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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C21C |
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管理番号 | 1172165 |
審判番号 | 不服2005-15195 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-08 |
確定日 | 2008-02-06 |
事件の表示 | 特願2000-176688「磁力線発生材」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月25日出願公開、特開2001-355017〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年6月13日の出願であって、平成17年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月8日に審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を更に引用する請求項3に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明3」という。)。 「電気炉酸化スラグ溶解物に透磁性を向上させる成分である高比重元素および/または高比重化合物を添加して空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を行ない、その後該溶解物を急冷固化し粉砕することによって製造される透磁性材料の層と通電層である面状発熱層とを有することを特徴とする磁力線発生材」 3.原査定の理由の概要 原審の拒絶査定の理由の概要は、次のとおりのものである。 本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:特開昭51-148995号公報 刊行物2:登録実用新案第3041702号公報 刊行物3:特開平10-15523号公報 4.引用刊行物とその記載事項 原審の拒絶査定に引用された刊行物1及び刊行物3には、次の事項が記載されている。 (1)刊行物1 (1a)「可撓性の合成樹脂フィルム基板(1)上に、導電性インクで電極(2),(3)を印刷し、更に該基板(1)上に、特殊合成樹脂に導電物を混合した抵抗ペーストで抵抗皮膜(4)を印刷し、該基板(1)の上面を、絶縁フィルム(5)で被った面状発熱体(6)の表裏何れかの一面に、柔軟性のフェライト板(13)を貼着し、これ等を柔軟性の合成樹脂等の不導体性の袋(7)に挿入固定した保温治療器」(特許請求の範囲第3項) (1b)「又本発明の保温治療器の袋内に柔軟性のフェライト板(13)を挿入すれば、フェライトの磁力線によって血行が促進され、保温と磁力線とで血行循環の障害によって起る各種の症病を治療することにも応用することが出来る。」(第2頁左下欄第4?8行) (2)刊行物3 (2a)「本発明の重量骨材を製造するには、図1に示すように電気炉酸化スラグ(1) と高比重元素および/または高比重元素化合物を電気溶解炉(2) に投入し、電極(3) に通電して該スラグ(1) と高比重元素および/または高比重元素化合物を溶解し、所望なれば酸素および/または空気を吹込んで該溶解物を冷却固化粉砕する。この場合該溶解物を鋼板製の皿型容器内に通常80mm厚に注入し、水冷後クラッシャーで粉砕すれば重量粗骨材が製造される。」(段落【0006】) (2b)「また該溶解物から重量細骨材を製造するには、通常該溶解物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶解物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷処理する方法が採られる。該羽根付きドラムは複数個配置して複数段の破砕粒状化を行なってもよい。このようにして得られる重量細骨材は通常5mm以下の粒径を有し、粒径2.5mm以下のものは略球状であり、表面に微細な凹凸を有する優れた形状のもので粒度分布はJIS-A5005コンクリート用砕砂の規格範囲にある。」(段落【0007】) (2c)「本発明の重量骨材は高比重を有し、かつ耐久性、耐蝕性、耐磨耗性があるから、コンクリート製品、ゴム製品、プラスチック製品、粘土製品等に大重量を付し、かつ制振性、遮音性、放射線シールド性、透磁性等を付与するために使用されて極めて有用である。」(段落【0010】) 5.当審の判断 (1)引用発明 刊行物1の(1a)には、「可撓性の合成樹脂フィルム基板(1)上に、導電性インクで電極(2),(3)を印刷し、更に該基板(1)上に、特殊合成樹脂に導電物を混合した抵抗ペーストで抵抗皮膜(4)を印刷し、該基板(1)の上面を、絶縁フィルム(5)で被った面状発熱体(6)の表裏何れかの一面に、柔軟性のフェライト板(13)を貼着し、これ等を柔軟性の合成樹脂等の不導体性の袋(7)に挿入固定した保温治療器」が記載されている。 そして、上記フェライトは、(1b)の「フェライトの磁力線によって血行が促進され」という記載によれば、磁力線を発生する作用を有するものであり、上記「柔軟性の合成樹脂等の不導体性の袋」は、磁力線の発生に何ら関与していないことは明らかであるから、刊行物1には、上記治療器から、磁力線の発生に関与しない上記不導体性の袋を除いた、面状発熱体の表裏何れかの一面に柔軟性のフェライト板を貼着したものである、磁力線を発生する材料も記載されているといえる。 上記記載及び認定事項を本願発明3の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明が記載されているといえる。 「可撓性の合成樹脂フィルム基板上に、導電性インクで電極を印刷し、更に該基板上に、特殊合成樹脂に導電物を混合した抵抗ペーストで抵抗皮膜を印刷し、該基板の上面を、絶縁フィルムで被った面状発熱体の表裏何れかの一面に、柔軟性のフェライト板を貼着した、磁力線を発生する材料」(以下、「引用発明1」という。) (2)本願発明3と引用発明1との対比 まず、引用発明1の「面状発熱体」及び「磁力線を発生する材料」は、本願発明3の「通電層である面状発熱層」及び「磁力線発生材」に、それぞれ相当するといえる。 一方、フェライトが透磁性材料であることは、本願出願時の技術常識であるから(必要があれば、化学大辞典7縮刷版、共立出版、1993年、第738頁の「フェライト」の項を参照。)、引用発明1の「フェライト板」における「フェライト」は、本願発明3の「透磁性材料」に相当するといえる。そして、この「フェライト板」は平板状であり、かつ「面状発熱体の表裏何れかの一面に貼着した」ものであるから、「層」を形成しているといえる。 そうすると、本願発明3と引用発明1は、「透磁性材料の層と通電層である面状発熱層とを有する磁力線発生材」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:透磁性材料が、本願発明3では、「電気炉酸化スラグ溶解物に透磁性を向上させる成分である高比重元素および/または高比重化合物を添加して空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を行ない、その後該溶解物を急冷固化し粉砕することによって製造される」ものであるのに対して、引用発明1では、「フェライト」である点。 (3)相違点についての判断 そこで、上記相違点について検討する。 (2a)の「電気炉酸化スラグ(1) と高比重元素および/または高比重元素化合物を電気溶解炉(2) に投入し、電極(3) に通電して該スラグ(1) と高比重元素および/または高比重元素化合物を溶解し、所望なれば酸素および/または空気を吹込んで該溶解物を冷却固化粉砕する。」、及び、(2b)の「該溶解物から重量細骨材を製造するには、通常該溶解物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶解物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷処理する方法が採られる。」という記載によると、刊行物3には、重量骨材の製造方法が、電気炉酸化スラグ溶解物に高比重元素および/または高比重元素化合物を添加した後、酸素および/または空気を吹込み、これを急冷固化粉砕するものであることが記載されているといえる。ここで、上記「酸素および/または空気を吹込み」は、電気炉酸化スラグ溶解物に高比重元素および/または高比重元素化合物を添加したものと、酸素とを高温で接触させる処理であるといえるから、上記電気炉酸化スラグ溶解物に高比重元素および/または高比重元素化合物を添加したものを強制酸化する処理であることは明らかである。 そして、このような工程によって製造された重量骨材は、(2c)の「透磁性等を付与するために使用されて極めて有用である。」という記載によれば、透磁性を有するものであって、透磁性が求められる用途において適用されるものである。 すると、引用発明1において、透磁性材料である「フェライト」に代えて、刊行物3に記載された、透磁性を有する、電気炉酸化スラグ溶解物に高比重元素および/または高比重元素化合物を添加した後、酸素および/または空気を吹込み、これを急冷固化粉砕する工程によって製造された重量骨材を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明3は、引用発明1および刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-30 |
結審通知日 | 2007-12-03 |
審決日 | 2007-12-14 |
出願番号 | 特願2000-176688(P2000-176688) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C21C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 孔一 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
近野 光知 坂本 薫昭 |
発明の名称 | 磁力線発生材 |
代理人 | 宇佐見 忠男 |