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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1172255
審判番号 不服2005-20999  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-31 
確定日 2008-02-08 
事件の表示 平成11年特許願第145650号「半導体発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 8日出願公開、特開2000-340875〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年5月25日に出願された特許出願であって、原審において、平成17年9月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年11月24日に手続補正がなされたものであって、その請求項に係る発明は、上記手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。

「【請求項1】 台座と、該台座に対して一方側に突出するように設けられた放熱用ブロックとが一体的に形成された金属製のアイレットと、
該放熱用ブロックにそれぞれ搭載されており、半導体発光素子および半導体受光素子を少なくとも含む複数のチップ部品と、
前記各チップ部品と外部回路とを電気的に接続するために該台座を貫通して設けられた複数のリードピンとを有する半導体発光装置において、
該複数のリードピンのそれぞれは、該台座に対して前記各チップ部品と反対側に伸びるアウターリード部と、該台座に対して前記チップ部品側に伸びるインナーリード部とを有し、該アウターリード部および該インナーリード部が該台座を貫通する樹脂により埋め込まれて、該複数のリードピンと該樹脂とが一体化されており、
前記樹脂はポリフェニレンサルファイドであり、該インナーリード部を埋め込む樹脂部分は、前記半導体受光素子に不要な光が入射することを防ぐために、黒色であるか、または表面が艶消しとされている、半導体発光装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平10-245325号(特開2000-77792号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスクやその他各種の光応用機器に組み込まれてピックアップを構成する半導体レーザユニットに関し、詳しくは、ホログラム方式のピックアップにおいて、光源用のレーザダイオードチップ(以下「LDチップ」と称する)と信号読取用の受光素子を一つのパッケージ内に配置した半導体レーザユニットに関する。」

イ.「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、光源用のレーザダイオードチップと信号読取用の受光素子をアイランドに搭載し、そのレーザダイオードチップ及び受光素子に電気的に接続する並列状のリードピンを樹脂成形部に鉛直方向をもって保持させ、該樹脂成形部と前記アイランドを一体的に集合させて一つのパッケージにした半導体レーザユニットであって、上記樹脂成形部は、並列状のリードピンに対しインナーリードとアウターリードの突端面又は側面に電気的接続面を残して各リードピンを連結固定するよう成形すると共に、樹脂成形部におけるアイランド下面側に突出する部分は、各リードピンのアウターリードの電気的接続面が露呈するソケット部とし、さらに該ソケット部の下部を分断可能に形成したことを要旨とする。
【0006】このような構成によれば、本出願人による先提案の半導体レーザユニット同様、アウターリードは外部端子との電気的接続面を残して、樹脂成形部によってその周囲を保護されるので、アウターリードの長さ調整のために切断加工を行う際や、樹脂成形部とアイランドを固定する際、さらには製造後の取り扱いの際などにおいて、アウターリード端部の変形を効果的に防止し得る。また、樹脂成形部におけるアイランド下面側に突出する部分に、各リードピンのアウターリードの電気的接続面が露呈するソケット部が形成されるので、該ソケット部を、導通テスト用のテスターや基板に形成したソケット装填部等に挿入するだけで、各リードピンと外部端子の電気的接続が行えるようになる。・・・」

ウ.「【0014】アイランド3は、冷間鋳造等で高精度に成型されている。本例のアイランド3は図に示すように平面視円板形に形成されると共に、その中央部に隆起部3aを残して左右の装着孔3b,3bを設けてなり、隆起部3aはアイランド3の直径に沿って立ち上がるよう形成する。また隆起部3aの長さ方向略中央部位の側面には垂直立面3cが形成され、この垂直立面3cに、銀ペースト等の半田材料を用いてモニタ用フォトダイオード10を固定し、さらにこのフォトダイオード10の表面にLDチップ1を接着等で固定している。隆起部3aは、前記垂直立面3cの右側寄りにおける水平上面3dを受光素子2の搭載面とし、図2に示すようにその水平上面3dに受光素子2を接着等で固定している。またアイランド3は、上記隆起部3aの側周面における垂直立面3c以外の部分を、左右の樹脂成形部5との接合部となる接合面3eとしている。
【0015】左右の樹脂成形部5は、リードフレームの並列状のリードピン4,4…に対し、インナーリードの突端面にボンディング用の電気的接続面9aを、アウターリードの側面に実装用の電気的接続面9bを夫々残して各リードピン4を連結固定するようモールド成形され、細かな点の相違を除いて概ね、インナーリードを被覆する上段部5aと、アウターリードを被覆する下段部5bとを階段状に連設し、且つ各樹脂成形部5の内面には、上記アイランド3及び相対する樹脂成形部5との接合部となるコ字形の接合面5cが形成されている。そうして両者を組み合わせた時(合致された時)には、中央に空間を存した状態でコ字形の接合面5c,5cの先端同士が突き合う関係を作り出すと共に、下段部5b内に各リードピン4,4…のアウターリード裏面側に位置する中空部20が形成されるように構成され、これら接合面5c,5cとアイランドの接合面3e同士を密接させると共に超音波溶着等の接合手段を用いて、左右の樹脂成形部5,5とアイランド3とが一体的に固定される。また樹脂成形部5におけるアイランド3下面側に突出する部分、すなわち上記下段部5b,5bは、各リードピン4のアウターリードの電気的接続面9bが露呈するソケット部12を構成する。」

エ.「【0022】・・・また、耐熱樹脂を用いて樹脂成形部5を成形したり、リードフレームをパラジウム等によりメッキすることなどは、耐熱性、耐久性の向上を図ったり、銀のホイスカが樹脂部分に入り込むマイグレーションを防止する上で好ましい。」

また、図1,2及び図9からは、
オ.「アイランドは、円板形部と、円板形部に対して一方側に突出するように設けられた隆起部3aを有し、各リードピン4,4…を埋設した樹脂成形部5は、アイランドの円板形部を貫通している。」ことが看取できる。

上記ア?オによれば、先願明細書には次の発明が記載されているものと認められる。
「円板形部と、円板形部に対して一方側に突出するように設けられた隆起部とを有し、冷間鋳造等で成型されたアイランドの、該隆起部に光源用のレーザダイオードチップと信号読取用の受光素子を搭載し、そのレーザダイオードチップ及び受光素子に電気的に接続する並列状のリードピンを樹脂成形部に鉛直方向をもって保持させ、該樹脂成形部を上記アイランドの円板形部に貫通せしめて上記樹脂成形部とアイランドとを一体的に集合させて一つのパッケージにした半導体レーザユニットであって、上記樹脂成形部は、並列状のリードピンに対しインナーリードとアウターリードの突端面又は側面に電気的接続面を残して各リードピンを連結固定するよう成形すると共に、樹脂成形部におけるアイランド下面側に突出する部分は、各リードピンのアウターリードの電気的接続面が露呈するソケット部とした、半導体レーザユニット。」

3.対比
そこで、本願発明と先願明細書に記載された発明とを比較すると、
a.先願明細書に記載された発明の「円板形部」は、本願発明の「台座」に相当し、以下同様に「隆起部」は、「放熱用ブロック」に、「冷間鋳造等で成型されたアイランド」が、金属製であることは明らかであるから、「金属製のアイレット」に、「光源用のレーザダイオードチップと信号読取用の受光素子」は、「半導体発光素子および半導体受光素子を少なくとも含む複数のチップ部品」に、「リードピン」は、「リードピン」に、「インナーリード」は、「インナーリード部」に、「アウターリード」は、「アウターリード部」に、「半導体レーザユニット」は、「半導体発光装置」に、それぞれ相当し、

b.また、先願明細書に記載された発明の「樹脂成形部」は、「アイランドの円板形部に貫通せしめて…並列状のリードピンに対しインナーリードとアウターリードの突端面又は側面に電気的接続面を残して各リードピンを連結固定するよう成形」したものであるから、上記「樹脂成形部」が、本願発明の「該アウターリード部および該インナーリード部が該台座を貫通する樹脂により埋め込まれて、該複数のリードピンと該樹脂とが一体化されており」なる発明特定事項を有することは明らかであるから、

両者は、
「台座と、該台座に対して一方側に突出するように設けられた放熱用ブロックとが一体的に形成された金属製のアイレットと、該放熱用ブロックにそれぞれ搭載されており、半導体発光素子および半導体受光素子を少なくとも含む複数のチップ部品と、前記各チップ部品と外部回路とを電気的に接続するために該台座を貫通して設けられた複数のリードピンとを有する半導体発光装置において、該複数のリードピンのそれぞれは、該台座に対して前記各チップ部品と反対側に伸びるアウターリード部と、該台座に対して前記チップ部品側に伸びるインナーリード部とを有し、該アウターリード部および該インナーリード部が該台座を貫通する樹脂により埋め込まれて、該複数のリードピンと該樹脂とが一体化されている、半導体発光装置。」
である点で一致し、次の点で一応相違している。

[一応の相違点]本願発明の樹脂は、「ポリフェニレンサルファイドであり、該インナーリード部を埋め込む樹脂部分は、前記半導体受光素子に不要な光が入射することを防ぐために、黒色であるか、または表面が艶消しとされている」ものであるのに対して、先願明細書に記載された発明の樹脂が、ポリフェニレンサルファイドであり、黒色であるか、明らかではない点。

4.判断
ポリフェニレンサルファイド(以下、「PPS」という。)は、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れ、リードフレームなどの電気部品に用いられる銅や銅合金とほぼ同様の熱膨張係数を有する熱可塑性樹脂である。このような物性並びに成形性を有することから、本願出願時には、PPSが電気部品の封止用、例えば、リードフレームなどをインサート成型する樹脂として好適であることは当業者に広く知られており、また、慣用されていたことは明らかである。
必要であれば、特開平11-46015号公報(【0037】)、特開平11-40858号公報(【0035】、【0036】)、特開平10-158527号公報(【0006】、【0011】、【0017】)、特開平10-125426号公報(【0039】)、特開平10-117013号公報(【0006】)、特開平7-153990号公報(【0016】、【0017】)、特開平6-132335号公報(【0011】、【0014】)、特開平5-110129号公報(【0018】)などを参照されたい。
そして、先願明細書には、「耐熱性樹脂を用いて成形・・・することなどは、耐熱性、耐久性の向上を図ったり・・・する上で好ましい。」(摘記事項エ)ことが記載されている。

また、インナーリード部を埋め込む樹脂部分は、台座を貫通し半導体受光素子に近接して配置される樹脂部分であるところ、一般に、受光素子は光センサであるから、被測定光の強度を正確に計測することが要請されており、外光や散乱光など測定のノイズとなる迷光がセンサに入射しないよう対策を施すことが求められる。このような対策のうち最も一般的で慣用されているのが周囲を黒色とし、反射を防止する措置である。このような措置は光学装置の設計者にとって基本的な事項であって、技術常識にすぎない(例えば、カメラや顕微鏡などの光学装置の内部は黒色になっている。)から、先願明細書に記載された発明のインナーリード部を埋め込む樹脂部分を含む受光素子周りであっても当然に施されているものと解するのが相当である。

そうすると、先願明細書に耐熱性樹脂と記載があり、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、熱膨張係数などの物性、あるいは熱可塑性樹脂の成形性からみてリードフレームなどをインサート成型する樹脂としてPPSを用いることが周知・慣用であり、また、黒色とすることが技術常識にすぎない以上、その材質及び色などに明示の記載がなくとも、本願出願当時の技術水準に照らして当業者としては本願発明で限定したインサート成形用の樹脂の材質・色などを直ちに想起することができるものというべきであるから、先願明細書には本願発明の右樹脂が実質的に開示されていると認めるのが相当である。
したがって、両者は実質的に同一である。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-13 
結審通知日 2007-12-14 
審決日 2007-12-27 
出願番号 特願平11-145650
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩橿本 英吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 里村 利光
山村 浩
発明の名称 半導体発光装置  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 大塩 竹志  

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