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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1175257
審判番号 不服2005-8454  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-06 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 特願2000-146895「電磁波シールド性光透過窓材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月30日出願公開、特開2001-332889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月18日の出願であって、平成17年3月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月6日に審判が請求されると共に、同年6月1日付けで手続補正がされ、その後、当審において、平成19年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで手続補正がされたものである。

2.本願発明
本願発明は、平成19年11月2日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「フィルム面に、フィルム露出領域が線幅30μm以下のメッシュ状となるようにポリビニルアルコールのドットを形成した後、該フィルム面に水に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成し、次いで、該フィルム面を水と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去することにより、開口率75%以上の格子状の導電材料パターンを形成することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。」(以下、「本願発明1」という。)

3.原査定の理由の概要
平成19年8月29日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平11-298185号公報

4.引用刊行物とその記載事項
当審の拒絶理由にある刊行物1には、次の事項が記載されている。

(a)「透明基体上に、電磁波シールドパターン形状と逆パターンのレジスト層を形成し、次いで金属酸化物または金属硫化物からなる黒色層を全面的に形成し、次いでその上に金属薄膜層を全面的に形成し、次いでレジスト層をその上に積層された黒色層と金属薄膜層とともに除去することを特徴とする透視性電磁波シールド材料の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項3)

(b)「この発明は、各種計測機器やVDT、CRT、PDP(プラズマディスプレイパネル)などディスプレイの前面に配置して、これらの機器から放射される電磁波を遮蔽するとともに表示部を透視することができる電磁波シールド材料とその製造方法に関する。」(段落【0001】)

(c)「レジスト層4は、ポジ型もしくはネガ型レジスト液を透明基体1上に塗布し乾燥させ、パターン露光し、現像することにより得ることができる(図2参照)。レジストパターン形状は、得ようとする電磁波シールドパターン形状と逆パターンにする。すなわち、得ようとする電磁波シールドパターン形状をポジとすれば、このポジに対応するネガとなっている。電磁波シールドパターン形状としては、導電層の線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μmの格子状パターンなどとするとよい。線幅および線間ピッチを決めるには、電磁波シールド材料の電磁波シールドレベルおよび光透過レベルを考慮するとよい。すなわち、電磁波シールドレベルを高くかつ光透過レベルも高くするには、線幅および線間ピッチの両方を小さくするとよい。」(段落【0019】)

(d)「その後、レジスト層4とともに、その上に積層された黒色層2と金属薄膜層3を除去する(図1参照)。レジスト層4を除去するには、水酸化ナトリウム水溶液などの剥離液を用いるとよい。レジスト層4上に形成された黒色層2と金属薄膜層3は、被覆状態が不完全であり、レジスト層4の縁で黒色層2および金属薄膜層3に割れ目が生じ、剥離液が浸入してレジスト層4を膨潤、溶解させる。」(段落【0023】)

(e)「実施例2
厚さ0.1mm、100mm角のポリエステルフィルム上にレジスト層をスクリーン印刷法により全面的に形成し、その後電磁波シールドパターン形状とは逆パターンのマスクで露光、現像をしてレジスト層をパターン化した。
次に、イオンプレーティング法により、酸化銀、銀の順にそれぞれ0.2μmの厚みで黒色層と金属薄膜層とを形成した。
次に、5%の水酸化ナトリウム水溶液を剥離液として用い、レジスト層およびその上の黒色層と金属薄膜層とを除去し、線幅20μm、線間ピッチ100μmの格子状パターンの導電部が形成された透視性電磁波シールド材料を得た。」(段落【0032】?【0034】)

5.当審の判断
(1)引用発明
刊行物1の(a)には、「透明基体上に、電磁波シールドパターン形状と逆パターンのレジスト層を形成し、次いで金属酸化物または金属硫化物からなる黒色層を全面的に形成し、次いでその上に金属薄膜層を全面的に形成し、次いでレジスト層をその上に積層された黒色層と金属薄膜層とともに除去することを特徴とする透視性電磁波シールド材料の製造方法。」が記載されている。
ここで、上記「電磁波シールドパターン形状」とは、(c)の「電磁波シールドパターン形状としては、導電層の線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μmの格子状パターンなどとするとよい。」という記載によると、『線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μmの格子状パターン形状』であるといえる。
そして、上記「透明基体」は、(e)の「厚さ0.1mm、100mm角のポリエステルフィルム上にレジスト層を・・・形成し」という記載によると、『フィルム』であるものも記載されているといえる。

上記記載及び認定事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明が記載されているといえる。

「フィルム上に、線幅10?50μmの格子状パターン形状と逆パターンのレジスト層を形成した後、金属酸化物または金属硫化物からなる黒色層を全面的に形成し、その上に金属薄膜層を全面的に形成し、次いで、該レジスト層及び該レジスト層上に積層された黒色層と金属薄膜層を除去することにより、線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μmの格子状の電磁波シールドパターンを形成する透視性電磁波シールド材料の製造方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「金属薄膜層」は、本願発明1の「導電材料層」に相当する。
そして、引用発明の「格子状パターン形状と逆パターンのレジスト層」は、格子で囲まれた点状、すなわち、ドット状の領域であることは明らかであるし、本願発明1の「ポリビニルアルコールのドット」及び引用発明の「格子状パターン形状と逆パターンのレジスト層」は共に、フィルム面に導電材料層が形成されないようにするマスキング材として機能することも明らかであるから、本願発明1と引用発明は、フィルム面にマスキング材のドットを形成する点で共通するといえる。
また、引用発明の「透視性電磁波シールド材料」は、刊行物1の(b)に記載された「この発明は、・・・PDP(プラズマディスプレイパネル)などディスプレイの前面に配置して、これらの機器から放射される電磁波を遮蔽するとともに表示部を透視することができる電磁波シールド材料とその製造方法に関する。」によると、PDPの前面に配置され、PDPからの電磁波をシールドするための前面フィルタのことであることは当業者にとって明らかであるといえる。一方、本願発明1の「電磁波シールド性光透過窓材」とは、本願明細書の段落【0001】の「本発明はPDP(プラズマディスプレーパネル)の前面フィルタ・・・として有用な電磁波シールド性光透過窓材の製造方法に係り」という記載によると、PDPの前面フィルタのことであるといえる。すると、引用発明の「透視性電磁波シールド材料」は、本願発明1の「電磁波シールド性光透過窓材」に相当するといえる。
そして、引用発明の「線幅10?50μmの格子状パターン形状と逆パターンのレジスト層」が形成されたフィルム上の領域は、「レジスト層及び該レジスト層上に積層された黒色層と金属薄膜層を除去」した後に、フィルム露出領域になることは明らかであり、また、そのときに形成される「線幅10?50μmの格子状パターン形状」は、メッシュ状ともいえるものである。

そうすると、本願発明1と引用発明は、「フィルム面に、フィルム露出領域が線幅30μm以下のメッシュ状となるようにマスキング材のドットを形成した後、該フィルム面に水に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成し、次いで、該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去することにより、格子状の導電材料パターンを形成する電磁波シールド性光透過窓材の製造方法」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点イ:マスキング材が、本願発明1では、「ポリビニルアルコール」であって、「フィルム面を水と接触させてドット及び該ドット上の導電材料層を除去する」点。

相違点ロ:格子状の導電材料パターンが、本願発明1では「開口率75%以上」である点。

(3)相違点についての判断
そこで、上記相違点について検討する。
(3-1)相違点イについて
フィルム面に所定パターンの金属薄膜層を形成する方法として、該フィルム面に、ポリビニルアルコールにより金属薄膜層の逆パターンを形成した後、該フィルム面に金属薄膜層を形成し、次いで、該フィルム面を水と接触させてポリビニルアルコールとその上の金属薄膜層を除去することは、特開昭60-262959号公報、特開平3-26540号公報、特開昭63-130762号公報などに見られるように、本願出願前に周知の技術である。
そうすると、引用発明において、この周知の事項を採用し、レジスト層の材料として「ポリビニルアルコール」を選択し、「フィルム面を水と接触させてドット及び該ドット上の導電材料層を除去する」ことは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
すると、上記相違点イは容易に想到し得たことである。

(3-2)相違点ロについて
引用発明では、線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μmの格子状の電磁波シールドパターンを形成するものである。そして、刊行物1の(e)の「線幅20μm、線間ピッチ100μmの格子状パターンの導電部が形成された透視性電磁波シールド材料」という記載によると、引用発明の具体例である実施例2の電磁波シールドパターンとして、開口率が、大凡、70%(100^(2)/120^(2))に相当する格子状のものが記載されているといえるし、(c)の「線幅および線間ピッチを決めるには、電磁波シールド材料の電磁波シールドレベルおよび光透過レベルを考慮するとよい。すなわち、電磁波シールドレベルを高くかつ光透過レベルも高くするには、線幅および線間ピッチの両方を小さくするとよい。」という記載によると、光透過レベル、すなわち、開口率を高くすることが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明において、上記「線幅10?50μm、線間ピッチ50?500μm」を満たす条件の範囲内で、電磁波シールドパターンの開口率を上記70%よりも高くし、75%以上とすることは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
すると、上記相違点ロは容易に想到し得たことである。

(4)小括
したがって、上記相違点イ及びロは当業者が容易に想到し得たことであるから、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

6.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-24 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願2000-146895(P2000-146895)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
近野 光知
発明の名称 電磁波シールド性光透過窓材の製造方法  
代理人 重野 剛  

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