• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A45D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1172316
審判番号 不服2005-12984  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2008-02-07 
事件の表示 平成 9年特許願第174911号「コンパクト容器」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月26日出願公開、特開平11- 18828号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年6月30日の出願であって、平成17年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年8月8日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成17年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「上面が開口しその内部に固形化粧料を収納する容器本体と、この容器本体の一端にヒンジにて結合され容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備えたコンパクト容器において、
前記容器本体の内側底面に複数の凹部を設け、この凹部の深さを0.2?1.5mmとし、その面積を0.2?25.0mm^(2) にするとともに、凹部と凹部との間隔を1.5?10.0mmとし、
前記容器本体の上部開口端内側に該容器本体と一体的に成型されたひさし部を設けるとともに、前記容器本体の内側側壁面を湾曲上に凹ませたことを特徴とするコンパクト容器。」(下線部は補正個所を示す。なお、「内側側壁面を湾曲上に凹ませた」は、「内側側壁面を湾曲状に凹ませた」の明らかな誤記であると認める。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ひさし部」に、「容器本体と一体的に成型された」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
A.原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-24040号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a.「【産業上の利用分野】この発明は、化粧料を充填するための皿状容器に関し、特に化粧料と容器内周面との接合性を向上させるようにした皿状容器に関する。」(【0001】段落)
b.「【従来の技術】従来、コンパクト容器等の外装用容器内に中皿と称せられる皿状容器を交換可能に収納し、該皿状容器に種々の化粧料を充填して使用に供するようにすることは公知である。」(【0002】段落)
c.「中皿は、…化粧料をパフ等で取る際に化粧料が回転したり或は脱落して来る等の問題があった。特に揮発性成分を含む化粧料にあっては、揮発性成分の揮散による化粧料の収縮が大きいため、容器内周側面から化粧料が分離する現象が顕著に発生している。」(【0003】段落)
d.「このような問題点を解決するために、従来容器内周側面や底面にリブを突出させているが、…」(【0004】段落)
e.「【実施例】…皿状容器(1)の内周側面には内方へ向って突出したリブ(3)が環状に囲繞して形成され、…」(【0019】段落)
f.「図3は、プレス加工その他方法により凹凸模様(5)を形成した容器(1)のA部分の拡大図である。凹凸模様(5)は好ましくは矩形断面を有する。凹凸模様により、化粧料(2)と容器(1)との接触面積が拡大し、且矩形断面により化粧料への喰い込力が増大する。…」(【0022】段落)
g.「化粧料(2)は、エマルジヨンタイプ、固型粉末タイプその他いずれの化粧料であっても良く、特に限定されるものではない。…」(【0025】段落)

そして、図1には、上面が開口し、その内部にほぼ開口端まで固型の化粧料(2)を収納する皿状容器(1)の、開口端より下方内側に一体的に形成された環状のリブ(3)が図示され、さらに、前記皿状容器(1)の内側側壁面を湾曲状に凹ませたものが図示されており、図2、図9及び図11にも同様な環状のリブ(3)及び湾曲状に凹ませた内側側壁面の形状に係る図示がある。また、断面を示す図9及び図11より、皿状容器(1)の内側壁面に凹凸模様に起因する凹部が形成されていることが認められる。

上記記載a?c及びgより、引用例1には、固型の化粧料(2)を収納する中皿と称せられる皿状容器を有するコンパクト容器に係る発明が記載されているものと認められる。
そして、上記記載cには、中皿には化粧料をパフ等で取る際に化粧料が回転したり或は脱落して来る等の問題や、容器内周側面から化粧料が分離する問題がある旨記載されている。
記載d?fには、かかる問題点を解決する目的で、環状のリブ(3)や、凹凸模様を皿状容器内面に設けることが記載されている。環状のリブ(3)が化粧料2の対応する環状の溝部分と嵌合していることからみて、環状のリブ(3)が、化粧料の中皿からの飛び出しを防止することができることは、図1等より明らかである。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

「上面が開口しその内部に固型の化粧料(2)を収納する中皿と称せられる皿状容器(1)を備えたコンパクト容器において、
前記皿状容器(1)の内側底面に凹凸模様を設け、
前記皿状容器(1)の上部開口端の下方内側に該皿状容器(1)と一体的に成型された環状のリブ(3)を設けるとともに、前記皿状容器(1)の内側側壁面を湾曲状に凹ませたコンパクト容器。」

B.同じく原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭57-130150号(実開昭59-34711号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
h.「固型白粉ファンデーション、ほほ紅およびアイシャドウ等のメイク化粧品の多くはコンパクトを使用しており、ベースはそのコンパクトの収納部又は中皿に充填され、一般に各種パフ、ブラシ、ウレタン等を用い使用されている。
このようなコンパクトを用いた化粧品の多くは、落した時にそのショックでコンパクトの収納部又は中皿からベースの一部又全部が剥離することが多く、又使用を続けベースの残存量が少なくなった時、ベースがパフ、ブラシ等の力に負けてベースが浮いたり、剥離することが多く起きる。」(明細書1ページ13?21行)
i.「(1)化粧用コンパクトの収納部又は中皿の底部の内側に高さ0.2m/m?3.0m/m,5.0×10^(-4)?1.0×10^(2)mm^(2)の面積を有し、…有する凹凸の模様を配置したもの。
(2)化粧用コンパクトの収納部又は、中皿の底部内側に凸状又は凹状の模様を配置したもの(凸状又は凹状の高さ、…(1)と同様とする)」(明細書1ページ5?11行)
そして、第4?5図には、中皿に複数の凹状の模様(2)を形成したものが図示されている。
これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。

「化粧用コンパクトの収納部又は中皿の底部の内側に深さ0.2m/m?3.0m/m,5.0×10^(-4)?1.0×10^(2)mm^(2)の面積を有する複数の凹状の模様を設けた化粧用コンパクト。」

3-2.対比
引用発明1と本願補正発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「固型の化粧料(2)」は、本願補正発明の「固形化粧料」に相当し、同様に、「コンパクト容器」は「コンパクト容器」に相当する。また、引用発明1の「皿状容器(1)」は、固形化粧料(固型の化粧料(2))を収納する容器である点で、本願補正発明の「容器本体」と共通する。
引用発明1の「凹凸模様」は、化粧料の容器からの分離による移動を防止するという機能を有する凹凸部である点で、本願補正発明の「凹部」と共通し、また、引用発明1の「環状のリブ(3)」は、容器中の化粧料の移動と飛び出しを防止する突出部である点で、本願補正発明の「ひさし部」と共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「上面が開口しその内部に固形化粧料を収納する容器を備えたコンパクト容器において、
前記容器の内側底面に凹凸部を設け、
前記容器の内側に該容器と一体的に成型された固型化粧料の移動と飛び出しを防止する突出部を設けるとともに、前記容器の内側側壁面を湾曲状に凹ませたコンパクト容器。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明のコンパクト容器は、固形化粧料を収納する容器が容器本体であるとともに、この容器本体の一端にヒンジにて結合され容器本体の開口部を開閉する蓋体を備えたものであるのに対して、引用発明1のコンパクト容器は、固形化粧料を収納する容器が中皿と称せられる皿状容器(1)であり、また、コンパクト容器がヒンジ結合された蓋体を有するか否か明かでない点。
(相違点2)
本願補正発明の凹凸部は、深さ0.2?1.5mm、面積0.2?25.0mm^(2)、凹部と凹部との間隔を1.5?10.0mmとした複数の凹部から成るのに対し、引用発明1の凹凸部は、凹凸模様である点。
(相違点3)
本願補正発明の、固型化粧料の移動と飛び出しを防止する突出部は、開口端内側に設けられるひさし部であるのに対し、引用発明1の、固型化粧料の移動と飛び出しを防止する突出部は、開口端の下方内側に設けられる環状のリブ(3)である点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
一般に、コンパクト容器にヒンジ結合された蓋体を備えることは、例示するまでもなく周知の事項であり、引用発明1には、周知の蓋体の採用を敢えて阻害する特段の事情は何ら認められない。
また、コンパクト容器の化粧料を収納する容器部分について、これを交換可能な中皿としたものと、容器本体に収納部を有するように構成したものとは、例えば引用例2に、「ベースはそのコンパクトの収納部又は中皿に充填され」(記載h参照)と並列的に記載されるように、いずれも周知の形式であって、どちらを選択するかは、当業者が必要に応じ適宜なし得た設計的事項にすぎない。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(相違点2について)
引用例2には、「化粧用コンパクトの収納部又は中皿の底部の内側に深さ0.2m/m?3.0m/m,5.0×10^(-4)?1.0×10^(2)mm^(2)の面積を有する複数の凹状の模様を設けた化粧用コンパクト。」という引用発明2が記載されている。
引用発明2は、コンパクトの収納部又は中皿からベースが浮いたり、剥離することを、複数の凹状の模様によって防止するものであるので、引用発明2の「複数の凹状の模様」は、本願補正発明の「複数の凹部」及び引用発明1の「凹凸模様」と同様の機能を奏するものであるといえる。
そして、引用発明2の「凹状の模様」は、深さが、0.2m/m?3.0m/m、面積が5.0×10^(-4)?1.0×10^(2)mm^(2)であるものなので、本願補正発明の凹部の深さ0.2?1.5mm及び面積0.2?25.0mm^(2)と数値範囲において重なるものである。なお、本願補正発明の上記数値範囲の上下限には格別の臨界的意義は認められない。
また、凹部と凹部との間隔は、その設計に当たり、内容物の性質等を考慮して、当業者が適宜決定し得た事項に属するものと認められ、その数値範囲1.5?10.0mmの上下限にも格別の臨界的意義は認められない。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が引用発明1に引用発明2を適用することにより、容易になし得たことである。

(相違点3について)
突出部について、引用発明1の環状のリブ(3)は、引用例1の図1や図9に示されるように、湾曲状に凹んだ内側側壁面にあって、固型化粧料の側面に係合することによって固型化粧料の移動と飛び出しを防止しているが、これが、固型化粧料の上面より上にあっても、同様に飛び出そうとする固型化粧料の上面に係合することによって、飛び出しを防止し得ることは当業者にとり明らかであるから、突出部を開口端内側に設けるようにして、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なしえた設計上の事項であるといえる。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成17年2月4日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「上面が開口しその内部に固形化粧料を収納する容器本体と、この容器本体の一端にヒンジにて結合され容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備えたコンパクト容器において、
前記容器本体の内側底面に複数の凹部を設け、この凹部の深さを0.2?1.5mmとし、その面積を0.2?25.0mm^(2)にするとともに、凹部と凹部との間隔を1.5?10.0mmとし、
前記容器本体の上部開口端内側にひさし部を設けるとともに、前記容器本体の内側側壁面を湾曲上に凹ませたことを特徴とするコンパクト容器。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「ひさし部」を限定する「該容器本体と一体的に成型された」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-26 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-11 
出願番号 特願平9-174911
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
P 1 8・ 575- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沖田 孝裕冨江 耕太郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 中田 誠二郎
増沢 誠一
発明の名称 コンパクト容器  
代理人 遠山 勉  
代理人 川口 嘉之  
代理人 松倉 秀実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ