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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1174006
審判番号 不服2006-6637  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-07 
確定日 2008-03-03 
事件の表示 平成 8年特許願第342430号「芋植付機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月23日出願公開、特開平10-164913〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年12月5日の出願であって、平成18年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月2日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「機体に種芋容器を載置し、同種芋容器から移し変えられた種芋を逐次搬送するベルトコンベヤを機体前方に設け、前記ベルトコンベヤの終端付近に排出シュートを垂設するとともに、前記排出シュートの前後に排土板と覆土板を取り付けた芋植付機において、
前記ベルトコンベヤをその搬送方向が機体の進行方向に対して直角の横方向となるように配置するとともに、そのベルトコンベヤの終端付近を排出シュートに沿ってその下方先端部まで垂直にし、前記ベルトコンベヤの搬送ベルト面が等間隔に仕切板で区画されるとともに、少なくとも、前記排出シュートの下方先端部にベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を取り付けて、種芋を前記ベルトコンベヤで前記排出シュートの下方先端であって前記排土板付近にまで搬送することを特徴とする芋植付機。」

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭60-40906号(実開昭61-154720号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、「芋植付け機の移送ベルトコンベア構造」に関して、第1図?第12図とともに以下の記載がある。

(ア)「2.実用新案登録請求の範囲
1) 植付機体(5)横側方に、排出シュート(7)へ芋を移送するための移送ベルトコンベア(8)を突出してなる芋植付装置(A)において、移送ベルトコンベア(8)の外表面に、弾性素材よりなる略L字状の仕切り板(12)を、略L字状の底板(12)-1が同コンベア(8)の回動方向を向く状態で一定の芋収納空間(R)を保持して多数突設してなる芋植付け機の移送ベルトコンベア構造。」
(明細書1ページ4?13行)

(イ)「(イ) 産業上の利用分野
本考案は馬鈴薯等の芋類を植付けるための芋植付け機の移送ベルトコンベア構造に関する。」
(明細書1ページ15?17行)

(ウ)「(ホ) 作用
この考案では、本機にて植付機体を牽引しながら植付部たる排出シュートに芋を投入して芋の植付作業を行っていくものであり、植付シュートには、植付機体横側方に突設した移送ベルトコンベアによって芋を移送するものであり、……」
(明細書4ページ2?7行)

(エ)「(ト) 実施例
本考案の実施例を図面にもとづき詳説すれば、(A)は芋植付装置であり、同装置(A)は歩行型の走行自在の本機(B)の後部に連結機構(1)を介して連結されている。本機(B)は機体前部に原動機(2)を搭載し、下部に左右車輪(3)を有し、機体後方に突設したハンドル(4)にて走行自在に構成されている。本機(B)の機体後部に連結された芋植付装置(A)は方形状のフレームよりなる植付機体(5)の左右に車輪(6)を軸支し、植付機体(5)の前部下方には排出シュート(7)を垂設し、同排出シュートの上部には植付機体(5)の横側方に突設した移送ベルトコンベア(8)の終端を位置せしめており、移送ベルトコンベア(8)はコンベアフレーム(9)の左右端に軸支した左右プーリー(10)(11)に懸架されており、同コンベアフレーム(9)は後述の如く、傾斜角度調整自在に植付機体(5)に支持されている。又、移送ベルトコンベア(8)表面には芋を収納するだけの間隔として芋収納空間(R)を保持して仕切り板(12)を一定間隔毎に立設している。かかる移送ベルトコンベア(8)は排出シュート(7)上部に終端を位置せしめ、始端を植付機体(5)の横側方に位置せしめていることになり、車輪(6)と移送ベルトコンベアとは平面視で直角形状の囲いを形成し、同囲い部分を作業位置(S)としているものであり、この作業位置(S)に作業者が立って、芋を移し変ええながら本機と共に走行して、芋移し替え作業をしながら歩行するものである。」
(明細書6ページ1行?7ページ10行)

(オ)「植付機体(5)の前端一側方には支持パイプ(17)を立設し、同パイプ(17)中には昇降調整自在に支持杆(18)を挿貫立設し、同支持杆(18)上端には平面視逆L字状の受杆(19)を移送ベルトコンベア(8)の前方位置に同コンベアと略平行に伸延せしめており、同受杆(19)には芋容器(20)の下底面に連設したパイプ(21)が回動及び抜き差し自在に嵌着されており、芋容器(20)の傾斜及び左右位置の調整が行えるように行えるようになっている。しかも、受杆(19)は移送ベルトコンベア(8)と略同一傾斜に形成されているものであり、芋容器(20)は受杆(19)の傾斜とパイプ(21)の回動とパイプ(21)の軸方向の摺動調整とによって芋容器の隅部が最下位になるような複雑な面傾斜が形成される構造に構成されている。
かかる芋容器(20)は略方形箱状に形成されており、同芋容器(20)中には、植付の為の芋を収納するものであり、この芋容器(20)は移送ベルトコンベアの植村機体進行側に同移送ベルトコンベア(8)と並んだ状態で配設位置しており、芋移し替え作業者は移送ベルトコンベア(8)の植付機体進行方向反対側に立って、移送ベルトコンベア(8)を間において、芋容器(20)から手で芋を掴んで同コンベア(8)上に移し変えるものであり、従って作業者は腕を伸ばして手前方向に腕を引く動作にて芋の移し替え作業を行うことになるものである。
(22)は、受杆(19)とパイプ(21)の調整固定用のボルト、(23)は排出シュート(7)の前方位置に垂設した排土板、(24)は同シュート(7)の後部左右に配設した覆土板、……である。」
(明細書10ページ14行?12ページ7行)

(カ)「4.図面の簡単な説明
第1図は、本案構造の全体平面図」
(明細書13ページ10?11行)

(キ)前記(カ)の「図面の簡単な説明」で「本案構造の全体平面図」とされている第1図には、植付機体(5)の前方に移送ベルトコンベア(8)をその搬送方向が植付機体(5)の進行方向に対して直角の横方向となるように配置した態様が示されている。

これらの記載事項及び図面を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
(引用発明)
「植付機体(5)横側方に、排出シュート(7)へ芋を移送するための移送ベルトコンベア(8)を突出してなる芋植付装置において、
植付機体(5)の前端一側方には支持パイプ(17)を立設し、同パイプ(17)中には昇降調整自在に支持杆(18)を挿貫立設し、同支持杆(18)上端には平面視逆L字状の受杆(19)を移送ベルトコンベア(8)の前方位置に同コンベアと略平行に伸延せしめており、同受杆(19)には芋容器(20)の下底面に連設したパイプ(21)が回動及び抜き差し自在に嵌着されており、
植付機体(5)の前方に移送ベルトコンベア(8)をその搬送方向が植付機体(5)の進行方向に対して直角の横方向となるように配置し、
植付機体(5)の前部下方には排出シュート(7)を垂設し、同排出シュートの上部には植付機体(5)の横側方に突設した移送ベルトコンベア(8)の終端を位置せしめており、移送ベルトコンベア(8)はコンベアフレーム(9)の左右端に軸支した左右プーリー(10)(11)に懸架されており、同コンベアフレーム(9)は、傾斜角度調整自在に植付機体(5)に支持されており、
排出シュート(7)の前方位置に排土板(23)を垂設し、同排出シュート(7)の後部左右に覆土板(24)を配設し、
移送ベルトコンベア(8)表面には芋を収納するだけの間隔として芋収納空間(R)を保持して仕切り板(12)を一定間隔毎に立設し、
芋容器(20)から手で芋を掴んで移送ベルトコンベア(8)上に移し変え、移送ベルトコンベア(8)によって排出シュート(7)に芋を移送する芋植付装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「植付機体(5)」は、本願発明の「機体」に相当し、以下同様に、「植付機体(5)の前端一側方には支持パイプ(17)を立設し、同パイプ(17)中には昇降調整自在に支持杆(18)を挿貫立設し、同支持杆(18)上端には平面視逆L字状の受杆(19)を移送ベルトコンベア(8)の前方位置に同コンベアと略平行に伸延せしめており、同受杆(19)には芋容器(20)の下底面に連設したパイプ(21)が回動及び抜き差し自在に嵌着されており」は「機体に種芋容器を載置し」に、「芋」は「種芋」に、「芋植付装置」は「芋植付機」に、「植付機体(5)の前部下方には排出シュート(7)を垂設し、同排出シュートの上部には植付機体(5)の横側方に突設した移送ベルトコンベア(8)の終端を位置せしめており」は「ベルトコンベヤの終端付近に排出シュートを垂設する」に、「排出シュート(7)の前方位置に排土板(23)を垂設し、同排出シュート(7)の後部左右に覆土板(24)を配設し」は「排出シュートの前後に排土板と覆土板を取り付けた」に、「移送ベルトコンベア(8)をその搬送方向が植付機体(5)の進行方向に対して直角の横方向となるように配置」は「ベルトコンベヤをその搬送方向が機体の進行方向に対して直角の横方向となるように配置」に、「移送ベルトコンベア(8)表面には芋を収納するだけの間隔として芋収納空間(R)を保持して仕切り板(12)を一定間隔毎に立設し」は「ベルトコンベヤの搬送ベルト面が等間隔に仕切板で区画される」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「植付機体(5)の前方に移送ベルトコンベア(8)を……配置」は、「芋容器(20)から手で芋を掴んで移送ベルトコンベア(8)上に移し変え」ることから、本願発明の「種芋容器から移し変えられた種芋を逐次搬送するベルトコンベヤを機体前方に設け」に相当する。
さらに、引用発明の「移送ベルトコンベア(8)はコンベアフレーム(9)の左右端に軸支した左右プーリー(10)(11)に懸架されており」と、本願発明の「少なくとも、前記排出シュートの下方先端部にベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を取り付けて」とは、「ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を取り付けて」の点で共通し、引用発明の「移送ベルトコンベア(8)によって排出シュート(7)に芋を移送する」と、本願発明の「種芋をベルトコンベヤで排出シュートの下方先端であって排土板付近にまで搬送する」とは、「種芋をベルトコンベヤで排出シュートまで搬送する」点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「機体に種芋容器を載置し、同種芋容器から移し変えられた種芋を逐次搬送するベルトコンベヤを機体前方に設け、前記ベルトコンベヤの終端付近に排出シュートを垂設するとともに、前記排出シュートの前後に排土板と覆土板を取り付けた芋植付機において、
前記ベルトコンベヤをその搬送方向が機体の進行方向に対して直角の横方向となるように配置するとともに、前記ベルトコンベヤの搬送ベルト面が等間隔に仕切板で区画されるとともに、ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を取り付けて、種芋を前記ベルトコンベヤで前記排出シュートまで搬送する芋植付機。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明は、ベルトコンベヤの終端付近を排出シュートに沿ってその下方先端部まで垂直にし、少なくとも、前記排出シュートの下方先端部にベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を取り付けて、種芋を排出シュートの下方先端であって排土板付近にまで搬送するものであるのに対して、引用発明は、ベルトコンベヤの終端付近を垂直にしたものではなく、ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体をコンベアフレーム(9)に取り付けたものであり排出シュート(7)には取り付けておらず、種芋をベルトコンベヤで排出シュートの上部まで搬送するものである点。

5.判断
前記相違点について以下検討する。
芋植付機において、ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体の1つを、排出シュートの下方部付近であって排土板付近に配置することにより、種芋を排出シュートの下方部付近であって排土板付近にまで搬送することは、例えば、実願平2-113945号(実開平4-71409号)のマイクロフィルム(第1図)、実願昭58-170605号(実開昭60-77313号)のマイクロフィルム(第4図)、及び実願昭63-96571号(実開平2-17012号)のマイクロフィルム(第1図)に記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
また、芋植付機において、ベルトコンベヤの終端付近を排出シュートに沿ってその下方部まで垂直にすることも、前記実願昭58-170605号(実開昭60-77313号)のマイクロフィルム(第4図)、及び実願昭63-96571号(実開平2-17012号)のマイクロフィルム(第2図)、並びに実公昭40-32971号公報に記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
これらのベルトコンベヤの構造、ベルトコンベヤと排土板や排出シュートとの配置に関する周知技術を引用発明に適用することにより、引用発明において、ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体を、排出シュートの下方部付近であって排土板付近に追加して配置することにより、ベルトコンベヤの終端付近を排出シュートに沿ってその下方部まで垂直にすること、及び種芋を排出シュートの下方部付近であって排土板付近にまで搬送するものとすることは、当業者が容易に想到しうるものである。
ここで、ベルトコンベヤの搬送ベルトを回転する回転体をベルトコンベヤの両側に沿って設けられた板材に支持させることは、例えば、引用文献1(移送ベルトコンベア(8)を懸架する左右プーリー(10)(11)がコンベアフレーム(9)に軸支されている)、前記実公昭40-32971号公報(第2図)に記載されているように、本願出願前に周知の技術であること、本願発明において、回転体の取り付け位置を排出シュートの下方部のうち、特に下方先端部とした点に格別な技術的意義が見いだせないことからみて、排出シュートの下方部付近に配置されることとなる回転体を、排出シュートの下方先端部に取り付けるものとすることは、当業者にとって単なる設計的事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものということはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-27 
結審通知日 2008-01-07 
審決日 2008-01-18 
出願番号 特願平8-342430
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 峰 祐治
砂川 充
発明の名称 芋植付機  
代理人 戸島 省四郎  

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