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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1170485
審判番号 不服2006-10481  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-22 
確定日 2008-01-09 
事件の表示 特願2001- 63152「窓型エアコンのターボファンハウジング」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-115866〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年 3月 7日の出願(パリ条約による優先権主張平成12年 9月30日、韓国)であって、平成18年 2月15日付けで拒絶査定がなされ(平成18年 2月21日発送)、これに対し、同年 5月22日に審判請求がなされるとともに、同年 6月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年 6月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年 6月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 室内気を案内するベルマウスが形成された吸入面と、前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から前記底面と前記隔壁が延設されてなる吐出部と、前記吐出部と前記流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部とを備えた窓型熱交換器のファンハウジングにおいて、
前記室内ファンはターボファンであり、
前記ターボファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面は多角形の形状からなって、室内気の方向変換時に室内気の動圧の一部が静圧に変換され、前記カットオフ部は前記隔壁の下面と開放部側の垂直面とによってなされる角部に設置され、
前記ターボファンと接するカットオフ部の内面はスクロール形である、
ことを特徴とする窓型エアコンのターボファンハウジング。 」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「カットオフ部」について「前記ターボファンと接するカットオフ部の内面はスクロール形である、」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実公昭62-37052号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ「熱交換器の背後にダクトの吸込口を設け、該吸込口の内側にその吸込口の中心に軸が揃うようターボフアンを軸支している空気調和機において、前記ターボフアンのリング先端より軸方向の内側に、前記リングの曲率より小さい曲率で湾曲している前記吸込口の入口ベルマウスの出口端を進込させて、それらを前後にラツプさせ、かつ、その入口ベルマウスの出口端を、前記吸込口の径が大となる方向に拡開させたことを特徴とする空気調和機。」(実用新案登録請求の範囲)

ロ「本考案は、熱交換器の背後にダクトの吸込口を設け、該吸込口の内側にその吸込口の中心に軸が揃うようターボフアンを軸支している空気調和機の改良に関する。」(第1頁左欄第13-16行)

ハ「以下、本考案の詳細を図示する実施例を参照しながら説明する。・・・(中略)・・・。
なお、第8図イにおいて、42は背面板、・・・、第7図において、31は吐出口、32は風向板、33は断熱材、・・・、Aは熱交換される空気の正常な流路、Mはフアンモータである。」(第2頁左欄第12行?右欄第1行)
ニ「次に、上述のように構成された空気調和機の吸込口の作用を説明する。第7図において、フアンモータMを稼動させると、ターボフアン4の吸引作用を受けて、吸込グリル1から吸込まれる空気が、熱交換器2で熱交換されて、吸込口30から入口ベルマウス5、リング41、背面板42等に規制されつゝダクト3内に案内され吐出口に送給されるようになる。その際、吐出側のチヤンバー6からターボフアン4によつて吸込まれる空気の流れFは、第8図イに示すように、ベルマウス5の出口端51側のリング41先端との重なり代の長さLと、その出口端51のカーリング即ち拡開の構造のため、その間隙部分を通過する間に、・・・、剥離の現象が生じ難くくなる。」(第2頁右欄第2?21行)

そして、引用例1記載のものは、空気調和機であることからみて、室内の空気を調和するものであり、吸込口形成部材と背面板とは、対向しているものと理解できる。

また、室内の空気を吸い込む吸込口30と吐出口31との間には、ターボフアン4を囲む部材が設けられるとともに、該部材は吸込み口30から吐出口31まで延設されているものであることは、技術常識からみて当然のことと考えられる。

以上の記載及び図面によると、引用例1には、
室内の空気を吸い込む入口ベルマウス5を形成したダクトの吸込口形成部材と、前記室内の空気を吸い込むターボフアン4が軸支され、吸込口形成部材と対向している背面板42と、前記吸込口形成部材と背面板との間に設けられ、ターボフアン4の上部から吐出口まで延設される、ターボフアン4を囲む部材とを備えた空気調和機、(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
また、本願の出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭59-188471号(実開昭61-104118号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「<1>(原文は、丸数字の1。以下同じ。)上部に排気口(2)を有する箱形ケーシング(3)内の上下位置に二個以上の多翼形フアン(4A)・(4B)を設けるとともに、これら各フアン(4A)・(4B)の回転軸芯方向の一方に相対応するケーシング部分に夫々吸気口(1A)・(1B)を形成してある冷暖房機等における送風装置であつて、前記各フアン(4A)・(4B)から前記上部排気口(2)に全る気流路を一つの共用気流路(5)から構成してあることを特徴とする冷暖房機等における送風装置。<2>(原文は、丸数字の2)前記各フアン(4A)・(4B)が、それらの全外周部のほぼ半分に亘つて、かつ上下で連続する状態の気流案内板(6A)・(6B)を備えたものである実用新案登録請求の範囲第<1>項に記載の冷暖房等における送風装置。<3>(原文は、丸数字の3)対象とする装置が、前記各フアン(4A)・(4B)の吸気口(1A)・(1B)前面相当箇所に室内空気吸入口(7)並びに熱交換器(8)を備えた床置型冷暖房機本体(9)内に組込まれたものである実用新案登録請求の範囲第<1>項に記載の冷暖房等における送風装置。」(実用新案登録請求の範囲)

・「而して、上記の各従来例においてはともに、渦巻型フアンケーシング(012A)、(012B)を二個以上要し、かつ各フアン(04A)・(04B)から排出口(02)に至る気流路’(05A)・(05B)が前後重構造でこれら気流路(05A)・(05B)を構成するための箱形ケーシング(03)内に複数枚の仕切板を組入れ固定する必要があり、」(第5頁第9?15行)

・「本考案は以上の実情に鑑み、送風能力の低下を招くことなく、上記の従来例における問題点を解消する点に目的を有し、かかる目的を達成するために案出された本考案に係る冷暖房機等における送風装置は、冒頭詳記のものにおいて前記各フアンから前記上部排気口に至る気流路を一つの共用気流路から構成してあるという点に特徴を有するものである。」(第6頁第2?9行)

以上の記載及び図面によると、引用例2には、
室内の空気を案内する吸気口(1A、1B)を形成する部材と、前記室内の空気を吸入する多翼形フアン(4A)が設置された、前記吸気口を形成する部材と対向する箱形ケーシング(3)の面と、前記吸気口を形成する部材と前記面との間に、前記多翼形フアン(4A)を囲む、上部排気口(2)に至る気流路を構成し、前記気流路の上部から延設される前記排気口に至る部位と、前記排気口(2)と前記気流路とを結ぶ箱形ケーシング(3)の面の内側に気流案内板(6A、6B)とを備えた冷暖房機等における送風装置の箱形ケーシング(3)において、前記多翼形フアンの回転軸に垂直な方向に切った気流路の断面は、角部を有する形状からなるものであり、前記気流案内部(6A、6B)は、吸気口を形成する部材と対向する箱形ケーシングの面と上部排気口(2)側の面に設けられるとともに、気流案内部(6A、6B)の内面は、渦巻型である冷暖房機等における送風装置の箱形ケーシング(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「室内の空気」は本願補正発明の「室内気」に相当し、以下同様に「吸い込む」は「案内する」に、「入口ベルマウス5」は「ベルマウス」に、「ダクトの吸込口形成部材」は「吸入面」に、「ターボフアン4」は「室内ファン」に、「軸支」は「設置」に、「背面板42」は「底面」に、「ターボフアン4を囲む部材」は「隔壁を備えた流動案内部」に、「ターボフアン4の上部」は「一側に形成された開放部」に、「吐出口31」は「吐出部」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明1において、ターボフアン4を囲む部材と吐出口31とを具備する構成は、本願補正発明におけるエアコンのターボファンハウジングに相当している。

したがって、両者は、
室内気を案内するベルマウスが形成された吸入面と、前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から前記底面と前記隔壁が延設されてなる吐出部とを備えたものであって、室内ファンはターボファンであるエアコンのターボファンハウジング
の点で一致し、
次の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、ファンハウジングが窓型のものであるのに対し、引用発明1では、当該事項についての記載がない点。

[相違点2]
本願補正発明では、吐出部と流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部を備え、ターボファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面は多角形の形状からなって、前記カットオフ部は隔壁の下面と開放部側の垂直面とによってなされる角部に設置され、前記ターボファンと接するカットオフ部の内面はスクロール形であるのに対し、引用発明1では、この発明特定事項についての記載がない点。

[相違点3]
本願補正発明では、室内気の方向変換時に室内気の動圧の一部が静圧に変換されるものであるのに対し、引用発明1では、当該事項についての記載がない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
ウインド型ファンとして、ターボファンを用いることは本件出願の優先日前、良く知られた技術である(例えば、前審で拒絶の理由に引用した特開昭62-131123号公報「ウインド型空気調和機」の「室内ファン7」についての記載参照)。

そうすると、室内ファンハウジングに関わる発明である引用発明1において、ファンハウジングを窓型のものとした点は、当業者にとって、困難なく想到し得たことである。

次に、相違点2について検討する。

引用発明2をみると、引用発明2の「室内の空気」は、本願補正発明の「室内気」に相当し、以下同様に、「吸気口(1A、1B)を形成する部材」は「吸入面」に、「多翼形フアン(4A、4B)」は「室内ファン」に、「吸気口を形成する部材と対向する箱形ケーシングの面」は「底面」に、「気流路」は「隔壁を備えた流動案内部」に、「上部排気口(2)に至る部位」は「吐出部」に、「気流路の上部」は「流動案内部の一側に形成された開放部」に、「箱形ケーシング(3)」は「ファンハウジング」に、「気流案内部(6A、6B)」は「カットオフ部」に、「渦巻型」は「スクロール形」に、「冷暖房機等における送風装置の箱形ケーシング」は「エアコンのファンハウジング」に、それぞれ相当している。

したがって、引用発明2は
室内気を案内する吸入面と、前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から底面と隔壁が延設されてなる吐出部と、前記吐出部と流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部を備えたエアコンのファンハウジングにおいて、室内ファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面は、角形を含む形状であり、室内ファンと接するカットオフ部の内面はスクロール形であるエアコンのファンハウジングであるといえる。

そして、流動案内部の断面を多角形状とした点は、流路に変化を与えるという観点から、引用発明2の形状と格別な差異は認められず、カットオフ部を角部に設けた点は、本件出願の優先日前、当該技術分野において、周知の技術であって(例えば、前審で拒絶の理由に引用した特開2000-179496号公報、実願昭54-41534(実開昭55-140934号)のマイクロフィルム参照。)、このような構成としたことによる格別な作用効果も認められない。

加えて、引用発明1も引用発明2も空気調和機における多翼形ファンのケーシングに属する技術である。

そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用し、その際、流動案内面を多角形状にするとともに、カットオフ部を角部に設け、前記相違点2に係る構成を具備するものとした点は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、相違点3について検討する。
多翼送風機において、ケーシング内で動圧成分を静圧に変換されることが、公知であることは、原査定の拒絶の理由に引用した文献に記載(特開2000-179496号公報段落【0005】)のとおりである。

また、ターボファンにおいて、静圧成分が多くなる点は、原査定において周知技術として提示した特開平7-119691号公報にも開示されているところである。

このように、明示的な記載はないが、ターボファンによって室内気を吸入し、流路を急変させて吐出するような構成を採用すれば、そのことに起因して、動圧の一部が静圧に変換されるものとも考えられる。

そうすると、相違点3の事項は、相違点2の構成を採用することに起因する風圧の変化を、単に説明したにすぎず、このような発明特定事項を付加した点に格別の技術的意義を認めることはできない。

次に、本願補正発明の奏する作用効果について検討する。
請求人は、平成18年6月21日手続補正書(方式)において、「この補正によりカットオフ部の内面、すなわち流動案内部の一部分のみがスクロール形にされ、残りの流動案内部は多角形の形状とされるので、室内機のターボファンと接するカットオフ部の内面の間に形成される流路の断面に沿って移動しながら室内機の静圧が上昇し、残りの流動案内部である多角形の形状からなる流動案内部に沿って移動しながら再び静圧が上昇し、二重に静圧が上昇することになります。
これに対して、上記の各引用文献のいずれも、補正された請求項1のような流動案内部を構成してないので、本願発明と同じ効果を奏することはできません。」(第2頁第28?35行)と主張している。

しかし、本願明細書を参照すると、「まず、室内気の静圧を上昇させる手段から説明する。前記ターボファン14と前記流動案内部131との間には流路が形成される。この流路を介して前記ターボファン14から吐き出された室内気は、ターボファンのブレード141によって開放部131eに進む。本発明はこの流路に急激な進行方向の変化を与えて流路の方向が変わるとき室内気の動圧の一部が静圧に変換されるようにした。本発明の実施例では、図3に示すように、その前記隔壁131dによってなされる流動案内部131の断面が4角形となるようにして、室内気が方向を変わる度に静圧が上昇するようにした。本発明では単に実施例として流動案内部131の断面を四角形としたが、流路の進行方向に急激な変化を与えることさえできれば、いずれの形態の多角形または曲線によって形成される流動案内部131の断面を有する実施形態も可能である。」(段落【0024】)とある。

このことから、室内気の静圧を上昇させる手段として、「流路に急激な進行方向の変化を与える」ことにより「静圧が上昇」されることが窺え、その形状は、「多角形または曲線」のいずれの形態も可能と考えられる。

引き続いて「また、前記カットオフ部133は前記隔壁131dの下面と前記開放部側の垂直面とがなす角部位に設置されており、特に前記ターボファン14と接するカットオフ部133の内部はスクロール状に形成されている。従って、前記ターボファン14の外径とカットオフ部133の内面との間に形成される流路の断面は室内気が開放部131a方向に前進するときに段々広くなって室内気の静圧をより上昇させる役割を果たす。」(段落【0025】)とされており、「流路の断面」を「段々広く」する「スクロール形状」を形成することによっても「静圧」を「上昇させる」としている。

これらのことから判断するに、空気流路に急激な進行方向の変化を与えたり、流路の断面を、前進するときに段々広くすることによって静圧の上昇が可能となるものであって、流動案内部の一部分のみがスクロール形にされ、残りの流動案内部は多角形の形状としたことによる特段の効果が示されているとはいえないし、このような効果があるものとも考えられない。

してみると、本願補正発明の奏する効果に格別のものがあるものとは認められず、上記請求人の主張は、採用できない。

以上のことからみて、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年 6月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願の平成17年10月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「室内気を案内するベルマウスが形成された吸入面と、
前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から前記底面と前記隔壁が延設されてなる吐出部と、
前記吐出部と前記流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部とを備えた窓型熱交換器のファンハウジングにおいて、
前記室内ファンはターボファンであり、
前記ターボファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面は多角形の形状からなって、室内気の方向変換時に室内気の動圧の一部が静圧に変換され、 前記カットオフ部は前記隔壁の下面と開放部側の垂直面とによってなされる角部に設置されることを特徴とする窓型エアコンのターボファンハウジング。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例1及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用した特開2000-179496号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項1】空気取入口を形成するベルマウスを有する渦巻形のケーシングと、前記ケーシングに収納され主板と環状の側板と複数のブレードからなる羽根車と、前記羽根車に接続された駆動用のシャフトとを備え、前記ベルマウスの曲率半径をスロート部側から空気吐出口側まで前記羽根車の回転方向に徐々に小さくなるよう変化させ、空気吐出口側からスロート部側までは徐々に大きくなるよう変化させた多翼送風機。
【請求項2】空気取入口を形成するベルマウスを有する渦巻形のケーシングと、前記ケーシングに収納され主板と環状の側板と複数のブレードからなる羽根車と、前記羽根車に接続された駆動用のシャフトとを備え、前記羽根車の回転軸から前記ケーシングのベルマウス先端までの距離をスロート部側から空気吐出口側まで前記羽根車の回転方向に徐々に短くなるように変化させ、空気吐出口側からスロート部側までは徐々に長くなるよう変化させた多翼送風機。」(【特許請求の範囲】)

・「本発明は、空気調和機器などに使用される多翼送風機に関するものである。従来、この種の多翼送風機は、ターボ型やラジアル型の送風機と比較すると小型で騒音も低いのでよく用いられるが、さらに低騒音化が要望されていた。」(段落【0001】?【0002】)

・「以上のように構成された多翼送風機について以下その動作を説明する。 まず、シャフト12に駆動力が加わり羽根車11が回転すると、空気取入口2から空気を羽根車11に吸い込み、複数のブレード10で動圧成分を昇圧し、ケーシング7内で動圧を静圧に回収した後、多翼送風機1外に空気吐出口6より吐出される。
しかし、上記のような構成では、ケーシング渦巻き部4のスロート部5付近で羽根車11と渦巻き部4との距離が狭く抵抗が大きくなるために空気取入口2より羽根車11に吸い込まれる流入気流の流速が遅くなり、逆に吐出口6付近では流速が速くなるといった周方向位置による流入気流流速の違いが生じ、羽根車11の各周方向位置による送風量が変化し、送風性能を低下させる原因となる。」(段落【0005】、【0006】)

・「この構成により、駆動シャフト12に駆動力が加わり羽根車11が回転すると、空気取入口18から空気を羽根車11に吸い込み、複数のブレード10で動圧成分を昇圧し、ケーシング19内で動圧を静圧に回収した後、多翼送風機13外に吐出される。」(段落【0018】)

以上の記載及び図面からみて、引用例3には、
室内の空気を案内するベルマウス部15が形成された空気取入口14を形成する部位と、該室内の空気を吸入する羽根車11が設置された前記空気取入口を形成する部位と対向する部位と、前記両部位の間に設置され、前記羽根車11を囲む隔壁を備えた部位と、両部位の間に設置された部位の一側に形成された部位から前記対向する部位と前記隔壁が延設されてなる空気吐出口18と、前記空気吐出部18と前記両部位の間に設置された部位とを連結する隔壁の内側に形成されたスロート部17を備えた空気調和機器などに使用される多翼送風機13のケーシング19において、前記スロート部17は前記隔壁の下面と開放部側の垂直面とによって設置され、前記羽根車と接するスロート部17の内面は渦巻き状である空気調和機器などに使用される多翼送風機(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

(2)対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「室内の空気」は本願発明の「室内気」に相当し、以下同様に「吸い込む」は「案内する」に、「入口ベルマウス5」は「ベルマウス」に、「ダクトの吸込口形成部材」は「吸入面」に、「ターボフアン4」は「室内ファン」に、「軸支」は「設置」に、「背面板42」は「底面」に、「ターボフアン4を囲む部材」は「隔壁を備えた流動案内部」に、「ターボフアン4の上部」は「一側に形成された開放部」に、「吐出口31」は「吐出部」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明1において、ターボフアン4を囲む部材と吐出口31とを具備する構成は、本願補正発明におけるエアコンのターボファンハウジングに相当している。

したがって、両者は、
室内気を案内するベルマウスが形成された吸入面と、前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から前記底面と前記隔壁が延設されてなる吐出部とを備えたものであって、室内ファンはターボファンであるエアコンのターボファンハウジング
の点で一致し、

次の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、ファンハウジングが窓型のものであるのに対し、引用発明1では、当該事項についての記載がない点。

[相違点2]
本願発明では、吐出部と流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部を備え、ターボファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面は多角形の形状からなって、前記カットオフ部は隔壁の下面と開放部側の垂直面とによってなされる角部に設置されるのに対し、引用発明1では、該発明特定事項についての記載がない点。

[相違点3]
本願発明では、室内気の方向変換時に室内気の動圧の一部が静圧に変換されるものであるのに対し、引用発明1では、当該事項についての記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。

相違点1、相違点3については、「2.(4)」で検討したとおりであるので、ここでは、相違点2について検討する。

引用発明3をみると、引用発明3の「室内の空気」は本願発明の「室内気」に相当し、以下同様に、「ベルマウス部」は「ベルマウス」に、「空気取入口14を形成する部位」は「吸入面」に、「空気取入口14と対向する部位」は「底面」に、「羽根車11」は「室内ファン」に、「羽根車14を囲む部位」は「室内ファンを囲む流動案内部」に、「一側に形成された部位」は「開放部」に、「空気吐出部18」は「吐出部」に、「ケーシング」は「ハウジング」に、「スロート部17」は「カットオフ部」に、「空気調和機などに使用される多翼送風機」は「エアコンのファン」に、それぞれ相当している。

したがって、引用発明3は、
室内気を案内するベルマウスが形成された吸入面と、
前記室内気を吸入する室内ファンが設置された前記吸入面に対向する底面と、前記吸入面と底面との間に設置され、前記室内ファンを囲む隔壁を備えた流動案内部と、前記流動案内部の一側に形成された開放部から前記底面と前記隔壁が延設されてなる吐出部と、前記吐出部と前記流動案内部とを連結する隔壁の内側に形成されたカットオフ部とを備えたエアコンのファンハウジングにおいて、前記カットオフ部は前記隔壁の下面と開放部側の垂直面とによって形成される角部に設けられるエアコンのファンハウジングであるといえる。

そして、当該技術分野において、室内ファンの回転軸に垂直な方向に切った流動案内部の断面に角形を含む形状とした点は、本願出願の優先日前周知の技術である(例えば、前審で拒絶の理由に引用した特開昭62-131123号公報、実願昭59-188471号(実開昭61-104118号)のマイクロフィルム参照。)。また、多角形の形状からなるものとした点に格別の作用効果が認められないことは、先に示したとおりである(「2.(4)」)。

加えて、引用発明1も引用発明3も、空気調和機における多翼形ファンのケーシングに属する技術である。

そうすると、引用発明1に、引用発明3を適用し、その際、周知技術を加えて、相違点2に係る構成とした点は、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明全体の奏する作用効果についてみても、引用発明1、引用発明3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-08 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願2001-63152(P2001-63152)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 正義土田 嘉一  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
佐野 遵
発明の名称 窓型エアコンのターボファンハウジング  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  
代理人 島田 哲郎  

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