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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1173208 |
審判番号 | 不服2005-6746 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-14 |
確定日 | 2008-02-14 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 93647号「製茶工場ネットワーク管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-261219〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本願は、平成8年3月21日の出願であって、平成17年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成19年8月14日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年10月22日付けで手続補正がなされたものである。 (2)本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「管理拠点と各製茶工場との間に構築されたネットワークシステムであって、前記管理拠点は、製茶機械の管理機能を有する本社等の定置した管理拠点またはメンテ車両等の移動する管理拠点であり、前記管理拠点と各製茶工場との間では、常時あるいは各製茶工場における不具合発生時に製茶に関与する情報の伝達がなされるものであり、前記製茶に関与する情報は、製茶機械の修理履歴を含む修理に関する情報と、製茶ライン構成についてのデータを含む製茶工場に関する情報と、製茶工場における異常値を含む故障に関する情報とを含む複数の情報であり、前記管理拠点は、この製茶工場から発せられた故障に関する情報と、修理履歴とを照合することにより故障部位の検索を行い、製茶工場における適切な製茶環境を整備するための情報を出力し、この出力した情報を製茶工場に直接提供し、または製茶工場を支援する管理拠点に提供し、適正な製茶加工が図られるようにしたことを特徴とする製茶工場ネットワーク管理システム。」 (3)当審の拒絶理由 当審において平成19年8月14日付けで通知した拒絶理由は以下のとおりである。 「1)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (・・・中略・・・) 2.請求項8において、「修理に関する情報は、修理履歴である」と記載されているが、「製茶に関与する情報」が「修理に関する情報」である場合に、「修理履歴」を「管理拠点と各製茶工場との間」で伝達することは、発明の詳細な説明に記載されていない。 すなわち、段落【0047】には「修理に関する情報たる修理履歴と照会することで過去の故障部位を検索」することは記載されているが、上記の事項が記載されているとは認められない。 よって、請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (・・・中略・・・) 2)本件出願の下記の請求項1-7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (・・・後略・・・)」 なお、上記の記載中、「段落【0047】」は「段落【0039】」の誤記である。 (4)判断 そこで、本願発明において、拒絶理由が解消しているか否かについて検討する。 本願発明は、「前記管理拠点と各製茶工場との間では、常時あるいは各製茶工場における不具合発生時に製茶に関与する情報の伝達がなされる」こと、及び、「前記製茶に関与する情報は、製茶機械の修理履歴を含む修理に関する情報」であることを含むものであるが、「製茶機械の修理履歴を含む修理に関する情報」を「管理拠点と各製茶工場との間」で「伝達」することは、発明の詳細な説明に記載されているとは認められない。 すなわち、段落【0033】には、「修理に関する情報たる修理履歴と照会することで過去の故障部位を検索」することは記載されているが、上記の事項が記載されているとは認められない。段落【0009】には上記事項が文言上記載されているものの、当該段落は請求項1の記載を書き写したにすぎないから、この点をもって特許法第36条第6項第1号の規定が満たされるとはいえない。 したがって、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、拒絶理由は依然として解消していない。 ここで、仮に本願発明が特許法第36条第6項第1号の要件を満たしているとしたとき、特許法第29条第2項の規定を満たしているかどうかについて、検討する。 1.引用発明 当審の拒絶理由に引用された実願平3-80063号(実開平5-21689号)のCD-ROM(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0003】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成する為に、本考案における装置は荒茶製造ラインにおいて、ライン全体の運転状態の表示、各機械の制御状態の表示及び設定値の遠隔設定の機能を1台あるいは複数台のCRTディスプレイ又は、液晶ディスプレイを用いて構成されるものである。 【0004】 【作用】 本考案は上記手段による為、ライン全体を構成する機械類と中央監視処理装置とが双方向に接続されている為、機械類の状態を集中的に監視処理装置に表示及び遠隔設定が出来る。 【0005】 【実施例】 実施例について図面を参照して説明する。 図1は代表的な荒茶製造ラインを示す。生葉コンテナ1にストックされた茶畑より摘採されてきた生葉は順次、蒸機2、葉打機3・・・、合組機9、袋詰機10、の工程を経て荒茶が製造される。各機械には、各機械の制御を司さどる制御盤12?21により制御され、制御盤12?21は、データ・ウェイ22により中央処理監視装置23と接続される。各機械の状態は、制御盤12?21を経由してデータ・ウェイ22により、中央処理監視装置23のCRTディスプレイ24上に表示される。一方、設定値の変更の場合は、中央処理監視装置23より信号が変更 の制御盤にデータ・ウェイ22により伝送される。 【0006】 【考案の効果】 本考案は上述のとおり、構成されているので、次の効果がある。 (1)ライン全体を一ケ所で集中的に管理出来る為、省力化の効果がある。 (2)高度な制御内容もCRTディスプレイにより、視覚により確認出来る為、ライン全体の把握が容易になった為、製品の品質を向上出来る効果がある。」(明細書3頁22行?4頁14行) 上記摘記事項によれば、中央処理監視装置23は、荒茶製造ラインにおいて、ライン全体を構成する機械類と接続されており、それによってライン全体を一ケ所で集中的に管理出来るのであるから、荒茶製造ラインの機械の管理機能を有する管理拠点であるといえるものであり、荒茶製造ラインの制御盤12?21はデータ・ウェイ22により中央処理監視装置23と接続されるものであるから、それらをまとめて管理拠点と荒茶製造ラインの制御盤との間に構築されたネットワークシステムということができる。 また、各機械の状態が制御盤12?21を経由してデータ・ウェイ22により、中央処理監視装置23のCRTディスプレイ24上に表示されるのであるから、各機械の状態を表す情報が伝達されることが明らかであり、該情報は荒茶製造に関与する情報であるということができ、更に、設定値の変更の場合に伝送される信号は、荒茶製造ラインの制御盤に直接提供される適切な情報であり、それによって適正な荒茶製造が図られることが明らかである。 そして、上記ネットワークシステムによって荒茶製造ラインが管理されるのであるから、当該システムは荒茶製造ラインネットワーク管理システムということができる。 したがって、上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、 「管理拠点と荒茶製造ラインの制御盤との間に構築されたネットワークシステムであって、前記管理拠点は、荒茶製造ラインの機械の管理機能を有する管理拠点であり、前記管理拠点と荒茶製造ラインの制御盤との間では、荒茶製造に関与する情報の伝達がなされるものであり、前記管理拠点は、荒茶製造ラインにおける適切な情報を出力し、この出力した情報を荒茶製造ラインの制御盤に直接提供し、適正な荒茶製造が図られるようにした荒茶製造ラインネットワーク管理システム。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 2.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】の「なお本実施の形態における茶葉の呼称は、製茶工場4に持ち込まれた加工前の状態のものを生茶葉、後述する蒸機12?乾燥機19により加工中の状態のものを加工茶葉、乾燥機19から取り出された状態のものを荒茶、小売店等で火入れされ、消費者に渡る状態のものを製品茶とする。」との記載、及び、同段落【0019】の「次に製茶工場4内に配置される各製茶機器並びにこれらによって構成される製茶ライン10について説明する。製茶ライン10は、例えば図2に示すように生茶葉自動コンテナ11、蒸機12、葉打機13、粗揉機14、揉捻機15、中揉み機16、中揉機17、精揉機18、乾燥機19等を直線的に配置し、更にこれら各製茶機器を制御する集中制御盤20を具えて構成される。」との記載からみて、本願発明における「製茶」は荒茶製造を含む概念であり、同じく「製茶工場」とは、荒茶製造のための種々の機器(「蒸機12」、「集中制御盤20」等)の設置場所を意味するものと解される。 一方、引用発明における「荒茶製造ライン」は、上記「1.引用発明」の摘記事項の記載からみて、蒸機等の荒茶製造に係る加工を行う機械群であり、それらは制御盤とともに所定の場所に設置されるものであることが明らかである。 してみれば、引用発明において、「荒茶製造ライン」及び「荒茶製造ラインの制御盤」は、ともに「製茶工場」と言い換えることができ、同様に、「荒茶製造」は「製茶」と、「荒茶製造ラインの機械」は「製茶機械」と、それぞれ言い換えることができる。 したがって、本願発明と引用発明は、 「管理拠点と製茶工場との間に構築されたネットワークシステムであって、前記管理拠点は、製茶機械の管理機能を有する管理拠点であり、前記管理拠点と製茶工場との間では、製茶に関与する情報の伝達がなされるものであり、前記管理拠点は、製茶工場における適切な製茶環境を整備するための情報を出力し、この出力した情報を製茶工場に直接提供し、適正な製茶加工が図られるようにしたことを特徴とする製茶工場ネットワーク管理システム。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 「ネットワークシステム」の「構築」や「製茶に関与する情報の伝達」が、本願発明では「各製茶工場」に対して行われている、すなわち「製茶工場」の数が複数であるのに対して、引用発明では「製茶工場」が複数であるか否かが不明である点。 (相違点2) 「管理拠点」に関し、本願発明は「本社等の定置した管理拠点またはメンテ車両等の移動する管理拠点」であるのに対して、引用発明では「管理拠点」の設置場所が不明である点。 (相違点3) 「製茶に関与する情報の伝達」が、本願発明では「常時あるいは各製茶工場における不具合発生時になされる」のに対して、引用発明では、それがいつなされるかが不明である点。 (相違点4) 「前記製茶に関与する情報」が、本願発明では「製茶機械の修理履歴を含む修理に関する情報と、製茶ライン構成についてのデータを含む製茶工場に関する情報と、製茶工場における異常値を含む故障に関する情報とを含む複数の情報」であるのに対して、引用発明では情報が異なる点。 (相違点5) 本願発明では「管理拠点」が、「この製茶工場から発せられた故障に関する情報と、修理履歴とを照合することにより故障部位の検索を行」うものであるのに対して、引用発明の「管理拠点」はそのような動作をしない点。 3.判断 そこで、上記相違点1ないし5について、以下に検討する。 (相違点1、2について) 例えば、当審の拒絶理由に引用された、水野博泰,「日立から富士通に全面移行,回線はISDNで高速化」,日経コミュニケーション,日経BP社,1991年6月3日,第103号,p.89-94や、特開昭63-245356号公報に示されているように、工場外の遠隔地に設置された管理拠点と複数の工場との間にネットワークを構築し、管理拠点が各工場を管理することは周知技術であり、特に前者の文献には管理拠点を本社とすることが記載されているように、管理拠点の設置場所は任意である。 してみれば、引用発明において、管理拠点を製茶工場外の遠隔地に設置し、複数の製茶工場との間でネットワークシステムを構築し、各製茶工場との間で製茶に関与する情報を伝達するようにすることは、当業者であれば容易に想到しうることであり、管理拠点を本社等に定置することは、適宜なしうることである。 (相違点3ないし5について) 種々の機械を管理する装置が、その機械の構成についてのデータを参照することは、例えば特開平6-34403号公報、特開平6-12113号公報に示されているように周知技術(以下、周知技術1という。)である。 また、異常が発生したときに故障部位の修理が行われる種々の機械において、異常が発生し、該異常の内容に対応する故障部位の候補が複数存在するときに、異常の内容と、部位ごとの故障頻度とを照合することにより、故障部位を検索することは、例えば特開平6-274222号公報、特開平1-278866号公報に示されているように周知技術である。ここで、異常の発生原因は故障であるから、異常の内容は故障に関する情報ということができ、故障頻度は、過去の故障回数であって、故障のたびに修理が行われるのであるから、修理履歴であるということができる。すなわち、故障に関する情報と、修理履歴とを照合することにより、故障部位を検索することは周知技術(以下、周知技術2という。)である。 また、機械等の異常を異常値により把握することは、例えば特開平6-34403号公報に示されているように周知技術(以下、周知技術3という。)である。 してみれば、引用発明に上記周知技術1及び2を適用し、管理拠点が、製茶工場の構成すなわち製茶ライン構成についてのデータを参照すること、及び、管理拠点が特定の製茶工場から発せられた故障に関する情報と、修理履歴とを照合することにより故障部位の検索を行い、その結果を製茶工場における適切な製茶環境を整備するための情報の一部として出力することは、当業者であれば容易に想到しうることである。その際、修理履歴と、製茶ライン構成についてのデータと、故障に関する情報は、いずれも製茶工場の情報であること、及び上記周知技術3を考慮すると、管理拠点と製茶工場との間で伝達する製茶に関与する情報を、製茶機械の修理履歴を含む修理に関する情報と、製茶ライン構成についてのデータを含む製茶工場に関する情報と、製茶工場における異常値を含む故障に関する情報とを含む複数の情報とすることも、容易に想到しうることである。 また、随時発生する情報をいつ伝達するかは任意であるから、製茶に関与する情報の伝達を常時あるいは製茶工場における不具合発生時とすることは、適宜なしうることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 また、仮に、本願の請求項1に係る発明が、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしているとしても、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-20 |
結審通知日 | 2007-11-27 |
審決日 | 2007-12-14 |
出願番号 | 特願平8-93647 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 537- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清水 稔 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 阿部 弘 |
発明の名称 | 製茶工場ネットワーク管理システム |
代理人 | 東山 喬彦 |