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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1172285
審判番号 不服2004-15253  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2008-02-07 
事件の表示 平成 9年特許願第150809号「化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-338616〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月9日の出願(特願平9-150809号)であって、平成16年6月14日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年7月22日付で拒絶査定に対する審判請求がされ、同年8月20日付で手続補正書が提出されているものである。

2.平成16年8月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、

「【請求項1】(A)平均粒径が5?30μmの球状粉体、及び(B)平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体を合計で10?30重量%、並びに(C)油分を10?30重量%を含有し、成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?4であることを特徴とする液状メイクアップ化粧料。」を

「【請求項1】(A)シリカ、酸化チタン、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの複合粉体から選ばれる平均粒径が5?30μmの球状粉体、及び(B)シリカ、酸化チタン、ポリメタクリル酸メチル樹脂及びこれらの複合体から選ばれる平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体を合計で10?30重量%、並びに(C)油分を10?30重量%含有し、成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?3であることを特徴とする液状メイクアップ化粧料。」とする補正(以下、「本願補正発明」という。)を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項1の「平均粒径が5?30μmの球状粉体」を「シリカ、酸化チタン、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの複合粉体から選ばれる平均粒径が5?30μmの球状粉体」と、「平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体」を「シリカ、酸化チタン、ポリメタクリル酸メチル樹脂及びこれらの複合体から選ばれる平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体」と、「成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?4である」を「成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?3である」とそれぞれ限定するものであるから特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-277925号公報(以下、引用例Aという。)には以下の事項が記載されている。(なお、本願補正発明の成分(A)及び成分(B)と区別するため、引用文献Aの成分(A)は(A’)、成分(B)は(B’)と表記した)

引用例A;

(A-1)「【請求項1】 次の成分(A’)及び(B’):
(A’)体積累積平均粒径が0.1μmを超え2μm以下であり、かつ屈折率が2以下である微粉末、(B’)体積累積平均粒径が3?50μmの球状粉体を含有し、成分(A’)及び(B’)の配合量の合計が、全組成中に30重量%以上である粉体化粧料。
【請求項2】成分(A’)と成分(B’)の配合比が、9.5:0.5?0.5:9.5(重量比)である請求項1記載の粉体化粧料。」(【特許請求の範囲の請求項1?2】、2頁1欄2?10行)

(A-2)「成分(A’)の微粉末としては、体積累積平均粒径が0.1μmを超え2μm以下のものであれば特に制限されず、無機微粉末、有機微粉末のいずれでもよく、またその形状も球状、平板状、粒状、針状、棒状、無定形等のいずれでもよい。これらのうち、特に球状、粒状のものが、使用感等の点から好ましい。かかる微粉末としては、例えばシリカ…メタクリル酸メチル樹脂…などが挙げられる。…
これらの微粉末は、体積累積平均粒径が0.1μmを超え2μm以下、…であることが必要である。…
本発明において、体積累積平均粒径は、測定粒子の体積相当球の径の平均値を示し、1μm以上の粉体についてはレーザー回折法、1μm以下の粉体についてはレーザー散乱法により、エタノールを分散媒として使用して求めたものである。」(【0008】【0009】【0010】、2頁2欄11?44行)

(A-3)「成分(B’)の球状粉体としては、体積累積平均粒径が3?50μmのものであれば特に制限されず、無機球状粉体、有機球状粉体のいずれでもよ…い。かかる球状粉体としては、例えば球状シリカ…球状チタニア等の無機球状粉体;球状ポリアミド樹脂…球状シリコーン樹脂…等の有機球状粉体…などが挙げられる。…
これらの球状粉体は、体積累積平均粒径が3?50μm…であることが必要である。」(【0012】【0013】、3頁3欄1?18行)

(A-4)「前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えばワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分;スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコン油等の流動油分;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤…を、本発明の効果を損わない範囲で適宜配合することができる。」(【0018】、3頁4欄20?32行)

(A-5)「肌上でのすべり等の感触が良好で、しかも毛穴や小じわ等の凹凸を目立たなくする効果に優れ、自然な仕上がりを得ることができる。」(【0020】、3頁4欄42?45行)

(A-6)実施例1?13として、本発明品の粉体化粧料が記載されている。
実施例2には、球状ナイロン(体積累積平均粒径5μm)を42.0%、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂(体積累積平均粒径0.4μm)を18.0%、油分(メチルポリシロキサン)を9.6%含むパウダーファンデーションが記載されている。(【0024】?【0056】)

(3)対比・判断
引用例Aには、球状ナイロン(体積累積平均粒径5μm)を42.0%、球状ポリメタクリル酸メチル樹脂(体積累積平均粒径0.4μm)を18.0%、油分(メチルポリシロキサン)を9.6%含むパウダーファンデーションが記載されている(上記記載事項(A-6)、以下、「引用発明」という。)。ここで配合量は重量%であることは明らかである。

本願補正発明と引用発明とを対比する。
ナイロンはポリアミド樹脂の一種であるから引用発明の球状ナイロン(体積累積平均粒径5μm)は、本願補正発明の(A)成分に対応し、引用発明の球状ポリメタクリル酸メチル樹脂(体積累積平均粒径0.4μm)は、本願補正発明の(B)成分に、引用発明の油分(メチルポリシロキサン)は本願補正発明の(C)成分に対応する。
そして、引用発明において、球状ナイロン(体積累積平均粒径5μm)と球状ポリメタクリル酸メチル樹脂(体積累積平均粒径0.4μm)との配合重量比は42.0%/18.0%=2.33であり、本願発明の成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?3との特定事項を充足するものである。
また、パウダーファンデーションはメイクアップ化粧料の1つである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「(A)シリカ、酸化チタン、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる平均粒径が3?30μmの球状粉体、及び(B)シリカ、ポリメタクリル酸メチル樹脂から選ばれる平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体を含有し、成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2.33であることを特徴とするメイクアップ化粧料。」である点で一致しており、

本願補正発明は液状メイクアップ化粧料であるのに対して、引用発明はパウダーファンデーションである点(相違点1)

本願補正発明は油分を10?30重量%含有するのに対して、引用発明では油分は9.6重量%である点(相違点2)、及び

本願補正発明は成分(A)と成分(B)を合計で10?30重量%含有するのに対して、引用発明は成分(A)と成分(B)を60重量%含有する点(相違点3)

で相違する。

以下、これらの相違点について検討する。
(相違点1?3について)
引用文献1には、肌上でののびが良く、しかも毛穴や小じわ等を目立たなくすることができる粉体化粧料に関する発明が記載され(上記記載事項(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)、(A-5))、その実施例として引用発明が記載されている(上記記載事項(A-6))。このような粉体化粧料はファンデーションと呼ばれ、仕上化粧料(メークアップ化粧料のこと)の一つである。
ところで、一般に、仕上化粧料は様々な形態で使用されるが、化粧料全体に占める粉体の配合量を変えることによって様々な形態に加工される。そして、ファンデーションにおいても、粉体配合量が多く、油性基剤・水性基剤等が少ないものとしてパウダーファンデーション、ケーキ状ファンデーションが知られ、粉体配合量を減らし、油性基剤・水性基剤等を増やすと、順次、ソフトタイプのファンデーション、スティックファンデーション、油性コンパクトファンデーション、乳化ファンデーション、クリームファンデーション、リクイドファンデーションが得られることは周知技術である。
このことは、例えば、本願出願日前に頒布された化粧料分野の一般的な教科書である「最新化粧品科学-改訂増補II-」、日本化粧品技術者会編集、株式会社薬事日報社発行、平成4年7月10日 改訂増補II発行、第67頁(以下、「刊行物A」という。)に、表1「仕上化粧品の形態」には、ファンデーションを初めとする各種の仕上げ化粧品について基剤と形態の関係が一覧表として記載されており、同頁の表2「仕上化粧品の粉体配合量と剤形」には、仕上化粧品について粉体とその他の成分(油性基剤、水性基剤、結合剤、溶剤等)の配合量の割合と、化粧料のバルクの状態、製品の剤形、アイテムとの関係がまとめられており、粉体配合量が95?80%、その他が5?20%のものとして、パウダーファンデーション、ケーキ状ファンデーション、粉体配合量が80?65%、その他が20?35%のものとしてファンデーション(ソフトタイプ)、粉体配合量が65?20%、その他が35?80%のものとしてスティックファンデーション、油性コンパクトファンデーション、粉体配合量が20%以下、その他が80%以上のものとして乳化ファンデーション(クリーム、リクイド)が記載されている。さらに、68頁、表3「仕上化粧品の製造技術と剤形」には、仕上化粧品について、粉末状、固形状、スティック状、ペースト状、乳液状、クリーム状、液状の化粧品の製造技術がまとめられている。
してみると、当業者であれば、上記の仕上化粧料の分野の周知技術を勘案すれば、パウダーファンデーションの発明である引用発明において、粉体配合量と油性基剤・水性基剤等との配合量を変えることにより様々な形態のファンデーションを製造することは容易に想到し得ることであり、粉体成分である成分(A)と成分(B)を合計で10?30重量%、油性基剤・水性基剤等の一つである成分(C)を10?30重量%含有し(本願の当初明細書に記載されている本発明品1?5では26.5%、比較品1?4では56.5%の水が配合されている。(【0035】、【0037】【表1】、【表2】))、形態を液状(20℃における粘度が30万cp以下のもの,(【0028】))とする点に特に困難さは認められない。
また、本願補正発明の効果は当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、平成19年5月25日付けで提出した回答書で、比較品d、e及び引用発明の実施例7のパウダーファンデーションを顔に塗布したときの使用感と仕上がりを評価し、本願発明が進歩性を有するものであると主張しているが、比較品dは、引用発明の実施例7のパウダーファンデーション50部に対し、50部の水を加えたもの、比較品eは48部の水と2部のポリエーテル変性シリコーン(乳化剤)を加えたものであり、単に、パウダーファンデーションを実質的に水で希釈したものであり、液状メイクアップ化粧料とするために当業者が適宜行うべき油性基剤、水性基剤の配合量の調整がなされておらず、大量の水を含み、仕上がりが粉っぽかったり、経時でのもちや耐水、耐汗性が著しく悪いという欠点があることが当然に予想されるものであり(例えば特開昭62-223107号公報には、「二層状メーキャップ化粧料には水おしろいがあり、…このタイプのものは、多量の水を含んでいる為・・・油分が配合されていないため、仕上がりが粉っぽかったり、経時でのもちや耐水、耐汗性が著しく悪いという欠点があった」(1頁右下欄3?12行、3頁右下欄下から2行?4頁右上欄の参考例1)ことが記載されている。)、これら比較品d及びeの評価をもって、請求人の前記主張を採用することはできない。

したがって、本願補正発明は引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年8月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】(A)平均粒径が5?30μmの球状粉体、及び(B)平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体を合計で10?30重量%、並びに(C)油分を10?30重量%を含有し、成分(A)と成分(B)の配合重量比が(A)/(B)=2?4であることを特徴とする液状メイクアップ化粧料。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「平均粒径が5?30μmの球状粉体」の限定事項である「シリカ、酸化チタン、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの複合粉体から選ばれる」との構成を省き、「平均粒径が0.1μmを超え1μm以下の球状粉体」の限定事項である「シリカ、酸化チタン、ポリメタクリル酸メチル樹脂及びこれらの複合体から選ばれる」との構成を省き、「成分(A)と成分(B)の配合重量比」を「(A)/(B)=2?3である」から、「(A)/(B)=2?4である」に拡張したものである。
そうすると、本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例A記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を包含する本願発明も同様の理由により引用例Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-29 
結審通知日 2007-12-04 
審決日 2007-12-17 
出願番号 特願平9-150809
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子福井 美穂  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 化粧料  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 村田 正樹  
代理人 山本 博人  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 有賀 三幸  
代理人 高野 登志雄  

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