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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1172068
審判番号 不服2005-10443  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-06 
確定日 2008-01-30 
事件の表示 特願2002-306100「食器洗い機及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月15日出願公開、特開2004-8787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成14年10月21日(パリ条約による優先権主張2002年6月4日、大韓民国)の特許出願であって、平成17年2月28日付けで拒絶査定され(発送日:平成17年3月8日)、これに対して、平成17年6月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に平成17年7月6日付けで明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。


第2 平成17年7月6日付け手続補正書による補正却下の決定
[結論]
平成17年7月6日付け手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
平成17年7月6日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項18は、次のとおりに補正された。
「【請求項18】 食器洗い機において、
前記食器洗い機内に設けられるもので、内部に設けられる着脱可能な匂い除去材と、前記匂い除去材を露出させる開口とを有するケーシングと、
前記開口を選択的に開閉する開閉ドア部と、
匂い除去の際、前記開閉ドアが選択的に開閉されるように制御する制御部とを含むことを特徴とする食器洗い機。」

上記補正は、請求項18に係る発明を特定するために必要な事項として「匂い除去の際、前記開閉ドアが選択的に開閉されるように制御する制御部」という事項を付加することを含むものである。
したがって、上記補正は、限定的減縮を目的とするものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項18に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか否か)につき以下に検討する。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-213725号公報(以下、「公知刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項がその明細書に記載されている。

ア.「この発明の脱臭装置は、空気の流入口と流出口とを有する箱体内の空気流路に脱臭材とファンとを配設したことを特徴とするものである。
このように、この発明によれば、脱臭材を入れた箱体内へファンによって空気を強制的に循環させるようにしたため、従来の自然対流による脱臭と比較して著しく高い脱臭効果をあげることができる。」(第1頁右下欄第5行?第12行)

イ.「この発明の一実施例を第1図に基づいて説明する。すなわち、この脱臭装置は、空気の流入口2と流出口3とを有する箱体1内の空気流路に脱臭材4とファン6とを配設したものである。
・・・(中略)・・・
前記脱臭材収容部5は箱体1の上面から箱体1内の空気流路を横切るようにして凹設したものであって、この収容部5内に箱形の脱臭材4を着脱自在に収容する。」(第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第7行)
ウ.「第5図は第1図または第2図に示した脱臭装置を食器乾燥機に使用した状態を示している。食器乾燥機24は食器、包丁、まな板、なべ等を乾燥させたとき、庫内にどうしても異臭がこもってしまい、不快感を与えてしまうために、脱臭装置が必要になる。
そこで、第5図に示すように、食器乾燥機24の上部に前述のごとき脱臭装置23を設ける。食器乾燥機24の下部には食器乾燥機用のファン25が設けられ、さらに上部及び下部にそれぞれ空気の吸入口26および排出口27がそれぞれ設けられる。そして、脱臭装置23の操作は食器乾燥機の操作部、つまりヒータまたはファン25の操作部に連動するように設定する。すなわち、食器類を乾燥している間(空気の流れを矢印aで示す)は、庫内の温度が上昇しているので、脱臭装置23が作動しないようにし、さらに脱臭装置のファンまたは乾燥用のファン25と連動して脱臭材が湿らないように空気流入口および流出口は自動的に閉じるようなシャッタ式にするのが好ましい。
食器類が乾燥したとき、ファン25の停止と連動して脱臭装置23が作動するようにする(空気の流れを矢印bで示す)。このような脱臭装置と食器乾燥機の操作部との連動は湿度センサー食器乾燥機において効果的である。」(第2頁右下欄第7行?第3頁左上欄第11行)

上記摘記事項「ア.」?「ウ.」並びに第1?第5図の記載内容から、脱臭装置の脱臭材が箱体の外部の食器乾燥機の内部空気に露出されることにより、脱臭が行われるものと理解できる。

また、上記摘記事項「ウ.」からは、空気流入口及び流出口に「シャッタ」が設けられていて、脱臭が必要な際にこの「シャッタ」を開くよう制御を行う、つまりシャッタを選択的に開閉する制御を行う、制御部があるものと理解することができる。

これらの事項及び図面の記載内容をふまえ、公知刊行物には、次の発明(以下、「公知刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

「食器乾燥機において、
前記食器乾燥機内に設けられるもので、内部に設けられる着脱可能な脱臭材と、ファンと、前記脱臭材を食器乾燥機の内部空気に露出させる空気流入口及び流出口とを有する箱体と、
前記空気流入口及び流出口を選択的に開閉するシャッタと、
脱臭の際、前記シャッタが選択的に開閉されるように制御する制御部とを含む食器乾燥機。」

3.対比
本件補正発明と公知刊行物記載の発明を対比する。
公知刊行物記載の発明における「脱臭材」は、本件補正発明における「匂い除去材」に相当する。以下、同様に、「空気流入口及び流出口」は「開口」に、「箱体」は「ケーシング」に、「シャッタ」は「開閉ドア部」又は「開閉ドア」に、「脱臭」は「匂い除去」に、それぞれ相当する。
さらに、本件補正発明における匂い除去とは、匂い除去材を匂いを除去すべき空間内の空気に接触させて実行するものであるから、公知刊行物記載の発明の「脱臭材を食器乾燥機の内部空気に露出させる」とは、本件補正発明における「匂い除去材を露出させる」に相当する。
そして、本件補正発明でいう「食器洗い機」とは、食器乾燥の機能を有するものも含む(本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0019】、【0035】、【0040】?【0044】や図5を参照。)。
そうしてみると、本件補正発明と公知刊行物記載の発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「食器乾燥の機能を有する機械において、
前記食器乾燥の機能を有する機械内に設けられるもので、内部に設けられる着脱可能な匂い除去材と、前記匂い除去材を露出させる開口とを有するケーシングと、
前記開口を選択的に開閉する開閉ドア部と、
匂い除去の際、前記開閉ドアが選択的に開閉されるように制御する制御部とを含む食器乾燥の機能を有する機械。」

[相違点1]
食器乾燥の機能を有する機械が、本件補正発明では食器洗いの機能も備えた「食器洗い機」であるのに対して、公知刊行物記載の発明では「食器乾燥機」である点。

[相違点2]
公知刊行物記載の発明では、ケーシングにファンが備えられている点。

4.当審の判断
相違点1、2について検討する。

(1)相違点1について
食器を洗う機能・工程を備えた機械は、「食器洗い機」、「食器洗浄機」等と称されて広く知られているが、そのような機械に対してさらに洗われた食器を乾燥させる機能・工程も備えた機械も、広く知られているものである。また、既に洗われた食器を乾燥させる機能・工程のみを備えた機械も、「食器乾燥機」等と称されて広く知られているものである。
食器を洗う機能・工程と食器を乾燥させる機能・工程を、それらを単独で用いて機械を構成するか、組み合わせて機械を構成するかは、当業者が適宜採用し得たことといえる。
そうしたことをふまえると、公知刊行物記載の発明に係る食器乾燥機を乾燥工程に先立つ食器洗い工程も備えた機械として構成することに、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせるものではない。

(2)相違点2について
公知刊行物記載の発明は、脱臭材を入れたケーシング内へファンによって空気を強制的に循環させるようにしたものである(摘記事項「ア.」参照)が、かかるファンを有さずとも匂い除去の働きを備えた機械として成り立ち得るものであることは、当業者にとって自明である。
したがって、公知刊行物記載の発明においてケーシングがファンを有さない構成とすることにも、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせるものではない。

(3)以上をふまえると、本件補正発明を特定するために必要な事項は、公知刊行物記載の発明に基づいて、当業者が格別の創作能力を要することなく採用し得たものである。
しかも、本件補正発明を特定するために必要な事項により、予期される以上の格別顕著な効果がもたらされるということもできない。

(4)したがって、本件補正発明は、公知刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
本件補正(平成17年7月6日付け手続補正書による補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成16年12月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項18に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項18】 食器洗い機において、
前記食器洗い機内に設けられるもので、内部に設けられる着脱可能な匂い除去材と、前記匂い除去材を露出させる開口とを有するケーシングと、
前記食器洗い機の駆動信号に応じて前記開口を選択的に開閉する開閉ドア部と
を含むことを特徴とする食器洗い機。」

1.刊行物
公知刊行物に記載された事項及び公知刊行物記載の発明は、既に前記「第2 2.」で述べたとおりのものである。

2.対比・判断
本願発明と公知刊行物記載の発明を対比する。
公知刊行物記載の発明における「脱臭材」、「空気流入口及び流出口」、「箱体」、「シャッタ」は、それぞれ、本願発明における「匂い除去材」、「開口」、「ケーシング」、「開閉ドア部」に相当する。
本願発明でいう「食器洗い機」とは、食器乾燥の機能を有するものも含む(本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0019】、【0035】、【0040】?【0044】や図5を参照。)。
また、公知刊行物記載の発明の開閉ドア部も食器洗い機の駆動信号に応じて開口を選択的に開閉するものと理解できる。(摘記事項「ウ.」参照)
そうしてみると、両者の相違点は、「第2 3.対比」に記載した本件補正発明と公知刊行物記載の発明の相違点1及び2と同じであり、また、相違点1及び2についての判断は、「第2 4.当審の判断」に記載したとおりである。
そうすると、本願発明も、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、 結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-29 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-18 
出願番号 特願2002-306100(P2002-306100)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 関口 哲生
清水 富夫
発明の名称 食器洗い機及びその制御方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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