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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1174818
審判番号 不服2005-10264  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-02 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 特願2000-347893「ケースに収容されたフレキシブル基板用電気コネクタ及びその結線方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月22日出願公開、特開2001-167829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成7年1月17日の出願である特願平7-20858号の一部を、平成12年11月15日に分割して、新たな特許出願(特願2000-347893号)としたものであって、平成17年4月28日付けで拒絶査定がなされた(発送日:同年5月6日)ところ、平成17年6月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年6月2日付けの手続補正について
[結論]
平成17年6月2日付けの手続補正を却下する。
[理由1]
平成17年6月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「上方に開口するケース内にコネクタが収容されており、該コネクタがフレキシブル基板を受け入れるための開口部を有するハウジングと、該ハウジングに植設された接触子と、上記開口部に取り付けられた加圧部材とを有し、該加圧部材が、フレキシブル基板の挿入可能な開放位置とフレキシブル基板を上記接触子に押圧する閉位置との間をハウジングに対して回動自在に支持されており、ケースは該ケース内のコネクタが転倒しない程度の間隙を該コネクタの周囲に形成している、ケースに収容された電気コネクタにおいて、コネクタは上記加圧部材が上記開放位置でケースに収容され加圧部材に形成された搬送のための被吸着面が上方に向いて位置しており、搬送手段が上記被吸着面にて吸着して該コネクタを直接ケースから取り出して所定位置へ搬送可能になっていることを特徴とするケースに収容されたフレキシブル基板用電気コネクタ。」
と補正された。
これに対して、本件補正前の請求項1(平成16年4月5日付け手続補正書による)は、
「フレキシブル基板を受け入れるための開口部を有するハウジングと、該ハウジングに植設された接触子と、上記開口部に取り付けられた加圧部材とを有し、該加圧部材が、フレキシブル基板の挿入可能な開放位置とフレキシブル基板を上記接触子に押圧する閉位置との間をハウジングに対して回動自在に支持されている、ケースに収容された電気コネクタにおいて、コネクタは上記加圧部材が上記開放位置でケースに収容され加圧部材に形成された搬送のための被吸着面が上方に向いて位置しており、ケースが上方に開放された際に搬送手段によって上記被吸着面が吸着して直接ケースから所定位置へ搬送可能となっており、所定位置へ取付後の使用時には、フレキシブル基板が挿入された後に開放位置にある加圧部材が回動力を受けて閉位置へ回動してフレキシブル基板との接続を可能としていることを特徴とするケースに収容されたフレキシブル基板用電気コネクタ。」
である。
補正前と補正後の請求項1を比較すると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項あった、「ケースが上方に開放された際に」なる事項、及び、「所定位置へ取付後の使用時には、フレキシブル基板が挿入された後に開放位置にある加圧部材が回動力を受けて閉位置へ回動してフレキシブル基板との接続を可能としている」なる事項を削除する補正事項を含むものである。
上記2つの削除事項の内、特に、「所定位置へ取付後の使用時には、フレキシブル基板が挿入された後に開放位置にある加圧部材が回動力を受けて閉位置へ回動してフレキシブル基板との接続を可能としている」の削除は、「フレキシブル基板用電気コネクタ」の「所定位置へ取付後の使用時」における構成を削除するものであるから、当該削除は、むしろ特許請求の範囲を拡張するものであって、特許請求の範囲の減縮には当たらない。
又、上記削除が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れにも該当しないことは、明らかである。
即ち、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項各号に規定する目的の何れにも該当しない補正事項を含むものである。
したがって、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
1 本件補正による発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、
「上方に開口するケース内にコネクタが収容されており、該コネクタがフレキシブル基板を受け入れるための開口部を有するハウジングと、該ハウジングに植設された接触子と、上記開口部に取り付けられた加圧部材とを有し、該加圧部材が、フレキシブル基板の挿入可能な開放位置とフレキシブル基板を上記接触子に押圧する閉位置との間をハウジングに対して回動自在に支持されており、ケースは該ケース内のコネクタが転倒しない程度の間隙を該コネクタの周囲に形成している、ケースに収容された電気コネクタの結線方法において、加圧部材に形成された搬送のための被吸着面が上方に向くように該加圧部材を開放位置として複数のコネクタをケース内に収め、搬送手段の吸着部材で上記被吸着面と吸着して該搬送手段によりコネクタを順次ケースから取り出して回路基板上の所定位置へもたらし、コネクタの接触子の接続部と回路基板の対応回路部とを結線することを特徴とするフレキシブル基板用電気コネクタの結線方法。」
と補正された(以下、「本件補正発明」という。)。
本件補正は、本件補正前の請求項3に係る発明の構成に欠くことができない事項である「ケースに収容された電気コネクタ」に関して、ケースが、「上方に開口する」ものであること、及び、「ケース内のコネクタが転倒しない程度の間隙をコネクタの周囲に形成している」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮の減縮を目的とするものであり、又、当該事項は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の【0023】、【図3】等に記載された事項であるから、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか否か、について検討する。

2 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-57282号(実開平6-17165号)のCD-ROM(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
複数のコンタクトを有し基板上に固定されるコネクタ本体に、上記コンタクトに接続される複数の導電性要素を有する別の平板状接続部材を接続固定する平板状接続部材のコネクタ装置において、
上記コネクタ本体に、開閉可能なロック蓋を設け、
上記コネクタ本体に、上記ロック蓋が開位置にあるとき、上記平板状接続部材をその板厚平面と略直交する方向から挿入可能な開口を設け、
さらに、上記ロック蓋に、該ロック蓋が閉位置にあるとき、上記開口に挿入した平板状接続部材をコンタクトに向けて押圧する押圧部を設けたことを特徴とする平板状接続部材のコネクタ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、ロック蓋は、開位置においてコネクタ本体の底面と平行になる吸着面を備えている平板状接続部材のコネクタ装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項3】)
イ.「【技術分野】
本考案は、フレキシブルプリント(FPC)基板、プリント基板(PCB)、フラットケーブル等の平板状接続部材を、基板上に接続するための平板状接続部材のコネクタ装置に関する。」(【0001】)
ウ.「【考案の目的】
本考案は、フラットケーブルのような平板状接続部材用のコネクタについての以上の問題意識に基づき、平板状接続部材を含むコネクタ回りの高速自動組立が可能な装置を得ることを目的とする。」(【0003】)
エ.「【考案の実施例】
以下図示実施例に基づいて本考案を説明する。コネクタ本体11は、絶縁性の合成樹脂材料からなるハウジング12と、このハウジング12に軸22で開閉可能に支持されたロック蓋23とを備え、ハウジング12には、列状に多数のコンタクト13が保持されている。コンタクト13は、ハウジング12に列状に形成したコンタクト溝14にそれぞれ挿入されたもので、その脚部13aが、基板15上のコンタクトパッド16に半田付け(サーフェスマウント)される。またハウジング12には、基板15上のダミーパッド36に半田付けされる固定金具37が圧入固定されている。」(【0007】)
オ.「ハウジング12には、上面の開放された開口18が形成されている。この開口18は、左右の平面略L字状の側壁19と、ロック蓋23の軸22側に突出させたストッパ20とによって、平面略T字状をなすように画成されている。この開口18の底面には、上記コンタクト13のコンタクト突起13bが弾性変形可能に位置している。」(【0008】)
カ.「一方、この開口18に挿入固定すべき平板状接続部材25は、FPC基板26と、このFPC基板26の端部に重ねて固定した裏打ち板27とからなっている。この裏打ち板27(およびFPC基板26)の平面形状は、開口18の形状に対応する略T字状をなしている。」(【0009】前段)
キ.「 ロック蓋23は、左右の側壁19の外側に位置するロックアーム23aと、この左右のロックアーム23aを結ぶ押圧部23bとを備え、この押圧部23bの前方の開口18側には、切欠23cが形成されている。この切欠23cにより、ロック蓋23を開いた図2の状態において、平板状接続部材25をその板厚平面と略直交する方向から開口18に挿入することができる。一方押圧部23bは、図3のようにロック蓋23を閉じた状態で、平板状接続部材25を押圧し、FPC基板26の複数の端子とコンタクト13のコンタクト突起13bとの間に、接触圧力を生じさせる。」(【0010】)
ク.「 ロック蓋23には、この開位置において、底面と平行になる水平吸着面35(図2、図3参照)が形成されている。この水平吸着面35は、コネクタ本体11を基板15上に搬送する際、チップマウンタによる吸着面となる。」(【0013】)
ケ.「上記構成の本装置は従って、コネクタ本体11の係合突起33とロック蓋23の係合凹部34を係合させて、ロック蓋23を開状態に保持する。この状態で水平吸着面35によりコネクタ本体11の全体をチップマウンタに吸着して基板15上に搬送し、その脚部13aをコンタクトパッド16に、固定金具37をダミーパッド36に、それぞれ常法に従い半田付けする。」(【0014】)

3 引用例に記載された発明
上記摘記事項及び図1?4からみて、引用例には次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。
基板上に固定されるコネクタ本体に、FPC基板等の平板状接続部材を接続固定するコネクタ装置において、
コネクタ本体は、FPC基板を挿入固定する開口及び複数のコンタクトを挿入する列状のコンタクト溝が形成されたハウジングと、該ハウジングに開閉可能に支持されるロック蓋とを備え、
該ロック蓋は、FPC基板を挿入可能な開位置と、FPC基板を上記コンタクトに押圧する閉位置との間で、ハウジングに回動自在に支持されており、且つ、ロック蓋には、開位置においてコネクタ本体の底面と平行になる水平吸着面が形成されており、
ロック蓋の開状態で、チップマウンタにより水平吸着面を吸着して、基板上の所定位置に搬送し、コンタクトの脚部を、基板のコンタクトパッドに半田付けする、平板状接続部材のコネクタ装置。

4 対比・判断
本件補正発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「FPC基板」は、本件補正発明の「フレキシブル基板」に相当し、同様に、「コンタクト」は「接触子」に、「ロック蓋」は「加圧部材」に、「水平吸着面」は「被吸着面」に、「チップマウンタ」は「搬送手段の吸着部材」に、「コネクタ本体」は「コネクタ」に、「基板」は「回路基板」に、「コネクタの脚部」は「接続部」に、「コンタクトパッド」は「対応回路部」に、「コネクタ装置」は「電気コネクタ」に、それぞれ相当する。
引用例発明において、ハウジングの列状のコンタクト溝に、複数のコンタクトが挿入されることは、複数のコンタクトがハウジングに植設されていることに他ならない。
又、引用例発明は「平板状接続部材のコネクタ装置」であるが、その技術内容からみて、コネクタのコンタクトと基板のコンタクトパッドとを半田付けする方法でもあるから、「コネクタの結線方法」とも言える。
ところで、本件補正発明の(加圧部材の開放位置で)「被吸着面が上方に向く」は、やや曖昧な記載であるため、本願明細書及び本願図面を参酌するに、段落番号【0020】、【0023】及び【図3】等の記載によれば、本件補正発明の加圧部材は、開放位置で被吸着面である張出部13Bが水平位置(状態)となり搬送手段により吸着されているから、「被吸着面が上方に向く」とは、加圧部材の張出部13Bが、開放位置で水平位置にあることを言い、そうであれば、引用例発明の「ロック蓋」も、開位置で水平となる吸着面を有しているから、本件補正発明に言う「被吸着面が上方に向く」ものと言える。
してみると、本件補正発明と引用例発明とは、次の一致点、相違点を有するものである。
[一致点]
コネクタがフレキシブル基板を受け入れるための開口部を有するハウジングと、該ハウジングに植設された接触子と、上記開口部に取り付けられた加圧部材とを有し、該加圧部材が、フレキシブル基板の挿入可能な開放位置とフレキシブル基板を上記接触子に押圧する閉位置との間をハウジングに対して回動自在に支持されている、電気コネクタの結線方法において、加圧部材に形成された搬送のための被吸着面が上方に向くように該加圧部材を開放位置として、搬送手段の吸着部材で上記被吸着面と吸着して該搬送手段によりコネクタを回路基板上の所定位置へもたらし、コネクタの接触子の接続部と回路基板の対応回路部とを結線することを特徴とするフレキシブル基板用電気コネクタの結線方法。
[相違点]
本件補正発明は、上方に開口するケース内に、複数のコネクタを、加圧部材を開放位置として、コネクタが転倒しない程度の間隙をコネクタの周囲に形成して、収容し、搬送手段によりコネクタを順次ケースから取り出して基板の所定位置に搬送するものであるのに対して、
引用例発明は、ケースを構成要件としておらず、ケースに関連する構成がない点。

上記相違点について検討する。
本件補正発明は、フレキシブル基板を回路基板上に結線するについて、吸着部材による搬送を可能とするコネクタを提供することにより、自動組立を可能とすることを目的としている(本願明細書【0010】、【0011】参照)ところ、引用例発明も、FPC基板等を基板上に接続するコネクタについて、高速自動組立が可能なコネクタ装置を得ることを目的とするものである(摘記事項イ、ウ参照)。
そして、自動組立のために、コネクタの加圧部材が、開位置で吸着部材に吸着される水平面を有している点でも共通することは、上記一致点として記載したとおりである。
ところで、本願の出願当時の技術水準からみて、コネクタの自動組立において、コネクタが、搬送手段(ロボット)の吸着部材により、上記水平面で、自動的に吸着されるためには、被吸着部材であるコネクタが「所定の被吸着位置」に配置されていることが必要であるから、引用例発明においても、吸着・搬送されるべきコネクタが、所定の被吸着位置に配置されていることが必要な条件となり、又、高速組立と言う以上、複数のコネクタが、次から次へと、即ち、順次、吸着されて組み立てられるものと解される。
他方、電子部品の回路基板に対する自動組立に関し、電子部品を上方開口のケース内に収め、所定の被吸着位置で、搬送手段(の吸着部材)により、複数の電子部品を順次ケースから取り出して回路基板上の所定位置へ搬送することは、電子部品の実装技術の分野において、周知の技術手段である(例えば、特開昭63-283198号公報、実願平1-86220号(実開平3-25300号)のマイクロフィルム、特開平5-283898号公報等参照)。
してみると、これら周知の技術手段と同様の技術分野である、引用例発明においても、電子部品であるコネクタを搬送手段で吸着・搬送するに際し、上記のように、吸着・搬送されるコネクタを所定の被吸着位置に配置すべく、これら周知の技術手段に倣って、コネクタをケースに収容し、該ケースから順次取り出して搬送するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
そして、これら周知の技術手段も、電子部品が転倒しない程度の間隙を電子部品の周囲に形成しているものと認められ(図面等参照)、仮に、周知の技術手段がそのような構成を有していないとしても、引用例発明に、上記周知の技術手段を採用するに際し、自動組立を行う搬送手段が、コネクタをスムースに取り出せる(コネクタがケース内壁に引っかからない)ように、コネクタの周囲に転倒しない程度の間隙を形成することは、当業者が当然に採用する設計事項である。

ところで、審判請求人は、引用文献1(上記「引用例」のこと)について、次のように主張する。
[a]引用文献1の【0014】の記載からすると、引用文献1のコネクタは、搬送に際してはコネクタの閉状態にあるロック蓋を一度開状態に操作し、その後に吸着するものと解釈できる。換言すると、ケースにロック蓋を開状態で収容しておくことは意図していないと解釈できる(審判請求書4頁1?10行参照)。
[b]引用文献1の【0017】及び図2に見られるように、引用文献1の平板状接続部材を、上方からコネクタ本体上に配して、その後に、ロック蓋を閉じる。これは、明らかにコネクタがケースに収められていない状態を説明しており、ケースを意識していない。仮に、コネクタがケース内に有る場合、同様のことを行おうとすると、平板上部材がケースに対して障害となり、平板状部材の接続は円滑に行えない(審判請求書4頁16?26行参照)。
[c]引用文献1のコネクタの吸着位置は、コネクタの重心から大きく外れた後方の端部に形成されており、この状態でケース内から吸着して搬送しようとすると、吸着して持ち上げた際に傾いてケースに干渉して吸着が外れたり、バランスをくずして姿勢が狂い回路基板の所定位置に置けないという危険性が考えられ、このことからも、引用文献1ではロック蓋が開状態のコネクタをケースに収容した状態から直接吸着するとは考えられない(審判請求書5頁1?6行参照)。
上記主張a?cについて検討する。
[a]について
引用例の【0014】1?2行の記載は、単に、ロック蓋を開状態に保持する構成にすぎないから、請求人の「ケースにロック蓋を開状態で収容しておくことは意図していない」との主張の根拠にはなり得ない。
付言すれば、引用例発明においてケースを採用する場合、引用例発明が、高速自動組立を目的としている点からみても、ロック蓋が開状態のコネクタをケース内に収容する方式は、ロック蓋が閉状態のコネクタをケース内に収容し、該ケース内で開状態になるよう操作する方式よりも、高速自動組立という目的に合致することは明らかであり、又、ロック蓋が開状態のコネクタを収容する方式の採用を阻害する要因もないから、審判請求人の主張は、失当である。
[b]について
引用例の【0017】及び図2は、【0014】?【0016】の記載によれば、コネクタを基板上に半田付けした後の、平板状接続部材の(コネクタに対する)接続状態を説明するものであるから、「ケースを意識していない」のは当然であって、請求人の主張は、失当である。
[c]について
上記周知の技術手段の吸着部材等を参酌すると、吸着部材は、所定の面積を以て、電子部品を吸着するものであるから、引用例発明においても、コネクタが水平吸着面で吸着されていれば、コネクタは水平状態を保って搬送され、基板上の正しい位置に配置されることは明らかである。
即ち、水平吸着面が重心の位置から外れていることは、コネクタがケースに収容されないことの根拠とはなり得ず、請求人の主張は、失当である。
以上、審判請求人の主張a?cは何れも失当であって、採用できない。

[作用効果について]
本件補正発明の奏する作用効果も、引用例発明及び周知の技術手段の奏する作用効果から、当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、本件補正発明は、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正が却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年4月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたものであるところ、その請求項3に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「フレキシブル基板を受け入れるための開口部を有するハウジングと、該ハウジングに植設された接触子と、上記開口部に取り付けられた加圧部材とを有し、該加圧部材が、フレキシブル基板の挿入可能な開放位置とフレキシブル基板を上記接触子に押圧する閉位置との間をハウジングに対して回動自在に支持されている、ケースに収容された電気コネクタの結線方法において、加圧部材に形成された搬送のための被吸着面が上方に向くように該加圧部材を開放位置として複数のコネクタをケース内に収め、搬送手段の吸着部材で上記被吸着面と吸着して該搬送手段によりコネクタを順次ケースから取り出して回路基板上の所定位置へもたらし、コネクタの接触子の接続部と回路基板の対応回路部とを結線することを特徴とするフレキシブル基板用電気コネクタの結線方法。」

2 引用例に記載された事項
上記「第2 [理由の2]2」に記載したとおりである。

3 引用例に記載された発明
上記「第2 [理由の2]3」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由の2]1」に記載した本件補正発明における「電気コネクタとケースとの関係」について、ケースに関する、構成に欠くことができない事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、更に「ケース」の構成を限定した本件補正発明が、上記「第2 [理由の2]4」に記載したとおり、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[作用効果]について
本願発明の奏する作用効果も、引用例発明及び周知の技術手段の奏する作用効果から、当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-16 
結審通知日 2008-01-17 
審決日 2008-01-30 
出願番号 特願2000-347893(P2000-347893)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 57- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 佐野 遵
関口 哲生
発明の名称 ケースに収容されたフレキシブル基板用電気コネクタ及びその結線方法  
代理人 藤岡 徹  

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