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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1174926
審判番号 不服2007-9618  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2008-03-21 
事件の表示 特願2002-299130「カメラおよび閃光発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月30日出願公開、特開2004-133294〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月11日の出願であって、平成19年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年4月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年5月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年5月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年5月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「被写体の撮影を行なうカメラにおいて、
撮影に同期して閃光を発し発光光量を発光時間で制御する閃光発光装置を備え、
該閃光発光装置が、
温度を検出する温度センサと、
温度を変数として、所定の発光光量を得るための発光時間を求める、各温度範囲内が一次式であって変数である温度の上昇に伴い発光時間が減少する全体として折れ線であらわされる演算式を記憶しておく記憶部と、
前記演算式に基づいて前記温度センサで得られた温度から発光時間を求め、求められた発光時間だけ発光するように発光時間を制御する発光制御部とを備えたことを特徴とするカメラ。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「記憶部」について「変数である温度の上昇に伴い発光時間が減少する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-72311号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、フラッシュ発光部を発光させるためのフラッシュ発光回路を有するカメラに関する。」(段落【0001】)、

「【0024】図5はフラッシュ発光部の発光時間を温度情報に基づき制御する概略回路図である。この実施の形態のカメラは、フラッシュ発光部を発光させるためのフラッシュ発光回路48と、このフラッシュ発光回路48を制御するための制御回路41と、フラッシュ発光回路48の温度を検出するための温度検出回路46とを備えている。」(段落【0024】)、

「【0028】温度検出回路46は、温度検出センサで構成され、ツェナーダイオードD2に近接して配置され、ツェナーダイオードD2の温度を検出して制御回路41に送る。制御回路41には記憶回路47が接続され、この記憶回路47には表1に示すXe管483aの発光時間を制御するための制御テーブルが記憶されている。
【0029】表1


制御テーブルは、撮影レンズ30のガイドナンバー毎に、温度に応じたXe管32の発光時間が予め設定され、温度が高くなるに従い発光時間が短くなっている。Xe管483aの発光時間はトランジスタTR2のオン時間によって制御される。」(段落【0028】?【0029】)、

「【0034】次に、測光回路42及び測距回路44の結果を基に露出の演算を行ない(S106)、フラッシュ発光モードか、通常のシャッタ制御かをフラッシュ発光条件に基づき判定し(S107)、そこでフラッシュ発光モードと判定した場合は、次にS105より得られた距離情報をもとに、フラッシュ発光量を演算する。次に、S101より得られた温度、フラッシュ発光量に応じたフラッシュ発光時間を、記憶回路47に入力されている表1に示す制御テーブルから求める(S109)。」(段落【0034】)、
との記載が認められ、上記の「フラッシュ発光回路を有するカメラ」は、「被写体の撮影を行なうカメラ」であること、同じく「フラッシュ発光回路」は、「撮影に同期してフラッシュ発光させる」ものであることは自明であるから、これらの記載によれば、
引用例1には、
「被写体の撮影を行なうカメラにおいて、
撮影に同期してフラッシュ発光し、フラッシュ発光量を発光時間で制御するフラッシュ発光回路48を備え、
該フラッシュ発光回路48が、
温度を検出する温度検出回路46と、
フラッシュ発光量に応じた発光時間を制御するために、各温度範囲内で予め発光時間が設定され、全体として、温度が高くなるに従い発光時間が短くなっている制御テーブルが記憶されている記憶回路47と、
前記制御テーブルに基づいて前記温度検出回路46で得られた温度から発光時間を求め、求められた発光時間だけ発光するように発光時間を制御する制御回路41とを備えたことを特徴とするカメラ。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「フラッシュ発光し」は、本願補正発明の「閃光を発し」に相当し、以下同様に、「フラッシュ発光量」は「発光光量」に、「フラッシュ発光回路48」は「閃光発光装置」に、「温度検出回路46」は「温度センサ」に、「記憶回路47」は「記憶部」に、「制御回路41」は「発光制御部」に、それぞれ相当する。そして、引用例1発明の「制御テーブル」は、本願補正発明の「演算式」の上位概念である「テーブル」に一致するから、両者は、
「被写体の撮影を行なうカメラにおいて、
撮影に同期して閃光を発し発光光量を発光時間で制御する閃光発光装置を備え、
該閃光発光装置が、
温度を検出する温度センサと、
温度を変数として、所定の発光光量を得るための発光時間を求める、全体として温度の上昇に伴い発光時間が減少するテーブルを記憶しておく記憶部と、
前記テーブルに基づいて前記温度センサで得られた温度から発光時間を求め、求められた発光時間だけ発光するように発光時間を制御する発光制御部とを備えたことを特徴とするカメラ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
テーブルが、本願補正発明では、「温度を変数として、所定の発光光量を得るための発光時間を求める、各温度範囲内が一次式であって変数である温度の上昇に伴い発光時間が減少する全体として折れ線であらわされる演算式」であるのに対し、引用例1発明では、「フラッシュ発光量に応じた発光時間を制御するために、各温度範囲内で予め発光時間が設定され、全体として、温度が高くなるに従い発光時間が短くなっている制御テーブル」である点。

[相違点2]
温度センサで得られた温度から発光時間を求めるために、本願補正発明は、「演算式に基づいて」いるのに対し、引用例1発明は、「制御テーブルに基づいて」いる点。

次に相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例1発明の「各温度範囲内で予め発光時間が設定され、」は、縦軸を発光時間、横軸を温度として図示した場合に、所定の発光時間を規定している、横軸と平行な直線となるから、本願補正発明と引用例1発明は、共に目標とする発光光量を得るために、温度が上昇すると発光時間が短くなるように温度補償するものであって、それに用いられる温度補償曲線を直線で近似させたものを記憶部に記憶させたものであると認めることができる。
また、この相違点にかかる本願補正発明の「変数である温度の上昇に伴い発光時間が減少する」との構成は、審判請求時に追加された限定であって、出願当初の明細書の段落【0036】及び図4を根拠としている。そして、前記段落【0036】には、演算式について、「温度が上がるにしたがって発光時間は短くなる。」との記載があり、これは全ての温度範囲における発光時間についての記述であることは明らかである。そうすると、引用例1発明の「制御テーブル」も当然に同様の特性を備えていると認められるから、審判請求時に追加された本願補正発明の前記限定は、引用例1発明に対して格別差異がないものである。
次に、本願補正発明の「各温度範囲内が一次式であって全体として折れ線であらわされる演算式」という構成について検討する。出願当初の明細書の段落【0033】には、図4に示される表1について、「上記の表1には、距離情報などに応じて決定されたフラッシュ発光光量に応じた発光時間が温度に応じて設定されている様子が、発光時間、あるいは発光時間を導き出すための一次式によってあらわされている。」と記述されるように、各温度範囲には、所定の発光時間を規定している横軸と平行な直線や所定の傾きを有する直線が示されているところ、これらの直線を一括して「一次式」としている。そして、前記「所定の発光時間を規定している横軸と平行な直線」は、引用例1発明の「各温度範囲内で予め発光時間が設定され、」を図示したものに対応するから、引用例1発明には、本願補正発明の「各温度範囲内が一次式であらわされる演算式」が示されているものと認められる。また、一般に温度補償曲線を各温度範囲毎に所定の傾きを有する一次式で近似したものを記憶することは周知(例えば、拒絶査定時に示された特開2000-2505号公報を参照)であり、この周知技術を引用例1発明に適用することに当業者が困難性を要するとは認められない。そうすると、前記周知技術を引用例1発明に適用することにより、本願補正発明の「各温度範囲内が一次式であって全体として折れ線であらわされる演算式」を構成することは、当業者が容易になしえたことである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用例1発明に周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到しえたものというべきである。

[相違点2]について
[相違点1]について、で検討したように、引用例1発明の「制御テーブル」を本願補正発明の「演算式」とすることは、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、相違点2にかかる本願補正発明の構成も、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定で準用する同法第126条第5項に規定される独立特許要件を満たしていないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年5月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年10月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「被写体の撮影を行なうカメラにおいて、
撮影に同期して閃光を発し発光光量を発光時間で制御する閃光発光装置を備え、
該閃光発光装置が、
温度を検出する温度センサと、
温度を変数として、所定の発光光量を得るための発光時間を求める、各温度範囲内が一次式であって全体として折れ線であらわされる演算式を記憶しておく記憶部と、
前記演算式に基づいて前記温度センサで得られた温度から発光時間を求め、求められた発光時間だけ発光するように発光時間を制御する発光制御部とを備えたことを特徴とするカメラ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「記憶部」の限定事項である「変数である温度の上昇に伴い発光時間が減少する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-17 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願2002-299130(P2002-299130)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒巻 慎哉越河 勉  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 森内 正明
青木 和夫
発明の名称 カメラおよび閃光発光装置  
代理人 小杉 佳男  
代理人 山田 正紀  
代理人 三上 結  

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