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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1173064
審判番号 不服2005-9571  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-20 
確定日 2008-02-12 
事件の表示 平成11年特許願第289277号「配線回路基板とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月20日出願公開、特開2001-111189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成11年10月12日の出願であって、平成17年4月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月20日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月7日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年7月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月7日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2、4が補正され、請求項1?5は、次のとおりのものとなった。
「【請求項1】導体回路となる金属層上に、該金属層とは別の金属から成るエッチングバリア層を介して金属から成る突起が、選択的に形成され、
上記導体回路の上記突起が形成された側の面に、層間絶縁層が、該突起によって貫通されその上部が該層間絶縁層の表面から突出するように形成され、
上記突起が他の金属層と加熱、加圧による積層によって接続されて、上記層間絶縁層を貫通して上記導体回路となる金属層と上記他の金属層との層間接続手段を成している
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】前記導体回路となる金属層と、前記突起が銅からなり、
前記エッチングバリア層がニッケルからなる
ことを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】突起形成用の金属層上にそれとは別の金属から成るエッチングバリア層を形成し、該エッチングバリア層上に導体回路となる金属層を形成したものを用意する工程と、
上記突起形成用の金属層を、上記エッチングバリア層を侵さないエッチング液により選択的にエッチングすることにより突起を形成する工程と、
上記エッチングバリア層のみを上記突起をマスクとして上記導体回路となる金属層を侵さないエッチング液で除去する工程と、
上記導体回路を成す金属層の上記突起形成側の面に、層間絶縁層を上記突起により貫通されて該突起の上部が上記層間絶縁層の表面から突出するように形成する工程と、
上記層間絶縁層の表面に上記導体回路とは別の導体回路となる金属層を加圧、加熱により積層して上記突起を該別の金属層に接続させて層間接続手段とする工程と、
を有することを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項4】前記導体回路となる金属層と、前記突起と、前記別の導体回路となる金属層を銅により形成し、
前記エッチングバリア層をニッケルにより形成する
ことを特徴とする請求項3記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項5】上記突起形成用の金属層を選択的にエッチングして上記突起を形成する際に、エッチングマスクとして金属層を用い、
上記突起の形成後においても上記エッチングマスクとして用いた金属層を残存させてその金属層で突起表面を全面的に覆う状態にする
ことを特徴とする請求項3又は4記載の配線回路基板の製造方法。」
なお、請求項1に記載の「該層間絶縁膜」は、「該層間絶縁層」の誤記と認められるので、上記のとおりに認定した。

<補正後の請求項2、4について>
上記請求項2の補正は、当該補正前の平成16年9月21日付の手続補正書の請求項2が引用する請求項1に記載の「エッチングバリア層」を、「エッチングバリア層がニッケルからなる」に限定したものであり、又上記請求項4の補正は、同じく補正前の請求項4が引用する請求項3に記載の「エッチングバリア層」を、「エッチングバリア層をニッケルにより形成する」に限定したものであって、両補正は、エッチングバリア層の材料を限定したものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

次に、補正後の請求項1?5のうち請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるのか否か)について検討する。

2.引用刊行物とその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された特開平11-163207号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開平11-87932号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特開平11-163207号公報)
(1a)「【請求項1】A.第一の金属層と第二の金属層を備える第一の回路形成材料を準備する工程、
B.第一の金属層をエッチングして層間接続用の柱状パターンを形成する工程、
C.前記柱状パターンの形成された面と、第三の金属層を備える第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し、前記柱状パターンと前記第三の金属層を電気的に接続させる工程、
D.前記第二、第三の金属層をエッチングし所定の配線パターンを形成する工程を備える半導体チップ搭載用基板の製造法。」

(1b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エッチングによる層間接続用の柱状パターンを有する半導体チップ搭載用基板の製造法およびその半導体チップ搭載用基板を使用した半導体装置に関する。」

(1c)「【0006】また本発明の半導体チップ搭載用基板の製造法は、
2a.第二の金属層と第一の金属層の間に、第一の金属層に対し選択エッチング可能な第一の中間金属層を備える第一の回路形成材料を準備する工程、
2b.第一の金属層をエッチングして層間接続用の柱状パターンを形成する工程、
2c.第三の金属層を備える第二の回路形成材料を準備する工程、
2d.前記柱状パターンの形成された面と前記第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し、前記柱状パターンと前記第三の金属層を接触(電気的に接続)させる工程、
2e.前記第二の金属層と前記第一の中間層をエッチングし所定の配線パターンを形成する工程、
2f.前記第三の金属層をエッチングして所定の配線パターン(例えば半導体接続用端子)を形成する工程
を備えるものであることができる。」

(1d)「【0009】本発明の半導体チップ搭載用基板の製造法では、柱状パターンの形成された面と第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し前記柱状パターンと金属層を接触させる工程の後に、前記柱状パターンと前記金属層間の低電気抵抗化処理を施こすことができる。このような低電気抵抗化処理としては、電圧を印加せしめ接触する金属間に金属イオンの移動によるイオンマイグレ-ション、超音波を印加して接触させる金属間の樹脂残さを減少させ接触確率を上昇させる等の手法が使用できる。また、接触させる金属の少なくとも一方を酸化による粗面化処理し、その酸化粗面を還元する酸化・還元処理を予め行うことにより小さい接続抵抗値を付与することができる。」

(1e)「【0012】図1に、三層箔の第1金属に突起電極群を形成するための工程断面を示す。図1(a)に示す三層箔において図中2で示す第1の中間金属層は第1金属層1と選択エッチング可能であり、また第1金属層1よりイオン化傾向が低い。・・・この三層箔両面に・・・感光性レジスト・・・をラミネートし、第1金属層1に、後述の突起電極イメージのエッチングレジスト4を図1(b)に示すように像形成する。このときの電極形状は角状より円状が望ましい。この後、図1(c)に示すように第1金属層を選択エッチングする。次に、エッチングレジスト4を剥離し図1(d)に示す様に高さが均一な突起電極群を有する部材を得る。このように均一な高さの狭ピッチの突起電極が得られる。また、本部材の第1中間金属層はイオン化傾向が低く、最外層の第2金属のマイグレーションを抑制できる。
【0013】図2は、図1の部材と三層箔を加圧接触させる工程を示す。図2(a)は図1(d)の部材である。図2(b)はこの部材の突起電極群先端と別途準備した三層箔の第3金属側を対向するように、熱硬化性樹脂を介して配置する構成断面を示す。この構成で、真空熱プレスにより、該突起電極群を熱硬化性樹脂に埋設させるとともに、該第3金属層3’と機械的、及び熱的に接触せしめる。これにより、図2(c)に示す部材が得られる。この際、突起電極と3’の面に所定の温度、湿度、気圧の条件下で、電圧を印加せしめ、充分小さい接続抵抗値を付与する。配線層と、はんだ接続用電極を層分離接続でき、配線層の領域を大幅に増加できる。
【0014】図3は、図2の部材を用いて、最外層の第2金属3および第1中間金属層2を順次エッチングし、所定のはんだボール接続用電極およびガイドマークパターンを形成する工程および最外層の第1’、2’、3’金属層を該ガイドマークを第1’金属層側から透視可能になるよう後述の突起電極とこれに接続しはんだボール接続用電極への配線領域を残して、エッチングする工程を示す。図3(a)は図2の部材である。図3(b)はこの部材の両面にレジスト4をラミネートし、3で示す第2金属層側に後述のはんだボール接続用電極・・・を露光現像で像形成する次に図3(c)で示す様に3および2で示す第2金属層及び第1中間金属層をエッチング後レジストを剥離する。図3(d)で示す様にエッチングレジストを形成し、第3金属層1’、第2中間金属層2’および第4金属層3’をエッチング後レジストを剥離する。このように、配線層とはんだ接続用電極の層分離接続を確実、安定にできる。」

(1f)「【0017】【発明の効果】本発明の半導体チップ搭載用基板の製造法により、均一な高さの狭ピッチの突起電極が得られる、また配線層とはんだ接続用電極を層分離接続でき、配線層の領域を大幅に増加でき、配線層とはんだ接続用電極の層分離接続を確実、安定に行うことができる。本発明の半導体装置は、チップ搭載用基板が高密度な突起電極を有すものであり、小型であり信頼性に優れるものである。」

(2)刊行物2(特開平11-87932号公報)
(2a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は多層配線板の製造方法に関する。」とし、次の従来技術の説明がある。「【0005】一方、多層配線板の簡便な製造手段として、たとえばビア接続形成部に導電性バンプを配置しておき、この導電性バンプ配置面に、絶縁性樹脂シートを介して被積層用素体を積み重ね、この積層体を加熱・加圧一体化する製造方法が開発されている。すなわち、前記積層体を加熱・加圧して一体化する過程で、絶縁性樹脂シートに対して導電性バンプの先端側を貫挿させ、その貫挿させた導電性バンプの先端部を、対向する回路パターンなどに対接・一体化させ、回路パターン層間の接続を行う方式が知られている。」

(2b)「【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来、簡便な多層配線板の製造法において・・・、たとえば導電性ペーストの印刷・乾燥硬化によって導電性バンプを形成する。
【0009】また、被積層用素体を重ね、前記積層用ガイド孔を位置決め用のピンに挿入し、積層体の位置決めを行った後、加圧・加熱して一体化した後、パターニングすることによって多層配線板を製造する。なお、導電性バンプの代りに、たとえばメッキ法によって、所定位置に金属突起を選択的に形成する手段を採ることもできる。
【0010】図4(a),(b)は、前記多層化する工程の実施態様を模式的に示す断面図であり、まず、図4(a)に図示するごとく、予め、積層用ガイド孔1a,2a,3aを穿設した被積層用素体1,2,3を積層・配置する。ここで、被積層用素体1は、両面に所定の回路パターン1bを有するコア基板であり、また、2,3は、銅箔2b,3b、この銅箔2b,3bの一主面に形設された導電性バンプ2c,3c、および銅箔2b,3bの一主面に形設され、かつ導電性バンプ2c,3cの先端部が貫挿した絶縁性樹脂層2d,3dを有する被積層用素体である。」

(2c)「【0026】実施例1
図1(a)?(e)は、第1の多層配線板の製造方法の実施態様を模式的に示す断面図である。先ず、・・・電解銅箔4の一主面に、・・・図1(a)に示すごとく、層間接続用の導電性バンプ5a、位置合わせガイド用の導電性バンプ5b、および位置決め用の導電性バンプ5cをそれぞれ形設する。・・・・・
【0028】次いで、前記電解銅箔4の一主面側に、すなわち各種の導電性バンプ5a,5b,5cを形設した面に、・・・合成樹脂シート6を積層配置し、この積層体を加圧して、図1(b)に示すごとく、導電性バンプ5a,5bの先端部が、合成樹脂シート6を貫挿・露出した導電性バンプ5a,5b,5c埋め込み型の第1の被積層用素体7を製造する。ここで、導電性バンプ5cが型崩れを起こさないのに対して、導電性バンプ5bの先端部は潰されているため、前記導電性バンプ5cとの検出の誤り起こす恐れが大幅に解消される。
【0029】次に、・・・図1(c)に示すごとく、この位置決め用の導電性バンプ5c位置に、・・・ピン挿入用の孔7aを穿設する。
【0030】一方、・・・ピン挿入用の孔8aを穿設した両面配線型のコア基板8を用意し、このコア基板8の両主面側に、図1(d)に示すごとく、前記ピン挿入用の孔7aを穿設した被積層用素体7,7を積層配置する。この積層配置の状態で、・・・積層用金型に植立したピンに挿通させ、位置決めした状態で、鏡板を介して積層用金型板で挟み加熱・圧着(加圧)することにより、図1(e)に示すごとく、高精度に位置合せされた両面銅箔張り配線素板9を製造する。
【0031】次いで、前記配線素板9の両面銅箔4,4について、通常のエッチングレジストインク・・・を用い、スクリーン印刷で所定の回路パターンとなるように銅箔4,4面をマスクし、・・・エッチングする。その後、・・・両面配線され、かつビア接続部9aを有する多層配線板化し、さらに、ピン挿入用の孔7a,8aを穿設した領域の内側を外形加工線として外形加工することにより多層配線板を製造した。
【0032】この多層配線板につき、常套的な電気チェックを行ったところ、全ての接続部に問題(異常)なく、信頼性の高い多層配線板であることが確認された。」

3.当審の判断
3-1.刊行物1に記載の発明
〔A1〕摘記(1a)によれば、
A.第一の金属層と第二の金属層を備える第一の回路形成材料を準備する工程、
B.第一の金属層をエッチングして層間接続用の柱状パターンを形成する工程、
C.前記柱状パターンの形成された面と、第三の金属層を備える第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し、前記柱状パターンと前記第三の金属層を電気的に接続させる工程、
D.前記第二、第三の金属層をエッチングし所定の配線パターンを形成する工程を備える半導体チップ搭載用基板の製造法が記載されている。
〔A2〕摘記(1c)には、第二の金属層と第一の金属層の間に、第一の金属層に対し選択エッチング可能な第一の中間金属層を備える第一の回路形成材料が記載され、摘記(1e)の段落【0012】には、第1の中間金属層は第1金属層1と選択エッチング可能であり、また第1金属層1よりイオン化傾向が低いと記載されているから、第一の中間金属層(第1の中間金属層)は、第一の金属層(第1金属層1)とは別の金属から成ることは明らかである。
〔A3〕摘記(1e)の段落【0013】には、「図2(b)はこの部材の突起電極群先端と別途準備した三層箔の第3金属側を対向するように、熱硬化性樹脂を介して配置する構成断面を示す。この構成で、真空熱プレスにより、該突起電極群を熱硬化性樹脂に埋設させるとともに、該第3金属層3’と機械的、及び熱的に接触せしめる。」と記載されているから、上記〔A1〕における「C.工程」の「第三の金属層を備える第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し、前記柱状パターンと前記第三の金属層を電気的に接続させる」とは、柱状パターンと第三の金属層を加熱、加圧による積層によって接続されていることも明らかである。

そこで、上記〔A1〕?〔A3〕の整理を踏まえ、摘記(1a)?(1f)の記載を半導体チップ搭載用基板としてまとめると、刊行物1には、
「配線パターンを形成する第二の金属層上に、第一の金属層に対して選択エッチングが可能な別の金属から成る第一の中間金属層を介して第一の金属層を形成し、第一の金属層を選択エッチングして層間接続用の柱状パターンを形成した後、第一の金属層に対向させて熱硬化性樹脂と第三の金属層をこの順に配置し、真空熱プレスにより、柱状パターンを熱硬化性樹脂に埋設するとともに、この柱状パターンを第三の金属層と加熱、加圧による積層によって接続され、前記第二、第三の金属層をエッチングし所定の配線パターンを形成した半導体チップ搭載用基板」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
本願補正発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「第一の中間金属層」は、第一の金属層に対して選択エッチングが可能な別の金属から成っており、第一の金属層を選択エッチングして層間接続用の柱状パターンを形成しているから、第一の金属層のエッチングバリアとして機能していることは明らかであり、本願補正発明1の「エッチングバリア層」に相当している。
又刊行物1発明の「配線パターンを形成する第二の金属層」、「柱状パターン」、「熱硬化性樹脂」、「第三の金属層」は、それぞれ順に本願補正発明1の「導体回路となる金属層」、「突起」、「層間絶縁層」、「他の金属層」に相当している。
更に、本願補正発明1の「配線回路基板」は、本願明細書の段落【0001】には、発明の属する技術分野として、「本発明は、例えばIC、LSI等の電子デバイス接続用の配線回路基板・・」とし、同段落【0056】には、「上記配線回路基板47の両面にLSIチップ48、48、・・・を搭載する。」と記載されているから、「半導体チップ搭載用基板」をその態様に含んでいるといえる。
そうすると、両者は、「導体回路となる金属層上に、該金属層とは別の金属から成るエッチングバリア層を介して金属から成る突起が、選択的に形成され、上記導体回路の上記突起が形成された側の面に、層間絶縁層が、該突起によって貫通され、上記突起が他の金属層と加熱、加圧による積層によって接続されて、上記層間絶縁層を貫通して上記導体回路となる金属層と上記他の金属層との層間接続手段を成している配線回路基板」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明1の金属から成る突起は、「その上部が層間絶縁層の表面から突出するように形成され」ているのに対し、刊行物1発明の柱状パターンはこの点が明確でない点。

そこで、上記相違点について次に検討する。
上記刊行物2の摘記(2a)には、従来技術として、多層配線板の簡便な製造手段として、ビア接続形成部に導電性バンプを配置しておき、この導電性バンプ配置面に、絶縁性樹脂シートを介して被積層用素体を積み重ね、この積層体を加熱・加圧一体化する製造方法が開発され、前記積層体を加熱・加圧して一体化する過程で、絶縁性樹脂シートに対して導電性バンプの先端側を貫挿させ、その貫挿させた導電性バンプの先端部を、対向する回路パターンなどに対接・一体化させ、回路パターン層間の接続を行う方式が記載され、摘記(2c)によれば、電解銅箔4の一主面側に、導電性バンプ5a,5b,5cを形設した面に、合成樹脂シート6を積層配置し、この積層体を加圧して、導電性バンプ5a,5bの先端部が、合成樹脂シート6を貫挿・露出した導電性バンプ5a,5b,5c埋め込み型の第1の被積層用素体7を製造すること、又導電性バンプ5bの先端部は潰されており、両面配線型のコア基板8を用意し、このコア基板8の両主面側に、被積層用素体7,7を積層配置し、積層用金型板で挟み加熱・圧着(加圧)することにより、高精度に位置合せされた両面銅箔張り配線素板9を製造すること、更に、摘記(2c)段落【0032】には、この多層配線板につき、常套的な電気チェックを行ったところ、全ての接続部に問題(異常)なく、信頼性の高い多層配線板であることが記載されている。
また、摘記(2b)段落【0009】によれば、導電性バンプの代りに、たとえばメッキ法によって、所定位置に金属突起を選択的に形成する手段を採ることもできることが記載されている。
ここで、上記摘記によれば、絶縁性樹脂シートに対して金属突起(導電性バンプ)の先端側を貫挿させ、その貫挿させた金属突起(導電性バンプ)の先端部を、対向する回路パターンなどに対接・一体化させ、回路パターン層間の接続を、全ての接続部に問題(異常)なく行うのであるから、該金属突起は、その上部が層間絶縁層の表面から突出するように形成されていることは明らかである。

一方、刊行物1発明の半導体チップ搭載用基板においては、上記摘記(1d)によれば、半導体チップ搭載用基板の製造法では、柱状パターンの形成された面と第二の回路形成材料とを絶縁材料層を介して加圧し前記柱状パターンと金属層を接触させる工程の後に、前記柱状パターンと前記金属層間の低電気抵抗化処理を施こすことができること、また、接触させる金属の少なくとも一方を酸化による粗面化処理し、その酸化粗面を還元する酸化・還元処理を予め行うことにより小さい接続抵抗値を付与することができることが記載されている。
ここで、接触させる金属の少なくとも一方を酸化による粗面化処理し、その酸化粗面を還元する酸化・還元処理を予め行うことにより小さい接続抵抗値を付与することができるとしているから、柱状パターンの金属層が接触する面を粗面化処理し、小さい接続抵抗値を付与することが記載され、柱状パターンと金属層の接続は確実なものとすることが示唆されているといえる。

そうすると、刊行物1発明の半導体チップ搭載用基板は、上記のとおり、柱状パターンと金属層の接続は確実なものとすることが示唆されているのであるから、該柱状パターンを、刊行物2に記載されている、金属突起がその上部が層間絶縁層の表面から突出するように形成することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明1において奏する効果は、刊行物1、2の記載から予測することができる程度のものであって格別顕著なものであるとは認められない。

したがって、本願補正発明1は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年7月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?請求項5に係る発明は、平成16年9月21日付の手続補正書の請求項1?請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】導体回路となる金属層上に、該金属層とは別の金属から成るエッチングバリア層を介して金属から成る突起が、選択的に形成され、
上記導体回路の上記突起が形成された側の面に、層間絶縁層が、該突起によって貫通されその上部が該層間絶縁膜の表面から突出するように形成され、
上記突起が他の金属層と加熱、加圧による積層によって接続されて、上記層間絶縁層を貫通して上記導体回路となる金属層と上記他の金属層との層間接続手段を成している
ことを特徴とする配線回路基板。」

2.引用刊行物とその摘記事項
平成16年7月15日付の拒絶理由通知の拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された刊行物1、2とその摘記事項は、上記「II.2.引用刊行物とその摘記事項」に記載されたとおりである。

3.対比・判断
本願発明1については、上記本願補正発明1と同一であって、本願補正発明1が、前記「II.3.3-2.対比・判断」に記載したとおり、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1についても、同様の理由により、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-31 
結審通知日 2007-09-04 
審決日 2007-09-28 
出願番号 特願平11-289277
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄川内野 真介  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 前田 仁志
正山 旭
発明の名称 配線回路基板とその製造方法  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  

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