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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C21C
管理番号 1173980
審判番号 不服2006-7769  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-24 
確定日 2008-03-06 
事件の表示 特願2000-262439「溶銑の脱りん方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年3月8日出願公開、特開2002-69522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月31日の出願であって、平成18年3月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当審より拒絶の理由が通知され、平成19年12月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願に係る発明は、平成19年12月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「上底吹き転炉方式の予備処理炉に溶銑を装入し、CaOを添加しつつ、酸素を上吹きして脱珪・脱りん処理を実施する方法において、炭材を上方から添加して、添加した炭材と当量分の酸素を吹込むことによりスラグの液相率を上昇させ、溶銑脱りんに必要なスラグの塩基度1.2?2.0(2.0を除く)および酸素ポテンシャルを確保することを特徴とする溶銑の脱りん方法。」

3.当審拒絶理由の概要
当審より通知された拒絶の理由の概要は、次のとおりのものである。

(1)本願請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開平1-312020号公報

4.引用刊行物とその記載事項
当審より通知された拒絶の理由で引用された刊行物1(特開平1-312020号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開平1-312020号公報
(1a)「上下両吹き機能を有する転炉形式の炉に注銑した溶銑に脱燐剤を添加し、底吹ガス攪拌を行いつつ酸素ガスを上吹きして溶銑脱燐を行う方法において、まず前記脱燐剤の一部と炭材とを添加すると共に酸素を上吹きして溶銑を加熱し、その後残部の脱燐剤を添加することを特徴とする溶銑の昇温脱燐方法。」(特許請求の範囲)

(1b)「〈産業上の利用分野〉
この発明は、低温溶銑の脱燐(以降、脱Pと記す)率を向上する共に、処理後溶銑の十分な温度確保を図り得る溶銑の昇温脱燐方法に関するものである。」(第1頁左下欄下から第5行?末行)

(1c)「なお、ここで言う「上下両吹き機能を有した転炉形式の炉」としては、LD転炉を基本とし、その炉底からAr, N_(2),CO_(2),CO或いはO_(2)ガスを0.03?0.30Nm^(3)/min・t程度吹き込んで補助的攪拌を与えるところの、所謂“複合吹錬転炉”を代表的なものとして挙げることができる。
また、脱P剤は格別に特定されるものではないが、滓化の点や製鋼トータルコスト低減の観点からは、特願昭61-132517号に示される如き“脱C炉で発生したP_(2)O_(5)の低い(例えば1重量%以下)転炉滓”を基本成分とした“転炉滓-酸化鉄-ホタル石系”或いは“転炉滓-マンガン鉱石-ホタル石系”が良く、これに生石灰を加えてもよい。勿論、トーピードや取鍋での溶銑脱Pに通常用いられる生石灰-酸化鉄-ホタル石系であってもかまわないことは前述の通りである。
脱P剤の添加量としては、転炉滓を主成分とするもので概ね50kg/t程度でよいが、スラグの塩基度(CaO/SiO_(2))を2以上、できれば2.5以上に設定するのが脱Sの面から好ましい、なぜなら、本発明法を実施する際にはコークス等の炭材から溶銑中にSが侵入する傾向にあることは前述した通りであるが、脱P後の[S]を高くしないためには脱Pスラグによる脱Sが重要となってくるからである。」(第3頁左下欄第7行?同頁右下欄第11行)

(1d)「そして、このカバースラグ形成のために脱P剤の一部或いは大半を添加すると、これが加熱・昇温期に十分に滓化するため、次の脱P期での脱P反応を有利にする。」(第4頁右上欄第16?19行)

(1e)「この時のコークスと上吹き酸素量の割合は、コークスが燃焼するのに必要な化学量論的な酸素量で決定される。」(第4頁左下欄第17?19行)

(1f)「脱P期で重要なことは、昇温・脱P期に形成されたスラグが、時たま陥る“酸化鉄量が少なくなって脱Pに不利な状態”になっているかどうかに注意する点である。このため、脱P期にはスラグの酸化力を上げるべく、酸化鉄或いはマンガン鉱石を添加することが望ましい。」(第4頁右下欄第6?11行)

(1g)第5頁右上欄?第6頁左上欄には、実施例1?3についての溶銑組成が示されており、
第1表には、Si(重量%)が処理前:0.11;昇温後:tr.;脱P後:tr.(第5頁右上欄)
第2表には、Si(重量%)が処理前:0.12;昇温後:tr.;脱P後:tr.(第5頁左下欄)
第3表には、Si(重量%)が処理前:0.20;昇温後:tr.;脱P後:tr.(第6頁左上欄)
と表示されている。

5.当審の判断
(1)引用発明
当審より通知された拒絶の理由で引用された刊行物1の上記(1a)には、
「上下両吹き機能を有する転炉形式の炉に注銑した溶銑に脱燐剤を添加し、底吹ガス攪拌を行いつつ酸素ガスを上吹きして溶銑脱燐を行う方法において、まず前記脱燐剤の一部と炭材とを添加すると共に酸素を上吹きして溶銑を加熱し、その後残部の脱燐剤を添加することを特徴とする溶銑の昇温脱燐方法。」という溶銑の脱りん方法について記載されており、この溶銑の脱りん方法は、「上下両吹き機能を有する転炉形式の炉に注銑した溶銑に脱燐剤を添加し、底吹ガス攪拌を行いつつ酸素ガスを上吹きして溶銑脱燐を行う方法」と記載されており、ここで「上下両吹き機能を有する転炉形式の炉」とは、上底吹き転炉方式の予備処理炉ということができるし、また「脱燐剤」とは、(1c)の「脱P剤は、・・・勿論、トーピードや取鍋での溶銑脱Pに通常用いられる生石灰・酸化鉄・ホタル石系であってもかまわないことは前述の通りである。」という記載によれば、生石灰、すなわちCaOを含むものといえるし、さらに(1g)の第1表?第3表のSiの処理前と脱P後との変化をみれば脱珪も行われているといえる。
してみると、この溶銑の脱りん方法は、上底吹き転炉方式の予備処理炉に溶銑を装入し、CaOを添加しつつ、酸素を上吹きして脱珪・脱りん処理を実施する方法といえる。
また、この溶銑の脱りん方法は、(1a)の「まず前記脱燐剤の一部と炭材とを添加すると共に酸素を上吹きして溶銑を加熱し、」という記載、(1e)の「この時のコークスと上吹き酸素量の割合は、コークスが燃焼するのに必要な化学量論的な酸素量で決定される。」という記載、及び(1d)の「このカバースラグ形成のために脱P剤の一部或いは大半を添加すると、これが加熱・昇温期に十分に滓化するため、次の脱P期での脱P反応を有利にする。」という記載によれば、炭材を添加して、添加した炭材と当量分の酸素を吹込むことによりスラグの液相率を上昇させるものといえるし、(1f)の「脱P期で重要なことは、昇温・脱P期に形成されたスラグが、時たま陥る“酸化鉄量が少なくなって脱Pに不利な状態”になっているかどうかに注意する点である。このため、脱P期にはスラグの酸化力を上げるべく、酸化鉄或いはマンガン鉱石を添加することが望ましい。」という記載によれば、酸素ポテンシャルを確保するものといえる。

以上の記載及び該記載から導かれた認定事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「上底吹き転炉方式の予備処理炉に溶銑を装入し、CaOを添加しつつ、酸素を上吹きして脱珪・脱りん処理を実施する方法において、炭材を添加して、添加した炭材と当量分の酸素を吹込むことによりスラグの液相率を上昇させ、酸素ポテンシャルを確保する溶銑の脱りん方法。」

(2)本願発明と引用発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「上底吹き転炉方式の予備処理炉に溶銑を装入し、CaOを添加しつつ、酸素を上吹きして脱珪・脱りん処理を実施する方法において、炭材を添加して、添加した炭材と当量分の酸素を吹込むことによりスラグの液相率を上昇させ、酸素ポテンシャルを確保する溶銑の脱りん方法。」という点で一致し、次の点で一応相違しているといえる。

(2-1)相違点(イ)
炭材の添加が、本願発明は、「上方から」であるのに対して、引用発明は、上方からであるか否か不明である点

(2-2)相違点(ロ)
本願発明は、「溶銑脱りんに必要なスラグの塩基度1.2?2.0(2.0を除く)」とスラグの塩基度を限定するのに対して、引用発明は、スラグの塩基度を限定していない点

(3)相違点についての判断
次に、この相違点について検討する。
(3-1)相違点(イ)について
炭材を添加するにあたり、「上方から」とすることは、特開平2-197513号公報の第1図、特開平1-316409号公報の第4頁左上欄第13?14行、特開平1-147012号公報の第1図、特開平8-41519号公報の図1に示されているように、本出願前当業者に周知のことといえるから、引用発明において炭材の添加を「上方から」とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

(3-2)相違点(ロ)について
刊行物1の(1c)には、「スラグの塩基度(CaO/SiO_(2))を、2以上、できれば2.5以上に設定するのが脱Sの面から好ましい。」と記載されているが、これは、脱燐後の[S]を高くしないようにするためであり、脱硫(脱S)をも併せて考慮した場合には、スラグの塩基度を2以上とすることが好ましいことを示唆するものであり、脱燐のためのスラグの塩基度の点からいえば、特開昭63-33512号公報の第5頁左上欄第11?17行、特開平11-269524号公報の段落【0023】、特開2000-73112号公報の請求項2、に示されているように、2.0未満でも脱燐されることが本出願前当業者に周知のことといえるから、スラグの塩基度を1.2?2.0(2.0を除く)の範囲とすることも当業者が容易に想到し得ることといえる。

(4)小括
したがって、上記相違点(イ)及び(ロ)は、それぞれ、上記「(3-1)」及び「(3-2)」で述べたように、当業者が容易に想到し得ることといえるから、本願発明は、引用発明及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

6.結び
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-09 
結審通知日 2008-01-11 
審決日 2008-01-23 
出願番号 特願2000-262439(P2000-262439)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 孔一  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 平塚 義三
近野 光知
発明の名称 溶銑の脱りん方法  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 山本 文夫  
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