• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1173387
審判番号 不服2005-19353  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-06 
確定日 2008-02-21 
事件の表示 平成11年特許願第248362号「電子部品の実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月23日出願公開、特開2001-77597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月2日の出願であって、平成17年9月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月6日に拒絶査定に対する審判請求がされ、同年10月19日付けで手続補正がされたものである。

2.平成17年10月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年10月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)手続補正の内容
本件手続補正は、特許請求の範囲を、次の(1-1)から次の(1-2)のとおりに補正するものである。

(1-1)
「【請求項1】電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法であって、前記電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装し、1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うようにし、また同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うようにしたことを特徴とする電子部品の実装方法。」

(1-2)
「【請求項1】電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法であって、前記電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装し、1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うようにし、また同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、前記グループ分けにおいて全体のグループに属する電子部品数に偏りが生じないように振り分け、いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うようにしたことを特徴とする電子部品の実装方法。」

(2)当審の判断
本件補正後の特許請求の範囲の記載は、上記(1-2)のとおりであるところ、補正後の請求項1に記載された「前記グループ分けにおいて全体のグループに属する電子部品数に偏りが生じないように振り分け、」という事項を付加する補正は、段落【0021】の「なお、いずれの電子部品とも全く先行・後続関係がなく、どの時点で実装しても構わない電子部品については、ST1のグループ分けにおいて全体のグループに属する電子部品数に偏りを生じることがないように適宜2つのグループに振り分けられる。これにより制約条件のない電子部品の数が増え、実装順序の最適化の際の自由度が増して最適化をより容易に行うことが出来る。」という記載を根拠にしてされたものと考えられるが、補正前の請求項1に、「前記グループ分けにおいて全体のグループに属する電子部品数に偏りが生じないように振り分け、」という事項を付加する補正は、「同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、」「いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うようにした」という技術的事項をさらに限定して記載したものではなく、別途新規にそのグループ分けの際の振り分けの仕方について限定するものといえるから、前記補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの、いわゆる「限定的減縮」とはいえない。
そして、上記補正は、「請求項の削除」、「誤記の訂正」または「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものともいえない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものとはいえないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
上記「2.」で示したように、平成17年10月19日付け手続補正は却下されたから、本願に係る発明は、平成17年8月16日付け手続補正書により補正された原査定時の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりの発明(以下「本願発明」という。)である。

「電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法であって、前記電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装し、1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うようにし、また同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うようにしたことを特徴とする電子部品の実装方法。」

(2)原査定の理由の概要
一方、原査定の理由の概要は、「本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。



1.特開平8-242093号公報
2.特開平5-129794号公報

(3)刊行物とその主な記載事項
原査定の理由で引用された刊行物1には、次の事項が記載されている。

(3-1)刊行物1:特開平8-242093号公報
(3-1a)「【請求項3】装着順序毎に部品種及びプリント基板上への装着位置を指定したプログラムに従って取出ノズルで取り出した部品をプリント基板に装着すると共に、前記基板に装着することができなかった順序の部品を取出ノズルで再度取出し装着を実行してリカバリする電子部品装着方法において、前記装着順序を複数のブロックに分け該ブロック毎に装着未終了時の次ブロックからの部品装着を禁止または許容する旨のデータを記憶しておき、次ブロックからの部品装着が禁止されたブロックについては当該ブロック内での前記装着順序の部品装着が全数終了するまでは次のブロックの部品装着をしないようにすることを特徴とする電子部品装着方法。」

(3-1b)「【0013】
【実施例】以下本発明の一実施例を図に基づき詳述する。
【0014】図2及び図3に於て、1はY軸モータ2の回動によりY方向に移動するYテーブルであり、3はX軸モータ4の回動によりYテーブル1上でX方向に移動することにより結果的にXY方向に移動するXYテーブルであり、チップ状電子部品5(以下、チップ部品あるいは部品という。)が装着されるプリント基板6が図示しない固定手段に固定されて載置される。
【0015】7は供給台であり、チップ部品5を供給する部品供給装置8が多数台配設されている。9は供給台駆動モータであり、ボールネジ軸10を回動させることにより、該ボールネジ軸10が螺合し供給台7に固定されたナット11を介して、供給台7がリニアガイド12に案内されてX方向に移動する。13は間欠回動するロータリテーブルであり、該テーブル13の外縁部には吸着ノズル14を複数本有する装着ヘッド15が間欠ピッチに合わせて等間隔に配設されている。
【0016】Iはロータリテーブル13の間欠回転により吸着ノズル14が供給装置8より部品5を吸着し取出す装着ヘッド15の停止位置である吸着ステーションであり、該吸着ステーションIにて吸着ノズル14が部品5を吸着する。」

(3-1c)「【0025】部品5の装着の順序は先ず図6のステップの順(A1,A2,A3)の単位基板において、図5のステップの順(M1,M2…)に装着されるが、ブロックの指定がある本実施例の場合には同じブロックについては連続して装着するようにしている。即ち、図8の各数字の順番に部品5が装着されることになる。
【0026】図10に示すようにブロック番号1のブロックの部品5はブロック番号3のブロックの部品5により完全に覆われており、逆の順序で装着したのでは部品同士が衝突(干渉)してしまい装着することができないものである。
【0027】また、RAM26には図7に示すようなブロック番号毎にブロック内リカバリ優先指定を記憶したリカバリ優先指定データが格納されており、該優先指定が「指定する」にさている場合には、当該ブロック内の部品5が全て装着されないと次の番号のブロックの装着順序の部品の装着を禁止するものであり、当該ブロックの中で部品5の吸着ミスがあった場合には該部品5を再度吸着して装着するというリカバリ動作を行うまでは次のブロックの部品5の吸着を行わないようにCPU25により制御されるものである。優先指定が「指定しない」にされている場合にはCPU25は吸着ミスが発生した場合に、まだその部品の再吸着を行っていなくとも次のブロックより部品5の取り出しを行うように制御するものである。
【0028】本実施例では、図8乃至図10のように、順序を逆にできない部品を夫々ブロック分けして、図7に示すような指定をすることにより逆の順序にならないようにしているものである。」

(4)当審の判断
(4-1)引用刊行物に記載の発明
引用刊行物1の(3-1a)に、「・・・ことを特徴とする電子部品装着方法。」と記載されているように、引用刊行物1は、「電子部品装着方法」について記載されたものといえる。そして、この「電子部品装着方法」は、(3-1a)の「部品をプリント基板に装着する」という記載によれば、装着とは実装といえるから、「電子部品の実装方法」と言い換えることができる。さらに、この「電子部品の実装方法」は、次のとおりのものといえる。

A1.(3-1b)の「チップ部品5を供給する部品供給装置8が多数台配設されている。」という記載によれば、「部品供給装置」は、チップ部品を供給するから、「電子部品供給部」といえる。

A2.(3-1b)の「吸着ノズル14が供給装置8より部品5を吸着し取出す装着ヘッド15」という記載によれば、「装着ヘッド」は、供給装置より部品を吸着し取出すから、「移載ヘッド」といえる。

A3.(3-1b)の「吸着ノズル14が供給装置8より部品5を吸着し取出す装着ヘッド15」という記載によれば、「吸着し取出す」は、供給装置より部品を吸着し取出すことであるから、「ピックアップ」といえる。

A4.(3-1b)の「XY方向に移動するXYテーブルであり、チップ状電子部品5(以下、チップ部品あるいは部品という。)が装着されるプリント基板6が図示しない固定手段に固定されて載置される。」という記載によれば、「XYテーブル」は、チップ状電子部品が装着されるプリント基板が載置されるものであるから、「同一搭載ステージ」といえる。

A5.(3-1b)の「チップ状電子部品5(以下、チップ部品あるいは部品という。)が装着されるプリント基板6」という記載によれば、「プリント基板」は、チップ状電子部品が装着される基板であるから、「基板」といえる。

A6.(3-1a)の「取出ノズルで取り出した部品をプリント基板に装着する」という記載によれば、「取出ノズルで取り出した部品をプリント基板に装着」は、「移送搭載」といえる。

してみると、この「電子部品の実装方法」は、「電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法」といえる。

B.(3-1a)の「装着順序毎に部品種及びプリント基板上への装着位置を指定したプログラムに従って取出ノズルで取り出した部品をプリント基板に装着すると共に、・・・装着順序を複数のブロックに分け」ることは、(3-1c)の「ブロック番号1のブロックの部品5はブロック番号3のブロックの部品5により完全に覆われており、逆の順序で装着したのでは部品同士が衝突(干渉)してしまい装着することができないものである。」という記載によれば、ブロック分け、すなわちグループ分けは、電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいて行われることといえるから、この「電子部品の実装方法」は、「電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装」するといえる。

C.(3-1a)の「基板に装着することができなかった順序の部品を取出ノズルで再度取出し装着を実行してリカバリする電子部品装着方法において、・・・次ブロックからの部品装着が禁止されたブロックについては当該ブロック内での前記装着順序の部品装着が全数終了するまでは次のブロックの部品装着をしないように」することは、(3-1c)の「ブロック番号毎にブロック内リカバリ優先指定を記憶したリカバリ優先指定データが格納されており、該優先指定が「指定する」にさている場合には、当該ブロック内の部品5が全て装着されないと次の番号のブロックの装着順序の部品の装着を禁止するものであり、当該ブロックの中で部品5の吸着ミスがあった場合には該部品5を再度吸着して装着するというリカバリ動作を行うまでは次のブロックの部品5の吸着を行わないようにCPU25により制御されるものである。」という記載によれば、優先指定されたブロック(グループ)内の部品が全て装着、言い換えれば1つのグループについての予定実装シーケンスが終了されないと次の番号のブロックの装着順序の部品の装着を禁止し、当該ブロックの中で部品を再度吸着して装着するというリカバリ動作、すなわち未実装部品の補充実装を行うまでは次のブロックの部品の吸着を行わないようにすることであるから、この「電子部品の実装方法」は、「1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うように」するといえる。

以上の記載及び記載から認定した事項を本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法であって、前記電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装し、1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うようにした電子部品の実装方法。」

(4-2)本願発明と引用発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「電子部品供給部から複数種類の電子部品を移載ヘッドによりピックアップして同一搭載ステージにおいて基板に移送搭載する電子部品の実装方法であって、前記電子部品を実装動作上の制約条件に由来する先行・後続関係に基づいてグループ分けしてこれらのグループに先行順位に従って順位付けしておき、実装作業時には先行順位のグループから順にグループ単位で実装し、1つのグループについての予定実装シーケンスが終了する度に当該グループに属する電子部品であって予定実装シーケンスの実行において実装されなかった未実装部品の補充実装を行うようにした電子部品の実装方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、「同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うように」したのに対して、引用発明は、同一搭載ステージで実装される複数の電子部品のうち相互に先行、後続関係にない電子部品同士のグループに属する電子部品については、いずれの電子部品が部品切れを生じても直ちに他の電子部品の実装を行うようにするか否かが不明である点

(4-3)相違点についての判断
次に、この相違点について検討する。
刊行物1の(3-1c)に「優先指定が「指定しない」にされている場合にはCPU25は吸着ミスが発生した場合に、まだその部品の再吸着を行っていなくとも次のブロックより部品5の取り出しを行うように制御するものである。」と記載されているように、吸着ミスというトラブル発生時には、部品の再吸着を行っていなくとも次のブロックより部品の取り出しを行うようにするものであるから、いずれの電子部品の部品切れというトラブル発生時にも、直ちに他の電子部品の実装を行うようにすることは、当業者が容易に想到することといえる。
してみると、上記相違点は、当業者が容易に想到することといえる。
なお、吸着ミスと併発する頻度の高い電子部品切れにおいて、直ちに他の電子部品の実装を行うようにすることは、特開平11-163596号公報、特開平8-172296号公報、特開平11-204997号公報、特開平3-117000号公報、特開昭62-216400号公報等に示されているように、当業者に周知の事項といえる。

(4-4)小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-19 
結審通知日 2007-12-25 
審決日 2008-01-08 
出願番号 特願平11-248362
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 572- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真鳥居 稔  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 近野 光知
平塚 義三
発明の名称 電子部品の実装方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ