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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1171837 |
審判番号 | 不服2006-5751 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-29 |
確定日 | 2008-01-25 |
事件の表示 | 特願2003- 72445「電池」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開、特開2004-281278〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成15年3月17日の出願であって、平成18年1月17日付けで手続補正がなされ、同年2月23日付けで拒絶査定がされたところ、これに対し、同年3月29日付けで審判請求がなされるとともに、同年4月17日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成18年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年4月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成18年4月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1?11(以下、それぞれ「旧請求項1」等という。)について、旧請求項1に「前記電池素子は、前記正極に接続され、前記外装部材の内部から外部に向かい導出された正極端子と、前記負極に接続され、前記外装部材の内部から外部に向かい導出された負極端子とを有し、」、及び「前記外装部材の樹脂層と前記正極端子および負極端子との間には、それぞれ樹脂片が介在している」の特定事項を付加することにより、実質的に旧請求項11を補正後の請求項1(以下、「新請求項1」という。)に繰り上げるとともに、旧請求項1を直接又は間接に引用する旧請求項2?10を、新請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?10(以下、「新請求項2?10」という。)に補正する事項を含む。 2.本件補正に対する判断 旧請求項2?10は、旧請求項11の特定事項を有しないものであったが、新請求項2?10は、新請求項1を引用することにより旧請求項11の特定事項を付加されたものとなるから、新請求項2?10についての補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに限るとされる特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないし、同項第1,3又は4号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。 3.むすび 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第159条第1項の規定により準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願についての当審の判断 1.本願発明 平成18年4月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成18年1月17日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1,2には、 「【請求項1】正極および負極と共に電解質を備えた電池素子がフィルム状の外装部材の内部に収容された電池であって、 前記外装部材は、金属層と、この金属層の前記電池素子側に接着剤層を介して設けられた樹脂層とを有し、かつ、外縁部に設けられたシール部により封じられており、 前記接着剤層は、厚み25μmでの水分透過率が40℃、90%RHにおいて500g/m^(2) ・day以下で、かつ、厚みが10μm以下であり、 前記シール部のシール幅は1mm以上3mm以下である ことを特徴とする電池。 【請求項2】 前記接着剤層は、アクリル系接着剤を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。」 と記載されているから、本願の請求項2に係る発明は、以下のとおりのものと認められる。 「正極および負極と共に電解質を備えた電池素子がフィルム状の外装部材の内部に収容された電池であって、 前記外装部材は、金属層と、この金属層の前記電池素子側にアクリル系接着剤を含む接着剤層を介して設けられた樹脂層とを有し、かつ、外縁部に設けられたシール部により封じられており、 前記接着剤層は、厚み25μmでの水分透過率が40℃、90%RHにおいて500g/m^(2) ・day以下で、かつ、厚みが10μm以下であり、 前記シール部のシール幅は1mm以上3mm以下である ことを特徴とする電池。」 (以下、請求項2に係る発明を、「本願発明」という。) 2.原査定の理由の概要 原審の拒絶査定の理由の概要は、本願の請求項1?10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記1,2の刊行物(以下、それぞれ「刊行物1」、「刊行物2」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 <引用刊行物> 1.特開2001-176466号公報 2.特開2002-187233号公報 3.刊行物の記載事項 (1)刊行物1 (1-ア)「少なくとも外側から、基材層、アルミニウム箔層、中間層、熱接着性樹脂層が順に積層されてなる積層フィルムを、該熱接着性樹脂層同士が対向するように重ね合わせ、その端縁部を袋状にヒートシールして形成される電池用容器において、該積層フィルムのアルミニウム箔層の内側の中間層が取り除かれ、アルミニウム箔層の内側が、接着剤層と熱接着性樹脂層とで形成され、且つ、該積層フィルムの端縁部のヒートシール部の熱接着性樹脂層の厚さが、ヒートシールにより圧縮され、ヒートシール前の厚さよりも薄くなるように形成されていることを特徴とする電池用容器。」(【請求項1】) (1-イ)「・・・電池用容器に用いる積層フィルムには、その薄さおよび軽さと共に、各種の強度や、電解液その他、酸などに対する耐性、水蒸気その他のバリヤー性、熱封緘性、更に電極端子との熱接着性など様々な性能が必要であり、積層フィルムの構成として、例えば、外側から基材層、アルミニウム箔層、中間層、熱接着性樹脂層を順に積層した構成が採られている。 ・・・しかし、電池が、リチウムポリマー電池などの場合は、上記のような電池用容器を用いた場合でも、長期の間には、少しずつ水分が内部に侵入し、これが電解質成分(リチウム塩)と反応してフッ化水素を発生させ、このフッ化水素が熱接着性樹脂層、中間層を通してアルミニウム箔層の内面を侵すため、その接着面を剥離させてしまう問題があった。 【発明が解決しようとする課題】このような微量の水分透過の問題は、電池用容器の壁面、即ち、積層フィルムの平面部の水蒸気透過度を0にしても解決することができず、積層フィルムの端縁部のヒートシール部において、その端面がアルミニウム箔層で完全には遮断されないことに起因するものであった。」(【0005】?【0008】) (1-ウ)「・・・中間層のフィルムが、アルミニウム箔層の内側に例えば接着剤層を介して積層されていることは、前述した積層フィルムのヒートシール部の端面からの水分の侵入に対しては、それぞれの水蒸気透過度が0ではないため、むしろマイナス要因となる。 従って、・・・電池用容器を形成する積層フィルムの端縁部のヒートシール部の端面において、両側のアルミニウム箔層の内側が接着剤層と熱接着性樹脂層のみで形成され、且つ、ヒートシール部の熱接着性樹脂層の厚さが、ヒートシールにより圧縮され、ヒートシール前の厚さよりも薄くなるように形成されているので、該ヒートシール部における両側のアルミニウム箔層の間の断面積が小さくなり、この部分からの水分透過を少なくすることができ、電池用容器の水蒸気その他のバリヤー性を一層向上させることができる。また、中間層を取り除くことにより、積層フィルムの厚さを薄くすることができるので、電池用容器の薄型化に対しても有効である。」(【0012】、【0013】) (1-エ)「(実施例1) 電池用容器に用いる積層フィルムの構成(図1に示した構成に相当する) 2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)/接着剤層(厚さ3μm)/アルミニウム箔層(厚さ50μm)/接着剤層(厚さ3μm)/無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm) 上記アルミニウム箔層は、その両面にクロメート処理を行い、また、各接着剤層には、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で各層を貼り合わせて構成したものである。上記積層フィルムを用いて、外形寸法、長さ100mm、幅55mmで、底部でフィルムを折り返すと共に、両側端縁部を5mm幅でヒートシールし、上部が開口する三方シール形式の袋状容器を作製し、実施例1の電池用容器とした。尚、上記ヒートシールに際して、ヒートシール部の両側のアルミニウム箔層の間の距離が、シール前の66μmに対して、シール後は30μmとなるように圧縮してヒートシールした。」(【0053】) (1-オ)「〔水蒸気バリヤー性の測定およびその結果〕以上のように作製した実施例1、2および比較例1の電池用容器を試料として、それぞれに電解液として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を容積比1:1:1の比率で混合した混合液を3gずつ封入した後、60℃、90%RHの恒温恒湿槽で7日間保存し、保存後の電解液に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、下記のような結果が得られた。尚、上記混合液注入後の開口部のヒートシールは、操作上のバラツキを少なくするため、この部分からの水蒸気透過を無視できるようシール幅を15mm幅に広げてヒートシールした。 上記の結果から明らかなように、従来の電池用容器である比較例1の電池用容器に封入された混合液の水分量が1000ppmであったのに対して、実施例1の電池用容器に封入された混合液の水分量は400ppmとその1/2以下であり、・・・実施例の電池用容器の水蒸気バリヤー性は著しく向上していた。」(【0056】) (2)刊行物2 (2-ア)「外層から順に、耐熱性樹脂延伸フィルム層、アルミニウム箔層および熱可塑性樹脂未延伸フィルム層を必須とする電子部品ケース用包材において、アルミニウム箔層と未延伸フィルム層の間にアクリル系ポリマー層を設けてなる電子部品ケース用包材。」(【請求項1】) (2-イ)「本発明は、張り出し成形、深絞り成形などの加工性が優れていてシャープな形状の成形が可能であり、強度的にも優れており、アルミニウム箔と樹脂層との接着性も高く、耐水蒸気透過性、ヒートシール性に優れ、腐食性の電解液などにも侵されることのない電子部品ケース用包材及びそれを使用した小型であり、体積エネルギー密度が高い畜電池やキャパシタ等のための電子部品ケース用包材およびそれを用いた電池またはキャパシタのための電池ケースの開発を目的とする。」(【00010】)(注:段落番号【00010】は、【0010】の誤記と認める。) (2-ウ)「(実施例1?6、比較例1) (電子部品ケース用包材)下記に示す耐熱性樹脂延伸フィルム、熱可塑性樹脂未延伸フィルム等及びアルミニウム-鉄系合金のアルミニウム箔(・・・)を用い、外面用接着剤としてウレタン系ドライラミネート接着剤[・・・]を、内面用接着剤としてアクリル系ポリマーからなる接着剤を用いた。 なお下記のような略号を使用する。 1.・・・ 2.Al :アルミニウム箔 3.ON(1):ポリアミドフィルム・・・ 4.ON(2):ポリアミドフィルム・・・ 5.ON(3):ポリアミドフィルム・・・ 6.PET (1):ポリエステルフィルム・・・ 7.LLDPE:線状低密度ポリエチレンフィルム 8.CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム 9. IO :アイオノマー樹脂フィルム 10. ドライ:外面用接着剤(ウレタン系接着剤) アルミニウム箔と未延伸フィルム層の間に設けるアクリル系ポリマー層のモノマーの構成を表1に示す。 ・・・ (ラミネート材の構成) 実施例1:ON(1)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤1/CPP^(30) (包材総厚:100μm) 実施例2:ON(2)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤2/IO^(50) (包材総厚:120μm) 実施例3:ON(2)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤3/CPP^(30) (包材総厚:100μm) 実施例4:PET(1)^(16)/ドライ/Al^(40)/接着剤4/CPP^(30) (包材総厚:91μm) 実施例5:ON(2)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤5/CPP^(30) (包材総厚:100μm) 実施例6:PET(1)^(16)/ドライ/Al^(40)/接着剤6/CPP^(30) (包材総厚:91μm) 実施例7:ON(1)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤1/LLDPE^(30) (包材総厚:100μm) 比較例1:ON(3)^(25)/ドライ/Al^(40)/接着剤7/CPP^(30) (包材総厚:100μm)」(【0066】?【0073】。【表1】には、実施例1?7に使用するアクリル系ポリマー接着剤のモノマー構成、及び比較例1に使用する接着剤7がドライラミネート用ウレタン系接着剤であることが記載されている。なお、○付き文字は()付き文字で表記した。) (2-エ)「(成形性の評価方法)上記の電子部品ケース用包材を110mm×180mmのブランク形状にして、成形高さフリーのストレート金型にて張出し1段成形を行い、各包材の成形高さにより成形性を比較した。・・・ (水蒸気透過性評価方法)前記の方法で成形した角形容器に電池を充填し、シールした後60°×90%RHの環境に7日間保存し、電解液中の水分量をカールフィッシャー法にて測定した。結果を表2に示す。・・・」(【0074】、【0075】) (2-オ)【表2】、【表3】には、実施例1?7の電池の水蒸気透過性の評価が◎(水蒸気透過性50ppm以下)、○(同50?100ppm)であるのに対して、比較例1の電池の水蒸気透過性の評価が×(同300ppm以上)であることが記載されている。 4.当審の判断 (1)刊行物1に記載された発明 刊行物1の摘示(1-ア)には、「少なくとも外側から、基材層、アルミニウム箔層、中間層、熱接着性樹脂層が順に積層されてなる積層フィルムを、該熱接着性樹脂層同士が対向するように重ね合わせ、その端縁部を袋状にヒートシールして形成される電池用容器において、該積層フィルムのアルミニウム箔層の内側の中間層が取り除かれ、アルミニウム箔層の内側が、接着剤層と熱接着性樹脂層とで形成され、且つ、該積層フィルムの端縁部のヒートシール部の熱接着性樹脂層の厚さが、ヒートシールにより圧縮され、ヒートシール前の厚さよりも薄くなるように形成されていることを特徴とする電池用容器」が記載され、摘示(1-エ)には、その電池用容器に関して、「2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)/接着剤層(厚さ3μm)/アルミニウム箔層(厚さ50μm)/接着剤層(厚さ3μm)/無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)」の積層フィルムを用い、「各接着剤層には、2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で各層を貼り合わせて構成した」、「底部でフィルムを折り返すと共に、両側端縁部を5mm幅でヒートシールし、上部が開口する三方シール形式の袋状容器を作製し、実施例1の電池用容器とした」と記載されている。 以上の記載によると、電池用容器内の電池素子が正極、負極及び電解質を有することは明らかであるから、刊行物1には、 「正極および負極と共に電解質を備えた電池素子が積層フィルムの容器の内部に収容された電池であって、 前記容器は、アルミニウム箔層と、このアルミニウム箔層の前記電池素子側にドライラミネーション用の2液硬化型ポリウレタン系接着剤を含む接着剤層を介して設けられた熱接着樹脂層とを有し、かつ、外縁部に設けられたシール部により封じられており、 前記接着剤層は、厚みが3μmであり、 前記シール部のシール幅は5mmである 電池」 の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「刊行物1発明」という。) (2)対比 本願発明(前者)と刊行物1発明(後者)とを対比すると、後者の「積層フィルムの容器」、「アルミニウム箔層」は、それぞれ前者の「フィルム状の外装部材」、「金属層」に相当するから、両者は、「正極および負極と共に電解質を備えた電池素子がフィルム状の外装部材の内部に収容された電池であって、前記外装部材は、金属層と、この金属層の前記電池素子側に接着剤層を介して設けられた樹脂層とを有し、かつ、外縁部に設けられたシール部により封じられており、前記接着剤層は、厚みが10μm以下である電池」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:前者は、接着剤層が「アクリル系接着剤」を含み、「厚み25μmでの水分透過率が40℃、90%RHにおいて500g/m^(2 )・day以下」であるのに対して、後者は、接着剤層が「ドライラミネーション用の2液硬化型ポリウレタン系接着剤」を含み、その水分透過率が不明である点 相違点2:前者は、シール部のシール幅が1mm以上3mm以下であるのに対して、後者は、シール部のシール幅が5mmである点 (3)判断 (i)相違点1について 刊行物2の摘示(2-ア)?(2-オ)によると、刊行物2には、積層フィルムよりなる電池ケース用包材において、アルミニウム箔層(金属層)と未延伸フィルム層(樹脂層)との間に設ける内面用の接着剤として、ウレタン系ドライラミネート接着剤よりも耐水蒸気透過性(水蒸気バリヤー性)に優れるアクリル系ポリマー接着剤を用いることが記載されているといえる。 一方、刊行物1の摘示(1-イ)に記載されるように、積層フィルムよりなる電池用容器のシール部における水分侵入は周知の課題であるから、刊行物1発明において、シール部における水分侵入を抑制するために、積層フィルムの接着剤層を、ドライラミネーション用のウレタン系接着剤を含むものから、より水蒸気バリヤー性に優れるアクリル系ポリマー接着剤を含むものに置き換えることは、刊行物2の記載に基づき、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、フィルム状物の水蒸気バリヤー性を、特定の厚みでの特定の高温・高湿度条件下における水分透過率で表すことは、本願出願前周知の事項であり(特開2002-234111号公報【請求項1】、特開平5-46969号公報【請求項2】参照)、また、温度・湿度条件は不明であるものの、100μmでの水分透過率が1g/m^(2)・day以下のアクリレート系接着剤も本願出願前周知であるから(特開2001-148496号公報【請求項1】、【請求項4】参照)、上記の接着剤層の置き換えに際し、「厚み25μmでの40℃、90%RHにおける水分透過率」で表す水蒸気バリヤー性が「500g/m^(2 )・day以下」程度のもので置き換えるとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。 (ii)相違点2について 防湿性の構造に関して、水分の侵入経路が狭くかつ長いほど確実な防湿がなされることは、自明な事項であるところ、積層フィルム(ラミネート材)の端部をシールして電池を密封する構造において、十分な防湿性の要求から、水分の侵入経路であるシール部のシール幅(水分の侵入経路の長さ)を一定以上、通常5mm以上としていることは本願出願前周知の事項といえる(特開2000-90975号公報【0007】参照)。 上記周知の事項に照らすと、刊行物1発明においては、防湿性を確保するために、積層フィルムのシール部のシール幅を通常範囲の5mmとしているものと認められるが、シール部のシール幅分の突出により、体積エネルギー密度が低下してしまうという課題も、同じく周知である(上記文献【0008】参照)。 一方、防湿性を向上させる手段として、積層フィルムのシール部の接着剤層及び樹脂層の厚み(水分の侵入経路の狭さ)を調整することや、接着剤層の材質を選択することは、刊行物1の摘示(1-ア)や、刊行物2の摘示(2-ア)に記載されているように公知である。 そうすると、刊行物1発明において、上記公知の防湿性の向上手段を適宜採用して、防湿性と体積エネルギー密度との兼ね合いを適宜調整し、シール部のシール幅を5mmより小さい1mm以上3mm以下程度とすることは、当業者が上記周知の事項及び公知の事項に基づいて、容易になし得る設計的事項といえる。 IV.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-28 |
結審通知日 | 2007-11-29 |
審決日 | 2007-12-13 |
出願番号 | 特願2003-72445(P2003-72445) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01M)
P 1 8・ 572- Z (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高木 正博 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
近野 光知 坂本 薫昭 |
発明の名称 | 電池 |
代理人 | 藤島 洋一郎 |