• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01J
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01J
管理番号 1175165
審判番号 不服2003-17426  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-08 
確定日 2008-03-14 
事件の表示 平成 5年特許願第508727号「薄膜ピロ電気画像アレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 5月13日国際公開、WO93/09414、平成 7年 1月26日国内公表、特表平 7-500913〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願明細書および図面
本願は、1992年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1991年11月4日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、「薄膜ピロ電気画像アレイ」の発明に関しており、その明細書および図面は、平成11年11月1日付け、平成14年10月9日付け、平成15年10月8日付け、および平成17年12月27日付けの手続補正書により補正されたとおりのものである。

2.当審拒絶理由
当審は平成17年9月14日付けで、本願はその明細書および図面の記載が不備であり特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を通知した。
そのうち、第2理由3(特許法第36条第4項および第5項違反)は次のものである。
********************************************************************
第2理由
3.請求項5-8に記載の発明で、第1の導電薄膜層(電極)と、第2の導電薄膜層(電極)は、ピロ電気材料の薄膜層を上下でサンドイッチしていない。請求項1-4で記載のように上下の電極でピロ電気材料の薄膜層を上下でサンドイッチして、焦電検出素子を形成するのが普通である。
発明の詳細な説明を参照しても、請求項5-8に係る発明で、放射線検知ができる理由が不明りょうである。
この点で、本願明細書は、特許法第36条第4項、第5項第1,2号の規定を満足しない。
********************************************************************

3.出願人の手続補正及び意見
これに対し、出願人は、平成17年12月27日付けの手続補正書による補正で、補正前の請求項5,6,7に係るものを、それぞれ、請求項番号1,2,3とし、請求項1については、
「【請求項1】
各ピクセルについて行及び列のアドレスを有し、個々のアドレスによって読み出せるように接続されたピクセルのアレイに配列された複数の放射線検出ピクセルを備える放射線検出センサであって、前記放射線検出ピクセルは、
相互に平行で表裏関係にある第1及び第2の表面を有する基板を備え、この基板にはその内部に位置し前記第1の表面に開口部を有する空所が設けられており、
前記空所の前記開口部の一部にわたって位置するマイクロブリッジを備え、このマイクロブリッジは二酸化シリコンおよび窒化シリコンから選択した物質の層であり、前記マイクロブリッジはその縁部に、幅よりも長さの方が大きい少なくとも2つの支持脚部であって、前記基板の前記第1の表面に取り付けられると共に、前記マイクロブリッジを前記空所の上に支持できるようにされた支持脚部を備え、
前記マイクロブリッジの第1の部分上に形成された第1の導電薄膜層を備え、その第1の導電薄膜層はその縁部に第1の導電脚部を有しており、前記第1の導電脚部は前記の少なくとも2つの支持脚部のうちの一方の上にその一方の支持脚部と同じ幅で形成されており、
前記マイクロブリッジの第2の部分上に形成された第2の導電薄膜層を備え、その第2の導電薄膜層はその縁部に第2の導電脚部を有しており、前記第2の導電脚部は前記の少なくとも2つの支持脚部のうちの他方の上にその他方の支持脚部と同じ幅で形成されており、
前記第1の導電薄膜層と前記第2の導電薄膜層および前記マイクロブリッジの第3の部分上に形成されたピロ電気材料の薄膜層を備え、
前記ピロ電気材料の薄膜層上に形成された第3の導電薄膜層を備え、
前記第1の導電薄膜層および前記第2の導電薄膜層は前記ピクセルの電極である
ことを特徴とする放射線検出センサ。」、
と補正するとともに、
意見書において、本願の図5B(意見書では、図Aと呼んでいる)について、
イ)明細書で記載の「フリープレート25」は、共通電極であり、放射光はフリープレートの面に入射する。

ロ)共通電極25と左側電極とで挟まれたピロ電気材料40の左側部分は、上から順にいうと、負正の順で分極しており、それに対して、共通電極25と右側電極とで挟まれたピロ電気材料の右側部分は、正負の順で分極している、

ハ)「ハネウェルインターナショナル社のフェローであって、ピロ電気材料赤外センシングの専門家であり、物理学博士号を有するバレット E.コール博士は、請求項5-7(補正後の請求項1-3)のセンサ構成は作動すると明言しています。」、

ニ)本願の図5Bのものが「デュアルキャパシタ型センサ」である、
と説明し、当審拒絶理由の第2理由3は、根拠がない旨主張している。

4.当審の判断
請求項1における「前記第1の導電薄膜層と前記第2の導電薄膜層および前記マイクロブリッジの第3の部分上に形成されたピロ電気材料の薄膜層を備え、前記ピロ電気材料の薄膜層上に形成された第3の導電薄膜層を備え」において、第1の導電薄膜層、第2の導電薄膜層、第3の導電薄膜層というのは、実施例である本願図5Bにおいてそれぞれ、左側電極(左側の電流搬送脚部20の電極)、右側電極(右側の電流搬送脚部30の電極)及びフリープレート25(共通電極25)に相当しており、請求項1の記載と、本願図5Bは、対応関係がとれている。

意見書のイ)について
本願出願時の明細書には、「フリープレート25」について、それが、導電体であるという記載もなければ、共通電極であるという記載もなく、放射光の入射面はフリープレートのある側か、それとも右側電極、左側電極のある側か、いずれであるのか、何も記載がないが、本願の出願時の明細書の図1Aの説明を参酌して、フリープレートは、共通電極であり、意見書の図Aで図示のように、放射光の入射面はフリープレートのある側であると認める。

意見書のロ)について
本願図5Bについての意見書の説明では、ピロ電気材料(焦電電気材料)の左側部分と、右側部分とでは、分極方向が互いに逆であるとしているが、、何故逆になるのか一切説明がなく、根拠が認められない。
例えば、従来技術に係る特開昭58-182522号公報において、第2頁右上欄第1-9行に、「第4図及び第5図において、(8)は入射赤外線変化量に応じて電荷を発生するタンタル酸リチウム(LiTaO3)結晶等で形成された焦電体ペレット、(9)及び(10)は、夫々……上記ペレット(8)の表、裏面電極で、表面電極(9)は互いに分離され且つ同形状を有する第1及び第2表面電極(9a)(9b)からなっており、裏面電極(10)は、上記ペレット(8)の裏面全面に施されている。」と、本願請求項1と構造的に同一なものが示されている。
但し、この公開公報はペレット1個からなるセンサであり、赤外線を受光するのは分離された第1及び第2表面電極の面側であり、センサ前面を人体が通過すれば、受光する赤外線の入射時刻が(9a)と(9b)とで異なっているのを検知するものであり、それに対して、本願請求項1は、画像を得るためのアレイセンサであり、そのうちの1個のピクセル自体は、通過を検知するためのものではなく、アレイに入射した放射線分布を再生するものであるという点で、違いがあり、また、赤外線を受光するのはフリープレート25の側であるという違いがある。
さて、この公開公報の第2頁左下欄第14行-同頁右下欄第1行に「尚、上記ペレット(8)は、太陽光などからも同様に赤外線を入射するが、この場合は、何ら信号を出力しない。即ち、太陽光などからの赤外線は等量にしてペレット(8)全面に亘って同時に入射して、ペレット(8)の第1及び第2表面電極(9a)、(9b)間には等量の電荷が同時に発生し、従って斯る電荷は互いに相殺するので第2引出線(12b)からの信号出力はない。」と記載されており、この記載内容は、納得できるものである。
この公開公報の記載から考えても、本願請求項1に係る発明は、導電体たるフリープレート25(共通電極25)の下のピロ電気材料において、右側電極で挟まれた部分と、左側電極で挟まれた部分のどちらにおいても、同じ量だけ同方向に分極すると考えるのが当然であり、意見書のように、根拠も示さず単に、反対方向に分極するというのは、納得できない。
意見書は、ロ)が成立するという前提をもとに、本願請求項1の発明が実施できる旨の説明をさらにしているが、前提ロ)に根拠がないから、当業者は本願発明を容易に実施できない。

意見書のハ)について
物理学博士号を有するバレット E.コール博士の明言は証拠として提出されたものではなく採用することができない。
また、コール博士の回答が「請求項5-7(補正後の請求項1-3)のセンサ構成は作動する」という単純なものに過ぎず、画像を得るためのアレイセンサのピクセルとして適切に作動するか、どうかという回答でもなく、意味がない。

意見書のニ)について
特開平2-223825号公報の第1頁右下欄第4-10行で、デュアル型であることについて「従来より一対の焦電素子を1つのパッケージ内に納装したデュアル型と称する焦電センサが提供されている。このような焦電センサでは、人体のように赤外線を発生する物体が両焦電素子の配列方向に移動すると、各焦電素子への赤外線の入射時刻に差が生じるから、物体の移動方向の検出が可能になる」と記載している。
デュアル型とはそのようなものであるが、本願明細書には、各ピクセルがそれぞれデュアルキャパシタ型センサであることの記載がなく、明細書の記載からみて各ピクセルがそれぞれデュアルキャパシタ型センサであることが自明であるとも認められないから、意見書のニ)の説明は、本願明細書記載に基づくものでなく根拠がない。
そして、仮に、各ピクセルがそれぞれデュアルキャパシタ型センサであるとした場合、そのことで、アレイに入射した放射線分布を再生でき画像が得られることになるとも認められないから、その意味でも、意見書のニ)の説明は根拠がない。

したがって、本願明細書は、当業者が請求項1に係る発明を容易に実施できる程度にその発明の目的、構成及び効果を記載したものとは認められないから、平成6年改正前の特許法第36条第4項の規定に違反する。
また、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載していないから、平成6年改正前の特許法第36条第5項第2号の規定に違反する。

5.むすび
したがって、本願は、平成6年改正前の特許法第36条第4項および第5項第2号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-25 
結審通知日 2006-01-31 
審決日 2006-02-15 
出願番号 特願平5-508727
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (G01J)
P 1 8・ 534- WZ (G01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 明央平田 佳規  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 櫻井 仁
菊井 広行
発明の名称 薄膜ピロ電気画像アレイ  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 茂樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 志賀 正武  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ