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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05D
管理番号 1174755
審判番号 不服2005-20109  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-18 
確定日 2008-03-10 
事件の表示 平成10年特許願第357916号「処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-249749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成10年12月16日(パリ条約による優先権主張 1997年12月19日、ドイツ)を出願日とする出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年11月17日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「周囲雰囲気に対して閉鎖された処理空間の雰囲気内で、前記処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法であって、ここで、少なくとも1つの制御回路にて温度センサにより温度実際値と所定の温度設定値との比較により、制御偏差を求め、該制御偏差により処理空間-雰囲気の温度調節のための調整操作信号が導出されるようにした当該の温度制御方法において、
温度実際値が相互に無関係な少なくとも2つの温度センサにより求められ、そして、それぞれ、第1及び第2温度センサ-信号(S1,S2)が、比較モジュール(14)の第1,第2入力側(28,13)に、両センサ信号(S1,S2)相互間の妥当性のチェックのため、又は設定値(W1)からの所定の偏差のチェックのため供給されるようにし、妥当性-条件の充足の場合、第1出力側(15)を介して、実際値-信号(X1)が第1制御回路の部分としての制御器-モジュール(5)へ転送され、そして、実際値が設定値(W1)の周りの可調整のトレランスバンド値を上回るか下回る際又は妥当性-条件の非充足の際、第2出力側を介して、出力信号(X2)が、障害防止機能を有する第2制御回路の部分として制御器/コントロール装置(8)へ転送され、比較モジュール(14)によって制御器-モジュール(5)が遮断され、制御器/コントロール装置(8)が投入接続され、制御を制御器/コントロール装置(8)が上位制御回路と引き継ぐことを特徴とする処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法。」

2.刊行物
(1)当審の拒絶の理由に引用した実願昭59-176895号(実開昭61-94908号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物1」という。)には、「恒温槽過熱防止装置」と題して、図面とともに次の記載がある。

・ 「この考案は、ガスクロマトグラフなどで使用される恒温槽の過熱防止装置に関する。」(明細書2頁2ないし3行)

・ 「第1図にこの考案の実施例の電気回路を示す。
(1)は温度検出手段で、たとえば出力電圧の直線性のよい熱電対で、それぞれの恒温槽(図示しない)内に取り付けられる。」(明細書4頁3ないし6行)

・ 「(14)は比較手段で、抵抗(15)(16)とで構成される基準値である基準電圧を発生させる分圧回路と比較器(17)とで構成され、比較器の一方の入力(17a)には増幅器(12)の出力が、もう一方の入力(17b)には分圧回路がそれぞれ接続されている。(18)は加熱遮断手段で、ゲート回路(18a)とリレー(18b)とトランジスタ(18c)とコンデンサ(18d)とから構成される。ゲート回路(18a)の一方の入力には比較手段(14)の出力が、のこりの一方の入力には走査手段(3)の計数回路(4)の出力がそれぞれ接続される。」(明細書5頁10ないし20行)

・ 「なお加熱遮断手段(18)(19)(20)のそれぞれと走査手段(3)との接続は、リレー接点(7b)が閉となるのに同期して加熱遮断手段(18)のゲート回路(18a)が動作するように、そして同様に順次ゲート回路(19b)(20b)が動作するように接続されるものである。そしてそれぞれの加熱遮断手段(18)(19)(20)のリレー接点にはそれぞれの恒温槽に設けられた加熱手段をON,OFFするように接続されている(図示しない)。(21)は警報手段で、抵抗(22)(23)とで構成される分圧回路と、一方の入力を増幅器(12)の出力にのこりの一方の入力を抵抗(22)(23)の接続点にそれぞれ接続される比較器(24)と、比較器(24)の出力と走査手段(3)の計数回路(4)の出力とにそれぞれ接続されるゲート回路(25)とゲート回路(25)の出力に接続される警報器(26)とで構成される。」(明細書6頁7行ないし7頁2行)
・ 「いま、それぞれの恒温槽に設けられた加熱手段が、恒温槽温度制御装置により加熱されているものとする。この状態で走査手段(3)が動作し、それぞれの温度検出手段(1a)?(1n)と雰囲気温度検出手段(2)とが順次増幅器(12)とリレー接点(6b)?(10b)と抵抗(11)を介して接続される。この時たとえば温度検出手段(1a)の取り付けられている恒温槽が何らかの理由で過熱ぎみになり、温度検出手段(1a)が基準値をこえる出力信号を出力すると、比較手段(14)が動作しその比較信号が加熱遮断手段(18)に入力され、この時ゲート回路(18a)はリレー接点(7b)に同期して動作しているため、比較信号はトランジスタ(18c)をONしリレー(18b)が動作して加熱手段は断電される(オーバーヒータープロテクション)。」(明細書7頁15行ないし8頁9行)

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用刊行物1には、ガスクロマトグラフで使用される恒温槽の温度制御方法についても記載されているといえるので、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。
「ガスクロマトグラフで使用される恒温槽の温度制御方法であって、温度検出手段(1a)により検出された恒温槽の温度と基準値とを比較する比較手段の出力により該恒温槽の加熱手段をON,OFFする信号が出力されるようにした温度制御方法において、
恒温槽の温度が温度検出手段(1a)により求められ、温度検出手段(1a)の出力信号が、比較手段に供給されるガスクロマトグラフに使用される恒温槽の温度制御方法。」

(2)同じく、当審の拒絶の理由に引用した特開平5-100591号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「温度測定装置及び熱定着装置」と題して、図面とともに次の記載がある。

・ 「【0011】
【課題を解決するための手段】本第1発明は、被測定体から入射する赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの周囲の温度を検出する補正用温度センサと、前記補正用温度センサの出力信号に基づき前記赤外線センサの出力信号を補正して前記被測定体の表面温度に対応する信号を生成する補正手段と、前記2つのセンサのうちの一方のセンサの任意の出力値に対応させて他方のセンサの出力値の許容範囲として設定された範囲から該他方のセンサの出力値が外れた場合に異常であると判定する異常処理手段と、を備えた温度測定装置である。」

・ 「【0017】
【作用】第1発明では、被測定体から入射する赤外線に対応して発生される赤外線センサの出力信号と、周囲温度に対応して発生される補正用温度センサの出力信号とに基づき、被測定体の温度が検出される。正常な状態における両センサの出力には一定の相関関係があり、これを利用して、予め、一方のセンサの出力に対応付けて他方のセンサの出力の許容範囲が設定されている。したがって、上記他方のセンサの出力が上記許容範囲を外れた場合には、本温度測定装置に異常が生じたものと判定される。」

・ 「【0025】*センサユニット9cの構成
センサユニット9cは、図2 に示す如く、赤外線センサ91と、補正用の温度センサであるサ-ミスタ93を有し、これら2 個の素子は、熱容量の大きな材料、例えば、セラミック、シリコン等の充填されたケ-ス部材92中に、固定して配設されている。なお、上記の熱容量の大きな材料は、上記2 つのセンサ91,93 の感度の差に起因するタイムラグによる誤差を補償するためのものである。また、上記赤外線センサ91の受感部94の前面側には、外側へ向かうにつれて径の拡がる円筒形の窓部95が開口されており、該窓部95を介して、前記ヒ-トロ-ラ9aの表面からの赤外線が入射されるように構成されている。
【0026】*検出信号の処理
赤外線センサ91の出力は、図4 に示すように、周囲温度により影響される。即ち、ヒ-トロ-ラ9aから入射される赤外線量が一定であっても、周囲の温度が上昇すると、赤外線センサ91の出力電圧は低下する。したがって、ヒ-トロ-ラ9aの表面温度を測定するためには、赤外線センサ91の出力を、周囲の温度に応じて補正しなければならない。このため、補正用のサ-ミスタ93が、前述の如く設置されており、その出力電圧は、図6 の回路に示すように、赤外線センサ91の出力電圧に重畳される。
【0027】即ち、熱起電型の赤外線センサ91の出力電圧SG01(図3 参照)は、オペアンプ21によって増幅された後、抵抗R3を介して、オペアンプ22の反転入力端子に入力される。一方、抵抗R6と、負抵抗温度特性のサ-ミスタ93とによって、定電圧V1を抵抗分割して得られるサ-ミスタ93の検出電圧SG02(図3 参照)は、オペアンプ23によって増幅された後、抵抗R4を介して、オペアンプ22の反転入力端子に入力される。
【0028】こうして、バッファとしてのオペアンプ22の反転入力端子には、前記2 つのセンサ91,93 の出力電圧の重畳された電圧信号が入力され、該オペアンプ22の出力SG10が、温度信号(=ヒ-トロ-ラ9aの表面温度に相当する信号)SG10としてマイコン12(図3 参照)へ入力される。
【0029】一方、前記サ-ミスタ93の検出電圧SG02は、コンパレ-タ24の反転入力端子にも入力されて、参照電圧Vref と比較される。ここに、参照電圧Vref は、赤外線センサ91及びサ-ミスタ93の設置された前記センサユニット9cの定格温度80℃に相当する値に設定されている。したがって、サ-ミスタ93による検出値が、80℃に相当する電圧を越えると、コンパレ-タ24の出力SG22は、ロ-レベルに変化する。該コンパレ-タ24の出力信号SG22の扱いについては、後述する。
【0030】また、マイコン12には、上記温度信号SG10の他、図3 のように、信号SG11、信号SG12も入力されて、後述の如く、異常の有無の判定に用いられる。ここに、信号SG11は、赤外線センサ91の出力電圧SG01を前述の如く増幅した信号であり、図5 のセンサ91検出温度TH11に対応する信号である。また、信号SG12は、サ-ミスタ93の出力電圧SG02と同等の信号であり、図5 のセンサ93検出温度TH12に対応する信号である。
【0031】*定着温度制御の概要
ヒ-トロ-ラ9aの温度制御は、その表面温度が、所定の目標温度(=定着装置運転時の最適な維持温度・温調温度,定着装置待機時の最適な維持温度等)になるように、前記温度信号SG10に基づいて、実行される。
【0032】即ち、マイコン12からは、前記温度信号SG10に基づいて、制御信号SG21が出力される。該制御信号SG21は、ANDゲ-ト16により、前記コンパレ-タ24の出力信号SG22との論理積をとられ、制御信号SG20として、ヒ-タランプ9dの給電回路に介挿されたSSR13へ送られる。該SSR13は、上記制御信号SG20に対応して給電回路をオン・オフする。これにより、ヒ-タランプ9dがオン・オフされ、ヒ-トロ-ラ9aの表面は、上記オン・オフの周期で定まる温度(=前記所定の目標温度)近傍に維持される。なお、本装置では、制御信号SG21(=制御信号SG20)のハイレベル時に、ヒ-タランプ9dがオンされる。
【0033】一方、前記センサユニット9cの温度が、該センサユニット9cの定格である80℃を越えると、前記コンパレ-タ24の出力信号SG22(=ANDゲ-ト16への入力信号)が、前述の如くロ-レベルに反転して、マイコン12から出力される前記制御信号SG21を、ANDゲ-ト16で遮断する。このため、ヒ-タランプ9dは、前記温度信号SG10にかかわらず、強制的にオフされる。
【0034】即ち、前記センサユニット9cの温度が、定格温度80℃を越えた場合には、直ちにヒ-タランプ9dはオフされ、過熱による定着装置の破壊が防止される。上記定格温度80℃とは、赤外線センサ91の受感部94の酸化による劣化を防ぐためのセンサユニット9cの気密封止(窒素、又は、アルゴンによる気密封止)が、破られる恐れのある温度である。
【0035】なお、上記では、センサ基板15からの出力信号SG22によってマイコン12からの制御信号SG21を遮断することにより、定格温度80℃を越えた場合のヒ-タランプ9dのオフを実現しているが、これに代えて、マイコン12での処理により、前記制御信号SG21をオフするように構成してもよい。
【0036】〔3〕2個のセンサ出力の許容範囲の関係
本装置では、一方のセンサ(赤外線センサ91、又は、サ-ミスタ93)の出力に対応付けて、他方のセンサ(サ-ミスタ93、又は、赤外線センサ91)の出力の許容範囲が、予め設定されており、該許容範囲から、上記他方のセンサの出力が外れた場合には、ヒ-タランプ9dは、強制的にオフされる(図10・S511;NO →S541参照)。かかる許容範囲は、下記の原理に基づいて設定される。
【0037】図5 は、赤外線センサ91の出力SG11(TH11)、サ-ミスタ93の出力SG12(TH12)、及び、センサユニット9cの出力SG10(=ヒ-トロ-ラ9aの表面温度TH10) の関係を示す特性図である。図中、破線TH12U,TH12D は、サ-ミスタ93の出力SG12(TH12)の正常状態での許容範囲(上限、及び、下限)を示し、これらは、赤外線センサ91の出力SG11(TH11)との対応付けによって設定される。
【0038】赤外線センサ91とサ-ミスタ93とは、前述のように、ケ-ス部材92中に固定して配設されており、さらに、該ケ-ス部材92は、ヒ-トロ-ラ9aに対して固定されている。このため、赤外線センサ91の出力SG11(TH11)と、サ-ミスタ93の出力SG12(TH12)の間には、正常状態に於いて、或る相関関係が生ずる。
【0039】即ち、ヒ-トロ-ラ9aの温度が上昇すると、赤外線センサ91及びサ-ミスタ93の温度も上昇する。その熱源は、ヒ-トロ-ラ9a表面からの輻射、該輻射により加熱された周囲の部材からの二次輻射、或いは、対流等によるものである。上記の温度上昇に関して、上記各熱源の寄与の割合は、センサユニット9cが固定されているため、正常状態では、略一定である。このため、赤外線センサ91の出力とサ-ミスタ93の出力との間に、図5 の破線に示す如き相関関係、即ち、赤外線センサ91の出力に対するサ-ミスタ93の出力の許容範囲TH12U ?TH12D を設定可能となる。本装置では、ヒ-トロ-ラ9aの表面温度が180 ℃のときに、赤外線センサ91の温度(=サ-ミスタ93の検出温度)が60℃となるように、センサユニット9cが配設されている。」

・ 「【0047】以下、図10に即して、センサユニット9cのエラ-制御(S201)を説明する。まず、前記ステ-トREADY が判定される(S501)。その結果、READY =0であれば、プリント動作の準備状態に無く、したがって、センサユニット9cでのエラ-も発生しないため、本処理(S201)は実行されない。なお、前記その他のエラ-制御(S203)は、必要に応じて実行される。
【0048】一方、上記ステップS501で、READY =1であれば、赤外線センサ91の検出信号SG11と、サ-ミスタ93の検出信号SG12とが、取り込まれ(S503,S505) 、ステップS511で比較される。
【0049】その結果、赤外線センサ91の検出温度TH11(SG11)に対応するサ-ミスタ93の温度TH12(SG12)が、図5 の破線の許容範囲から外れている場合、換言すれば、センサユニット9cに異常が発生している場合には(S511;NO) 、ヒ-タランプ9dがオフされ(S541)、また、ステ-トERROR に1がセットされる(S543)。これにより、対応するエラ-処理が、前記ステップS203中で実行される。なお、上記の比較は、予めメモリ内に記憶されているデ-タ群、例えば、表1に一例を示すテ-ブルを参照して実行される。
【0050】一方、前記ステップS511で、赤外線センサ91の検出温度TH11(SG11)に対応するサ-ミスタ93の温度TH12(SG12)が、図5 の破線の許容範囲内にあると判定された場合、換言すれば、センサユニット9cが正常であると判定された場合は(S511;YES)、ステップS521以降の処理が実行される。
【0051】まず、ヒ-タランプ9dのオンエッジで(S521;YES)、所定の設定温度に達するまでの所要時間ΔTが演算される。所定の設定温度とは、定着装置運転時の最適な維持温度(=温調温度)、定着装置待機時の最適な維持温度(=待機温度)、或いは、プリンタ立ち上げ時の第1段階の目標温度等である。なお、該第1段階の目標温度は、一層速やかに異常を検出するために、例えば、上記温調温度より若干低い温度として設定される。また、上記所要時間の演算は、現在のヒ-トロ-ラ9aの温度TH10(=センサユニット9cの出力SG10に相当する温度)と、上記所定の設定温度とに基づき、予めメモリ内に記憶されているデ-タ群、例えば、表2に一例を示すテ-ブルを参照して実行される。
【0052】ステップS525では、タイマがカウントされる。換言すれば、図7 のステップS21 ?S31 のル-プ処理の実行毎に、本タイマがカウントされる。また、上記タイマカウントの結果、カウント値が、前記ステップS523で演算された所要時間ΔTに達すると(S531;YES)、ヒ-トロ-ラ9aの温度TH10(=センサユニット9cの出力SG10に相当する温度)が、前記所定の設定温度に達したか否かが判定される(S533)。判定の結果、前記所定の設定温度に達している場合は、正常な加熱が行われた場合であるため、そのまま、図9 のエラ-制御にリタ-ンする。
【0053】一方、上記ステップS533で、前記所定の設定温度に達していないと判定された場合は(S533;NO) 、ヒ-タランプ9dがオフされ(S541)、また、ステ-トERROR に1がセットされる(S543)。本センサユニット9cに、なんらかの異常(センサユニット9cの取付位置のズレ、センサユニット9c?ヒ-トロ-ラ9a間に用紙がジャムして入り込む等)の発生した可能性が高く、放置すると、過熱により本定着装置が破壊される恐れがあるためである。なお、上記ステップS533で、ヒ-トロ-ラ9aの温度TH10(=センサユニット9cの出力SG10に相当する温度)が、前記所定の設定温度を、過大に越えている場合にも異常と判定させて、ヒ-タをオフさせてもよい。このようにして、本装置は制御される。」
・ 図7ないし10には、温度制御方法のフロー図が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。
「被測定体の温度を所定の設定温度にするための温度制御方法において、
2個の温度センサを有し、
2個の温度センサの検出信号が、マイコンに、前記2個の温度センサ出力が正常状態において生ずる相関関係の許容範囲内にあるか否かの判定のため、又は所定の設定温度を過大に越えているか否かの判定のため入力されるようにし、
前記許容範囲内にある場合、現在の被測定体の温度と所定の設定温度とに基づき被測定体の温度が所定の設定温度になるようマイコンにより温度制御が実行され、
そして、ヒートローラの温度が所定の設定温度を過大に越えている場合、又は、前記許容範囲を外れた場合、マイコンによりヒータを強制的にオフさせる、温度制御方法。」

3.対比
(1)本願発明と引用発明1とを対比する。
(ア) 引用発明1の「ガスクロマトグラフで使用される恒温槽の温度制御方法」は、ガスクロマトグラフは外気から閉鎖された恒温槽内のカラム(管)を所定の温度とするものであるから、その作用・機能からみて、本願発明の「周囲雰囲気に対して閉鎖された処理空間の雰囲気内で、前記処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法」に相当するといえる。
(イ) 引用発明1の「温度検出手段(1a)により検出された恒温槽の温度と基準値とを比較する比較手段(14)の出力により恒温槽の加熱手段をON,OFFする信号が出力されるようにした」態様は、比較手段の出力は、検出された温度と基準値との偏差であることは明らかであり、また、「恒温槽の加熱手段をON,OFFする信号」は本願発明の「処理空間-雰囲気の温度調節のための調整操作信号」に相当するといえることから、本願発明の「ここで、少なくとも1つの制御回路にて温度センサにより温度実際値と所定の温度設定値との比較により、制御偏差を求め、該制御偏差により処理空間-雰囲気の温度調節のための調整操作信号が導出されるようにした」態様に相当する。
(ウ) 引用発明1の「恒温槽の温度が温度検出手段(1a)により求められ」る態様と、本願発明の「温度実際値が相互に無関係な少なくとも2つの温度センサにより求められ」る態様とは、「温度実際値が温度センサにより求められ」る態様で共通する概念を有する。
(エ) 引用発明1の「温度検出手段(1a)の出力信号が、比較手段に供給される」態様と、本願発明の「そして、それぞれ、第1及び第2温度センサ-信号(S1,S2)が、比較モジュール(14)の第1,第2入力側(28,13)に、両センサ信号(S1,S2)相互間の妥当性のチェックのため、又は設定値(W1)からの所定の偏差のチェックのため供給されるように」する態様とは、少なくとも「そして、温度センサー信号が、比較モジュールに供給されるように」する態様で共通する概念を有する。

すると、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりとなる。

(2)一致点
「周囲雰囲気に対して閉鎖された処理空間の雰囲気内で、前記処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法であって、ここで、少なくとも1つの制御回路にて温度センサにより温度実際値と所定の温度設定値との比較により、制御偏差を求め、該制御偏差により処理空間-雰囲気の温度調節のための調整操作信号が導出されるようにした当該の温度制御方法において、
温度実際値が温度センサにより求められ、そして、温度センサ-信号が、比較モジュールに供給されるようにし(た)処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法。」

(3)相違点
[相違点1]
温度実際値が温度センサにより求められ、そして、温度センサ-信号が比較モジュールに供給されるようにした工程に関して、本願発明は、温度実際値が「相互に無関係な少なくとも2つの温度センサ」により求められ、そして、「それぞれ、第1及び第2温度センサー信号(S1,S2)が、比較モジュール(14)の第1,第2入力側(28,13)に、両センサ信号(S1,S2)相互間の妥当性のチェックのため、又は設定値(W1)からの所定の偏差のチェックのため」供給されるようにした工程であるのに対し、引用発明1のものは、単に、恒温槽の温度が1個の温度検出手段により求められ、温度検出手段の出力信号が、比較手段に供給されるようにした工程である点。

[相違点2]
本願発明は、「妥当性-条件の充足の場合、第1出力側(15)を介して、実際値-信号(X1)が第1制御回路の部分としての制御器-モジュール(5)へ転送され」る工程を有するのに対し、引用発明1はかかる工程を有しない点。

[相違点3]
本願発明は、「実際値が設定値(W1)の周りの可調整のトレランスバンド値を上回るか下回る際又は妥当性-条件の非充足の際、第2出力側を介して、出力信号(X2)が、障害防止機能を有する第2制御回路の部分として制御器/コントロール装置(8)へ転送され、比較モジュール(14)によって制御器-モジュール(5)が遮断され、制御器/コントロール装置(8)が投入接続され、制御を制御器/コントロール装置(8)が上位制御回路と引き継ぐ」工程を有するのに対し、引用発明1はかかる工程を有しない点。

4.相違点についての判断
(1) [相違点1]について
一般に、温度制御装置において、温度センサの信頼性向上のために、同一の温度制御対象に複数の独立した温度センサを設置することは、例えば、特公昭47-43705号公報、実願昭59-82484号(実開昭60-194333号)のマイクロフィルム、特開平6-102943号公報にあるように、出願前周知の技術である。
また、引用発明2の温度制御方法の「2個の温度センサの検出信号が、マイコンに、前記2個の温度センサ出力が正常状態において生ずる相関関係の許容範囲内にあるか否かの判定のため、又は所定の設定温度を過大に越えているか否かの判定のため入力されるように」する工程において、「マイコン」の「2個の温度センサの検出信号が」「入力される」部分は、その作用・機能からみて、本願発明の「比較モジュール(14)の第1,第2入力側(28,13)」に相当し、同様に、「2個の温度センサ出力が正常状態において生ずる相関関係の許容範囲内にあるか否かの判定のため」は「両センサ信号(S1,S2)相互間の妥当性のチェックのため」に、「所定の設定温度を過大に越えているか否かの判定のため入力されるように」は「設定値(W1)からの所定の偏差のチェックのため」に、それぞれ相当するから、引用発明2の上記工程は、本願発明の「比較モジュール(14)の第1,第2入力側(28,13)に、両センサ信号(S1,S2)相互間の妥当性のチェックのため、又は設定値(W1)からの所定の偏差のチェックのため」供給される工程に相当するといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、共に被制御対象の温度を設定温度に制御する温度制御方法に関するものであって、また、温度センサ等の異常対策は当該技術分野において出願時周知の技術課題である。
すると、引用発明1において、上記周知の技術を踏まえ、独立した2個の温度センサを設けること程度のことは単なる設計変更というべきものであり、その際異常判定のために、2個の温度センサの信号処理に関して、引用発明2の上記工程を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者であれば、容易になし得た範囲内のものというべきである。

(2) [相違点2]について
引用発明2の温度制御方法は「許容範囲内にある場合、現在の被測定体の温度と所定の設定温度とに基づき被測定体の温度が所定の設定温度になるよう温度制御がマイコンにより実行され」る工程を有している。
ここで、引用発明2の「許容範囲内にある場合」は、本願発明の「妥当性-条件の充足の場合」に相当し、また、引用発明2のマイコンの「現在の被測定体の温度と所定の設定温度とに基づき被測定体の温度が所定の設定温度になるよう温度制御」を実行する部分は、本願発明の「第1制御回路の部分としての制御器-モジュール(5)」に相当する。
そして、引用発明2のマイコンが有する複数の機能を、複数のモジュールに分けて複数のモジュールとして構成することは、当業者であれば適宜なし得る単なる設計変更にすぎないから、本願発明の「第1出力側(15)を介して、実際値-信号(X1)」、即ち、測定した温度が制御器-モジュール(5)「へ転送され」る点は、上記設計変更に基づく、単なる構成の差異にすぎない。
すると、引用発明1において、上記相違点1の判断を踏まえ、引用発明2の上記工程に基づき、上記相違点2に係る本願発明の工程を想到することは、当業者に容易である。

(3) [相違点3]について
引用発明2の温度制御方法は「被測定体の温度が所定の設定温度を過大に越えている場合、又は、許容範囲を外れた場合、マイコンによりヒータを強制的にオフさせる」工程を有している。
ここで、引用発明2の「被測定体の温度が所定の設定温度を過大に越えている場合、又は、許容範囲を外れた場合」は、本願発明の「そして、実際値が設定値(W1)の周りの可調整のトレランスバンド値を上回るか下回る際又は妥当性-条件の非充足の際」に相当し、また、マイコンの「ヒータを強制的にオフさせる」部分は、本願発明の「障害防止機能を有する第2制御回路の部分として制御器/コントロール装置(8)」に相当する。
そして、引用発明2のマイコンが有する複数の機能を、複数のモジュールに分けて構成することは、当業者であれば適宜なし得る単なる設計変更にすぎないから、本願発明の「第2出力側を介して、出力信号(X2)が」、制御器/コントロール装置-モジュール(5)「へ転送され」る点、及び、「比較モジュール(14)によって制御器-モジュール(5)が遮断され、制御器/コントロール装置(8)が投入接続され、制御を制御器/コントロール装置(8)が上位制御回路と引き継ぐ」は、上記設計変更に基づく、単なる構成の差異にすぎない。
すると、引用発明1において、上記相違点1の判断を踏まえ、引用発明2の上記工程に基づき、上記相違点3に係る本願発明の工程を想到することは当業者であれば、容易になし得た範囲内のものというべきである。

(4) そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明1、2及び上記周知の技術から、当業者であれば予測し得る範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1、2及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、本件出願は、他の請求項について判断するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-28 
結審通知日 2007-10-04 
審決日 2007-10-24 
出願番号 特願平10-357916
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 信男  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 渋谷 善弘
田良島 潔
発明の名称 処理空間内で処理すべき物品の温度の制御方法及び装置  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 久野 琢也  
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