(ニ)「(実施例1)
フライアッシュ100部に、水分含有率65%の下水汚泥の脱水ケーキ30部、木節粘土20部を混合し、成形圧力30kg/cm^(2)でレンガ状に成形する。
この成形体を70℃?120℃で乾燥したのち1,150℃まで焼成することによってレンガ状物質を得た。
得られた製品は、見掛は比重1.62、耐圧強度355 kg/cm^(2)という優れた製品であり、建材等として極めて適当なものであった。」(公報3頁右下欄9行?19行)
(ホ)「本発明によって得ることのできるセラミック製品の種類は極めて多岐にわたるが、それらの幾つかの例としては、
建築用レンガ及び化粧タイル、建築用タイル、路面用ブロック、セラミック製インターロッキングブロック、築炉用レンガ及び断熱レンガ、蓄熱炉用レンガ、砥石、陶管、瓦、園芸用石器、多泡レンガ、軽量骨材、油吸着レンガ、釉薬、魚礁。
などを挙げることができる。」(公報5頁右上欄15行?左下欄3行)

これら(3-1)?(3-3)に記載されている事項、および例えば、上記(3-3)の(ハ)に、「・・・廃棄物をセラミック化するに際して、これらをそのままの状態で用いることが最もシンプルな方法であるが、成形体のハンドリングを容易にするためには、これらに、可塑性に富んだ粘土或いは粘結材を加えて成形体とすることができる。」と記載されているように、廃棄物をセラミック化するに際して、可塑性に富んだ粘土或いは粘結材を加えることは、普通に行われている事項と認められることから、引用文献1?引用文献3には、以下に示す発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「石炭灰、脱水した廃棄泥分、廃棄ガラス屑、重油灰、下水道汚泥廃棄物などの産業廃棄物に可塑性に富んだ粘土或いは粘結材を加えた組成物を焼成して形成した人工礁。」

(3-4)同じく、特開平7-180159号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「ボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材及びその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】JIS標準網篩74μmを通過する粒子が5重量%未満、固結粒子の比重が2.5以上、充填密度が1.6g/cm3 以上であるボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材。
【請求項2】バイヤー法により得られたボーキサイト溶解残渣を含水率20重量%以下に乾燥し、次いで直径1mm以上の大きさに成形後、800℃以上の温度で焼成することを特徴とする、JIS標準網篩74μmを通過する粒子が5重量%未満、固結粒子の比重が2.5以上、充填密度が1.6g/cm^(3) 以上であるボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材の製造方法。
【請求項3】造粒に際し、ボーキサイト溶解残渣(乾体基準)に対し5?20重量%の粘土鉱物を添加することを特徴とする請求項2記載のボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材の製造方法。
【請求項4】バイヤー法により得られたボーキサイト溶解残渣を含水率20重量%以下に乾燥し、これに水ガラス及び/又はシリカゾルをボーキサイト溶解残渣(乾体基準)に対し5?20重量%添加し、次いで直径1mm以上の大きさに成形後、300℃以上の温度で焼成することを特徴とする、JIS標準網篩74μmを通過する粒子が5重量%未満、固結粒子の比重が2.5以上、充填密度が1.6g/cm^(3) 以上であるボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材の製造方法。」
(ロ)「【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に於いて用いられるボーキサイト溶解残渣は、通常のバイヤー法においてアルミナ分を溶解抽出した後の残渣であって、その組成は一義的ではないものの、乾燥後の溶解残渣の組成は、灼熱減量(LOI)8?12重量%、Al_(2) O_(3) 18?25%、SiO_(2 )15?20%、Fe_(2) O_(3) 30?45%Na_(2) O8?12%、TiO_(2) 2?8重量%程度である。また、この溶解残渣中の鉱物組成は、Al_(2) O_(3) 分として、未溶解のギブサイト(比重2.4)、ベーマイト(3.1)、カオリン(2.6)、SiO_(2) 分として石英(2.7)、カオリン(2.6)、Fe_(2) O_(3) 分としてヘマタイト(5.2)、ゲーサイト(3.3?4.3)、またNa_(2) O分としてはソーダライト(2.3)、付着ソーダであり、通常のボーキサイト溶解残渣の比重は3.0?3.3である。
【0012】上記の鉱物組成に挙げた物質のうち、バイヤー液からの付着ソーダ以外は、すべて雨水、湖水、河川水、海水等には不溶性の鉱物である。通常、ボーキサイト溶解残渣は埋め立て等の廃棄に際しては十分に洗浄し付着ソーダは除去されるため、ボーキサイト溶解残渣は自然環境中の天然水により溶出される物質は実質的にない。」
(ハ)「【0017】成形体はそのまま、或いは乾燥後、焼成される。焼成方法は特に限定されないが通常、電気炉、トンネルキルン、ロータリーキルン等が使用される。焼成温度が800℃より低い場合には、強度の発現が低く、また1300℃を越えるような高温では設備費、稼働費とも高価となる。
【0018】ボーキサイト溶解残渣は残渣単独でも該残渣中に含有されるカオリン、石英等を含有しているので焼成により溶融し焼結強度を発揮するが、更にボーキサイト溶解残渣(乾体基準)に対し5?20重量%の範囲でカオリン、石英、珪灰石、長石、霞石、陶石等の粘土鉱物を添加してもよい。」
(ニ)「【0022】
【発明の効果】以上詳述した本発明のボーキサイト溶解残渣よりなるケーソン用中詰材は、JIS標準網篩74μmを通過する粒子が5%未満、固結粒子の比重が2.5以上、充填密度が空中で1.6g/cm^(3) 以上であり、天然界に存在する石英砂と略同等の物性を有しており、取扱い性、重量、成形体よりの溶出物もなくケーソン用中詰材として全ての物性を満足し、かつ環境保護、自然保護をも満足するもので、その工業的価値は頗る大である。」

(3-5)同じく、特開平3-16959号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「赤泥を原料とする透水性舗装材の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「2.特許請求の範囲
(イ)アルミニュウム製錬工場より排出された赤泥を含水率7?15%に脱水処理する工程、
(ロ)脱水処理した赤泥を粒径2.0?5.0mmの粒状赤泥に成形する工程、
(ハ)粒状赤泥をブロックに加圧成形する工程、
(ニ)加圧成形したブロックを1,000?1,200℃にて焼成する工程、
以上の工程からなる赤泥を原料とする透水性舗装材の製造方法。」(公報1頁左欄4?13行)
(ロ)「次に、この粒状赤泥を原料としてプレスを用いて舗装用のブロソクを加圧或形した。その際、実施例においては、前記粒状赤泥に重量比で15?25%の長石粉末を焼結剤として加え、ミキサーにより攪拌混合したのち60×100×200mmのブロックにした。
プレスによる加圧成形に際しては、振動式プレス成形機、すなわち原料である前記粒状赤泥に焼結剤として長石粉末を混合したものを型枠内に振動力を利用して供給し、しかるのち加圧或形した。
なお、前記焼結剤としての長石粉末に代え、ベントナイト・(Al_(2)O_(3)・4SiO_(2)・6H_(2)O)か、ガラス粉末を使用してもよい。その場合の添加量は粒状赤泥に対する重量比で5?8%が最適であった。
最後に、この加圧或形したブロックを乾燥処理したのち窯入れし、1,000゜Cで焼固め舗装ブロックを得た。」

(3-6)同じく、特開昭61-261256号公報(以下、「引用文献6」という。)には、「アルミナ質耐火断熱煉瓦とその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「2.特許請求の範囲
(1)アルミニウム残灰を主体としたことを特徴とするアルミナ質耐火断熱煉瓦。
(2)アルミニウム残灰50重量%以上と、リン酸、リン酸アルミニウム、アルミン酸アルカリ、粘土、ケイ酸アルカリ、ホウ酸、ホウ砂及びセメント等の結合剤の1種以上50重量%未満とを含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のアルミナ質耐火断熱煉瓦。
(3)アルミニウム残灰の4分の1重量部以下のマグネシヤ、ドロマイト、オリピンサンド、アルミナ、酸化ジルコン、クロム鉄鉱及び酸化チタン等の添加剤の1種以上を加えられたことを特徴とする特許請求の範囲第1項及び第2項記載のアルミナ質耐火断熱煉瓦。
(4)アルミニウム残灰場合により添加剤との混合物にアルミニウム残灰の等量未満の水、鉱油、有機溶剤、動植物油脂、樹脂、ゴム、糊類、ピッチ、タール、リン酸、リン酸アルミニウム、アルミン酸アルカリ、粘土、ケイ酸アルカリ、ホウ酸、ホウ砂及びセメント等の結合剤の1種以上を加え、均質に混合し、型込の上1kg/cm^(2)以上で加圧成型し800℃以上で焼成することを特徴とするアルミナ質耐火断熱煉瓦の製造方法。」(公報1頁左欄4」行?右欄9行)

(3-7)同じく、特開昭51-114410号公報(以下、「引用文献7」という。)には、「アルミナプラントからの赤泥をセラミック工業に利用する方法」に関して、次の事項が記載されている。
(イ)「2.特許請求の範囲
(1)アルミナ製造工程からの赤泥と、及び焙焼に際して上記赤泥と反応して、窯業生成物を作る無機添加物質との、全混合物に対する乾燥重量で夫々51乃至90%と10乃至49%との混合物から焼成した窯業生成物。
(2)焙焼に際して赤泥と反応して窯業生成物を作る無機物質が、シリカ、珪砂、・・・工業並びに家庭からの珪酸塩含有廃棄物、・・・ドロマイトの群から選ばれる、上記特許請求の範囲第1項に従う窯業生成物。
(3)焙焼に際して赤泥と反応して窯業生成物を作る無機添加物質としてドロマイトを用いるときは最高で15%までを、また粘土及び煉瓦粘土を用いるときは最高で7.5%までを、何れもその他の無機添加物との混合物として加える、前記特許請求の範囲第1項に従う窯業生成物。
(4)下記工程、即ち
・・・・
ロ.上記混合物をセラミック成品の形に成形し、
ハ.そしてこの緑色のセラミック成形物をこれが水不溶性の珪酸塩、スピネル、及び他の複酸化物窯業生成物となるまで950°乃至1250℃において焼成することの各工程からなる、アルミナ製造工程からの赤泥と上記無機添加物質との、乾燥重量で夫々51乃至90%と10乃至49%との混合物から窯業生成物を製造する方法。」(公報1頁左下欄4行?2頁左上欄5行)
(ロ)「本発明はアルミナプラントからの赤泥を、これに他の鉱物及び/又は珪酸塩含有添加物を混合して成形し、焼成して水不溶性の複雑なスピネル類、例えばMgAl_(2)O_(4)或は他の複酸化物に変化させることにより、セラミック工業に利用する方法に関する。」(公報2頁左上欄7行?12行)
「更にまた、赤泥を先づ、最高4mmまでの粒度の、水結合性の有機又は無機物質5乃至30重量%と混合し、次いで、その様に作つた混合物の乾燥重量について50?80%の、アルミナ18%以上を含有する粘土を混合し、この混合物を成形し、そして焼成する方法が公知でる。この方法によって煉瓦やタイルが有利に製造される。」(公報2頁左下欄2行?8行)
(ニ)「このプロセスの効果と経済性とを高めるために、以上の記載からもわかるように、安全で水不溶性のセラミック製品又は陶磁器製品が得られることを保証するという目的を達成するだけでなく、現在、環境保護の観点から問題となつている工業並びに家庭の廃棄物と鉱物とを多量の割合で利用することをも可能とするような赤泥添加物質を選び使用した。」(公報2頁右下欄11?18行)
(ホ)「例2
・・・赤泥90%に粒度0.5mm以下のベントナイト2%及び粉砕ガラス8%を混合した混合物、赤泥80%とベントナイト5%と、及び粒度0.5mm以下の硅灰石15%とを混合した混合物、及び赤泥51%とベントナイト4%と、及びレス45%とを混合した混合物は湿式成形によつて煉瓦を製造するのに適している。赤泥70%と粒度0.5mm以下の硅灰石30%との混合物、赤泥80%と粒度0.5mm以下の粉砕ガラスとの混合物、及び赤泥85%と、何れも粒度0.5mm以下の、ドロマイト5%、硅灰石5%及び玄武岩又は安山岩5%との混合物の夫々半乾燥粉末から煉瓦をプレス成形することができる。
半乾燥粉末のプレスによつて、赤泥51%とベントナイト4%ジルコンサンド又は珪線石45%との混合物良好な耐火性煉瓦をプレス成形することができ、また一方、赤泥75%と粉砕ガラス又は硅灰石20%と硅藻土5%との混合物からは同様にして空孔率大きな断熱性炉材煉瓦を作ることができる。」(公報4頁左上欄13行?右上欄16行)

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
本願発明における「レッドマッド」、「高炉スラグ」、「鉱山物精製工場からのスラッジ」、「ガラス破砕片」、「石材又は骨材採取場の石粉」、「上下水終末処理場のスラリー」、「生活ごみ焼却炉からの灰」、「パルプスラッジ及びスラリー」、「火力発電所の石炭灰」、及び「採炭副産物」は、いづれも「産業廃棄物」であることは明らかである。
また、本願発明の「可塑剤」は、本願明細書の段落【0006】の記載によれば、「粘土は本発明の可塑性剤」としていることから、引用発明の「可塑性に富んだ粘土」は本願発明の「可塑剤」に相当する。
そうすると、両者は、
「産業廃棄物と、可塑剤を含む組成物を焼成して形成する人工礁。」
である点で一致して、以下の点で相違している。

[相違点1]産業廃棄物について、本願発明が、レッドマッドよりなり、50?100重量%未満の主原料と、高炉スラグ、鉱山物精製工場からのスラッジ、ガラス破砕片、石材又は骨材採取場の石粉、上下水終末処理場のスラリー、生活ごみ焼却炉からの灰、パルプスラッジ及びスラリー、火力発電所の石炭灰、及び採炭副産物から構成されるグループから選択され、0重量%超過?50重量%の副原料としているのに対して、引用発明が、石炭灰、脱水した廃棄泥分、廃棄ガラス屑、重油灰、下水道汚泥廃棄物などとしており、主原料や副原料が規定されていないとともに、これらの産業廃棄物の配合割合が明らかではない点。
[相違点2]可塑剤の配合割合について、本願発明が、10重量%?25重量%としているのに対して、引用発明ではその配合割合が明らかではない点。
[相違点3]本願発明が、3重量%?5重量%の鉱化剤を含んでいるのに対して、引用発明では、鉱化剤を含んでいるのか明らかではない点。
[相違点4]組成物を焼成する温度について、本願発明が1000℃?1300℃としているのに対して、引用発明では明らかではない点。

5.判断
[相違点1について]
引用文献6には、「アルミニウム残灰50重量%以上と、リン酸、リン酸アルミニウム、アルミン酸アルカリ、粘土、ケイ酸アルカリ、ホウ酸、ホウ砂及びセメント等の結合剤の1種以上50重量%未満とを含有」させたものを焼成してアルミナ質耐火断熱煉瓦を得ること(上記(3-6)の(イ)参照)が、
および引用文献7には、「アルミナ製造工程からの赤泥と、及び焙焼に際して上記赤泥と反応して、窯業生成物を作る無機添加物質との、全混合物に対する乾燥重量で夫々51乃至90%と10乃至49%との混合物」を焼成して窯業生成物を形成すること(上記(3-7)の(イ)、(ホ)参照)が、
記載されていることから、人工礁を焼成して形成する際に50重量%以上配合される主原料として、レッドマッドを用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるということができる。
そして、引用発明のように「石炭灰、脱水した廃棄泥分、廃棄ガラス屑、重油灰、下水道汚泥廃棄物などの産業廃棄物」を用いた組成物を成形後に焼成して人工礁を得ることも従来より行われていた事項であることに加えて、
例えば引用文献7に記載されているように、「51乃至90%の赤泥」に対して、「10乃至49%」の混合割合で添加される「無機添加物質」として「工業並びに家庭からの珪酸塩含有廃棄物」を用いること(上記(3-7)の(イ)参照)が記載されていることから、
主原料としてレッドマッドを用いるとともに、高炉スラグ、鉱山物精製工場からのスラッジ、ガラス破砕片、石材又は骨材採取場の石粉、上下水終末処理場のスラリー、生活ごみ焼却炉からの灰、パルプスラッジ及びスラリー、火力発電所の石炭灰、及び採炭副産物から構成されるグループから選択されるものを、副原料として0重量%超過?50重量%の配合割合で用いるようにすることも、当業者が適宜設定し得る事項であるということができる。

また、本願発明においては、主原料のレッドマッドに対して用いる副原料について「高炉スラグ、鉱山物精製工場からのスラッジ、ガラス破砕片、石材又は骨材採取場の石粉、上下水終末処理場のスラリー、生活ごみ焼却炉からの灰、パルプスラッジ及びスラリー、火力発電所の石炭灰、及び採炭副産物から構成されるグループから選択され」と規定されるのみで、副原料として何種類の材料を用いるのか、複数種類の材料を用いる場合の材料の具体的な組合せやその配合割合についても規定されていないことから、副原料の配合割合を上記のように規定していることによる格別な作用効果も認められない。

[相違点2について]
本願発明において、可塑剤を、10重量%?25重量%としている点について、本願明細書を参照すると、段落【0007】の【表1】に、「レッドマッド」を主原料として50?100%とした場合に、可塑剤の配合割合が10重量%?25重量%とすることが記載されるに止まっており、上限値や下限値にどのような意味があるのか、あるいは上限値や下限値がどのように導き出されたものであるのか説明がなされていない。
そうすると、可塑剤の配合割合を本願発明のように、10重量%?25重量%とすることは、レッドマッドの割合や副原料の材料の種類・割合に応じて、当業者が適宜設定し得る事項であるといわざるを得ない。

[相違点3について]
本願発明の「鉱化剤」は、段落【0006】によると焼結特性を高める機能を有するものと認められる。
引用文献4には、「【0018】ボーキサイト溶解残渣は残渣単独でも該残渣中に含有されるカオリン、石英等を含有しているので焼成により溶融し焼結強度を発揮するが、更にボーキサイト溶解残渣(乾体基準)に対し5?20重量%の範囲でカオリン、石英、珪灰石、長石、霞石、陶石等の粘土鉱物を添加してもよい。」(上記(3-4)の(ハ)参照)と記載され、
引用文献5には、「プレスによる加圧成形に際しては、振動式プレス成形機、すなわち原料である前記粒状赤泥に焼結剤として長石粉末を混合したものを型枠内に振動力を利用して供給し、しかるのち加圧或形した。
なお、前記焼結剤としての長石粉末に代え、ベントナイト・(Al_(2)O_(3)・4SiO_(2)・6H_(2)O)か、ガラス粉末を使用してもよい。その場合の添加量は粒状赤泥に対する重量比で5?8%が最適であった。」(上記(3-5)の(ロ)参照)と記載されていることから、
レッドマッドを焼成する際に焼成により溶融して焼結強度を高めるような鉱物を焼結剤(本願発明における「鉱化剤」に相当する)として添加することは普通に行われている事項であるとともに、その配合割合について、本願発明のように、鉱化剤の配合割合を3重量%?5重量%とすることも、主原料として用いるレッドマッドの特性や、副原料として用いる産業廃棄物の特性や配合割合などに応じて、当業者が適宜設定し得る事項である。

[相違点4について]
引用文献4には「焼成温度が800℃より低い場合には、強度の発現が低く、また1300℃を越えるような高温では設備費、稼働費とも高価となる。」(上記(3-4)の(ハ)参照)と記載され、
引用文献5には、「加圧成形したブロックを1,000?1,200℃にて焼成する」(上記(3-5)の(イ)参照)と記載され、
引用文献7には、「これが水不溶性の珪酸塩、スピネル、及び他の複酸化物窯業生成物となるまで950°乃至1250℃において焼成する」(上記(3-7)の(イ)参照)と記載されていることから、
本願発明のように、組成物を焼成する温度を1000℃?1300℃とすることは、副材料として用いる材料の種類や配合割合などに応じて、当業者が適宜設定し得る事項である。

そして、例えば引用文献4に、レッドマッドを焼成したものが「付着ソーダ以外は、すべて雨水、湖水、河川水、海水等には不溶性」であること(上記(3-4)の(ロ)、(ニ)参照)も知られている事項であることから、本願発明が環境に奏する作用・効果も、引用発明、引用文献4?7に記載の事項から当業者が予測し得るものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献3?7に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきもである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-14 
結審通知日 2007-08-17 
審決日 2007-08-29 
出願番号 特願2000-562155(P2000-562155)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順長井 啓子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮川 哲伸
峰 祐治
発明の名称 産業廃棄物を主材とする人工礁の製造方法  
代理人 森 徹  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 吉田 裕  

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