• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1174824
審判番号 不服2005-11997  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-24 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 特願2003-205839「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 21536〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成15年6月30日の出願であって、平成17年5月17日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月24日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月19日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年7月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、要するに「識別情報の可変表示」と「入賞を報知」が、「一つの表示装置」の表示領域に表示する旨補正するものであるから、特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「表示領域を有する一つの表示装置と、
前記表示領域に画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示装置の前方に設けられ、透明な部材で形成された透明部を有する遊技盤と、
前記遊技盤に設けられた、遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域内に設けられた入賞領域と、
入賞領域を遊技球が通過したことを検出し、入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、を有し、
前記遊技領域の少なくとも一部は遊技盤の透明部に設けられた透明遊技領域であり、前記表示領域の少なくとも一部は、遊技者が前記透明遊技領域を介して視認可能な位置に配置されており、
前記表示制御手段は、前記一つの表示装置の表示領域であって前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に、遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示を表示させ、且つ、前記入賞検出信号に基づいて生成されたコマンドに応じて、入賞を報知するための入賞報知情報を、前記一つの表示装置の表示領域であり、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域であって、前記入賞領域の近傍の表示領域に表示させる、
ことを特徴とする遊技機。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特公平7-24703号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?エの記載が図示とともにある。
ア.「パチンコ機枠の前面に多数の障害釘を打設し複数の変動入賞口および入賞口を適宜配設した遊技部を有する透明材質からなる遊技盤と、該遊技盤の背面全面に装着し前記変動入賞口および入賞口に連通する開口を有する情報表示パネルと、を有し、該表示パネルにパネル表示ドライバーを介してコンピュータユニットを接続し、該コンピュータにファンクションキーを接続し、ファンクションキーの選択により所望の情報を前記コンピュータユニットより引き出し、情報表示パネルに映像表示させたパチンコ機等の遊技装置。」(1欄2?11行)
イ.「従来のパチンコ機等の遊技装置は前面に多数の障害釘や複数の変動入賞口および入賞口を適宜配設した不透明な遊技盤上にポスターが画かれ、また、点滅する豆電球によって遊技盤に変化を与えていた。
発明が解決しようとする課題
上述した従来技術においては、障害釘、入賞口等の遊技設備とポスター、点滅ランプ等の表示設備とが遊技盤の盤面上に配備されているため、表示設備の配備が著しく制限されるばかりでなく、表示内容が固定的で変化に乏しく、遊技盤を情報伝達の媒体として機能させることは困難であった。」(2欄3?13行)
ウ.「本発明は、上述した従来技術の欠点を除去するために、従来不透明であった遊技盤を透明にして、該遊技盤の裏面全面に情報表示パネルを装着し、該パネルをコンピュータユニットに接続し、該コンピュータから、ファンクションキーの操作又は入賞球の信号により必要な情報を引き出して情報表示パネル上に映像化し、遊技盤を情報伝達の媒体としたものである。」(2欄末行?3欄6行)
エ.「入賞球導管4に近接スイッチ8を設け、入賞球によって作動する近接スイッチ8の信号を従来公知のパチンコ用コントローラーを介してコンピュータユニット6に入力させることにより、情報表示パネル3に必要な画像を表示することもできる。」(3欄35行?4欄3行)

4.引用例1記載の発明の認定
記載ア?エを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「パチンコ機枠の前面に多数の障害釘を打設し複数の変動入賞口および入賞口を適宜配設した遊技部を有する透明材質からなる遊技盤と、該遊技盤の背面全面に装着し前記変動入賞口および入賞口に連通する開口を有する情報表示パネルと、を有し、該表示パネルにパネル表示ドライバーを介してコンピュータユニットを接続し、入賞球によって作動する近接スイッチの信号を前記コンピュータユニットに入力させることにより、前記情報表示パネルに必要な画像を表示させるパチンコ機。」(以下「引用発明1」という。)

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「情報表示パネル」は補正発明の「表示装置」に相当し、引用発明1のそれは「遊技盤の背面全面に装着」したものだから、1つの遊技機に対して1つしか存在しないから、「表示領域を有する一つの表示装置」といえるものである。
引用発明1が「表示領域に画像を表示させる表示制御手段」(コンピュータユニットやパネル表示ドライバーがこれに相当する。)を有することは明らかである。
引用発明1の「遊技盤」は透明材質からなっており、その背面には情報表示パネルを装着してあるから、補正発明でいう「表示装置の前方に設けられ、透明な部材で形成された透明部を有する遊技盤」に該当し、「前記遊技領域の少なくとも一部は遊技盤の透明部に設けられた透明遊技領域」が存在するとともに、「遊技球が流下可能な遊技領域」が遊技盤に設けられていることは明らかである。
引用発明1の「複数の変動入賞口および入賞口」及び「入賞球によって作動する近接スイッチ」と、補正発明の「遊技領域内に設けられた入賞領域」及び「入賞領域を遊技球が通過したことを検出し、入賞検出信号を出力する入賞検出手段」にも相違はない。
また、引用発明1では遊技盤の背面全面に情報表示パネルが装着されているから、補正発明の「前記表示領域の少なくとも一部は、遊技者が前記透明遊技領域を介して視認可能な位置に配置されており」との発明特定事項に合致する。
引用発明1では「入賞球によって作動する近接スイッチの信号を前記コンピュータユニットに入力させることにより、前記情報表示パネルに必要な画像を表示させる」のであるが、これは入賞の報知ということができるから、「入賞検出信号に基づいて生成されたコマンドに応じて、入賞を報知するための入賞報知情報を、前記一つの表示装置の表示領域であり、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に表示させる」との限度では、補正発明と引用発明1に相違はない。
したがって、補正発明と引用発明1は、
「表示領域を有する一つの表示装置と、
前記表示領域に画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示装置の前方に設けられ、透明な部材で形成された透明部を有する遊技盤と、
前記遊技盤に設けられた、遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域内に設けられた入賞領域と、
入賞領域を遊技球が通過したことを検出し、入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、を有し、
前記遊技領域の少なくとも一部は遊技盤の透明部に設けられた透明遊技領域であり、前記表示領域の少なくとも一部は、遊技者が前記透明遊技領域を介して視認可能な位置に配置されており、
前記表示制御手段は、前記入賞検出信号に基づいて生成されたコマンドに応じて、入賞を報知するための入賞報知情報を、前記一つの表示装置の表示領域であり、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に表示させる遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明の「表示制御手段」は入賞報知情報を表示させるだけでなく、「前記一つの表示装置の表示領域であって前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に、遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示を表示させ」るものであるのに対し、引用発明1ではその点明らかでない点。
〈相違点2〉入賞報知情報の表示につき、補正発明が「前記入賞領域の近傍の表示領域に表示させる」と限定しているのに対し、引用発明1にはかかる限定がない点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
本件出願当時のパチンコ機のほとんどは「遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示を表示させ」るものであり、そのようなパチンコ機は周知である(後記引用例2に記載のパチンコ機もその1つである。)。
そうである以上、引用発明1において「遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示」をすることは設計事項というべきである。
ところで、引用発明1では、遊技盤の背面全面に情報表示パネルが装着されているから、上記可変表示を行うに際しても、情報表示パネルの表示領域にて行う(当然「透明遊技領域を介して視認可能な表示領域」である。)ことが最も自然であり、それを妨げる要因は何もない。
したがって、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-129177号公報(以下「引用例2」とう。)には、「一般入賞センサ175a?175f(すなわち、入賞球検出手段)が遊技球を検出した場合、当該入賞球検出手段が備えられている入賞口に遊技球が入賞したことを個別に報知可能なように報知用ランプ402?410を駆動する構成である。・・・報知用ランプ402?410は、本実施の形態の場合ランプによって構成されるが、ランプに限らず他の構成でもよい(例えば、LEDであってもよい)。また、報知用ランプ402?411は入賞口自身や入賞口近傍に配置される。要は、各入賞口に対応して遊技球が入賞したことを個別に報知可能なように配置すればよい。」(段落【0063】)との記載があり、この記載からみて、入賞報知に当たっては、各入賞口に対応して個別に報知可能なことが望まれることが理解でき、引用例2記載の遊技機では、報知用ランプを入賞口近傍に配置することによって、個別報知を可能としている。
引用発明1にあっても、入賞口には「複数の変動入賞口および入賞口」があるのだから、引用例2の上記記載からみて、個別報知を採用することには十分な動機がある。そして、引用例2の上記記載によれば、報知部(引用例2では「報知用ランプ402?410」)が各入賞口近傍にあることで個別報知可能とされているのだから、報知用ランプを使用しない引用発明1において個別報知をしようとすれば、情報表示パネルの表示領域のうち、各入賞口の近傍(当然「一つの表示装置の表示領域であり、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域」である。)を報知部に割り当てることは当業者にとって想到容易であり、そのようにすれば相違点2に係る補正発明の構成に至る。
したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項であるか又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年4月7日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「表示領域を有する表示装置と、
前記表示領域に画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示装置の前方に設けられ、透明な部材で形成された透明部を有する遊技盤と、
前記遊技盤に設けられた、遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域内に設けられた入賞領域と、
入賞領域を遊技球が通過したことを検出し、入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、を有し、
前記遊技領域の少なくとも一部は遊技盤の透明部に設けられた透明遊技領域であり、前記表示領域の少なくとも一部は、遊技者が前記透明遊技領域を介して視認可能な位置に配置されており、
前記表示制御手段は、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に、遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示を表示させ、且つ、前記入賞検出信号に基づいて生成されたコマンドに応じて、入賞を報知するための入賞報知情報を、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域であって、前記入賞領域の近傍の表示領域に表示させる、
ことを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]3?5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1は、
「表示領域を有する表示装置と、
前記表示領域に画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示装置の前方に設けられ、透明な部材で形成された透明部を有する遊技盤と、
前記遊技盤に設けられた、遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域内に設けられた入賞領域と、
入賞領域を遊技球が通過したことを検出し、入賞検出信号を出力する入賞検出手段と、を有し、
前記遊技領域の少なくとも一部は遊技盤の透明部に設けられた透明遊技領域であり、前記表示領域の少なくとも一部は、遊技者が前記透明遊技領域を介して視認可能な位置に配置されており、
前記表示制御手段は、前記入賞検出信号に基づいて生成されたコマンドに応じて、入賞を報知するための入賞報知情報を、前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に表示させる遊技機。」である点で一致し、「第2[理由]5」で述べた相違点2(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)及び次の相違点1’で相違する。
〈相違点1’〉本願発明の「表示制御手段」は入賞報知情報を表示させるだけでなく、「前記透明遊技領域を介して視認可能な表示領域に、遊技者に有利な特別遊技状態の成立に係る識別情報の可変表示を表示させ」るものであるのに対し、引用発明1ではその点明らかでない点。

そこで検討するに、相違点2については「第2[理由]3?6(2)」で述べたとおり当業者にとって想到容易であり(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)、相違点1’については、「第2[理由]3?6(1)」で述べたと同様の理由により設計事項である。そして、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-29 
出願番号 特願2003-205839(P2003-205839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 中槙 利明
土屋 保光
発明の名称 遊技機  
代理人 青木 宏義  
代理人 水野 浩司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ