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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1175202
審判番号 不服2007-21917  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2008-03-24 
事件の表示 特願2006-257920号「家庭用コンドーム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年9月22日を出願日とする特許出願であって、平成19年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年10月3日付けで当審の拒絶の理由が通知され、同年12月10日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年4月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「陰茎体の露出面積を増やすために、亀頭被覆部の背部に続く陰茎体被覆筒部を亀頭被覆部より短く、かつ小径にした構成において、
陰茎体被覆筒部と亀頭被覆部との間の中間部は、陰茎体被覆筒部から亀頭被覆部に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状となっていること、
前記の傾斜状の中間部において、勃起亀頭の背部の鉤状凹部と対応する位置に、厚肉部を全周に渡って設けてあること、を特徴とするコンドーム。」

3.引用例
(3-1)当審の拒絶の理由に引用された特開2000-316893号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0013】この発明を実施するにあたって、コンドームが、陰茎の亀頭を収容する亀頭収容部と、一端が亀頭収容部に接続されている筒状部とを備え、この筒状部の長さが、亀頭収容部の長さより短い構成としてもよい。」

(b)「【0014】このような構成によれば、コンドームを陰茎に装着したとき、コンドームの末端(開口端)は、陰茎の本体の付け根まで達しない。したがって、例えば、陰茎の先端側の部分のみが、コンドームに覆われることになる。この結果、装着感が少なくなる。そして、このような効果がありながら、この発明のコンドームは、伸縮性が高い材料で構成されているので、コンドームの不用意な脱落が、起こりにくい。」

(c)「【0027】亀頭収容部12は、その大部分の領域で、筒状部14より大きな内径を有している。亀頭収容部12は、筒状部14との接続部から、一旦、外方に向かって拡がった後、先端に向かうにつれて徐々に縮径する、陰茎の亀頭に対応する形状を有している。この実施の形態のコンドーム10では、亀頭収容部12の最も太い部分では、内径が約32mmに設定されている。」

(d)「【0029】コンドーム10では、筒状部14の長さが、亀頭収容部12の長さより短く設定されている。好ましい長さとしては、例えば、筒状部14の長さ(図1における上下方向の長さ)が約10mm、亀頭収容部12の長さ(図1における上下方向の長さ)が約32mmである。したがって、このコンドーム10は、陰茎に装着されたとき、筒状部14の開口端が、陰茎の本体の付け根まで達しない。したがって、陰茎の先端側の部分のみが、コンドームに覆われることになる。」

(e)「【0055】また、上述したコンドーム10は、各部分の外表面および内表面は平滑であるが、必要に応じて、外表面または内表面に、滑り止めなどの目的の凹凸を付しても良い。この場合、雌型または中子に、コンドームに付す凹凸に対応した凹凸形状を付し、これらの型を使用してコンドームを製造することにより、コンドームの外表面または内表面に、容易に凹凸を付すことができる。」

(f)【図1】には、「亀頭収容部の基端側(筒状部側)端部に続く筒状部を亀頭収容部より短く、かつ小径にした構成において、亀頭収容部の基端側端部は、筒状部から亀頭収容部に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状となっている」ことの図示がある。

上記(a)ないし(f)の記載事項および図示内容より、引用例1には、
「陰茎への装着感を少なくするために、亀頭収容部の基端側(筒状部側)端部に続く筒状部を亀頭収容部より短く、かつ小径にした構成において、
亀頭収容部の基端側端部は、筒状部から亀頭収容部に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状となっており、
凹凸を付してある、コンドーム。」の発明が開示されている。

(3-2)同特開昭52-138396号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(g)公報第1頁左下欄第14から16行
「本発明は、陰茎における亀頭部だけに装着して、その使用感を減少させた性感の向上を図った衛生サツクに関する。」

(h)公報第2頁左上欄第1から8行
「(1)はサツク本体で、その長さ(l1)は陰茎(P)の亀頭部(K)と略々同程度で、基端部より少しの間だんだんと径大になり、最径大部(2)より先端にかけ略々円錐形状である。前記サツク本体(1)の基端部周縁には、断面三角形の環状係止体(3)を設け、装着した際陰茎(P)の亀頭部(K)との段部における凹溝(4)に嵌入して脱落を防止するするようにする。」

(i)第1図および第3図には、「基端部と『サック本体の最径大部(2)』との間は、基端部からサック本体に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状になっており、基端部において、亀頭部の段部における凹溝と対応する位置に、断面三角形の環状係止体を全周に渡って設けてある」ことの図示がある。

上記(g)ないし(i)の記載事項および図示内容より、引用例2には、
「基端部と『サック本体の最径大部(2)』との間は、基端部からサック本体に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状になっており、
脱落を防止するために、基端部において、亀頭部の段部における凹溝と対応する位置に、断面三角形の環状係止体を全周に渡って設けてある、衛生サック。」の発明が開示されている。

4.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
○後者の「陰茎」、「筒状部」、「亀頭収容部の基端側(筒状部側)端部」は、前者の「陰茎体」、「陰茎体被覆筒部」、「陰茎体被覆筒部の背部,陰茎体被覆筒部と亀頭被覆部との間の中間部」のそれぞれに相当している。

○後者の「陰茎(陰茎体)への装着感を少なくするために・・・筒状部(陰茎体被覆筒部)を亀頭収容部(亀頭被覆部)より短く」は、筒状部(陰茎体被覆筒部)が亀頭収容部(亀頭被覆部)より短くなることで、陰茎(陰茎体)の露出面積が大きくなって、これにより装着感が少なくなっていることから、「陰茎(陰茎体)への装着感を少なくする」が「陰茎体の露出面積を増やす」に対応しているので、前者の「陰茎体の露出面積を増やすために・・・陰茎体被覆筒部を亀頭被覆部より短く」に対応している。

○後者の「凹凸を付して」と前者の「厚肉部を設けて」とは、「変形部を設けて」という点で共通である。

上記からして、両者は、
「陰茎体の露出面積を増やすために、亀頭被覆部の背部に続く陰茎体被覆筒部を亀頭被覆部より短く、かつ小径にした構成において、
陰茎体被覆筒部と亀頭被覆部との間の中間部は、陰茎体被覆筒部から亀頭被覆部に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状となっており、
変形部を設けてある、コンドーム。」という点で一致し、
前者では、傾斜する中間部を有するコンドームに変形部を設けることについて、「中間部において、勃起亀頭の背部の鉤状凹部と対応する位置に、厚肉部を全周に渡って設けてある」のに対して、後者では、上記事項が明らかにされていない点で相違している。(以下、「相違点」という。)

上記相違点について検討する。
上記3.(3-2)で示したように、引用例2には、
「基端部と『サック本体の最径大部(2)』との間は、基端部からサック本体に向かって、直径が徐々に増大し傾斜状になっており、
脱落を防止するために、基端部において、亀頭部の段部における凹溝と対応する位置に、断面三角形の環状係止体を全周に渡って設けてある、衛生サック。」の発明が開示されている。

ここで、引用例2記載の発明の「亀頭部の段部における凹溝」、「断面三角形の環状係止体」、「衛生サック」は、本願発明の「勃起亀頭の背部の鉤状凹部」、「厚肉部(変形部)」、「コンドーム」のそれぞれに相当している。
また、引用例2記載の発明の「基端部と『サック本体の最径大部(2)』との間」は、その形状等からして、本願発明の「中間部」に対応しており、さらに、これからして、引用例2記載の発明の「基端部」を「中間部の基端部」にいい換えることができる。
上記より、引用例2記載の発明は、傾斜する中間部を有するコンドームに厚肉部(変形部)を設けることについて、脱落を防止するために、「中間部の基端部において、勃起亀頭の背部の鉤状凹部に対応する位置に、厚肉部を全周に渡って設けてある」ものである。
そして、引用例1記載の発明(コンドーム)は、上記3.(3-1)の(e)の「・・・滑り止めなどの目的の凹凸を付しても良い・・・」との記載からすると、滑り止めなどを目的にするものであるが、一般に、コンドームにおいて、脱落を防止することは、普通の課題(目的)である。
よって、引用例1記載の発明における「傾斜する中間部を有するコンドームに変形部を設けること」についても、脱落を防止するために、引用例2記載の発明の上記事項と同じく、「中間部(中間部の基端部)において、勃起亀頭の背部の鉤状凹部と対応する位置に、厚肉部(変形部)を全周に渡って設けてある」ようにすることに格別の困難性があるとはいえない。
したがって、該相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。

上記より、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-07 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-29 
出願番号 特願2006-257920(P2006-257920)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 増沢 誠一
豊永 茂弘
発明の名称 家庭用コンドーム  
代理人 福島 康文  

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