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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1173964
審判番号 不服2005-24671  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-22 
確定日 2008-03-06 
事件の表示 特願2002-368987「金属焼結体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-197187〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月19日の出願であって、平成17年5月9日付けで手続補正がされたが、同年11月10日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成18年1月23日付けで手続補正がされたものである。

2.平成18年1月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年1月23日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。
[理由]
本件手続補正は、本件手続補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「耐熱性で該成形部材より硬質の不伝導体」を「耐熱性で硬質の不伝導体」とし、また、同請求項5に記載した発明を特定するための事項である「耐熱性の成形部材より硬質の不伝導体」を「耐熱性で硬質の不伝導体」とする補正事項を含むものである。
上記補正事項は、いずれも、不伝導体の硬質の程度について、本件手続補正前には、「成形部材より」硬質であると限定していたものを、「成形部材より」なる事項を削除して、単に硬質であるとするものであるから、特許請求の範囲を拡張するものであり、減縮するものでないことは明らかである。よって、上記補正事項は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するとはいえないし、また、同項第1号、第3号、第4号に掲げる事項のいずれにも該当しないことは明らかである。
また、本件手続補正は、特許請求の範囲の請求項4、6、7に「耐熱性の成形部材より硬質の不伝導体」なる事項を記載する補正事項を含むものである(なお、当該事項のうち「成形部材より」なる事項は、本件手続補正より前の平成17年5月9日付けの手続補正により追加して記載されたものである。)が、不伝導体が「成形部材より」硬質である点は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、同明細書又は図面に記載した事項から自明の事項とも認められないので、上記補正事項は、同明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成18年1月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成17年5月9日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1を引用する場合の請求項3に係る発明は、以下のとおりのものである。
「押し固められた金属粉末または金属被覆粉末からなる成形部材を両端が開いている容器内に入れ、その側面に耐熱性で該成形部材より硬質の不伝導体を充填した後、荷重をかけながら容器の両端から成形部材に電流を連続的に印加、あるいはパルス状に印加して加熱することを特徴とする金属焼結体の製造方法であって、電流と荷重付加手段としての電極と押し固められた金属粉末との間に伝導体粉末を介在させることを特徴とする金属焼結体の製造方法。」(以下、「本願発明3」という。)

4.原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特公昭45-31526号公報

5.引用刊行物とその主な記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特公昭45-31526号公報)には、以下の事項が記載されている。
1a「焼結粉末を加圧成形した成形体を耐熱性粉末内に埋め込み、該焼結粉末成形体の周りに耐熱性粉末を均一に包囲介在せしめた状態で加圧すると共に、加熱、通電加熱、又は放電加熱して焼結する事を特徴とする焼結方法。」(特許請求の範囲)
1b「1は焼結室を構成する耐熱絶縁性容器で、上下に例えば炭素(グラファイト)の如き耐熱通電電極2,3が嵌挿され、この電極間に通電電源を接続する端子4が接続されている。上方の通電電極2は加圧体を兼用し、油圧プレス装置5に連結されている。勿論加圧は下方の電極3によって、或いは上下両方向から加えるようにしてもよく、・・・してもよい。6は容器1及び上下電極2,3によって囲繞された焼結室内に充填した耐熱性、かつ適度の通電性を有する炭素(グラファイト)の如き粉末で、この中に予め成形した焼結粉末成形体7が埋め込んである。」(第1欄第30行?第2欄第5行)
1c「しかして成形体7を耐熱粉末6中に埋込み、包囲させた後、電極2により加圧を行なうと、成形体7を包囲介在する粉末6が流動を生じながら成形体7の周りに均質密度で介在し、又成形体7に空所があるような場合には、そこにも同様に流動浸入して介在し、成形体7の内外表面に均等圧接する。そこでこの状態で端子4から大電流密度の通電を行なうと、通電電流は周りの均等介在粉末6を通して内部の成形体7に全体均一に流れ、粉末6間及び成形体7間にジュール熱を発生し、成形体7は自身に発生したジュール熱と、周りの粉末6に発生したジュール熱によって温度勾配少なくして均一に加熱され、成形体7の各部全体の熱拡散が均質に行なわれる。」(第2欄第28行?第3欄第3行)
1d「又通電、放電焼結する場合にも粉末は適度の通電抵抗を有し、通電電流がこの粉末6部分のみに流れることなく、内部の金属、合金材焼結粉末7に集中的に流れるため、容積の大きい粉末6の結合率は低く、内部の焼結粉末の成形体7を能率良く強固に焼結することができる。又通電を行なわない炉等による外部からの加熱焼結を行なう場合は耐熱粉末6として炭素(グラファイト)の他に、セラミックの如き酸化物、炭化物、窒化物、その他の絶縁性耐熱材粉末を用いることができる。」(第3欄第22?32行)
1e「以上説明したように本発明によれば、・・・焼結粉末の耐熱粉末中への充填埋め込みが極めて容易であり、この焼結粉末成形体が複雑な形状のものであつても耐熱粉末の流動浸入介在により成形体の周り全体に均一に空所など残すことなく耐熱粉末が接触介在し、焼結時の加圧、通電、熱伝達を周囲全体から均一に行ない、・・・焼結品が得られる。」(第4欄第8?21行)

6.当審の判断
(1)引用発明
刊行物1には、「焼結粉末を加圧成形した成形体を耐熱性粉末内に埋め込み、該焼結粉末成形体の周りに耐熱性粉末を均一に包囲介在せしめた状態で加圧すると共に、加熱、通電加熱、又は放電加熱して焼結する事を特徴とする焼結方法。」(摘示1a)が記載されている。
ここで、上記焼結粉末は、「通電電流が・・・内部の金属、合金材焼結粉末7に集中的に流れる」(摘示1d)との記載によれば、金属粉末であるといえる。
また、「6は容器1及び上下電極2,3によって囲繞された焼結室内に充填した耐熱性、かつ適度の通電性を有する炭素(グラファイト)の如き粉末で、この中に予め成形した焼結粉末成形体7が埋め込んである。」(摘示1b)との記載によれば、上記耐熱性粉末は、通電性を有するものであり、また、容器及び上下電極によって囲繞された焼結室内に充填されているといえる。
また、「1は焼結室を構成する耐熱絶縁性容器で、上下に例えば炭素(グラファイト)の如き耐熱通電電極2,3が嵌挿され、この電極間に通電電源を接続する端子4が接続されている。」(摘示1b)及び「上方の通電電極2は加圧体を兼用し・・・勿論加圧は・・・上下両方向から加えるようにしてもよく」(摘示1b)との記載によれば、上記焼結室を構成する容器は、その上下に加圧体を兼用する電極が嵌挿されるものであるから、容器の上下は開いているといえるし、また、上記焼結方法は、容器の上下から加圧体を兼用する電極により加圧すると共に通電するものといえる。
また、「成形体7を耐熱粉末6中に埋込み、包囲させた後、電極2により加圧を行う・・・この状態で端子4から大電流密度の通電を行なうと、通電電流は・・・内部の成形体7に全体均一に流れ」(摘示1c)との記載によれば、上記焼結方法における通電加熱又は放電加熱では、成形体に電流を流すものといえる。
以上の記載及び認定事項を整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「加圧成形された金属粉末からなる成形体を、上下が開いている容器及び上下電極によって囲繞された焼結室内に充填された耐熱性で通電性を有する粉末内に埋め込み、該金属粉末成形体の周りに耐熱性で通電性を有する粉末を均一に包囲介在せしめた状態で、容器の上下から加圧体を兼用する電極により加圧すると共に、成形体に電流を流して通電加熱又は放電加熱して焼結する金属粉末の焼結方法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明3と引用発明との対比
本願発明3と引用発明とを対比すると、引用発明における「加圧成形された」、「成形体」、「上下」、「耐熱性で通電性を有する粉末」、「加圧体を兼用する電極」、「金属粉末の焼結方法」は、それぞれ、本願発明3における「押し固められた」、「成形部材」、「両端」、「伝導体粉末」、「電流と荷重付加手段としての電極」、「金属焼結体の製造方法」に相当する。
また、引用発明における「加圧すると共に、成形体に電流を流して通電加熱又は放電加熱」することが、本願発明3における「荷重をかけながら・・・成形部材に電流を連続的に印加、あるいはパルス状に印加して加熱」することに相当することは、当業者にとって明らかである。
また、引用発明では、耐熱性で通電性を有する粉末は、容器及び上下電極によって囲繞された焼結室内に充填され、その粉末内に成形体が埋め込まれるのであるから、結局、上下電極と成形体との間には、耐熱性で通電性を有する粉末が介在するといえる。よって、本願発明3と引用発明とは、「電極と押し固められた金属粉末との間に伝導体粉末を介在させる」点で一致すると認められる。また、引用発明では、成形体は容器に入れられ、その成形体の側面は耐熱性で通電性を有する粉末で充填されているといえる。そして、本願発明3における「耐熱性で該成形部材より硬質の不伝導体」と、引用発明における「耐熱性で通電性を有する粉末」とは、いずれも耐熱性の材料といえるから、本願発明3と引用発明とは、「成形部材を・・・容器内に入れ、その側面に耐熱性の材料を充填した」点で一致すると認められる。
以上によれば、本願発明3と引用発明とは、
「押し固められた金属粉末からなる成形部材を両端が開いている容器内に入れ、その側面に耐熱性の材料を充填した後、荷重をかけながら容器の両端から成形部材に電流を連続的に印加、あるいはパルス状に印加して加熱する金属焼結体の製造方法であって、電流と荷重付加手段としての電極と押し固められた金属粉末との間に伝導体粉末を介在させる金属焼結体の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。
相違点
成形部材の側面に充填する耐熱性の材料が、本願発明3では、「該成形部材より硬質の不伝導体」であるのに対して、引用発明では、「通電性を有する粉末」である点。

(3)相違点についての判断
刊行物1の「通電、放電焼結する場合にも粉末は適度の通電抵抗を有し、通電電流がこの粉末6部分のみに流れることなく、内部の金属、合金材焼結粉末7に集中的に流れるため、・・・内部の焼結粉末の成形体7を能率良く強固に焼結することができる。」(摘示1d)との記載によれば、刊行物1には、電流を成形体に集中的に流すことにより、焼結粉末の成形体を能率良く強固に焼結できることが記載されていると認められる。
ここで、引用発明では、電極が上下に設けられているから、電流は上下方向に流れると認められるが、この場合において、電流を成形体に集中的に流すためには、成形体の側面に充填される耐熱性の材料(粉末)に電流が流れないようにすればよいことは、当業者にとって自明のことである。
ところで、上記の耐熱性の材料(粉末)は、摘示1eによれば、成形体を加圧するためのものと認められるが、成形体を加圧する際に、セラミックス等の耐熱性の不伝導体を用いることは周知技術である(例えば、引用例1の「通電を行なわない炉等による外部からの加熱焼結を行なう場合は耐熱粉末6として・・・セラミックの如き酸化物、炭化物、窒化物、その他の絶縁性耐熱材粉末を用いることができる。」(摘示1d)等参照。)。
そうすると、引用発明において、より能率良く強固に焼結するために、成形体の側面に耐熱性で「通電性を有する粉末」を充填することに代えて、耐熱性の不伝導体を充填して、電流を成形体に集中的に流すようにすることは、当業者が容易に想到することである。また、成形体の側面に充填する耐熱性の材料は、上記のとおり、成形体を加圧するためのものであるから、上記耐熱性の不伝導体として、成形体を十分に加圧できるように、押し固められた金属粉末からなる「成形部材より硬質の」ものを用いる程度のことは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。また、それによる効果も格別顕著なものとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明3は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-26 
結審通知日 2008-01-08 
審決日 2008-01-21 
出願番号 特願2002-368987(P2002-368987)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22F)
P 1 8・ 561- Z (B22F)
P 1 8・ 572- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 井上 猛
近野 光知
発明の名称 金属焼結体の製造方法  

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