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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1174815
審判番号 不服2005-9025  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-12 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 平成11年特許願第285890号「制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月21日出願公開、特開2000- 79250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成9年6月3日(以下、「原出願日」という。)の出願である特願平9-145561号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成11年10月6日に新たな出願とした特願平11-285890号であって、平成16年3月23日付で拒絶理由が通知され、平成16年5月24日付で意見および手続補正がなされ、平成17年4月5日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年5月12日に審判請求がなされ、平成17年6月3日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年6月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年6月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年6月3日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1は、平成16年5月24日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の「前記ネジを挿通可能なネジ穴を有したネジ保持部」と「選択された各ネジ保持部のネジ穴に前記ネジを」を「筒状体に形成され、該筒状体内に前記ネジを挿通可能なネジ穴を有する仕切板を備え、該仕切板のベース側に前記ネジ穴を囲うように2つの弾性片を配置し、該弾性片によって前記ネジを係止したネジ保持部」と「選択された各ネジ保持部で係止状態にある前記ネジを」と補正することにより、平成16年5月24日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成17年6月3日付の手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項第2号の規定に適合している。
そして、平成17年6月3日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、その請求項1、2に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「電子制御基板を覆う保護カバーを、電子制御基板が取り付けられたベースに、先端に形成されたネジ部より小径の部分をヘッド側に有するワンウェイタイプのネジによって固着してなる制御装置であって、
前記保護カバーの周縁で該保護カバーの中央に対して相反する位置に、筒状体に形成され、該筒状体内に前記ネジを挿通可能なネジ穴を有する仕切板を備え、該仕切板のベース側に前記ネジ穴を囲うように2つの弾性片を配置し、該弾性片によって前記ネジを係止したネジ保持部を切り離し可能に複数組設ける一方、
前記ベースにおける前記各ネジ保持部と対応する位置に、前記ネジの先端に形成されるネジ部をねじ込み可能な深さを有する取付タブを夫々設け、
前記ネジ保持部の中から前記保護カバーの中央に対して相反する位置にある少なくとも一組のネジ保持部を選択し、選択された各ネジ保持部で係止状態にある前記ネジを前記取付タブにねじ込むことによって、前記保護カバーと前記ベースとを固着したことを特徴とした制御装置。」(以下、「本願補正発明」という。)

そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物について
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、原出願日の前の他の出願であってその出願後に出願公開された特願平9-93971号(特開平10-286364号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の技術事項が図面と共に記載されている。

・記載事項1
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、遊技機の制御回路基板を収容する基板ボックスに関する。」

・記載事項2
「【0013】そこで、本発明の目的は、制御回路基板を収容した基板ボックスの不正な開放を防止可能とし、検査や修理の際の開放を可能とした上で、封印部分が不正に開、封されたか、正規に開、封されたかの確認を容易に行わせ、不正行為の早期発見を可能とする遊技機の基板ボックスを提供することにある。
【0014】【課題を解決するための手段】第1の発明は、遊技機に設けられる電気的作動装置の制御を行うためにROM等の電子部品を実装した制御回路基板を収容する遊技機の基板ボックスにおいて、前記基板ボックスを構成する上蓋部材とベース部材とには、当該基板ボックスを閉じた状態において対向状態となる対向部を形成し、前記対向部の所定部位には、前記上蓋部材とベース部材とから各々突出して重合する重合結合部を複数形成して、このうちのいずれか一つの重合結合部に対し締結部材により固着せしめて開放不能に封印する不正開放防止結合手段を設けており、前記上蓋部材には、前記各重合結合部と対応する位置に所定機関の前記ROM等の電子部品の検査時に関わる当該基板ボックスの封印、開放順位を示す識別符号を表示すると共に、前記検査に関わる当該基板ボックスの正当な封印、開放状況を管理するための検査履歴書を取付ける。」

・記載事項3
「【0020】第7の発明は、第1?第6の発明において、前記基板ボックスは上蓋側から見て複数の辺部を持ち、このうち2つ以上の辺部にそれぞれ重合結合部を形成する。」

・記載事項4
「【0027】基板ボックス15は、裏メカベース盤10の表面(遊技機の裏面)に取付けられ、その役物制御装置14と各種電気機器、各制御装置等とは配線コード群17?20を介して電気的に接続される。」

・記載事項5
「【0038】重合結合部50?53、54?57は、それぞれ図5のように上蓋部材26の周壁38b,38cから突出させた連結部(上方連結部)60の先端に上方結合部61が、ベース部材25の周壁35b,35cから突出させた連結部(下方連結部)62の先端に下方結合部63が形成される。
【0039】上方結合部61には、中央に所定径の通し穴64が、通し穴64の上部にワンウェイネジ65等(締結部材)の頭部を囲う埋め込み穴66が、下面に通し穴64の回りに段状の係合突部67が設けられる。下方結合部63には、上部に上方結合部61の係合突部67が嵌まる係合受部68が、その中央に上方結合部61の通し穴64につながる通し穴64とほぼ同径の所定深さの穴69が形成される。」

・記載事項6
「【0049】上蓋部材26の重合結合部50?53、54?57の上方結合部61の通し穴64には、それぞれ締め方向しか回せないワンウェイネジ65を、ワンウェイネジ65の先端が通し穴64から下面に出ないように仮止めしておく。
【0050】この場合、ワンウェイネジ65の深さを設定するために、ワンウェイネジ65を締めるドライバ工具等に締め付け深さを調整するストッパ等の調整機構を設けて、ワンウェイネジ65を仮止めするようにすると良い。ワンウェイネジ65を一旦締めると元に戻せないが、このようにすれば、ワンウェイネジ65を適度な深さに仮止めでき、仮止めを容易に行える。」

・記載事項7
「【0052】この状態にて、重合結合部50?53のうちの一つと、重合結合部54?57のうちの一つとを、それぞれ上方結合部61に仮止めしてあるワンウェイネジ65を下方結合部63まで確実に締めて、結合、固着する。この場合、識別符号1の重合結合部53,54を結合、固着する。」

・記載事項8
「【0074】また、基板ボックス15を裏メカベース盤10に取付けたまま、検査を行う場合は、重合結合部50?53,54?57のうち、ワンウェイネジ65によって固着してある識別符号1の重合結合部53,54の上方連結部60、下方連結部62をニッパ等で切断して、その重合結合部53,54を取り除く。配線コード群17?20が重合結合部50?53,54?57から離れているため、重合結合部53,54を切除する際に配線を一緒に切断するようなことはない。
【0075】この状態にて、係止部43を外すと、上蓋部材26が開き、制御回路基板30からROM31を外して検査を行う。
【0076】検査を終了すれば、ROM31を制御回路基板30に装着して上蓋部材26を閉じ、この際係止部43によって上蓋部材26は位置決めすると共に、識別符号2?4の重合結合部50?52,55?57の各上方結合部61の係合突部67が各下方結合部63の係合受部68に嵌まり、位置決めしながら、識別符号2?4の重合結合部50?52,55?57が確実に重合するため、上蓋部材26を閉じると、そのまま識別符号2の重合結合部52,55の上方結合部61に仮止めしてあるワンウェイネジ65を下方結合部63まで締めて、その重合結合部52,55を結合、固着する。重合結合部52,55は配線コード群17?20から離れているため、その結合、固着を容易に行える。」

・記載事項9
「【0080】この不正行為には、正規に固着してある重合結合部の上方連結部60と下方連結部62とを切断して、その重合結合部を取り除いて、または上方連結部60あるいは下方連結部62の一方のみを切断して、重合結合部を取り除かずに、基板ボックス15を開けたりすることが想定されるが、これは遊技店における遊技機の保守点検時あるいは営業中に遊技機の球詰まり等を直す際等に、発見が可能である。」

・記載事項10
「【0107】なお、前記各形態は、重合結合部50?53,54?57の締結部材として、ワンウェイネジ65を用いたが、リベットを用いても良く、また重合結合部の構造を含め、切断あるいは切除しなければ、基板ボックス15を開けられないものであれば、何でも良い。例えば、その締結部材の一例として、図13のように先端側にネジ部111を形成すると共に、そのネジ部111と頭部112との間を小径に形成したネジ110を、重合結合部50?53,54?57の上方結合部113、下方結合部114の穴115にねじ込むようにしたものでも良い。この場合、先端側のネジ部111が下方結合部114の穴115から抜けるまでねじ込めば、ネジ110が戻らなくなり、固定状態になる。」

以上の引用刊行物の記載事項1?記載事項10及び図1?図13を総合的に勘案すれば、先願明細書には次の発明が記載されていると認められる。

「制御回路基板30を覆う上蓋部材26を、制御回路基板30が取り付けられたベース部材25に、ワンウェイネジ65によって固着してなる基板ボックス15であって、
上蓋部材26の周縁で上蓋部材26に対して相反する位置に、通し穴64、115を有する上方結合部61、113を備え、上方結合部61、113のベース部材側に通し穴64、115を囲うように係合突部67を配置した上部結合部を複数組設ける一方、
ベース部材25における上方結合部と対応する位置に、前記ネジの先端に形成されるネジ部をねじ込み可能な深さを有する下方結合部63、114を夫々設け、
上方結合部の中から上蓋部材26に対して相反する位置にある少なくとも一組の上部結合部を選択し、選択された上方結合部においてネジを下方結合部63、114にねじ込むことによって、上蓋部材26とベース部材25とを固着した基板ボックス15。」 (以下、「先願明細書に記載された発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と先願明細書に記載された発明を対比すると、先願明細書に記載された発明の「制御回路基板30」は本願補正発明の「電子制御基板」に相当している。以下同様に、「上蓋部材26」は「保護カバー」に、「ベース部材25」は「ベース」に、「ワンウェイネジ65」は「ワンウェイタイプのネジ」に、「基板ボックス15」は「制御装置」に、「通し穴64、115」は「ネジ穴」に、「下方結合部63、114」は「取付タブ」に、それぞれ相当している。
そして、先願明細書に記載された発明について、以下のことがいえる。
先願明細書の記載事項10の「【0107】・・・例えば、その締結部材の一例として、図13のように先端側にネジ部111を形成すると共に、そのネジ部111と頭部112との間を小径に形成したネジ110を、重合結合部50?53,54?57の上方結合部113、下方結合部114の穴115にねじ込むようにしたものでも良い。この場合、先端側のネジ部111が下方結合部114の穴115から抜けるまでねじ込めば、ネジ110が戻らなくなり、固定状態になる。」なる記載、および図13に基づけば、ワンウェイネジ65は、頭部112と先端側にネジ部111を有し、かつ、ネジ部111の径より、小径である部分を頭部112に有しているのであるから、先願明細書に記載された発明のワンウェイネジ65は、先端に形成されたネジ部より小径の部分をヘッド側に有するワンウェイネジと言い換えできることは明らかである。
また、(i)同記載事項5の「【0038】・・・【0039】上方結合部61には、中央に所定径の通し穴64が、通し穴64の上部にワンウェイネジ65等(締結部材)の頭部を囲う埋め込み穴66が、下面に通し穴64の回りに段状の係合突部67が設けられる。下方結合部63には、上部に上方結合部61の係合突部67が嵌まる係合受部68が、その中央に上方結合部61の通し穴64につながる通し穴64とほぼ同径の所定深さの穴69が形成される。」なる記載、図5、図13に基づけば、筒状の埋込穴66、115を形成していることは明らかであるから、上方結合部61、113は、筒状体を有するとともに、筒状体の埋込穴66はネジを挿通可能であること、(ii)同記載事項10の「【0107】・・・例えば、その締結部材の一例として、図13のように先端側にネジ部111を形成すると共に、そのネジ部111と頭部112との間を小径に形成したネジ110を、重合結合部50?53,54?57の上方結合部113、下方結合部114の穴115にねじ込むようにしたものでも良い。この場合、先端側のネジ部111が下方結合部114の穴115から抜けるまでねじ込めば、ネジ110が戻らなくなり、固定状態になる。」なる記載および図5、図6、図13に基づけば、上方結合部のベース部材25側に通し穴64を有する部分で仕切られ、その部分を仕切板ということができること、(iii)同記載事項6の「【0049】上蓋部材26の重合結合部50?53、54?57の上方結合部61の通し穴64には、それぞれ締め方向しか回せないワンウェイネジ65を、ワンウェイネジ65の先端が通し穴64から下面に出ないように仮止めしておく。」なる記載に基づけば、ワンウェイネジ65が通し穴64、115の下面から出ないように仮止めされていることは、ワンウェイネジ65は上方結合部61、113に係止状態で保持されているといえること、そして、先願明細書に記載された発明の「ワンウェイネジ65」、「通し穴64、115」は本願補正発明の「ワンウェイタイプのネジ」、「ネジ穴」に相当しており、かつ、先願明細書に記載された発明の「上方結合部61、113」を、本願補正発明の「ネジ保持部」と実質的に言い換えることができるのであるから、先願明細書に記載された発明は、筒状に形成され、筒状体内にネジを挿通可能なネジ穴を有する仕切板を備え、仕切板のベース側にネジ穴を囲うように係合突部を配置するネジ保持部を実質的に具備していることは明らかである。
さらに、同記載事項9の「【0080】・・・または上方連結部60あるいは下方連結部62の一方のみを切断して、重合結合部を取り除かずに、基板ボックス15を開けたりすることが想定されるが、これは遊技店における遊技機の保守点検時あるいは営業中に遊技機の球詰まり等を直す際等に、発見が可能である。」なる記載に基づけば、上方結合部61、113のみ切り離しことができ、上記(iii)に示したように先願明細書に記載された発明の「上方結合部61、113」を、本願補正発明の「ネジ保持部」と実質的に言い換えることができるので、ネジ保持部のみを切り離し可能な状態にあると言い換えできるから、先願明細書に記載された発明において、実質的にネジを係止したネジ保持部を切り離し可能に設けているといえることは明らかである。
加えて、先願明細書に記載された発明の係合突部67と本願補正発明の弾性片は、仕切り板から下方に突設した突状体といえる点で共通している。

そうすると、両者は以下の点で一致するとともに、以下の相違点1、2の点で形式的に相違していると認められる。

<一致点>
「電子制御基板を覆う保護カバーを、電子制御基板が取り付けられたベースに、先端に形成されたネジ部より小径の部分をヘッド側に有するワンウェイタイプのネジによって固着してなる制御装置であって、
保護カバーの周縁で保護カバーに対して相反する位置に、筒状体に形成され、筒状体内にネジを挿通可能なネジ穴を有する仕切板を備え、仕切板のベース側にネジ穴を囲うように突状体を配置し、突状体によってネジを係止したネジ保持部を切り離し可能に複数組設ける一方、
ベースにおける各ネジ保持部と対応する位置に、前記ネジの先端に形成されるネジ部をねじ込み可能な深さを有する取付タブを夫々設け、
ネジ保持部の中から保護カバーに対して相反する位置にある少なくとも一組の保持部を選択し、選択された各ネジ保持部で係止状態にあるネジを取付タブにねじ込むことによって、保護カバーとベースとを固着した制御装置。」

<相違点1>
保護カバーのネジ保持部の設置位置が、本願補正発明においては、保護カバーの中央に対して相反する位置であるのに対して、先願明細書に記載された発明においては、保護カバーの対角線に対して相反する位置である点。

<相違点2>
突状体が、本願補正発明においては、2つの弾性片で構成されているのに対して、先願明細書に記載された発明においては、筒状体を形成する係合突部である点。

(4)当審の判断
上記相違点1、2について以下に検討する。
<相違点1について>
保護カバーとベースとの固着関係に限らず、2枚の板状体をネジやボルト等の固着体を用いて互いに固着する際に、固着の目的に適うように板状体の中央の相反する位置等の特定場所にそれら固着体を設けることは設計上の常識と言うべき事項であるから、本願補正発明の保護カバーのネジ保持部が保護カバーの中央の相反する位置に設けられ、先願明細書に記載された発明のネジ保持部が保護カバーの対角線の相反する位置に設けられて、互いに設置位置が相違しているとしても、両者は保護カバーをベースに対して設計目的とおりに固着できる機能において格別の相違がない。したがって、両者の設置位置の相違は、単なる設計上の微差に過ぎないということができる。
そうすると、先願明細書に記載された発明においても、保護カバーのネジ保持部の設置位置を、保護カバーの中央に対して相反する位置とすることが実質的に記載されているということができるので、本願補正発明と先願明細書に記載された発明との間における上記相違点1は実質的にないということができる。

<相違点2について>
本願補正発明の2つの弾性片は、ネジ保持部においてネジを保持することを目的に設けられているのであるが、先願明細書に記載された発明の係合突部もまた、本願補正発明と同様にネジ保持部においてネジを仮止めして保持しているのであるから、両者はそのネジ保持の機能の点で何ら相違しているものでもないから、同目的を全うするために、ネジ保持部において2つの弾性体を設けるか、筒状の突状体を設けるかは、ネジ保持部のネジを保持する部分の形状の単なる設計的な微差に過ぎないということができる。
そうすると、先願明細書に記載された発明のネジ保持部においても、ネジを保持することができる2つの弾性片を実質的に備えているということができるので、本願補正発明と先願明細書に記載された発明との間における上記相違点2は実質的にないということができる。

以上のとおり、上記相違点1、2は形式的な相違にすぎないのであるから、先願明細書に記載された発明と本願補正発明は実質的に相違するところがないと解される。
また、本願補正発明によって奏する効果も、先願明細書に記載された発明と格別に相違するものとも認められない。
そうすると、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一と言うことができる。

(5)むすび
上記のとおりであるので、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願人と同一であるとも認められないので、本願補正発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)補正却下の判断
以上のとおり、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるので、平成17年6月3日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年6月3日付の手続補正は上記のとおり却下されているので、平成16年5月24日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、その請求項1?2に記載されたとおりのものと認められ、本願発明は、その請求項1において特定される以下のとおりのものである。

「電子制御基板を覆う保護カバーを、電子制御基板が取り付けられたベースに、先端に形成されたネジ部より小径の部分をヘッド側に有するワンウェイタイプのネジによって固着してなる制御装置であって、
前記保護カバーの周縁で該保護カバーの中央に対して相反する位置に、前記ネジを挿通可能なネジ穴を有したネジ保持部を切り離し可能に複数組設ける一方、
前記ベースにおける前記各ネジ保持部と対応する位置に、前記ネジの先端に形成されるネジ部をねじ込み可能な深さを有する取付タブを夫々設け、
前記ネジ保持部の中から前記保護カバーの中央に対して相反する位置にある少なくとも一組のネジ保持部を選択し、選択された各ネジ保持部のネジ穴に前記ネジを挿通して前記取付タブにねじ込むことによって、前記保護カバーと前記ベースとを固着したことを特徴とした制御装置。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用刊行物について
引用刊行物の記載およびそれら記載事項は、上記2.(2)引用刊行物についてに記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.(4)当審の判断で検討した本願補正発明において、本願補正発明の「筒状体に形成され、該筒状体内に前記ネジを挿通可能なネジ穴を有する仕切板を備え、該仕切板のベース側に前記ネジ穴を囲うように2つの弾性片を配置し、該弾性片によって前記ネジを係止したネジ保持部」と「選択された各ネジ保持部で係止状態にある前記ネジを」の構成の一部を削除して、「前記ネジを挿通可能なネジ穴を有したネジ保持部」と「選択された各ネジ保持部のネジ穴に前記ネジを」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.平成17年6月3日付の手続補正についての補正却下の決定に記載したとおり、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-29 
出願番号 特願平11-285890
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 土屋 保光
川島 陵司
発明の名称 制御装置  
代理人 石田 喜樹  

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