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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1173702 |
審判番号 | 不服2005-6963 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-19 |
確定日 | 2008-02-25 |
事件の表示 | 特願2000-598875「衛星用の距離測定システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月17日国際公開、WO00/48018、平成14年10月29日国内公表、特表2002-536672〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成12年2月8日(パリ条約による優先権主張平成11年2月8日)を国際出願日とする出願であって、平成17年1月7日付けで拒絶査定(発送日同年1月18日)がなされ、これに対し、同年4月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1?35に係る発明は、平成13年8月7日付けの特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書及び平成14年3月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?35に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】以下のものを備える、通信チャネル内の応答機、特に衛星の距離情報を決定するための距離測定システム。 上記応答機に送信されるのに適した第1ペイロード信号を受信し、第1出力信号を生成するための第1受信/復号機構(7)と、 上記応答機から送信される第2ペイロード信号を受信し、第2出力信号を生成するための第2受信/復号機構(7’)。ここでは、第2ペイロード信号は、上記通信チャネルを伝達したために遅延している。 上記第1及び第2出力信号において所定の信号パターンを探索するための手段と、 上記信号パターンの探索に基づいて、上記第1出力信号と第2出力信号との間の遅延を決定するための手段。」 3 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-10229号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項2】受信信号を返送する機能を有した移動体までの距離の計測を行なう距離計測装置において、 所定の擬似ランダムノイズコード、この擬似ランダムノイズコードに同期した擬似ランダムノイズクロックおよび前記擬似ランダムノイズコードの1シーケンス毎の所定ビットを示す擬似ランダムノイズエポックをそれぞれ含んだ測距信号を送信する測距信号送信手段と、 前記移動体から返送された測距信号を受信する測距信号受信手段と、 前記送信手段が送信している擬似ランダムノイズコードが擬似ランダムノイズエポックが示す所定のビットから何ビット目であるかを検出する送信コード位置検出手段と、 前記受信手段が受信している擬似ランダムノイズコードが擬似ランダムノイズエポックが示す所定のビットから何ビット目であるかを検出する受信コード位置検出手段と、 一定周期の基準クロックを発生する基準クロック発生手段と、 所定の測距開始時点から、この時点における前記送信コード位置検出手段の検出結果と同じ検出結果が前記受信コード位置検出手段で得られるまでの時間を前記基準クロックを用いて計時する計時手段と、 この計時手段により計時された時間を前記移動体との間を前記測距信号が往復するのに要した時間として前記移動体までの距離を算出する距離算出手段とを具備したことを特徴とする距離測定装置。」(特許請求の範囲) (2)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、例えば軌道上を飛翔する人工衛星等の移動体までの距離を測定するための距離計測装置に関する。」(段落【0001】) (3)「図3は本実施形態に係る距離測定装置を適用して構成された地球局装置の要部構成を示す機能ブロック図である。 【0043】この図に示すように本実施形態の地球局装置は、測距信号発生部11、送信部12、アンテナ13、受信部14、送信PNコード位置カウンタ15、受信PNコード位置カウンタ16、時刻信号部17、往復時間カウンタ18、基準クロック発生部19および測距処理部20を有している。 【0044】測距信号発生部11は、“0”または“1”のビットを配列してなる所定パターンのビット列の繰り返しである擬似ランダムノイズ(PN)コード、PNコードをなす各ビットに同期したPNクロックおよびPNコードの1シーケンスの先頭のビットに同期したPNエポックからなるPN信号を測距信号として発生する。この測距信号発生部11で発生された測距信号は、送信部12を介してアンテナ13に供給され、送信測距信号として人工衛星Sに向けて送信される。 【0045】人工衛星Sで折り返された返送測距信号は、アンテナ13を介して受信部14に与えられ、ここで受信される。送信PNコード位置カウンタ15は、測距信号発生部11が発生する測距信号のうちのPNエポックがリセット信号として、またPNクロックがクロック信号としてそれぞれ入力されている。すなわち送信PNコード位置カウンタ15は、送信測距信号のPNクロックをカウントするものであり、そのカウント値は送信測距信号のPNエポックにパルスが生じることでリセットされる。 【0046】受信PNコード位置カウンタ16は、受信部14で受信された測距信号(受信測距信号)のうちのPNエポックがリセット信号として、またPNクロックがクロック信号としてそれぞれ入力されている。すなわち受信PNコード位置カウンタ16は、受信測距信号のPNクロックをカウントするものであり、そのカウント値は受信測距信号のPNエポックにパルスが生じることでリセットされる。 【0047】時刻信号部17は、所定の時刻または所定の時間間隔で測距データ取得要求を出力する。往復時間カウンタ18は、基準クロック発生部19が発生する所定周波数の基準クロックをカウントするものであり、そのカウント値は測距処理部20からの制御の下にリセットされる。 【0048】測距処理部20は、例えばマイクロプロセッサを主制御回路として有し、例えばソフトウェア処理によりそれぞれ実現される往復時間計時制御手段20aおよび距離計算手段20bを有している。このうち往復時間計時制御手段20aは、時刻信号部17から測距データ取得要求が与えられたことに応じて測距信号発生部11が出力するPNコードが1シーケンスにおける何ビット目であるかをチェックし、同じビットが受信測距信号におけるPNコードに生じるまでの時間を計時するための処理を行なうものである。また距離計算手段20bは、往復時間計時制御手段20aにより計時された時間に基づいて人工衛星Sまでの距離を算出するものである。」(段落【0042】?【0048】) したがって、上記摘記事項(1)及び(3)からみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「以下のものを備える、受信信号を返送する機能を有した人工衛星等の移動体までの距離を測定するための距離計測装置。 所定の擬似ランダムノイズコード、この擬似ランダムノイズコードに同期した擬似ランダムノイズクロックおよび前記擬似ランダムノイズコードの1シーケンス毎の所定ビットを示す擬似ランダムノイズエポックをそれぞれ含んだ測距信号を出力する測距信号発生部と、 測距信号発生部から出力された測距信号を送信測距信号として移動体に向けて送信を行う送信部と、 前記移動体から返送された返送測距信号を受信して受信測距信号を生成する受信部と、 前記測距信号発生部が出力している測距信号に基づいて擬似ランダムノイズコードが擬似ランダムノイズエポックが示す所定のビットから何ビット目であるかを検出する送信コード位置検出手段と、 前記受信測距信号から擬似ランダムノイズコードが擬似ランダムノイズエポックが示す所定のビットから何ビット目であるかを検出する受信コード位置検出手段と、 一定周期の基準クロックを発生する基準クロック発生手段と、 所定の測距開始時点から、この時点における前記送信コード位置検出手段の検出結果と同じ検出結果が前記受信コード位置検出手段で得られるまでの時間を前記基準クロックを用いて計時する計時手段と、 この計時手段により計時された時間を前記移動体との間を前記測距信号が往復するのに要した時間として前記移動体までの距離を算出する距離算出手段。」 4 対比 本願第1発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明における「受信信号を返送する機能を有した人工衛星等の移動体までの距離を測定するための距離計測装置」は、本願第1発明における「通信チャネル内の応答機、特に衛星の距離情報を決定するための距離測定システム」に相当する。 (2)引用発明における「送信測距信号」は、本願第1発明における「第1ペイロード信号」に相当する。 (3)引用発明の「測距信号」と、本願第1発明の第1受信/復号機構で生成される「第1出力信号」とは、共に「遅延を決定するために最初のタイミングを設定するための信号」であるという点で共通する。 (4)引用発明における「返送測距信号」、「受信測距信号」、「受信部」は、それぞれ、本願第1発明における「第2ペイロード信号」、「第2出力信号」、「第2受信/復号機構(7’)」に相当する。 (5)引用発明における「送信コード位置検出手段」及び「受信コード位置検出手段」は、本願第1発明における「第1及び第2出力信号において所定の信号パターンを探索するための手段」に相当する。 (6)引用発明における「計時手段」は、本願第1発明における「遅延を決定するための手段」に相当する。 以上、(1)?(6)の考察から、両者は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 【一致点】 「以下のものを備える、通信チャネル内の応答機、特に衛星の距離情報を決定するための距離測定システム。 遅延を決定するために最初のタイミングを設定するための信号と、 上記応答機から送信される第2ペイロード信号を受信し、第2出力信号を生成するための第2受信/復号機構。ここでは、第2ペイロード信号は、上記通信チャネルを伝達したために遅延している。 上記遅延を決定するために最初のタイミングを設定するための信号及び第2出力信号において所定の信号パターンを探索するための手段と、 上記信号パターンの探索に基づいて、上記遅延を決定するために最初のタイミングを設定するための信号と第2出力信号との間の遅延を決定するための手段。」 【相違点】 遅延を決定するために最初のタイミングを設定するための信号に関して、本願第1発明では、応答機に送信されるのに適した第1ペイロード信号を受信し、第1出力信号を生成するための第1受信/復号機構(7)を有するのに対し、引用発明では、送信測距信号(「第1ペイロード信号」に相当)を受信して信号を復号する手段を有さず、測距信号そのものを信号として利用する点。 5 判断 上記相違点について検討する。 例えば、特表平8-502592号公報(「本発明は、射程処理系および方法、特に、通信衛星のような信号再送信標的装置の射程を決定するシステムおよび方法に関するものである。」(7頁5?6行)、「図1は、本発明のバースト・トーン射程処理系を説明する線図である。送信プロセッサ1は、バースト・トーン信号を発生させ、搬送波に載せて、測距局送信路3に沿い送信する。送信した信号は、分割して、基準路により測距局変換器5を介し、測距局受信路7に伝送し、測距局受信プロセッサ9で受信する。分割信号は、遅延路により、測距局アンテナ13を介して標的11にも伝送する。」(12頁10?14行)、「基準信号と遅延信号とはともに測距局を介して伝送するので、測距局によって生ずる時間遅延の大部分は自動的に相殺除去され、これにより、測距局送信路および受信路3および7における信号遅延の変化によって通常生ずる不確定性の大部分が除去される。」(13頁7?10行)、「図3は、あらゆる基底帯域処理用のディジタル信号処理技術を用いて構成した図1の受信プロセッサ9のブロック線図であり、・・・この受信プロセッサは、図1の測距系受信路7から基準および遅延の両信号を受信し、それらの信号を、利用し得る復調器21および23によりそれぞれ復調し、アナログ・ディジタル変換器25および27によりそれぞれ標本化する。」(16頁1?6行)参照)、特開昭58-140661号公報(「本発明は、移動する電波中継器を有する対象物までの距離を測定する高精度距離測定装置に関するものである。」(1頁右下欄13?15行)、「第2図は本発明の実施例であって、・・・8は第1の受信機、・・・10は第2の受信機、・・・である。」(2頁左上欄12?19行)、「空中線より送信された電波は、対象物(人工衛星等)に到達し、中継され、再び空中線により受信される。受信した信号は、・・・第2の受信機により復調され、第2のトーン抽出器により、距離測定用トーンが抽出される。一方送信用増幅器の出力信号は、・・・第1の受信機により復調され、第1のトーン抽出器により、距離測定用トーンが抽出される。」(2頁右上欄3?16行)、「このような構成になっているから、送受信系回路の遅延時間変動は常にキャンセルされることになる。」(2頁左下欄2?4行)参照)に記載されているごとく、応答機に送信されるのに適した信号を受信し、いわゆる第1出力信号を生成するための第1受信/復号機構を設けることにより送受信路における信号遅延を相殺する点は、周知である。したがって、引用発明に、上記周知技術を適用して本願第1発明のごとく第1受信/復号機構を備える構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願第1発明の奏する作用効果についても、引用例に記載された事項及び上記周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。 したがって、本願第1発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願第1発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2乃至35に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-13 |
結審通知日 | 2007-09-25 |
審決日 | 2007-10-09 |
出願番号 | 特願2000-598875(P2000-598875) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 哲伸 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
下中 義之 小川 浩史 |
発明の名称 | 衛星用の距離測定システム及び方法 |
代理人 | 小林 良平 |