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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服200424313 審決 特許
不服200515609 審決 特許
無効2007800196 審決 特許
不服20041 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1175141
審判番号 不服2005-18508  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-26 
確定日 2008-03-19 
事件の表示 平成 6年特許願第227568号「腫瘍の治療方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月15日出願公開、特開平 7-215882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成6年9月22日(パリ条約による優先権主張1993年9月22日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年10月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「化学療法剤での治療に対して感受性である固形腫瘍に対する化学療法剤の細胞毒性を増強するための医薬組成物であって、
細胞毒性増強量の次式:
(式略)
[上式中、
XはH;ヒドロカルビル(1?4C);OH,NH2,NHRもしくはNRRで置換されたヒドロカルビル(1?4C);ハロゲン;OH;アルコキシ(1?4C);NH2;NHRまたはNRRであり;ここで、各R基は独立して、非置換の低級アルキル(1?4C)もしくは低級アシル(1?4C)であるか、またはOH,NH2,アルキル(1?4C)第2級アミノ、ジアルキル(1?4C)第3級アミノ、アルコキシ(1?4C)もしくはハロゲン置換基で置換された低級アルキル(1?4C)もしくは低級アシル(1?4C)から選択され;そしてXがNRRの場合には、2つのRが直接的にまたは橋酸素を介して一緒になってモルホリノ環、ピロリジノ環またはピペリジノ環を形成し;
nは0もしくは1であり;そして
Y1およびY2は独立して、H;ニトロ;ハロゲン;非置換のヒドロカルビル(1?14C)であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、エポキシ、アルコキシ(1?4C)、アルキルチオ(1?4C)、第1級アミノ(NH2)、アルキル(1?4C)第2級アミノ、ジアルキル(1?4C)第3級アミノ、2つのアルキル基が一緒に結合してモルホリノ、ピロリジノもしくはピペリジノを形成しているジアルキル(1?4C)第3級アミノ、アシルオキシ(1?4C)、アシルアミド(1?4C)およびそれのチオ類似体、アセチルアミノアルキル(1?4C)、カルボキシ、アルコキシカルボニル(1?4C)、カルバミル、アルキルカルバミル(1?4C),アルキルスルホニル(1?4C)およびアルキルホスホニル(1?4C)からなる群より選択された1つもしくは2つの置換基で置換されたヒドロカルビル(1?14C)であり、ここで、前記ヒドロカルビルは環式および不飽和ヒドロカルビルを包含し、そして単一エーテル(-O-)結合により中断されていてもよく;あるいはY1及びY2は独立して、モルホリノ、ピロリジノ、ピペリジノ、NH2、NHR’、NR’R’O(CO)R’、NH(CO)R’,O(SO)R’もしくはO(POR’)R’であり、ここでR’は非置換のヒドロカルビル(1?4C)であるかまたはOH,NH2、アルキル(1?4C)第2級アミノ、ジアルキル(1?4C)第3級アミノ、モルホリノ、ピロリジノ、ピペリジノ、アルコキシ(1?4C)もしくはハロゲン置換基で置換されたヒドロカルビル(1?4C)である]
で表される化合物、又は医薬として許容される当該化合物の塩を含み、
ここで、上記細胞毒性増強量の化合物又は上記医薬として許容される化合物の塩は、上記腫瘍を有する哺乳動物に、上記化学療法剤を投与してから約1時間後?約2時間後に、又は上記化学療法剤を投与する約1/2時間前?約24時間前に、投与される前記医薬組成物。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された「Sylvia A. Holden, Beverly A. Teicher, et al.;Enhancement of Alkylating Agent Activity by SR-4233 in the FSaIIC Murine Fibrosarcoma, J.NATL. CANCER INST., 1992年,Vol.84, No.3, Pages 187-193(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある(原文は英語)。

「ネズミのFSaIICにおけるアルキル化剤の活性をSR-4233により増強すること
背景:
最も普通に用いられている抗新生物薬は、低酸素状態の腫瘍細胞に対してよりも、正常な酸素のもとでの(normally oxygenated)腫瘍細胞に対してより細胞毒性を発揮する。
目的及び方法:
低酸素状態の腫瘍細胞の、抗腫瘍性のアルキル化剤に対する耐性に対処するべく、新しい細胞毒性の薬剤であるSR-4233の能力を調べるために、我々はSR-4233の、FSaIIC繊維肉腫に罹患したC3H/FeJ マウスから単離した腫瘍細胞及び骨髄細胞に対する細胞毒効果を、SR-4233を単独で使用した場合、および種々の用量のシスプラチン(CDDP)、シクロフォスファミド(CPM),カルムスチン(BCNU)またはメルファラン(L-PAM)と併用した場合について試験した。
結果:
SR-4233のみを投与した場合、腫瘍細胞の殺害は限定的だった。しかしながら、CDDP,CPM,BCNUまたはL-PAMを単一用量で処置する直前に(just before)SR-4233を投与した場合には、腫瘍細胞及び骨髄細胞に対する細胞毒効果の増加につながる顕著な用量の強化(dose enhancement)が認められた。同様な実験を、へーキスト33342染料の拡散により分離された腫瘍細胞の小集団(subpopulation)について行ったところ、各アルキル化剤をSR-4233と併用することにより、細胞毒性は、明るい(酸素条件下)の細胞に対しても、ほの暗い(低酸素状態の)細胞に対してもともに増加したが、その効果の増加は、ほの暗い細胞に対するものの方が相対的に大きかった。SR-4233及びCDDP,CPM,BCNUまたはL-PAMとを併用して処置された動物における腫瘍の成長の遅れは、各アルキル化剤単独で処置された動物におけるよりも1.6倍?5.3倍大きかった。
結論:我々の結果によれば、SR-4233は、普通に用いられているアルキル化剤の臨床的な効果を改善する潜在能力があるかもしれないことを示している。」

3.対比
上記引用例には、SR-4233を用いて、FSaIIC繊維肉腫に罹患したC3H/FeJ マウスから単離した腫瘍細胞及び骨髄細胞に対する細胞毒効果を、SR-4233を単独で使用した場合、および種々の用量のシスプラチン(CDDP)、シクロフォスファミド(CPM),カルムスチン(BCNU)またはメルファラン(L-PAM)と併用した場合について試験したこと(上記引用例の「目的及び方法」の項)、その結果、SR-4233のみを投与した場合、腫瘍細胞の殺害は限定的だったが、CDDP,CPM,BCNUまたはL-PAMを単一用量で処置する直前に(just before)SR-4233を投与した場合には、腫瘍細胞及び骨髄細胞に対する細胞毒効果の増加につながる顕著な用量の増強が認められたことが記載されている(上記引用例の「結果」の項)。
すなわち、引用例には、SR-4233が、シスプラチン、シクロフォスファミド、カルムスチンまたはメルファランのネズミにおけるFSaIIC繊維肉腫細胞に対する細胞毒性を大幅に増強させるたことが記載されており、引用例には、「ネズミにおけるFSaIIC繊維肉腫細胞に対する、シスプラチン、シクロフォスファミド、カルムスチンまたはメルファランの細胞毒性を大幅に増強させるための医薬組成物であって、SR-4233を含有する医薬組成物」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ネズミにおけるFSaIIC繊維肉腫細胞」、「シスプラチン、シクロフォスファミド、カルムスチンまたはメルファラン」は、それぞれ、本願発明の「化学療法剤での治療に際して感受性である固形腫瘍」、「化学療法剤」に相当し、引用発明の「SR-4233」,すなわち「3-アミノー1,2,4-ベンゾトリアジン1,4-ジオキシド」は、本願請求項1の一般式で表される化合物に包含される。そして、ネズミは哺乳動物である。
したがって、両者は、「化学療法剤での治療に際して感受性である固形腫瘍に対する化学療法剤の細胞毒性を増強するための哺乳動物用の医薬組成物であって、細胞毒性増強量のSR-4233を含むものである」点で一致し、一方、前者においては、SR-4233を、上記化学療法剤を投与してから約1時間後?約2時間後に、又は上記化学療法剤を投与する約1/2時間前?約24時間前に、投与するのに対して、後者においてはこのような記載はない点で一応相違する。

4.当審の判断
そこで、この一応の相違点について以下に検討する。
一般に複数の医薬を投与するにあたっては、投与時期の違いによる医薬としての作用効果や副作用の違い、またコンプライアンスの観点などから、好ましい投与時期を決定することは当然に行われるところである。
そして、引用発明において、投与時期を特定の時期、例えば同時投与等に限定すべき理由はない。
そうすると、医薬組成物の発明である本願発明において、その使用において、当然に検討されるべき投与時期について特定したとしても、このことをもって、引用発明と異なる医薬組成物の発明ということはできない。
また、本願発明は、投与時期を、「上記化学療法剤を投与してから約1時間後?約2時間後に、又は上記化学療法剤を投与する約1/2時間前?約24時間前に、投与される」と特定することにより、SR-4233に関する本件優先権主張日までの既知の用途を拡大したことにはならないし、新たな用途を見いだしたことにもならない。
さらに、投与時期を特定することにより、本願発明が、引用発明と剤型や対象患者群において明確に区別することが可能となるものではない。
したがって、本願発明は、引用発明との対比において新規性を欠くものではないとすることはできない。

なお、請求人は、平成17年3月24日付けで提出した意見書において、「本出願人は、上記2つの医薬が、特定のタイミング・スケジュールに従って各々の別個に投与されるとき、当該2つの医薬の併合投与がシナジー効果を発見したのであります。」と述べて、本願発明は進歩性も有する旨主張している。
本願発明と引用発明が実質的に相違しないことは上記のとおりであるが、2つの医薬を投与するにあたり、好ましい投与時期を決定することは当業者が当然に検討する事項であることは上記のとおりであり、化学療法剤を投与してから約1時間後?約2時間後に、又は上記化学療法剤を投与する約1/2時間前?約24時間前に、投与するといった投与時期自体についても、化学療法剤の投与の前後何れかに投与するといった程度のものであり、普通に使われるしかも広範な投与時期を示すものに過ぎず、また、その奏する効果も、引用例に、化学療法剤とSR-4233の併用により、化学療法剤の細胞毒性が、腫瘍の成長の遅れでみると、各化学療法剤を単独で投与した場合と比較して1.6倍?5.3倍にも達したと、化学療法剤の細胞毒性が格段に増強されることが記載されており、当業者の予測を越えるものではない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-17 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-05 
出願番号 特願平6-227568
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長部 喜幸榎本 佳予子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 穴吹 智子
弘實 謙二
発明の名称 腫瘍の治療方法  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 吉田 維夫  

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