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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1173006 |
審判番号 | 不服2004-17527 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-25 |
確定日 | 2008-02-22 |
事件の表示 | 特願2001-262852「リソグラフィ装置を操作する方法、リソグラフィ装置、デバイス製造方法、およびそれによって製造されるデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-110540〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.経緯 本願は、平成13年8月31日(パリ条約による優先権主張2000年9月1日、欧州)の出願であって、平成16年6月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされた後、当審において拒絶の理由が通知され、その指定期間内に提出された平成18年7月25日付け手続補正書によって補正されたものである。 本願請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載された次のとおりのものである。 請求項1 放射投影ビームを供給する放射システムと、 マスク平面でマスクを保持する第1のオブジェクト・テーブルと、 基板平面で基板を保持する第2のオブジェクト・テーブルと、 少なくともマスクの一部分を基板の目標部分上に結像する投影システムとを含んだリソグラフィ投影装置を操作する方法であって、 1つのピンホールを用いる前記装置内の前記マスク平面で前記投影ビームの少なくとも1つの部分から少なくとも1つの放射スポットを形成するステップと、 前記ピンホールの回折格子に用いる前記放射スポットを回折するステップと、 前記スポットに関して焦点位置の外に置かれた単一のスポットセンサの1つのピンホールで、前記スポットまたは前記スポットの像から焦点を外した放射の強度の空間変動を測定するために前記センサをスキャンするステップと、 前記スキャンステップで得られた情報から前記装置の特性を決定するステップとを含むことを特徴とする方法。 2.当審の拒絶の理由に引用した引用例 引用例1 特開平3-65623号公報 2.1 引用例1の記載内容 引用例1の第3頁左上欄第19行?左下欄第9行には、 「本発明の目的は、上記問題を解決するために、光学系のレンズ入射瞳上の照度分布を正確にかつ、自動的に求めて照明系の部分コヒーレンシ(σ値)及び、テレセン度(光源の中心ずれ量)を測定し、…投影形露光装置や検査光学系の解像性能を最大限に発揮せしめ得る、照明系の瞳上照度分布測定方法及びその装置を提供することにある。 … 〔作用〕 即ち、第2図に示すように、ウエハ6を位置せしめるべき面にピンホール3を置きこの下に検出センサ4を設け、照明光束の照度分布を測定する。その照度分布データより瞳の大きさ(直径)D_(0)に対する照明光束の大きさd_(0)と、瞳の大きさD_(0)の中心に対する照明光束中心のずれC_(0)とを観測すれば照明光の光束とレンズの最大光束との関係が求められる。さらに、瞳径D_(i)と瞳上の照明光束d_(i)及び、瞳上の照明光束の中心ずれC_(i)と上記測定値D_(0)、d_(0)、C_(0)との関係は幾何学的に、 のように表すことができ、これによりσ値やテレセン度を求めることが可能となる。」 と記載されている。 引用例1の第4頁右上欄第13行?第5頁右上欄第2行には、 「実施例II: 第5図は照度検出用にフォトマル等の単一センサを用いて本発明を露光装置に適用した実施例である。 ここでは、レチクル13として第19図(a)、(b)に示すようにガラス板29に形成されたクロム膜28にピンホール12のパターンを複数個又は、1個形成されたものを使用する。瞳上照度分布検出ユニット16は、ウエハ6面からhだけ下げた位置に設けた受光側ピンホール15と単一光センサ14から成る。この検出ユニット16はウエハステージ5上に設けてあり、ステージを動かすことによりXY平面内で移動可能である。 瞳上の照度分布の測定は、第6図に示すように行われる。レチクル13上のピンホール12の像は、縮小レンズ2を通り、レチクル13と共役となる位置20すなわち、ウエハ6面と同じ高さに結像する。ウエハステージ5上に設けた瞳上照度分布検出ユニット16の受光側ピンホール15はこの共役面20からh離れた位置に設けてあり、この受光側ピンホール15と単一のセンサ14とを一体として、ウエハステージ5をXまたはY方向に移動することにより、走査しながら光量測定することで瞳上の照度分布を第8図(a)又は第9図(a)の様に検出することが可能となる。 さて、この実施例では第5図のレチクル13の上に、すりガラス又は散乱板17が挿入できるようになっている。第7図に示す様に、レチクル13上にすりガラス17を挿入すると、このすりガラス17により、照明系7からの光が散乱して大きく広がるためレチクル13上のピンホール12を通った光は、縮小レンズ2の入射瞳9の径D_(i)よりも大きい光束46となり、該入射瞳9の全開口面積を通って縮小レンズ2に入射する。このようにして、瞳全体を透過した光は、一旦レチクル共役面20(第7図参照)上に結像するが、共役面20から一定距離h離れた位置で、瞳上照度分布検出ユニット16を走査すると第8図(b)の様な照度分布が得られ、これから入射瞳9の径D_(i)に対応するセンサ面上での径D_(0)が求められる。 そして第8図(a)と(b)とに示す照度分布から、…照明系の部分的コヒ-レンジ(σ値)を求めることが可能となる。さらに、同図(a)で得られた波形の重心等から光源像の中心45(第3図参照)を求めると、テレセン度に相当する入射瞳の中心44からのずれC_(0)(又はC_(i))を式(2)によって得ることができる。 尚、第9(a)は上記測定をXY方向について行った照度分布であり、これから第9図(b)に示すような等高線を求めることもできる」 と記載されている。 引用例1に記載された第2,5?9図は以下のとおりである。 2.2 引用例1に記載された発明 上記引用例1の記載及び図面から、引用例1には、 「投影形露光装置において、レチクルの上に散乱板を挿入し、照明光束により、レチクル上のピンホールを通った光が入射瞳の全開口面積を通って縮小レンズに入射するようにして、レチクル上のピンホールの像をレチクルと共役となる位置すなわちウエハ面と同じ高さに結像させ、さらに、ウエハステージ上に設けた瞳上照度分布検出ユニットの受光側ピンホールを上記共役となる位置からh離れた位置に設け、この受光側ピンホールと単一のセンサとを一体として、ウエハステージに乗せ、当該ウエハステージをXまたはY方向に移動することにより、受光側ピンホールと単一のセンサを走査しながら光量測定することにより照度分布を検出する方法。」 の発明が記載されている。 3.対比 本願第1発明と引用例1に記載された発明とを比較する。 引用例1に記載された発明の「投影形露光装置」、「照明光束」、「レチクル」、「ウエハステージ」、「縮小レンズ」、「レチクル上のピンホール」、「ピンホールの像」、「受光側ピンホールと単一のセンサ」及び「走査」は、それぞれ、本願第1発明の「リソグラフィ装置」、「投影ビーム」、「マスク」、「マスク平面でマスクを保持する第1のオブジェクト・テーブル」、「投影システム」、「マスク上の一部分」、「放射スポット」、「単一のスポットセンサ」及び「スキャン」に相当する。 また、引用例1に記載された発明の「レチクル上のピンホールを通った光」が「縮小レンズに入射」して、「ウエハ面と同じ高さに結像」することは、本願第1発明の「1つのピンホールを用いる前記装置内の前記マスク平面で前記投影ビームの少なくとも1つの部分から少なくとも1つの放射スポットを形成する」ことに実質的に相当する。 また、引用例1に記載された発明の「照度分布を検出する」ことは、本願第1発明の「装置の特性を決定する」ことに実質的に相当する。 そうすると、両者は、 「基板平面で基板を保持する第2のオブジェクト・テーブルと、 少なくともマスクの一部分を基板の目標部分上に結像する投影システムとを含んだリソグラフィ投影装置を操作する方法であって、 1つのピンホールを用いる前記装置内の前記マスク平面で前記投影ビームの少なくとも1つの部分から少なくとも1つの放射スポットを形成するステップと、 前記スポットに関して焦点位置の外に置かれた単一のスポットセンサの1つのピンホールで、前記スポットまたは前記スポットの像から焦点を外した放射の強度の空間変動を測定するために前記センサをスキャンするステップと、 前記スキャンステップで得られた情報から前記装置の特性を決定するステップとを含むことを特徴とする方法。」 において一致し、以下の相違点を有する。 相違点1 本願第1発明は、「放射投影ビームを供給する放射システムと、マスク平面でマスクを保持する第1のオブジェクト・テーブル」を有するのに対し、引用例1に記載された発明は、上記構成の記載がない点。 相違点2 本願第1発明は、「放射の強度の空間変動を測定する」のに対し、引用例1に記載された発明は、上記構成の記載がない点。 相違点3 本願第1発明は、「ピンホールの回折格子に用いる放射スポットを回折する」のに対し、引用例1に記載された発明は、上記構成の記載がない点。 4.判断 相違点1について 引用例1に記載された発明は、レチクルを保持するテーブルの明示的記載がないが、引用例1に記載された発明は、投影形露光装置に関するから、当然レチクルを保持するテーブルを有していることは明らかである。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 相違点2について 本願第1発明の「放射の強度の空間変動を測定する」ことは、「スポットに関して焦点位置の外に置かれた単一のスポットセンサの1つのピンホールで、前記スポットまたは前記スポットの像から焦点を外した放射の強度の空間変動」を「センサをスキャンする」ことにより測定することであり、このことは、引用例1に記載された発明の「ウエハステージ上に設けた瞳上照度分布検出ユニットの受光側ピンホールを共役となる位置からh離れた位置に設け、この受光側ピンホールと単一のセンサとを一体として、ウエハステージに乗せ、当該ウエハステージをXまたはY方向に移動することにより、受光側ピンホールと単一のセンサを走査しながら光量測定する」ことに実質的に相当するから、相違点2は、特に意味あるものではない。 相違点3について 本願第1発明における「回折格子」は、本願明細書【0064】段落等を参照すると、散光器程度のものであって、散光器を用いた場合に比べ回折格子を用いたことによる特段の意義は認められないから、本願第1発明における「回折格子」は、引用例1に記載された発明の「散乱板」程度のものにすぎず、引用例1に記載された発明の「散乱板」に代えて「回折格子」を用いることに格別の意義はない。 したがって、相違点3は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明の作用効果から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび そうすると、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-30 |
結審通知日 | 2006-09-01 |
審決日 | 2006-09-12 |
出願番号 | 特願2001-262852(P2001-262852) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩本 勉 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
瀬川 勝久 辻 徹二 |
発明の名称 | リソグラフィ装置を操作する方法、リソグラフィ装置、デバイス製造方法、およびそれによって製造されるデバイス |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 吉田 裕 |
代理人 | 岩本 行夫 |