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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1171727
審判番号 不服2004-26578  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-28 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 平成8年特許願第261346号「化粧方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年4月7日出願公開、特開平10-87431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成8年9月9日の出願であって、平成16年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月27日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成17年1月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成17年1月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「皮膚をクレンジング及び洗浄料により順次洗浄し、次いでスキンケア化粧料を使用する化粧方法において、皮膚のクレンジングによる洗浄後洗浄料による洗浄前に、ニコチン酸トコフェロール、米胚芽油、ハマメリスエキス及びボダイジュエキスから選ばれる血行促進剤、及び崩壊性粒子を含有するマッサージ化粧料を用いてマッサージを20?60秒で完了するように行うことを特徴とする化粧方法。」

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マッサージすること」を「マッサージを20?60秒で完了するように行うこと」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
A.「エステティックSOIN ヘアモード4月号第2別冊」、女性モード社、昭和61年4月、第92頁?93頁(原査定で引用された(B)2)
B.「婦人画報」1994年11月号、株式会社婦人画報社、1994年11月、第230頁?233頁(原査定で引用された(B)1)
C.特開昭62-238210号公報(原査定で引用された(B)3)
D.特開平6-271417号公報(原査定で引用された(B)4)

本出願前に頒布されたことが明らかな上記A?Dの各刊行物には、以下のことが記載されている。

・刊行物Aの記載事項
(A-1)「マニュアル エステティックの目的 …クレンジング後の清潔な肌で、…手当てを施していくのがエステティックの最大の目的です。」(第92頁右欄上段第1?10行)
(A-2)「マニュアル エステティック後の施術
マッサージの終了後は、汚れやクリーム類を完全に取り除くために、再度クレンジングします。
仕上げはマスク(パック)をし、化粧水やクリームで肌を落ち着けて終わります。
フェイシャルトリートメントへの全ての所要時間は、基本的に一時間?一時間半くらいの間で施されます。」(第92頁右欄下段第12?20行)
(A-3)「クリーム塗布 …マッサージクリームか、マッサージオイルを…顎、頬、額、首に置きます。」(第92頁左欄上段)

・刊行物Bの記載事項
(B-1)「マッサージの疑問Q&A
Q 何分くらい続けるの? 基本的な時間は?
A 基本的には5?10分くらいが理想ですが、肌の状態を見ながら加減していきましょう。…最初は3?5分くらいから始めてみるのもいいでしょう。」(第231頁右欄及び下段中央)
(B-2)「…メラニンの生成を抑制する美白効果も期待できます。資生堂クレームドマッサージュ」(第233頁下段右)
(B-3)「…荒れた肌や乾燥した肌に素早く潤いを与えしっとりとした肌に。…カネボウ メイヤング<スペリア>エッセンシャルコールド」(第233頁上段中央)
(B-4)「…“肌の酸化”を防ぐマッサージクリーム。…コーセー グランディーヌ マッサージクリーム」(第233頁下段中央)
(B-5)「マッサージは面倒・・・なんて言わせない30秒のクイックマッサージ。
…美白効果や細胞の働きを活発にする成分も含まれており、これ一品で保湿、マッサージ、ホワイトニングが完璧。コーセー R・Cリキッド プレシャス」(第233頁上段左)
(B-6)「肌の老化の兆しに素早く対処するマッサージクリーム。…硬くなった角質が取り除かれ、ツルツルの柔らか肌に。アルビオン レリューション ソフニング ワックス」(第233頁下段左)

・刊行物Cの記載事項
(C-1)「…圧縮崩壊性軟質球状樹脂カプセルを配合することを特徴とするスクラブ化粧料。」(特許請求の範囲第1項)
(C-2)「…樹脂カプセルは…軟質で適度な弾力性を備えており、しかも球状の形態を有する為、転動性に優れ、且つ皮膚に対する負担が少ない条件下でクレンジング効果やマッサージ効果を発揮することができる。」(公報第3頁右下欄第11?16行)
(C-3)「本発明に適用される圧縮崩壊性軟質球状樹脂カプセル…とは、スクラブ動作中に指などの圧力によりカプセルの樹脂皮膜が破壊され…る様に構成されたもの…」(公報第2頁右上欄第5?9行)

・刊行物Dの記載事項
(D-1)「水不溶性の無機物質粉体及び/又は水不溶性の有機高分子物質粉体と、…硬化油の粉末一種もしくは二種以上の混合物を水溶性結合剤を用いて造粒した後、乾燥し、…加熱処理して得られた…スクラブ顆粒を…配合することを特徴とする皮膚外用剤」(【請求項2】)
(D-2)「本発明による…スクラブ顆粒は、…適度なマッサージ効果、洗浄効果が得られる。また、使用中に、徐々に小さくなるため皮膚への刺激も少なくてすむ。」

(3)対比
刊行物Aにおける「マニュアル エステティック」は素手によるマッサージのことであるので、(A-1)?(A-3)に摘記したことを整理すると、以下の(ア)?(オ)の段階を順次行う化粧方法が刊行物Aに記載されていることになる。
(ア)クレンジング
(イ)マッサージクリームか、マッサージオイルを使用したマッサージ
(ウ)汚れやクリーム類を完全に取り除くための再度のクレンジング
(エ)マスク(パック)
(オ)化粧水やクリームで肌を落ち着ける
そして、(ウ)の再度のクレンジングは、汚れやクリーム類を顔面から取り除くために行うのであるから、本願補正発明でいう「洗浄料による洗浄」に相当し、また、(エ)?(オ)の段階は、「スキンケア化粧料を使用する」段階に相当する。
すなわち、刊行物Aに記載の化粧方法を言い換えると、「皮膚をクレンジング及び洗浄料により順次洗浄し、次いでスキンケア化粧料を使用する化粧方法において、皮膚のクレンジングによる洗浄後洗浄料による洗浄前に、マッサージ化粧料を用いてマッサージを行う化粧方法」(以下「引用発明A」という)が記載されていると解することができる。
そこで、本願補正発明を引用発明Aと比較すると、ともに「皮膚をクレンジング及び洗浄料により順次洗浄し、次いでスキンケア化粧料を使用する化粧方法において、皮膚のクレンジングによる洗浄後洗浄料による洗浄前に、マッサージ化粧料を用いてマッサージを行う化粧方法」の点で一致し、以下の点で相違している。
・[相違点1]本願補正発明では、マッサージ時間が「20?60秒で完了するように」とされているのに対して、引用発明Aでは記載されていないこと。
・[相違点2]本願補正発明では、ニコチン酸トコフェロール等の血行促進剤及び崩壊性粒子を含有するマッサージ化粧料を使用するのに対して、引用発明ではその点が記載されていないこと。

(4)判断
・[相違点1]について
刊行物Aには、「フェイシャルトリートメントへの全ての所要時間は、基本的に一時間?一時間半くらいの間で施されます」と記載されているが、この時間は、パック等も含めて上記(ア)?(オ)の全ての段階に要する時間と解されるので、マッサージのみに要する時間がこの記載によって示されているものではない。
ところで、本出願時において、クレンジングの際のマッサージは、エステサロン等における専門者によるものばかりでなく、広く家庭でも行われていたことであって、それゆえ種々のマッサージクリームも市販されていたものである。(刊行物B参照)
そして、刊行物Bによれば、そのように家庭で行われるクレンジングの際のマッサージは、「5?10分」「3?5分」といった比較的短時間で行われるものであって(B-1参照)、場合によっては「30秒」で効果を奏する場合があることも記載されている。(B-5参照)
してみると、家庭で行うことをも念頭においたマッサージに関して、30秒を挟んでその前後を含む「20?60秒」といった時間で完了させるようにすることは、刊行物Bの記載から格別困難なく容易になし得るものである。

・[相違点2]について
本願補正発明のマッサージ化粧料に含有させる成分として、(a)「ニコチン酸トコフェロール等の血行促進剤」と(b)「崩壊性粒子」の二つが特定されているので、以下順次検討することにする。
まず、(a)について検討する。
本願補正発明では、「ニコチン酸トコフェロール、米胚芽油、ハマメリスエキス及びボダイジュエキスから選ばれる」と規定されているから、ニコチン酸トコフェロール1種のみを含む場合も本願補正発明の範囲内のものと解される。
そこで、ニコチン酸トコフェロールを含有したマッサージ化粧料を使用することが容易であるかどうかについて検討する。
上記刊行物BのB-2?B-6の記載は、個人が家庭において使用するマッサージ化粧料に関するものであるが、それらの記載にあるように、マッサージ化粧料に対しては、一般に、美白効果、皮膚老化防止効果、肌荒れ改善効果、保湿効果など、皮膚に対して有用な付加的な機能を持たせる等の、種々の目的で各種成分が配合されるものである。
一方、ニコチン酸トコフェロールは、本出願前、酸化防止剤やビタミン剤成分として各種化粧料に汎用されていた周知成分である(例えば、特開平5-262636号公報、特開平5-271048号公報参照)ばかりでなく、さらに、皮膚老化防止効果、保湿効果、肌荒れ改善効果、美白増強効果など、皮膚に対する有用性についても当業者に広く知られていたものである(例えば、特開昭62-139104号公報、特開平2-200608号公報、特開昭62-209009号公報、特開平6-40886号公報参照)。
そして、本願補正発明で使用するニコチン酸トコフェロールの配合量は、「通常、0.001?5重量%、特に0.01?3重量%…が好ましい」(【0047】)とされるものであって、通常の酸化防止剤やビタミン剤等として使用されるニコチン酸トコフェロールの配合量と同程度である。
したがって、マッサージ化粧料に対してニコチン酸トコフェロールを配合することは当業者が容易になし得ることである。また、ニコチン酸トコフェロールが、酸化防止剤やビタミン剤であると同時に血行促進作用を有していることも、本出願前から周知であったことから、当該成分を「血行促進剤」とした点についても、格別の創意を要するものではない。
次に、上記(b)について検討する。
上記した刊行物C及びDにおける各摘記事項(C-1?C-3及びD-1?D-2)にあるように、マッサージ効果を高めるために、マッサージ中に崩壊する粒子を化粧料に配合することは、本出願前から広く行われていることである。
したがって、マッサージ化粧料にニコチン酸トコフェロール及び崩壊性粒子を配合することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願明細書では、本願補正発明により、「崩壊性粒子の物理的血行促進効果と血行促進剤の薬理学的血行促進効果との相乗効果によって皮膚の血行が大きく改善される。」(【0018】)といった効果が奏される旨記載されているが、マッサージは家庭で行うマッサージであってもマッサージ化粧料の成分如何に拘わらず、マッサージ行為それ自体で、例えば、「血液やリンパ液の循環を良くし、皮膚の働きを活発にするマッサージには、…皮脂腺、汗腺の働きを高めて、潤いを保つ皮脂腺づくりを助けるという“肌改善効果”」(刊行物B第230頁第4?5段参照)などの肌に対する種々の効果があることは周知の事項であるから、本願明細書の実施例1と比較例1の効果の差を以て、マッサージ化粧料において特定の成分を組み合わせたことによる「相乗効果」が示されているものとすることはできない。
また、明細書において他に記載されている各種効果についても、当業者が予測しうる程度を超えるものとすることもできない。
よって、本願補正発明は、刊行物A?D記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成17年1月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成16年11月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「皮膚をクレンジング及び洗浄料により順次洗浄し、次いでスキンケア化粧料を使用する化粧方法において、皮膚のクレンジングによる洗浄後洗浄料による洗浄前に、ニコチン酸トコフェロール、米胚芽油、ハマメリスエキス及びボダイジュエキスから選ばれる血行促進剤、及び崩壊性粒子を含有するマッサージ化粧料を用いてマッサージすることを特徴とする化粧方法。」

(2)引用刊行物
原査定で引用された刊行物A?D及びその記載事項は、上記2.(2)で記載したとおりである。

(3)対比
本願発明は、上記本願補正発明から「20?60秒で完了するように」との発明特定事項を除いたものに相当するものであって、該事項は上記2.における「相違点1」に対応するものである。したがって、本願発明は、上記した刊行物Aに記載の引用発明と比較すると、結局2.において「相違点2」としていた以下の点でのみ相違することになる。
・[相違点]本願発明では、ニコチン酸トコフェロール等の血行促進剤及び崩壊性粒子を含有するマッサージ化粧料を使用するのに対して、引用発明ではその点記載されていないこと。

(4)判断
上記相違点については、刊行物B?D及び周知技術を参考にして当業者が容易になし得ることであって、その効果についても当業者の予測する程度を超えるものではないことは、上記2.(4)において記載したとおりである。
したがって、本願発明は、刊行物A?D記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物A?D記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-26 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-11 
出願番号 特願平8-261346
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 胡田 尚則福井 悟  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 穴吹 智子
森田 ひとみ
発明の名称 化粧方法  
代理人 特許業務法人田治米国際特許事務所  

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