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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない H01L
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない H01L
管理番号 1175178
審判番号 訂正2006-39013  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-01-30 
確定日 2008-03-31 
事件の表示 特許第2645345号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2645345号は、米国において1987年2月19日になされた出願を基礎出願として、パリ条約による優先権を主張し、昭和63年2月17日に特許出願され、平成9年5月9日にその請求項1ないし55に係る発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成10年2月24日付けで特許異議の申し立てがなされ、平成11年3月12日付けで、請求項1、3、4、7、10、15、19、35、49に係る特許を取り消す決定がなされ、同決定が確定した。
そして、平成15年12月17日付けで、本件請求項40及び43に係る特許について無効審判(無効2003-35518号)の請求がなされ、請求項36、40および46に係る発明についての訂正が認められるとともに、請求項40および43に記載された発明についての特許を無効にするとの審決が平成17年6月24日付けでなされた。その後、平成17年11月2日に同審決を取り消すことを求める訴が提起された。
その後、平成18年1月30日に本件特許第2645345号の請求項5、8、12、22、24、36、38、40および46について訂正明細書に記載のとおりに訂正することを求める本件訂正審判の請求がなされた。

なお、平成17年6月13日付けで、本件特許第2645345号の請求項8及び36に係る特許について無効審判(無効2005-80182号)の請求がなされ、同年8月31日に請求項8について訂正請求がなされ、平成18年1月4日付けで答弁書が提出され、その後、同年1月10日付けで手続が中止されている。

2.訂正事項について
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項5】 前記バリヤ層は、本質的に窒化チタンからなる、請求項4記載のコンタクト。」を
「【請求項5】 前記バリヤ層は、本質的に窒化チタンからなる浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記粘着および接触層がシリコン基板のドープされた領域と接触するところにTiSixコンタクトシリサイド化が実質的に得られ、前記コンタクトプラグは、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項4記載のコンタクト。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の「【請求項8】 前記タングステン導電材料は、前記バリヤ層上に形成される付加的なCVDタングステンシリサイド層上に位置する、請求項7記載のコンタクト。」を、
「【請求項8】 前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、前記粘着および接触層がシリコン基板のドープされた領域と接触するところにTiSixコンタクトシリサイド化が実質的に得られ、前記タングステン導電材料は、CVDによって形成され、前記バリヤ層上に形成される付加的なCVDタングステンシリサイド層上に位置する、請求項7記載のコンタクト。」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の「【請求項12】 前記バリヤ層は、本質的に、窒化チタンからなる、請求項10記載のコンタクト。」を、
「【請求項12】 前記バリヤ層は、本質的に、窒化チタンからなる浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記粘着および接触層は、前記バリヤ層が下にあるドープされた領域に良好に電気的に接触することを保証し、前記コンタクトプラグは、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項10記載のコンタクト。」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の「【請求項22】 前記バリヤ層は、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって析出される、請求項19記載の方法。」を、
「【請求項22】 前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって析出され、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項19記載の方法。」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許請求の範囲の「【請求項24】 前記バリヤ層は、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含む、請求項23記載の方法。」を、
「【請求項24】 前記バリヤ層は、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、前記バリヤ層は、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンとWSix層とを含み、前記WSix層が、前記バリヤ層と前記CVDタングステンとの間に存在する、請求項23記載の方法。」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許請求の範囲の「【請求項36】 前記チタン粘着および接触層は、約100ないし800Åの厚さに析出される、請求項35記載の方法。」を、
「【請求項36】 前記チタン粘着および接触層は、約100ないし800Åの厚さにブランケット析出され、前記バリヤ層は、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンとWSix層とを含み、前記WSix層が、前記バリヤ層と前記CVDタングステンとの間に存在する、請求項35記載の方法。」と訂正する。
(7)訂正事項g
特許請求の範囲の「【請求項38】 前記バリヤ層は、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって形成される、請求項35記載の方法。」を、
「【請求項38】 前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」と訂正する。
(8)訂正事項h
特許請求の範囲の「【請求項40】 前記粘着層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出される、請求項35記載の方法。」を、
「【請求項40】 前記粘着および接触層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」と訂正する。
(9)訂正事項i
特許請求の範囲の「【請求項46】 前記タングステンプラグは、WL_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、請求項45記載の方法。」を、
「【請求項46】 前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、請求項45記載の方法。」と訂正する。

3.訂正拒絶理由通知の概要
当審において平成18年3月24日付けでなされた訂正拒絶理由通知に係る拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正拒絶理由通知書の第3?18頁の「2.訂正の目的の適否について」において検討したとおり、
(a)訂正事項aないしhについての訂正、言い換えると、請求項5,請求項8,請求項12,請求項22,請求項24,請求項36,請求項38及び請求項40についての訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正でもなく、且つ、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり、
(b)訂正事項iについての訂正、言い換えると、請求項46についての訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

仮に、請求項5,請求項8,請求項12,請求項22,請求項24,請求項36,請求項38及び請求項40についての訂正が、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないものとして、訂正後の特許請求の範囲の請求項5,請求項8,請求項12,請求項22,請求項24,請求項36,請求項38、請求項40及び請求項46に係る発明について、独立特許要件の検討を行う。

(2)独立特許要件について
(a)訂正後の各請求項に係る発明について
訂正明細書の請求項5に係る発明は、請求項4を引用し、請求項4に係る発明は請求項3を引用し、請求項3に係る発明は請求項1を引用しており、訂正明細書の請求項8に係る発明は、請求項7を引用し、請求項7に係る発明は請求項1を引用しており、訂正明細書の請求項12に係る発明は、請求項10を引用しており、訂正明細書の請求項22に係る発明は、請求項19を引用しており、訂正明細書の請求項24に係る発明は、請求項23を引用し、請求項23に係る発明は請求項19を引用しており、訂正明細書の請求項36、請求項38及び請求項40に係る発明は、請求項35を引用しており、訂正明細書の請求項46に係る発明は、請求項45を引用し、請求項45に係る発明は請求項44を引用し、請求項44に係る発明は請求項35を引用しているから、訂正明細書の請求項5,請求項8,請求項12,請求項22,請求項24,請求項36,請求項38,請求項40及び請求項46に係る発明は、以下のとおりであると認める。
「【請求項5】 半導体表面上に、前記半導体表面のドープされた領域の部分まで形成される少なくとも1つの絶縁層を介して、コンタクトホールに形成される安定な低抵抗コンタクトであって、(a)前記少なくとも1つの絶縁層を介してかつ前記ドープされた領域の前記部分と接触して、少なくとも前記コンタクトホールの壁に沿って形成されるチタンの粘着および接触層と、(b)前記粘着および接触層上を覆って形成されるバリヤ層、および(c)前記バリヤ層上を覆って形成されかつ少なくとも実質的に前記コンタクトホールを充填する導電材料を含み、(d)前記導電材料からなるコンタクトプラグは、前記コンタクトホール内にのみ形成されるとともに前記コンタクトプラグに接触するパターニングされた導電配線とは異なる材料からなり、
前記バリヤ層は、タングステン、モリブデン、チタンタングステン、窒化チタン、窒化チタンタングステン、窒化タングステン、窒化モリブデン、クロム、クロム-酸化クロムおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含み、
前記バリヤ層は、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含み、
前記バリヤ層は、本質的に窒化チタンからなる浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記粘着および接触層がシリコン基板のドープされた領域と接触するところにTiSixコンタクトシリサイド化が実質的に得られ、前記コンタクトプラグは、CVDによって形成されたタングステンを含む、コンタクト。」(以下、「訂正発明5」という。)
「【請求項8】 半導体表面上に、前記半導体表面のドープされた領域の部分まで形成される少なくとも1つの絶縁層を介して、コンタクトホールに形成される安定な低抵抗コンタクトであって、(a)前記少なくとも1つの絶縁層を介してかつ前記ドープされた領域の前記部分と接触して、少なくとも前記コンタクトホールの壁に沿って形成されるチタンの粘着および接触層と、(b)前記粘着および接触層上を覆って形成されるバリヤ層、および(c)前記バリヤ層上を覆って形成されかつ少なくとも実質的に前記コンタクトホールを充填する導電材料を含み、(d)前記導電材料からなるコンタクトプラグは、前記コンタクトホール内にのみ形成されるとともに前記コンタクトプラグに接触するパターニングされた導電配線とは異なる材料からなり、
前記導電材料は、タングステン、モリブデンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択され、
前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、前記粘着および接触層がシリコン基板のドープされた領域と接触するところにTiSixコンタクトシリサイド化が実質的に得られ、前記タングステン導電材料は、CVDによって形成され、前記バリヤ層上に形成される付加的なCVDタングステンシリサイド層上に位置する、コンタクト。」(以下、「訂正発明8」という。)
「【請求項12】 半導体表面上に、前記半導体表面のドープされた領域の部分まで形成される少なくとも1つの絶縁層を介して、コンタクトホールに形成される安定な低抵抗コンタクトであって、(a)前記少なくとも1つの絶縁層を介してかつ前記ドープされた領域の前記部分と接触して、少なくとも前記コンタクトホールの壁に沿って形成されるチタンの粘着および接触層、(b)前記粘着および接触層上を覆って形成される窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステン、窒化硼素からなる群からなる選択される材料を含むバリヤ層、および(c)前記バリヤ層上に形成されかつ少なくとも実質的に前記コンタクトホールを充填する、その場的にドープされたポリシリコンならびにCVDまたはバイアススパッタリングされたタングステンおよびモリブデンからなる群から選択される導電材料を含み、
前記バリヤ層は、本質的に、窒化チタンからなる浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記粘着および接触層は、前記バリヤ層が下にあるドープされた領域に良好に電気的に接触することを保証し、前記コンタクトプラグは、CVDによって形成されたタングステンを含む、コンタクト。」(以下、「訂正発明12」という。)
「【請求項22】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)半導体基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って少なくとも1つの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に前記少なくとも1つの絶縁層を介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記ホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域と接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層を形成し、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)バリヤ層を前記粘着および接触層と接触して形成し、前記バリヤ層は前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成することを含み、(g)前記コンタクトプラグは、前記コンタクトホール内にのみ形成するとともに前記コンタクトプラグに接触するパターニングされた導電配線とは異なる材料によって形成し、
前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって析出され、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、方法。」(以下、「訂正発明22」という。)
「【請求項24】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)半導体基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って少なくとも1つの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に前記少なくとも1つの絶縁層を介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記ホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域と接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層を形成し、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)バリヤ層を前記粘着および接触層と接触して形成し、前記バリヤ層は前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成することを含み、(g)前記コンタクトプラグは、前記コンタクトホール内にのみ形成するとともに前記コンタクトプラグに接触するパターニングされた導電配線とは異なる材料によって形成し、
前記バリヤ層は、タングステン、モリブデン、チタンタングステン、窒化チタン、窒化チタンタングステン、窒化タングステン、窒化5モリブデン、クロム、クロム-酸化クロム、および窒化硼素からなる群から選択される材料を含み、
前記バリヤ層は、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、前記バリヤ層は、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンとWSix層とを含み、前記WSix層が、前記バリヤ層と前記CVDタングステンとの間に存在する、方法。」(以下、「訂正発明24」という。)
「【請求項36】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
前記チタン粘着および接触層は、約 100 ないし800Åの厚さにブランケット析出され、前記バリヤ層は、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンとWSix層とを含み、前記WSix層が、前記バリヤ層と前記CVDタングステンとの間に存在する、方法。」(以下、「訂正発明36」という。)
「【請求項38】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、方法。」(以下、「訂正発明38」という。)
「【請求項40】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
前記粘着および接触層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む、方法。」(以下、「訂正発明40」という。)
「【請求項46】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
(a)前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層は、前記絶縁層上にかつ前記コンタクトホール内に析出され、(b)レジスト層は、前記コンタクトホールを実質的に完全に充填するのに十分前記バリヤ層上にかつ前記コンタクトホール内にブランケット析出され、(c)前記レジストおよび前記バリヤ層ならびに粘着および接触層は、前記絶縁層を露出するためにブランケットエッチングされ、前記コンタクトホールにレジストのプラグを残しかつそれによって前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層を前記ドープされた領域の表面および少なくとも前記コンタクトホールの前記壁の部分に沿って保持し、かつ(d)レジストの前記プラグを前記コンタクトホールから除去し、
タングステンは、導電材料の前記コンタクトプラグを形成するために、前記コンタクトホールにのみ選択的にCVD析出され、
前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、方法。」(以下、「訂正発明46」という。)」

(b)引用刊行物
刊行物1.特開昭61-35517号公報(請求人が提出した甲第2号証)
刊行物2.G.Higenlin、C.Wieczorek、V.Grewal、”A CONTACT FILLING PROCESS WITH CVD-TUNGSTEN FOR MULTILEVEL METALLIZATION SYSTEMS”1986年、PROCEEDINGS THIRD INTERNATIONAL IEEE VLSI MULTILEVEL INTERCONNECTION CONFERENCE, pp.443-449 (請求人が提出した甲第12号証)
刊行物3.K. Suguro et al.,“High Aspect Ratio Hole Filling with CVD Tungsten for Multi-level Interconnection”,Extended Abstracts of the 18th (1986 International) Conference on SOLID STATE DEVICES AND MATERIALS,1986年8月20日,pp.503-506(請求人が提出した甲第6号証)
刊行物4.Suresh Sachdev and Sunil D. Mehta,“TUNGSTEN INTERCONNECTS IN VLSI”,Tungsten and Other Refractory Metals for VLSI Applications,1986,pp.161-171(請求人が提出した甲第3号証)
刊行物5.特開昭61-51917号公報(請求人が提出した甲第5号証)
刊行物6.特開昭61-248442号公報(請求人が提出した甲第4号証)
刊行物7.David W. Woodruff et al.,“ADHESION OF NON-SELECTIVE CVD TUNGSTEN TO SILICON DIOXIDE”,Tungsten and Other Refractory Metals for VLSI Applications,Materials Research Society発行,1986,pp.173-183(請求人が提出した甲第7号証)
刊行物8.D.C. PAINE et al.,“MICROSTRUCTURAL CHARACTERIZATION OF LPCVD TUNGSTEN INTERFACES”,1985 Materials Research Society,pp.117-123(請求人が提出した甲第11号証)
刊行物9.S. Ogawa et al.,“THERMALLY STABLE W/SILICIDE/Si CONTACT”,International Electron Devices Meeting, 1986 iedm technical digest,1986年12月7日,pp.62-65(請求人が提出した甲第8号証)

(c)対比・判断
上記訂正拒絶理由通知書の第32?69頁の「(2)独立特許要件について(b)刊行物について及び(c)対比・判断」において検討したとおり、
訂正発明5,8,12,22,24,36,38及び40については、上記刊行物1ないし7、及び9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができず、
訂正発明8は、発明の構成が明りょうでなく、訂正された請求項8は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではないから、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、
訂正発明46は、刊行物1ないし刊行物9に記載された発明をどのように組み合わせても、当業者が容易に想到し得るものではないから、訂正発明46は、特許法第29条第2項の規定に違反したものとはいえず、また、その他に、訂正発明46について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

(3)むすび
以上のとおり、請求項5,8,12,22,24,36,38及び40についての訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり、また、仮に、請求項5,8,12,22,24,36,38及び40についての訂正が、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものであって、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないものとしても、訂正発明5,8,12,22,24,36,38及び40は特許出願の際独立して特許を受けうることができるものではないから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないから、当該訂正は認められない。

4.手続補正の適否
これに対して、平成18年5月18日付けの手続補正書(審判請求書)による手続補正(以下、「本件補正」という。)により、平成18年1月30日付けの審判請求書に添付した訂正明細書の請求項5、8、12、22、24及び36についての訂正事項aないしfを削除し、訂正明細書の請求項38,40及び46についての訂正事項gないしiを訂正事項aないしcに繰り上げた。
本件補正は、訂正事項aないしfを削除し、訂正事項gないしiを訂正事項aないしcに繰り上げるものであるから、審判請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第131条第2項の規定に適合するので、当該補正を認める。

5.本件補正により補正された平成18年1月30日付け審判請求書(以下、「本件審判請求書」という。)において、請求人が求める訂正の内容について
5-1.訂正の内容
上記4.で検討したとおり、本件補正は認められるので、本件審判請求書に添付した訂正明細書における訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項38】 前記バリヤ層は、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって形成される、請求項35記載の方法。」を、
「【請求項38】 前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の「【請求項40】 前記粘着層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出される、請求項35記載の方法。」を、
「【請求項40】 前記粘着および接触層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の「【請求項46】 前記タングステンプラグは、WL_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、請求項45記載の方法。」を、
「【請求項46】 前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、請求項45記載の方法。」と訂正する。

5-2.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、「前記バリヤ層」の後に「窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、」を追加すること(訂正事項a-1)と、「スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって形成される」を「スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」と訂正すること(訂正事項a-2)と、「コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」の後に「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」を追加すること(訂正事項a-3)に区分できる。

(訂正事項a-1について)
訂正事項a-1は、「前記バリヤ層」の後に、「窒化チタンを含む」「バリヤ層であり、」を追加すること(訂正事項a-1-1)と、「前記バリヤ層」の後に、「浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、」を追加すること(訂正事項a-1-2)とに更に区分して検討する。
(1-a)(訂正事項a-1-1について)
訂正明細書の請求項38に係る発明は、請求項35を引用しており、請求項35には、「バリヤ層」について、「(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され」ると記載され、また、訂正事項a-1-1についての訂正により、請求項35に記載される「バリヤ層」の材料について、「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料」の中から「窒化チタン」を選択して、「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む」「バリヤ層であ」ると限定したものであるから、訂正事項a-1-1についての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項a-1-1についての訂正は、本件特許明細書の「バリヤ材料は、その優れたバリヤ特性のため、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンまたは窒化硼素を含む。」(特許公報第7頁右欄第22?25行)の記載から明らなように、訂正前の請求項38に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。
(1-b)(訂正事項a-1-2について)
訂正明細書の請求項38に係る発明は、請求項35を引用しているが、「前記バリヤ層」が「浸食およびウォームホールのバリヤ層であ」る点については請求項35には記載されておらず、本件特許明細書には、「浸食およびウォームホール」について以下のとおり記載されている。
(1-b1)「酸化物/シリコン境界面での浸食および下にあるシリコンへのウォームホール損傷がある。」(特許公報第5頁右欄第42?44行)
(1-b2)「フラッシュタングステンの析出方法は、選択タングステンの析出方法に非常に類似している。このフラッシュタングステンは、それに関する、選択タングステン法と同じ問題、すなわち、浸食およびウォームホール損傷を有する。」(特許公報第6頁左欄第4?8行)
(1-b3)「この発明のコンタクトは、選択性に欠けること、酸化物-シリコン境界面での浸食および他のコンタクト機構に関連するウォームホールを避ける。」(特許公報第6頁右欄第45?47)
(1-b4)「この発明の利点は、析出中に、CVDタングステンプラグ法の場合、浸食およびウォームホール発生の原因となる気体CVDタングステン種は、層18および層20があるため下にあるシリコンと決して接触せず、それによってそのようないかなる損傷も防ぐ。これはこの発明の重要な技術上の利点である。」(特許公報第8頁左欄第20?25行)
(1-b5)「従来の選択タングステン法を越えるこの方法の利点は、タングステン析出反応は、下にあるシリコン10がバリヤ層20によって遮蔽されているので、シリコン10と直接接触して生じないということである。したがって、浸食およびウォームホールのような共通の問題は、接合部10がバリヤ層20によって保護されているので生じない。」(特許公報第8頁右欄第17?22行)
これらの記載より、本件発明において、「浸食およびウォームホール」を防止するためには、層18(粘着および接触層)及び層20(バリヤ層)の両層がコンタクトホールに形成されていること(前提条件1)が必要であると共に、「浸食およびウォームホール」が発生するためには、タングステンCVDの原料ガスが使用されること、言い換えると、タングステンプラグとして形成されるタングステンがCVDで形成されること(前提条件2)が、前提条件となっていることが明らかである。
ここで、各前提条件について検討する。
(前提条件1について)
訂正明細書の請求項38に係る発明は、請求項35を引用しており、請求項35には、
「(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、
(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、」と記載されており、「粘着および接着層」及び「バリヤ層」がコンタクトホールに順次形成されることが明らかである。
(前提条件2について)
訂正明細書の請求項38に係る発明は、請求項35を引用しており、請求項35には、
「(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成される」と記載されると共に、訂正明細書の請求項38には、コンタクトプラグについて、「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」と記載されているから、コンタクトプラグとして形成されるタングステンがCVDで形成されることは明らかである。
したがって、「浸食およびウォームホール」を防止するための上記前提条件1及び2を満たしている訂正明細書の請求項38に係る発明において、「前記バリヤ層」の後に、「浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、」を追加することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項a-1-2についての訂正は、上記(1-b1)ないし(1-b5)の本件特許明細書の記載から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項38に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。

(訂正事項a-2について)
訂正事項a-2についての訂正は、バリヤ層を形成する部分について、「コンタクトホールの底部だけでなく側壁に」形成することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
そして、訂正事項a-2についての訂正は、本件特許明細書の「・・・Ti/TiN膜は、バイアの底部だけでなく側壁にも形成される。」(特許公報第9頁左欄第13及び14行)の記載から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項38に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。

(訂正事項a-3について)
訂正明細書の請求項38に係る発明は、請求項35を引用しており、請求項35には、「コンタクトプラグ」について、「(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成される」と記載されており、また、訂正事項a-3についての訂正により、請求項35に記載される「コンタクトプラグ」の材料について、「タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料」の中から「タングステン」を選択して、「前記タングステンプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」と限定したものであるから、訂正事項a-3についての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項a-3についての訂正は、本件特許明細書の「層22は、等角析出可能な導電材料を含む。そのような材料の好ましい例は、CVDまたはバイアススパッタリングされたタングステンまたはモリブデンあるいはその場的にドープされたCVDポリシリコンを含む。」(特許公報第7頁右欄第48行?第8頁左欄第1行)の記載から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項38に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。

よって、訂正事項aについての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ、訂正前の請求項38に係る発明の技術的範囲を変更又は拡張するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、「前記粘着層」を「前記粘着および接触層」と訂正すること(訂正事項b-1)と、「前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出される」を「前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、」と訂正すること(訂正事項b-2)と、「前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、」の後に「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」を追加すること(訂正事項b-3)と、「コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」の後に「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む」を追加すること(訂正事項b-4)に区分できる。

(訂正事項b-1について)
訂正事項b-1についての訂正は、「前記粘着層」を「前記粘着および接触層」と訂正することであって、訂正前の請求項40が引用する請求項35には、「粘着および接触層」又は「前記粘着および接触層」と統一的に記載されており、また、訂正前の請求項40に記載される「前記粘着層」に対応する「粘着層」は、引用する請求項35には記載がなく、「前記粘着層」が「前記粘着および接触層」の誤記であることは、明らかであるから、訂正事項b-1についての訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。
(訂正事項b-2について)
訂正事項b-2についての訂正は、「前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出される」の後に「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」を追加するために、「析出される」を「析出され、」と訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(訂正事項b-3について)
訂正事項b-3は、「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、」を追加すること(訂正事項b-3-1)及び「前記バリヤ層は」、「コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、」を追加すること(訂正事項b-3-2)とに更に区分する。
(訂正事項b-3-1について)
訂正事項b-3-1については、前記(訂正事項a-1について)において検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項40の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。
(訂正事項b-3-2について)
訂正事項b-3-2についての訂正は、バリヤ層を形成する部分について、「コンタクトホールの底部だけでなく側壁に」形成することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項b-3-2についての訂正は、本件特許明細書の「・・・Ti/TiN膜は、バイアの底部だけでなく側壁にも形成される。」(特許公報第9頁左欄第13及び14行)の記載から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項40に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。
(訂正事項b-4について)
訂正事項b-4についての訂正は、前記(訂正事項a-3について)において検討したと同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ訂正前の請求項40に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものではない。

したがって、訂正事項bについての訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ、訂正前の請求項40に係る発明の技術的範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cについての訂正は、「前記タングステンプラグは、WL_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される」を「前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される」と訂正するもの、即ち、「WL_(6)」を「WF_(6)」と訂正するものであり、この訂正は、本件特許明細書の「・・・タングステンの選択プラグ形の析出物32は、ホールでのWF_(6)+H_(2)のCVD反応によって形成される。」(本件特許公報第8頁右欄第8?10行)との記載から、誤記の訂正を目的とすることは明らかである。
したがって、訂正事項cについての訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正の目的の適否のまとめ
請求項38、請求項40及び請求項46についての訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、且つ実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

5-3.独立特許要件について
<特許法第29条第2項について>
(1)訂正明細書の特許請求の範囲
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項35、請求項38,請求項40、請求項44,請求項45及び請求項46は次のとおりである。
「 【請求項35】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成される、方法。」
「 【請求項38】 前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」
「 【請求項40】 前記粘着および接触層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む、請求項35記載の方法。」
「 【請求項44】 (a)前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層は、前記絶縁層上にかつ前記コンタクトホール内に析出され、(b)レジスト層は、前記コンタクトホールを実質的に完全に充填するのに十分前記バリヤ層上にかつ前記コンタクトホール内にブランケット析出され、(c)前記レジストおよび前記バリヤ層ならびに粘着および接触層は、前記絶縁層を露出するためにブランケットエッチングされ、前記コンタクトホールにレジストのプラグを残しかつそれによって前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層を前記ドープされた領域の表面および少なくとも前記コンタクトホールの前記壁の部分に沿って保持し、かつ(d)レジストの前記プラグを前記コンタクトホールから除去する、請求項35記載の方法。
【請求項45】 タングステンは、導電材料の前記コンタクトプラグを形成するために、前記コンタクトホールにのみ選択的にCVD析出される、請求項44記載の方法。
【請求項46】 前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、請求項45記載の方法。」

(2)訂正後の各請求項に係る発明
訂正明細書の請求項38及び請求項40に係る発明は、請求項35を引用しており、訂正明細書の請求項46に係る発明は、請求項45を引用し、請求項45に係る発明は請求項44を引用し、請求項44に係る発明は請求項35を引用しているから、訂正明細書の請求項38,請求項40及び請求項46に係る発明は、以下のとおりであると認める。
「【請求項38】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む、方法。」(以下、「訂正発明38」という。)

「【請求項40】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
前記粘着および接触層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であり、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され、前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む、方法。」(以下、「訂正発明40」という。)

「【請求項46】 集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、
(a)前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層は、前記絶縁層上にかつ前記コンタクトホール内に析出され、(b)レジスト層は、前記コンタクトホールを実質的に完全に充填するのに十分前記バリヤ層上にかつ前記コンタクトホール内にブランケット析出され、(c)前記レジストおよび前記バリヤ層ならびに粘着および接触層は、前記絶縁層を露出するためにブランケットエッチングされ、前記コンタクトホールにレジストのプラグを残しかつそれによって前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層を前記ドープされた領域の表面および少なくとも前記コンタクトホールの前記壁の部分に沿って保持し、かつ(d)レジストの前記プラグを前記コンタクトホールから除去し、
タングステンは、導電材料の前記コンタクトプラグを形成するために、前記コンタクトホールにのみ選択的にCVD析出され、
前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される、方法。」(以下、「訂正発明46」という。)」

(3)刊行物に記載された発明
(a)特開昭61-35517号公報(請求人が提出した甲第2号証)(以下、「刊行物1」という。)
本件特許の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1には、第5図?第8図とともに、以下の事項が記載されている。
「本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、半導体基板上に形成された半導体領域と配線層との間に高い信頼性をもつ微細面積のコンタクトを形成する方法に関する。」(第1頁右下欄第16?19行)
「このような問題を解決する技術として、前記N^(+)型シリコン拡散層2とアルミニウム電極5との間に前述の如き界面反応が発生するのを防止するため、障壁金属(バリヤーメタル)を形成する方法が注目されている。
この1例として、窒化チタン(TiN)膜を障壁金属として用いた場合の電極形成方法を第11図(a)?(c)に示す。」(第2頁右上欄第14行?同頁左下欄第1行)
「本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、微細で浅いPN接合をもつ半導体層に対しても接合特性を劣化させることなく、配線層と拡散層との間のオーミックコンタクトを低抵抗とすると共に、信頼性を高めることを目的とする。」(第2頁右下欄第3?7行)
「そこで、本発明は、自然酸化膜の除去およびシリコン拡散層と窒化チタン膜との密着性の向上に着目してなされたもので障壁金属の形成に先立ち、金属膜を形成し、続いて、障壁金属としての窒化金属膜を形成するようにしている。
すなわち、本発明は、拡散層の形成された基板表面に絶縁膜を形成し、この絶縁膜にコンタクト用の窓明けを行い、この窓内にコンタクト用電極を形成するにあたり、まず、金属膜を形成し、続いて窒化金属膜を形成し、該窒化金属膜の上層にコンタクト用の電極を形成することを特徴とするものである。
このように、拡散層と障壁金属としての窒化金属膜との間に金属膜を介在させた場合にも、該窒化金属膜の障壁金属としての特性は変化せず、金属膜の存在によって窒化金属膜の内部応力を緩和できるため密着性が高められると共に、後続する熱処理工程において、該金属膜が、拡散層上に生成される自然酸化膜と反応することにより、拡散層とコンタクト用の電極との電気的接触を良好に保つことが可能となる。
〔発明の効果〕
従って、本発明によれば、微細で浅いPN接合をもつ半導体領域に対しても、障壁金属の存在によって、電極と半導体領域との界面反応が抑制され、また電極形成後の熱処理による接合破壊を確実に防止することができると同時に、低抵抗であってかつ、信頼性の高いオーミックコンタクトを形成することが可能となる。」(第3頁左上欄第4行?同頁右上欄第12行)
「まず、第6図に示す如く、P型シリコン基板31上に、砒素をイオン注入することによって形成されたPN接合深さX=0.1μmのN^(+)型シリコン拡散層32の表面全体に絶縁膜33として酸化シリコン膜を堆積し、これにフォトリソエッチング法により、コンタクト用の窓Wを穿孔する。
次いで、アルゴン雰囲気中でスパッタリングを行い、前記P型シリコン基板表面全体に第7図に示す如く、チタン(Ti)膜34を形成する。このとき、基板温度は20?300℃、アルゴンの圧力は3×10^(-3)Torrとし、膜厚100Åのチタン膜34を得た後、一担、スパッタリングを停止する。
続いて、真空を破ることなく、該スパッタリング装置内に窒素ガスを導入し、アルゴンの分圧3×10^(-3)Torr、窒素の分圧3×10^(-4)?6×10^(-4)Torrとし、基板温度20?300℃の条件下で、再びスパッタリングを行い、第8図に示す如く膜厚1000Åの窒化チタン膜35を形成する。
更に、基板表面全体にアルミニウム膜36を蒸着法によって形成する。そして、このようにして得られたチタン膜34、窒化チタン膜35、アルミニウム膜36からなる3層膜を、フォトリソエッチング法により、同時にパターニングする。この後、フォーミングガス雰囲気中で20分間にわたり、450℃の熱処理を行うことにより、第5図に示したようなコンタクト用電極および電極配線層が完成される。」(第4頁左上欄第6行?同頁右上欄第13行)
「前記熱処理によってチタン膜が、N^(+)型シリコン拡散層と反応し、ケイ化チタンTiSi_(2)が形成される」(第4頁右下欄第4?6行)

そして、刊行物1に記載された発明の「チタン膜」及び「窒化チタン膜」は、第7図、第8図及びこれらの図面に関する記載から、コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ、コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成されていることは明らかである。

よって、刊行物1には、
「半導体装置に低抵抗であってかつ、信頼性の高いオーミックコンタクトを製作する方法であって、
(a)P型シリコン基板に砒素をイオン注入することによってN^(+)型シリコン拡散層を形成し、
(b)前記N^(+)型シリコン拡散層の表面全体を覆って酸化シリコンの絶縁膜を形成し、
(c)前記酸化シリコンの絶縁膜にコンタクト用の窓を穿孔し、
(d)前記P型シリコン基板表面全体にチタン膜をスパッタリングし、前記チタン膜は、前記コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成されるとともに、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され、
(e)続いて、窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ
(f)更に、前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜を蒸着法によって形成し、
前記チタン膜は、スパッタリングにより形成され、前記窒化チタン膜は、コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成される、方法。」
(以下、「刊行物発明1」という。」)及び、

「半導体装置に低抵抗であってかつ、信頼性の高いオーミックコンタクトを製作する方法であって、
(a)P型シリコン基板に砒素をイオン注入することによってN^(+)型シリコン拡散層を形成し、
(b)前記N^(+)型シリコン拡散層の表面全体を覆って酸化シリコンの絶縁膜を形成し、
(c)前記酸化シリコンの絶縁膜にコンタクト用の窓を穿孔し、
(d)前記P型シリコン基板表面全体にチタン膜をスパッタリングし、前記チタン膜は、前記コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成されるとともに、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され、
(e)続いて、窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ
(f)更に、前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜を蒸着法によって形成する、方法。」(以下、「刊行物発明2」という。)が記載されている。

(b)G.Higenlin、C.Wieczorek、V.Grewal、”A CONTACT FILLING PROCESS WITH CVD-TUNGSTEN FOR MULTILEVEL METALLIZATION SYSTEMS”1986年、PROCEEDINGS THIRD INTERNATIONAL IEEE VLSI MULTILEVEL INTERCONNECTION CONFERENCE, pp.443-449 (請求人が提出した甲第12号証)(以下、「刊行物2」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物2には、図1a、図1b及び図2とともに以下の事項が記載されている。
「従来のAlスパッタ技術は、ステップカバレッジ(段差被覆性)が劣っていたので、サブミクロンサイズの信頼できるコンタクト電極形成には十分ではないであろう。・・・
H_(2)によるWF_(6)の還元によって形成されるCVDタングステン膜は、低い堆積温度、コンフォーマルなステップカバレッジ(均一な段差被覆性)、低いコンタクト抵抗および高いエレクトロマイグレーションの安定性という非常に適した特性を有し、最も期待されているプロセスである。非選択的なW(タングステン)堆積およびエッチバックによるW(タングステン)プラグをコンタクトホールに充填することができる。この非選択方法は、タングステンを選択的に堆積させる場合のような浸食効果やウォームホールに関連する問題が何もないことが示された。」(第443頁第13?25行の訳文)
「優れた流動性を有し、ステップアングルが45°以上の非常に高い平坦化を提供するBPSG(4%B、4%P)によって素子分離酸化物が形成された。側壁の角度が約85°の異方性のコンタクトが開口された。レジスト剥離後、ポリマーを除去するためにNF_(3)処理が行われた。タングステンの堆積前のHF浸漬は、タングステン層のコンタクト抵抗および接着性を向上させる。WSix(X≧2.2)およびWの二重層が、450℃のコールドウォールLPCVDリアクタ中で次の化学反応で堆積された。
WF_(6)+2.5SiH_(4)→ WSi_(2.5)+6HF+2H_(2)(1)
およびWF_(6)+ 3H_(2 )→ W +6HF (2)
WSixの厚さは1000Åであり、Wは8000Åであった。
・・・W/WSixのエッチバックは、マグネトロンシステムにおけるSF_(6)/O_(2)プラズマ方法によって行われた。・・・
エッチバックした後のタングステンプラグの形状は図1bに示されている。AlSiがスパッタされる前にW表面から酸化膜を洗浄する様々な工程が行われた。」(第443頁第29行?第444頁第17行の訳文)
「WSix/W堆積とエッチバックによるコンタクト充填工程は、平坦化構造のために非常に適切なものである。WSixは、インターフェース構造として非常に優れたものであり、SiとWの低い接続抵抗は、Alスパイクを防ぐための拡散バリヤとして作用する。」(第445頁第22?26行の訳文)
「図2:Wプラグで充填されたコンタクトホール上のAlSi配線」(第447頁 図2の説明の訳文)

(c)K. Suguro et al.,“High Aspect Ratio Hole Filling with CVD Tungsten for Multi-level Interconnection”,Extended Abstracts of the 18th (1986 International) Conference on SOLID STATE DEVICES AND MATERIALS,1986年8月20日,pp.503-506(請求人が提出した甲第6号証)(以下、「刊行物3」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物3には、図7とともに以下の事項が記載されている。
「加熱したサセプタのあるLPCVD[低圧CVD]コールドウォールリアクタ中で、選択的及び非選択的にタングステンまたはタングステンシリサイドを堆積した。サンプルは装置に配置する前の最後に1%のHF溶液に浸した。下記のような4種類の反応を行なった。

2WF_(6) + 3Si → 2W + 3SiF_(4) (1)
2WF_(6) + 3H_(2) → 2W + 6HF (2)
WF_(6) + 3/2SiH_(4) → W + 3/2SiF_(4) + H_(2) (3)
WF_(6) + 2SiH_(4) → WSi_(2) +6HF + H_(2) (4)
堆積はすべて360?500℃の基板温度で行った。充填のプロセスは図1に示してある。最初にLPCVDでポリシリコンを堆積し、RIEでエッチバックを行うことにより深いホールの内部に300?1000Åのポリシリコンの側壁を形成した。二番目に、反応(1)により500Åのタングステンを選択的に堆積した。三番目に、密着性を上げるために反応(4)により700?800ÅのW-Si合金を堆積した。最後に反応(2)又は(3)により約1μmのブランケットタングステンを成膜した。・・・
高温でのアニールができるように、タングステンとシリコンの間に反応障壁層としてTiN/TiSi_(2)を形成した。」(第503頁左欄第23行?同頁右欄第22行の訳文)
「タングステンは650℃以上ではシリコンと反応してタングステンシリサイドを生成することが知られている。タングステンシリサイドの生成を抑えるために、タングステンとシリコンの間にTiN/TiSi_(2)障壁層を入れた。窒化による自由エネルギーの減少はタングステンよりもチタンの方が大きいので、W/TiN界面は安定となる。」(第504頁左欄第27?32行の訳文)
「図7はW/Si系とW/TiN/TiSi_(2)/Si系における反応速度を示している。シリサイド生成速度は、タングステンの反応速度として表示している。活性化エネルギー値はそれぞれ2.9eVと2.29eVであった。
この違いは後者の反応制限過程がW/Siの反応ではないことを意味している。制限過程はTiN/TiSi_(2)層を通してシリコンの供給過程にあると考えられる。シリコンの供給はTiN層中の局所的欠損部を通してなされる。障壁層を通しての反応速度はW/Si系の速度よりも2?2.5桁低い。・・・タングステン層にはシリコン原子は見られなく、タングステンのシリサイド生成が起こっていないことを意味している。ボロンの外への拡散も又TiN層によって抑制されている。」(第505頁左欄第12?31行の訳文)

(d)Suresh Sachdev and Sunil D. Mehta,“TUNGSTEN INTERCONNECTS IN VLSI”,Tungsten and Other Refractory Metals for VLSI Applications,1986,pp.161-171(請求人が提出した甲第3号証)(以下、「刊行物4」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物4には、図2とともに以下の事項が記載されている。
「ブランケットタングステンは、スパッタされたアルミニウムおよびアルミニウム合金に代わる適切なるVLSI配線である。ブランケットの抵抗率は、8?12μΩcmの範囲(使用されるスキーム[成膜条件]による)であり、それはアルミニウムの抵抗率の3?4倍である。CVDタングステンは、コンフォーマルなステップ・カバレッジ(均一な段差被覆性)という利点を有しており、その結果、1μのタングステン膜を用いて異方性エッチングで形成された1μ×1μのコンタクトを完全に充填する。サンプル・シミュレーションによれば、これらのコンタクト形状においては、スパッタされたAlSiのステップ・カバレッジが非常に劣っており、一方CVDタングステンの場合はコンタクトの完全な平坦性が達成されている(図1参照)。この点は、ブランケットCVDタングステンを使うことによって、1.2μ×1.2μのコンタクトを平坦化した図2のSEM写真にも示されている。」(第161頁下から第15?5行の訳文)
「他の方法は、コールドウォールリアクタを用いてブランケットタングステンを堆積する。1200?1800ÅのWSixの接着性薄膜がタングステンの酸化物に対する接着性を高めるために使用される。・・・これらの堆積は全てコールドウォールGenus8402型CVDシステムによって行われた。」(第165頁第18?23行の訳文)

(e)特開昭61-51917号公報(請求人が提出した甲第5号証)(以下、「刊行物5」という。)
本件特許の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物5には、第2図(a)?(f)とともに以下の事項が記載されている。
「本発明は半導体装置の製造方法に係り、特にシリコン基板面のコンタクトホールに形成する接続配線に関する。」(第1頁左下欄第11?13行)
「近年、半導体集積回路のパターンの緻密化に伴い、コンタクトホールの形状が微小になり、このコンタクトホールの底部にある導電性基板からの接続配線として、通常アルミニウムの配線がなされているが、このアルミニウムがコンタクトホールに完全に充填されないため、接続配線が不完全になる恐れがあり、これに関する改善が要望されている。」(第1頁左下欄第15行?同頁右下欄第2行)
「第2図(a)はシリコン基板10の表面に形成されたnの拡散層11と、このnの拡散層11とP-N接続されるp^(+)の拡散層12があり、又同一基板上に、n^(+)の拡散層13があり、フィールド酸化物14があって、絶縁物である燐珪酸ガラス(PSG)15がそれぞれの領域を絶縁しており、ゲート酸化膜16の上にはポリシリコンゲート17が形成され、コンタクトホール18があるものとする。
第2図(b)は、このシリコン基板面に白金又はパラジウムの金属膜19を形成したものであり、第2図(c)はこの白金又はパラジュームの膜を形成したシリコン基板を熱処理してコンタクトホール18の底部に白金シリサイド又はパラジウムシリサイド等のシリサイド膜20を形成する。
PSG15の表面の白金又はパラジュームの膜はシリコンが無いのでシリサイドは形成されない。
第2図(d)はPSG15の表面の白金又はパラジュームの膜をエッチングによって除去した状態であり、第2図(e)はこのコンタクトホールの部分のみにタングステン21を選択的にCVD方法により、コンタクトホールの深さが埋まる程度の厚みで埋め込み行ったものである。」(第2頁左下欄第3行?同頁右下欄第4行)
「第2図(f)はアルミニウムの配線22を行ったものである。」(第2頁右下欄第10?11行)

(f)特開昭61-248442号公報(請求人が提出した甲第4号証)(以下、「刊行物6」という。)
本件特許の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物6には、第1図、第2図及び第3図とともに以下の事項が記載されている。
「本発明は半導体素子用の電極配線に係り、特に微小接続孔を有する半導体素子に好適な電極配線に関する。」(第1頁左下欄第13?15行)
「第2図に示すようにSi基板1の表面に酸化膜6,拡散層2を形成した後、絶縁膜層3を形成し、パターンニングしたフオトレジスト層4をマスクとして、絶縁膜層3に接続孔7をエツチングにより開孔させた。フオトレジストパターン4を残したまま、基板上にTi膜を電子ビーム加熱蒸着法により30nm厚被着させ、リフトオフ法により、レジスト上のTi膜を除去して、接続孔7の内部にのみTi膜5′を残した。この基板にWをCVD法により選択的に被着させ接続孔7の内部にのみW層8を形成した後、Al層9を設けた(第1図)。」(第1頁右下欄第18行?第2頁左上欄第8行)
「第4図は電極部にTiSi層11を設けたものであるが、上記と全く同様にして、W層8を形成することができた。」(第2頁右上欄第7?9行)
「1・・・Si基板、2・・・高濃度拡散層、・・・、5,5’・・・Ti蒸着層、・・・、8・・・CVDW膜、9・・・Al配線層、・・・、11・・・TiSi_(2)」(図面の簡単な説明)
なお、TiSi_(2)層11を形成した本発明の実施例を記載した図面は、第3図のみであるから、上記「第4図」は「第3図」の明らかな誤記であって、第3図には、Si基板1に高濃度拡散層2を形成し、高濃度拡散層2の上面に接してTiSi_(2)層11を形成し、TiSi_(2)層11上に形成された絶縁膜3の接続孔のTiSi_(2)層11に接する面と接続孔の内部に形成されたTi蒸着膜5’と、Ti蒸着膜5’に接して接続孔に埋め込まれたCVDW膜8とCVDW膜8に接続されたAl配線層9が記載されている。

(g)David W. Woodruff et al.,“ADHESION OF NON-SELECTIVE CVD TUNGSTEN TO SILICON DIOXIDE”,Tungsten and Other Refractory Metals for VLSI Applications,Materials Research Society発行,1986,pp.173-183(請求人が提出した甲第7号証)(以下、「刊行物7」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物7には、以下の事項が記載されている。
「非選択又はブランケットタングステンは、化学気相成長法(CVD)によって、二酸化シリコン及び窒化シリコンを含むウェハーの全表面上に成膜されたタングステン薄膜である。」(第173頁第16?19行の訳文)
「450℃、全圧1.5torrでWF_(6)とH_(2)からコールドウォール反応室中においてCVDタングステン膜が成膜された。」(第178頁第23?25行の訳文)

(h)D.C. PAINE et al.,“MICROSTRUCTURAL CHARACTERIZATION OF LPCVD TUNGSTEN INTERFACES”,1985 Materials Research Society,pp.117-123(請求人が提出した甲第11号証)(以下、「刊行物8」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物8には、以下の事項が記載されている。
「パターン化されたウエハに加えて、無処理のシリコンウエハ上にタングステンをブランケット析出したものを作製した。タングステンの堆積はすべて、3インチのホットウォールLPCVD反応器内で行った。反応器内の全圧は、0.25torrに維持された。堆積温度は、300℃で、ガス流量は、WF_(6)が10cc/minでH_(2)が75cc/minであった。」(第118頁第26?29行の訳文)

(i)S. Ogawa et al.,“THERMALLY STABLE W/SILICIDE/Si CONTACT”,International Electron Devices Meeting, 1986 iedm technical digest,1986年12月7日,pp.62-65(請求人が提出した甲第8号証)(以下、「刊行物9」という。)
本件特許の優先権主張日前に外国において頒布された刊行物9には、以下の事項が記載されている。
「W/TiN/TiSi_(2)/Siコンタクト構造によって、最高温度900℃まで熱安定性を有する低抵抗性のW/シリサイド/Siコンタクト構造が実現できた。TiSi_(2)層の急速熱窒化によりTiNが形成された。」(第62頁左欄第15?20行の訳文)
「多層間の配線に応用できるBPSG・・・処理については、BPSGを流動化させるために750℃の処置が必要となり、多層CMOSデバイスについても、デバイス製造過程におけるビーム再結晶化およびゲート酸化には900℃までの処理に耐えなければならず、Alはその融点が低いため配線の材料としては使えない。」(第62頁左欄第31?40行の訳文)
「タングステンは、高融点金属の中では最も抵抗が低く、しかも化学的に安定性を有するため、配線材としては魅力的である。しかし、W/Siの直接接触を伴う系では650℃以上ではタングステンのシリサイド化反応が起こるため熱安定性がない。」(第62頁左欄第45?49行の訳文)
「タングステン配線が熱アニーリング中にさらにシリサイド化するのを防ぐため、タングステン配線とTiSi_(2)層の間にTiN拡散障壁層を使った。TiN層はTiSi_(2)層の窒化によって形成された。」(第63頁左欄第11?16行の訳文)

(4)対比・判断
(a)訂正発明38について
訂正発明38と刊行物発明1とを対比する。
(ア)刊行物発明1の「P型シリコン基板」、「酸化シリコンの絶縁膜」は、それぞれ訂正発明38の「シリコン基板」、「二酸化シリコンの絶縁層」に相当する。
(イ)刊行物1には、「ところで集積回路の高速化と高集積化は素子の微細化によって実現される。」(第2頁左上欄第7?8行)と記載されているから、刊行物発明1の「半導体装置」が、「集積回路」に用いられることは明らかである。
よって、刊行物発明1の「半導体装置」は、訂正発明38の「集積半導体回路」に相当する。
(ウ)刊行物1には、「本発明は・・・微細で浅いPN接合をもつ半導体層に対しても接合特性を劣化させることなく、配線層と拡散層との間のオーミックコンタクトを低抵抗とすると共に、信頼性を高めることを目的とする。」(第2頁右下欄第3?7行)及び「本発明は、自然酸化膜の除去およびシリコン拡散層と窒化チタン膜との密着性の向上に着目してなされたもので障壁金属の形成に先立ち、金属膜を形成し、続いて、障壁金属としての窒化金属膜を形成するようにしている。」(第3頁左上欄第4?8行)と記載されており、信頼性の高い低抵抗のオーミックコンタクトが、「安定な低抵抗コンタクト」であることは、当業者に明らかである。
したがって、刊行物発明1の「低抵抗であってかつ高信頼性のオーミックコンタクト」は、訂正発明38の「安定な低抵抗コンタクト」に相当する。
(エ)刊行物発明1の「P型シリコン基板に砒素をイオン注入することによって」形成された「N^(+)型シリコン拡散層」は、シリコン基板に砒素をドープすることにより設けられた領域であることは明らかであるから、刊行物発明1の「N^(+)型シリコン拡散層」は、訂正発明38の「ドープされた領域」に相当し、また、刊行物発明1の「P型シリコン基板に砒素をイオン注入することによってN^(+)型シリコン拡散層を形成」することは、訂正発明38の「シリコン基板にドープされた領域を設け」ることに相当する。
(オ)刊行物発明1の「酸化シリコンの絶縁膜」は、刊行物1の第6図の記載から、「N^(+)型シリコン拡散層」の周囲の基板も覆っていることは明らかである。
よって、刊行物発明1の「前記N^(+)型シリコン拡散層の全体表面を覆って酸化シリコンの絶縁膜を形成し」は、訂正発明38の「周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し」に相当する。
(カ)本件特許明細書の「コンタクトホール16(すなわちバイア)は、パターン化されかつドープされた領域およびポリシリコンゲートまで下方にエッチングされる。」(特許公報第7頁左欄第35?37行)及び第1A図の記載から、「コンタクトホール」は、「二酸化シリコンの絶縁層」に形成されているから、訂正発明38の「前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成」することは、「前記二酸化シリコンの絶縁層に実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成」することを意味するものである。
そして、刊行物発明1の「コンタクト用の窓」は、刊行物1の第6図の記載から、「N^(+)型シリコン拡散層」の選択された領域の部分を露出し、かつ、「絶縁膜」の壁によって規定されることは明らかである。
また、刊行物1の「N^(+)型シリコン拡散層32の表面全体に絶縁膜33として酸化シリコン膜を堆積し、これにフォトリソエッチング法により、コンタクト用の窓Wを穿孔する。」(第4頁左上欄第8?11行)及び第6図の記載から、刊行物発明1の「コンタクト用の窓」は、実質的に均一な大きさになっていると認められる。
よって、刊行物発明1の「コンタクト用の窓」は、訂正発明38の「コンタクトホール」に相当し、また、刊行物発明1の「前記酸化シリコンの絶縁膜にコンタクト用の窓を穿孔し」は、訂正発明38の「前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは絶縁層の壁によって規定され」に相当する。
(キ)刊行物発明1の「チタン膜」は、刊行物1の第7図の記載から、「チタン膜」の下にある「N^(+)型シリコン拡散層」に接触して、「絶縁膜」の壁に沿ったところを含む、少なくとも「コンタクト用の窓」に形成されることは明らかである。
また、刊行物1には、「そこで、本発明は、自然酸化膜の除去およびシリコン拡散層と窒化チタン膜との密着性の向上に着目してなされたもので障壁金属の形成に先立ち、金属膜を形成し、続いて、障壁金属としての窒化金属膜を形成するようにしている。」(第3頁左上欄第4?8行)と記載されている。
一方、本件特許明細書には、「この発明に従って、チタンの薄い層18は、コンタクトホール16に形成され、次の層が、下にあるドープされた領域および/またはポリシリコンに良好に粘着しかつ良好に電気的に接触することを保証する。次にバリヤ材料からなる幾分厚い層20は、粘着及び接触層18上を被って形成される。」(特許公報第7頁左欄第47行?同頁右欄第2行)、「適当なバリヤ材料の例は、・・・窒化チタン・・・を含む。」(特許公報第7頁右欄第17?22行)と記載されており、両者は同様の層構造となっているから、刊行物発明1の「チタン膜」は、次の層である「窒化チタン膜」が、「チタン膜」の下にある「N^(+)型シリコン拡散層」に良好に粘着しかつ良好に電気的に接触することを保証することは明らかである。
よって、刊行物発明1の「チタン膜」は、訂正発明38の「チタンの粘着および接触層」に相当し、また、刊行物発明1の「前記P型シリコン基板表面全体にチタン膜をスパッタリングし、前記チタン膜は、前記コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成されるとともに、」は、訂正発明38の「下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし」に相当する。
(ク)刊行物1には、「このような問題を解決する技術として、前記N^(+)型シリコン拡散層2とアルミニウム電極5との間に前述の如き界面反応が発生するのを防止するため、障壁金属(バリヤ-メタル)を形成する方法が注目されている。
この1例として、窒化チタン(TiN)膜を障壁金属として用いた場合の電極形成方法を第11図(a)?(c)に示す。」(第2頁右上欄第14行?同頁左下欄第1行)と記載されているから、刊行物発明1の「窒化チタン膜」が、バリヤ層として機能することは明らかである。
また、刊行物発明1の「窒化チタン膜」は、刊行物1の第7図の記載から、「チタン膜」の下にある「N^(+)型シリコン拡散層」に接触して、「絶縁膜」の壁に沿ったところを含む、少なくとも「コンタクト用の窓」に形成されることは明らかである。
よって、刊行物発明1の「窒化チタン膜」は、訂正発明38の「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層」に相当し、また、刊行物発明1の「続いて、窒化チタン膜を形成し」は、訂正発明38の「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し」に相当する。
(ケ)刊行物発明1において、「バリヤ層」として作用する「窒化チタン膜」は、「チタン膜」の形成に続いて、「前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」るから、「窒化チタン膜」が「コンタクト用の窓」の底部だけでなく側壁に形成された「チタン膜」上に形成されることは明らかであり、また、「窒化チタン膜をスパッタリングにより形成」するので、刊行物発明1の「続いて、窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」るとともに、「前記窒化チタン膜は、コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成される」ことは、訂正発明38の「前記バリヤ層」は、「スパッタリング、CVDまたは反応性アニーリングによって、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成され」ることに相当する。
(コ)刊行物1の第5図には、刊行物発明1の「アルミニウム膜」が、コンタクト用の窓を実質的に充填することが示唆されており、また、同第5図の記載から、刊行物発明1の「アルミニウム膜」は、窒化チタン膜に接触していることは明らかであるから、刊行物発明1の「アルミニウム膜」は、訂正発明38の「コンタクトホールを実質的に充填しかつバリヤ層と接触する導電材料」に相当し、また、刊行物発明1の「更に、前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜」を「形成」することは、訂正発明38の「前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料」を「形成」することに相当する。
(サ)刊行物発明1の「チタン膜」は、「スパッタリングにより形成され」ること、及び、刊行物1の第7図の記載から、全面に析出されること、すなわち、ブランケット析出されることは明らかであるから、刊行物発明1の「前記P型シリコン基板表面全体にチタン膜をスパッタリングし、前記チタン膜は、前記コンタクト用の窓の底部だけでなく側壁にも形成されるとともに、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」る工程は、訂正発明38の「下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され」る工程に相当する。
(シ)訂正発明38には、工程(f)に「前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され」と記載されているが、「コンタクトプラグ」については、訂正発明38において、さらに、「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」とも記載されているから、「コンタクトプラグ」が、「ドープされたポリシリコンからなる」「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」る構成は、訂正発明38には含まれない。

したがって、両者は、
「集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を形成し、前記バリヤ層は、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成される、方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
訂正発明38が、「(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され」るとともに、「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であ」るのに対して、
刊行物発明1が、「窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」る点。

相違点2
訂正発明38が、窒化チタンからなる材料を含む「バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステン」からなる「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」、かつ、「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」のに対して、刊行物発明1は、「窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」、その後「前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜を蒸着法によって形成」している点。

以下、各相違点について検討する。
相違点1について
(1)本件特許明細書には、「導電材料のプラグが、コンタクトを充填するために用いられてもよい。これがなされ得る方法の1つは、CVDによってコンタクト領域にタングステンを選択的に成長させることである。この方法に関連するいくつかの問題・・・酸化物/シリコン境界面での浸食および下にあるシリコンへのウォームホール損傷がある。」(本件特許公報第5頁右欄第33?44行)、「この発明の利点は、析出中に、CVDタングステンプラグ法の場合、浸食およびウォームホール発生の原因となる気体CVDタングステン種は、層18および20があるため下にあるシリコンと決して接触せず、それによってそのようないかなる損傷も防ぐ。これはこの発明の重要な技術上の利点である。」(本件特許公報第8頁左欄第20?25行)、「従来の選択タングステン法を越えるこの方法の利点は、タングステン析出反応は、下にあるシリコン10がバリヤ層20によって遮蔽されているので、シリコン10と直接接触して生じないということである。したがって、浸食およびウォームホールのような共通の問題は、接合部10がバリヤ層20によって保護されているので生じない。」(本件特許公報第8頁右欄第17?22行)と記載されており、訂正発明38において、窒化チタンからなるバリヤ層のみが「浸食およびウォームホール」のバリヤ層となるのではなく、「バリヤ層と接触する導電材料」として「CVDにより形成された」タングステンを析出する工程において、気体CVDタングステン種がシリコン基板と接触しない条件において、タングステンを析出することにより、浸食およびウォームホールの発生が防止できるのである。
言い換えると、訂正発明38においては、「(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され」るという、「粘着および接着層」及び「バリヤ層」をコンタクトホールに順次形成する工程の後に、「前記コンタクトホールを実質的に充填し」かつ「バリヤ層と接触する導電材料」としてCVDによりタングステンを析出して、タングステンプラグを形成する工程において、「粘着及び接着層」と「バリヤ層」により気体CVDタングステン種がシリコン基板と接触しないから、「バリヤ層」が浸食およびウォームホールのバリヤ層として機能するのである。
(2)刊行物2には、「従来のAlスパッタ技術は、ステップカバレッジ(段差被覆性)が劣っていたので、サブミクロンサイズの信頼できるコンタクト電極形成には十分ではないであろう。・・・H_(2)によるWF_(6)の還元によって形成されるCVDタングステン膜は、低い堆積温度、コンフォーマルなステップカバレッジ(均一な段差被覆性)、低いコンタクト抵抗および高いエレクトロマイグレーションの安定性という非常に適した特性を有し、最も期待されているプロセスである。非選択的なW(タングステン)堆積およびエッチバックによるW(タングステン)プラグをコンタクトホールに充填することができる。この非選択方法は、タングステンを選択的に堆積させる場合のような浸食効果やウォームホールに関連する問題が何もないことが示された。」(第443頁第13?25行の訳文)と記載されており、「タングステンを選択的に堆積させる場合」には「浸食効果やウォームホールに関連する問題」のあることが知られていた。
また、刊行物3及び刊行物9には、Si/TiSi_(2)/TiN/W構造において、バリヤ層として作用する窒化チタン上に更にタングステンを形成することが記載されているから、半導体集積回路の導電配線として知られていたタングステン(薄膜)を、刊行物発明1のSi/Ti/TiN/Al構造のアルミニウム膜に代えて、上記両構造において同様な効果を持つバリヤ層の窒化チタン膜上に形成することは当業者にとって何ら困難性なくなし得たものであり、また、結果として、刊行物発明1のP型シリコン基板上に、チタン膜及び窒化チタン膜を介してタングステン(薄膜)が形成されたこととなるので、窒化チタン膜(TiN膜)上にタングステンを形成する際に、タングステンのCVD原料ガスがP型シリコン基板に接触しないことは明らかであるから、窒化チタン膜が「バリヤ層」として機能し、さらに、既知の「浸食効果やウォームホール」が発生しないことは、当業者が容易に予測し得るものである。
(3)さらに、本件特許明細書には、「バリヤ層20は、導電性材料を含み、その導電性材料は、一般的にシリコンをドープする際に使用される典型的なドーパント種(硼素およびリン)に対する拡散バリヤである。バリヤ層20はまた、シリコン拡散に対するバリヤである。適当なバリヤ材料の例は・・・。好ましくは、バリヤ材料は、その優れたバリヤ特性のため、窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンまたは窒化硼素を含む。TiNは、ドーパント種ならびにシリコン拡散に対する証明された拡散バリヤであるので、この発明の実施においても最も好ましい材料である。」(特許公報第7頁右欄第12?27行)と記載されており、訂正発明38の「バリヤ層」が、ドーパント種及びシリコン拡散に対する拡散バリヤであることも明らかであり、一方、刊行物1においても、「コンタクト用電極の形成後の熱処理工程において、Al中へのSiの固溶度が大きいため、拡散層SiがAl中へ溶け出し、Si原子が放出された路にAlがくさび状に侵入するため、接合破壊を生じることがあったが、本発明実施例の方法によって形成コンタクト電極では、チタン膜と窒化チタン膜とが介在しているため、接合破壊を生じることはない。」と記載されており、刊行物発明1において、拡散層SiとAl層が接触する界面に生ずるSiとAlの相互拡散は、拡散層Si上に形成されたチタン膜と窒化チタン膜により防止されることは明らかであるから、シリコン基板上に形成されたチタン膜と窒化チタン膜により、Si原子を含む原子の相互拡散が防止できる点においても、訂正発明38と刊行物発明1は、同等であることが明らかである。

相違点2について
(1)「コンタクトプラグ」について
訂正発明38には、コンタクトプラグについて、「(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され、」及び「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVDによって形成されたタングステンを含む」と記載され、また、本件特許公報には、「この発明の目的は、コンタクト領域にコンタクトプラグを設けることであり・・・。この発明の他の目的は、配線の一体部分としてプラグ材料を用いることができるということである。」(特許公報第6頁右欄第14?19行)、「この導電層22は、コンタクトホール16のまわりの、フィールド領域と呼ばれるパターン化されていない領域からエッチバックされ・・・コンタクトが充填され、第1B図に示されるようなプラグ24を形成する。」(特許公報第8頁左欄第3?7行)、「コンタクトプラグを形成する他の方法は、選択CVD法を用いてバリヤ層上のコンタクトホールにタングステン層を選択的に成長させることである。」(特許公報第8頁左欄第44?46行)及び第1B図の24の記載より、訂正発明38において、「コンタクトプラグ」とは、シリコン基板上に形成された二酸化シリコン絶縁層に形成したコンタクトホールに充填された導電材料(導電膜)であると解することができる。
一方、刊行物1には、「拡散層を有する半導体基板の表面に形成された絶縁膜に対し、前記拡散層へのコンタクト用の窓明けを行う穿孔工程と、形成された窓内に障壁金属を形成する障壁金属形成工程と、障壁金属に接触する電極配線層を形成する電極形成工程とを含む半導体装置の製造方法」(特許請求の範囲第1項)、「基板表面全体にアルミニウム膜36を蒸着法によって形成する。そして、このようにして得られたチタン膜34、窒化チタン膜35、アルミニウム膜36からなる3層膜を、フォトリソエッチング法により、同時にパターニングする。・・・第5図に示したようなコンタクト用電極および電極配線層が完成される。」(第4頁右上欄第5?13行)及び第5図の記載より、アルミニウム膜36は、半導体基板上に形成した絶縁膜に形成した「孔」にほぼ充填された導電膜であって、刊行物発明1の「前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜を蒸着法によって形成」する工程では、アルミニウム膜は「コンタクト用の窓」をほぼ充填する導電膜であると解することができる。
ここで、訂正発明38において、「コンタクトプラグ」が「コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する」ことは記載されているが、コンタクトホールに充填された導電材料と「一体」又は「別体」で電極配線が形成されているかについては記載されていない。
したがって、半導体基板上に形成した絶縁膜に形成した「コンタクト用の窓」にほぼ充填された導電膜(導電材料)であるアルミニウム膜は、「半導体基板上に形成した絶縁膜に形成したコンタクトホール(コンタクト用の窓)に充填された導電材料(導電膜)」である点において、訂正発明38の「コンタクトプラグ」に相当するといえる。
(2)窒化チタン膜(TiN膜)上のアルミニウム膜をCVDタングステン(薄膜)で置き換える点について
(a)刊行物5(第1頁左下欄第15行?同頁右下欄第2行参照)には、コンタクトホールの形状が微小になると、アルミニウムの配線は、コンタクトホールに完全に充填されないため、接続配線が不完全になる恐れがあることが記載されており、また、刊行物4(第161頁下から第15?5行の訳文参照)には、ブランケットタングステンは、スパッタされたアルミニウム又はアルミニウム合金に代わる適切なるVLSI配線であり、また、CVDタングステンは、コンフォーマルなステップ・カバレッジ(均一な段差被覆性)という利点を有することが記載されている。
(b)また、刊行物3(第503頁左欄第23行?同頁右欄第6行の訳文参照)及び刊行物7(第173頁第16?19行の訳文及び第178頁第23?25行の訳文参照)に記載されるとおり、半導体装置の製造工程において、導電層を形成するために、タングステンをCVD反応によるブランケット析出により形成できることは、本件の優先権主張日前より周知の技術である。
(c)刊行物3には、「タングステンは650℃以上ではシリコンと反応してタングステンシリサイドを生成することが知られている。タングステンシリサイドの生成を抑えるために、タングステンとシリコンの間にTiN/TiSi_(2)障壁層を入れた。窒化による自由エネルギーの減少はタングステンよりもチタンの方が大きいので、W/TiN界面は安定となる。」(第504頁左欄第27?32行の訳文)、「図7はW/Si系とW/TiN/TiSi_(2)/Si系における反応速度を示している。シリサイド生成速度は、タングステンの反応速度として表示している。活性化エネルギー値はそれぞれ2.9eVと2.29eVであった。この違いは後者の反応制限過程がW/Siの反応ではないことを意味している。制限過程はTiN/TiSi_(2)層を通してシリコンの供給過程にあると考えられる。シリコンの供給はTiN層中の局所的欠損部を通してなされる。障壁層を通しての反応速度はW/Si系の速度よりも2?2.5桁低い。・・・タングステン層にはシリコン原子は見られなく、タングステンのシリサイド生成が起こっていないことを意味している。ボロンの外への拡散も又TiN層によって抑制されている。」(第505頁左欄第12?31行の訳文)と記載され、刊行物9には、「W/TiN/TiSi_(2)/Siコンタクト構造によって、最高温度900℃まで熱安定性を有する低抵抗性のW/シリサイド/Siコンタクト構造が実現できた。TiSi_(2)層の急速熱窒化によりTiNが形成された。」(第62頁左欄第15?20行の訳文)、「多層間の配線に応用できるBPSG・・・処理については、BPSGを流動化させるために750℃の処置が必要となり、多層CMOSデバイスについても、デバイス製造過程におけるビーム再結晶化およびゲート酸化には900℃までの処理に耐えなければならず、Alはその融点が低いため配線の材料としては使えない。」(第62頁左欄第31?40行の訳文)、「タングステンは、高融点金属の中では最も抵抗が低く、しかも化学的に安定性を有するため、配線材としては魅力的である。しかし、W/Siの直接接触を伴う系では650℃以上ではタングステンのシリサイド化反応が起こるため熱安定性がない。」(第62頁左欄第45?49行の訳文)、「タングステン配線が熱アニーリング中にさらにシリサイド化するのを防ぐため、タングステン配線とTiSi_(2)層の間にTiN拡散障壁層を使った。TiN層はTiSi_(2)層の窒化によって形成された。」(第63頁左欄第11?16行の訳文)と記載されている。
(d)したがって、刊行物3及び9には、Si/TiSi_(2)/TiN/Wの多層構造が記載されるとともに、刊行物3の「タングステン層にはシリコン原子は見られなく、タングステンのシリサイド生成が起こっていないことを意味している。ボロンの外への拡散も又TiN層によって抑制されている。」(第505頁左欄第27?31行の訳文)との記載及び刊行物9の「タングステン配線が熱アニーリング中にさらにシリサイド化するのを防ぐため、タングステン配線とTiSi_(2)層の間にTiN拡散障壁層を使った。」(第63頁左欄第11?14行の訳文)との記載から、TiNがSiに対するバリヤ層として作用することは明らかであるから、刊行物発明1のSi基板/Ti/TiN/Al積層構造の、バリヤ層のTiN上に形成されたAl膜に代えて、バリヤ層のTiN上に形成されたW膜を用いることは当業者が容易になし得るものであって、その際、タングステン(W膜)を、例えば刊行物3に記載される如く、従来周知のCVD技術を用いて形成することは当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。
さらに、刊行物発明1において、窒化チタン膜上に蒸着法によって形成するアルミニウム膜に代えて、窒化チタン膜上にCVD反応によってブランケット析出したタングステンを採用した際に、窒化チタン膜が、タングステンとシリコンとの拡散を防止するバリヤ層として作用することは明らかであり、また、タングステンをシリコン基板に形成したシリコン酸化膜のコンタクトホールにCVDにより薄膜を形成すると、浸食およびウォームホールが発生することは知られており(刊行物2)、刊行物発明1のアルミニウム膜(Al)に代えて、刊行物3及び9に記載されるSi/TiSi_(2)/TiN/W多層構造のタングステンを用いた場合においても、タングステンの下には、順次TiN、Tiが形成されているので、タングステンをCVDで形成する際に、タングステンの原料ガスは、シリコン基板に直接接触することはなく、TiNが浸食およびウォームホールのバリヤ層となることは、「相違点1において」において検討したとおり、当業者であれば容易に予測し得る程度のものに過ぎない。

よって、訂正発明38は、上記刊行物1ないし5、7および9記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(b)訂正発明40について
訂正発明40と刊行物発明1とを対比すると、両者は、上記「(a)訂正発明38について」における、訂正発明38と刊行物発明1との対比の(ア)ないし(ク)、(コ)ないし(シ)と同様のことがいえる(ただし、「訂正発明36」を「訂正発明40」と読み替える。)。

(ス)刊行物1には、「このような問題を解決する技術として、前記N^(+)型シリコン拡散層2とアルミニウム電極5との間に前述の如き界面反応が発生するのを防止するため、障壁金属(バリヤ-メタル)を形成する方法が注目されている。 この1例として、窒化チタン(TiN)膜を障壁金属として用いた場合の電極形成方法を第11図(a)?(c)に示す。」(第2頁右上欄第14行?同頁左下欄第1行)と記載されているから、刊行物発明1の「窒化チタン膜」が、バリヤ層として機能することは明らかである。
そして、訂正発明40には、「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層」と記載されているが、「バリヤ層」については、訂正発明40において、「前記バリヤ層は、窒化チタンを含み」とも記載されているから、「バリヤ層」が、「チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含む」構成は、訂正発明40には含まれない。
よって、刊行物発明1の「窒化チタン膜」は、訂正発明40の「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層」に相当し、この「バリヤ層」が、「窒化チタンを含」むことは明らかであり、また、刊行物発明1の「続いて、窒化チタン膜を形成し」は、訂正発明40の「窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し」に相当する。
(セ)刊行物発明1の「チタン膜」は、「スパッタリング」によって形成されること、「窒化チタン膜」は、「蒸着法」によって形成されること、「アルミニウム膜」は、「蒸着法」によって形成されること、及び、刊行物1の第5図の記載から、刊行物発明1の「チタン膜」、「窒化チタン膜」及び「アルミニウム膜」は、「コンタクト用の窓」内を含む「酸化シリコンの絶縁膜」上の全面に析出されること、すなわち、ブランケット析出されることは明らかである。

したがって、両者は、
「集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を形成し、
前記粘着および接着層、前記バリヤ層および前記導電材料は、前記コンタクトホール内を含む二酸化シリコンの前記層上にブランケット析出され、前記バリヤ層は、窒化チタンを含み、コンタクトホールの底部だけでなく側壁にも形成される、方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
訂正発明40が、「(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され」るとともに、「前記バリヤ層は、窒化チタンを含む浸食およびウォームホールのバリヤ層であ」るのに対して、
刊行物発明1が、「窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」る点。
相違点2
訂正発明40が、窒化チタンからなる材料を含む「バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、前記コンタクトプラグは、タングステン」からなる「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」、かつ、「前記コンタクトプラグは、導電材料として、CVD反応によって形成されたタングステンを含む」のに対して、刊行物発明1は、「窒化チタン膜をスパッタリングにより形成し、前記窒化チタン膜は、前記コンタクト用の窓を充填するのに不十分な厚さに形成され」、その後「前記P型シリコン基板表面全体にアルミニウム膜を蒸着法によって形成」している点。
以下、上記相違点について検討する。

(相違点1について)
「(a)訂正発明38について」の「相違点1について」において検討したとおりである(ただし、「訂正発明38」は、「訂正発明40」と読み替える。)。
(相違点2について)
「(a)訂正発明38について」の「相違点2について」において検討したように、相違点2については、各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである(ただし、「訂正発明38」は、「訂正発明40」と読み替える。)。

よって、訂正発明40は、刊行物1ないし5、7および9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(c)訂正発明46について
訂正発明46と刊行物発明2とを対比すると、両者は、上記「(a)訂正発明38について」における、訂正発明38と刊行物発明1との対比の(ア)?(ク)、(コ)と同様のことがいえる(ただし、「訂正発明38」を「訂正発明46」と読み替え、また、「刊行物発明1」を「刊行物発明2」と読み替える。)。
(ソ)刊行物発明2の「チタン膜」ならびに「窒化チタン膜」は、刊行物1の第8図の記載から、「絶縁膜」上にかつ「コンタクト用の窓」内に析出されることは明らかである。
(タ)訂正発明46には、「前記コンタクトプラグは、タングステンおよびドープされたポリシリコンからなる群から選択される導電材料をCVDによって析出することによって形成され」と記載されているが、「コンタクトプラグ」については、訂正発明46において、さらに、「前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される」とも記載されているから、「コンタクトプラグ」が、「ドープされたポリシリコンからなる」「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」る構成は、訂正発明46には含まれない。

したがって、両者は、
「集積半導体回路に安定な低抵抗コンタクトを製作する方法であって、(a)シリコン基板にドープされた領域を設け、(b)周囲の基板の前記ドープされた領域上を覆って二酸化シリコンの絶縁層を形成し、(c)前記ドープされた領域の選択された領域に、その部分を露出するために、前記二酸化シリコンを介して実質的に均一な大きさのコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールは前記絶縁層の壁によって規定され、(d)下にあるドープされた領域に接触して、前記壁に沿ったところを含む、少なくとも前記ホールにチタンの粘着および接触層をスパッタリングし、前記粘着および接触層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、(e)窒化チタン、チタンタングステン、窒化チタンタングステンおよび窒化硼素からなる群から選択される材料を含むバリヤ層を、前記粘着および接触層と接触して前記コンタクトホールに形成し、前記バリヤ層は、前記コンタクトホールを充填するのに不十分な厚さに形成され、かつ(f)前記コンタクトホールを実質的に充填しかつ前記バリヤ層と接触する導電材料を含むコンタクトプラグを形成し、
(a)前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層は、前記絶縁層上にかつ前記コンタクトホール内に析出される、方法」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
訂正発明46が、「前記コンタクトプラグは、タングステン」からなる「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」、かつ、「(b)レジスト層は、前記コンタクトホールを実質的に完全に充填するのに十分前記バリヤ層上にかつ前記コンタクトホール内にブランケット析出され、(c)前記レジストおよび前記バリヤ層ならびに粘着および接触層は、前記絶縁層を露出するためにブランケットエッチングされ、前記コンタクトホールにレジストのプラグを残しかつそれによって前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層を前記ドープされた領域の表面および少なくとも前記コンタクトホールの前記壁の部分に沿って保持し、かつ(d)レジストの前記プラグを前記コンタクトホールから除去し、
タングステンは、導電材料の前記コンタクトプラグを形成するために、前記コンタクトホールにのみ選択的にCVD析出され、
前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される」工程を有しているのに対して、
刊行物発明2は、これらの工程を有していない点。

以下、上記相違点について検討する。
刊行物2ないし刊行物9には、訂正発明46の構成要素である、「前記コンタクトプラグは、タングステン」からなる「導電材料をCVDによって析出することによって形成され」、かつ、「(b)レジスト層は、前記コンタクトホールを実質的に完全に充填するのに十分前記バリヤ層上にかつ前記コンタクトホール内にブランケット析出され、(c)前記レジストおよび前記バリヤ層ならびに粘着および接触層は、前記絶縁層を露出するためにブランケットエッチングされ、前記コンタクトホールにレジストのプラグを残しかつそれによって前記粘着および接触層ならびに前記バリヤ層を前記ドープされた領域の表面および少なくとも前記コンタクトホールの前記壁の部分に沿って保持し、かつ(d)レジストの前記プラグを前記コンタクトホールから除去し、
タングステンは、導電材料の前記コンタクトプラグを形成するために、前記コンタクトホールにのみ選択的にCVD析出され、
前記タングステンプラグは、WF_(6)とH_(2)とのCVD反応によって選択的に形成される」工程が、記載も示唆もされていないから、訂正発明46は、刊行物発明2に刊行物2ないし刊行物9に記載された発明を組み合わせても、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、刊行物1ないし刊行物9に係る発明をどのように組み合わせても、訂正発明46は導き出せない。

よって、訂正発明46は、刊行物1ないし刊行物9に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反したものとはいえない。また、その他に、訂正発明46について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

6.むすび
以上のとおり、請求項38、40及び46についての訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものであって、且つ、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないものであるが、訂正発明38及び40は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第3項の規定に適合せず、当該訂正は認められない。
 
審理終結日 2006-06-16 
結審通知日 2006-06-21 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願昭63-36471
審決分類 P 1 41・ 856- Z (H01L)
P 1 41・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國島 明弘  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 松本 邦夫
長谷山 健
登録日 1997-05-09 
登録番号 特許第2645345号(P2645345)
発明の名称 安定な低抵抗コンタクト  
代理人 植木 久一  
代理人 辻 淳子  
代理人 二口 治  
代理人 岡田 春夫  
代理人 小池 眞一  
代理人 川中 陽子  
代理人 森 博之  

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