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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1175280
審判番号 不服2005-22598  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-24 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 特願2000- 26845「アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月10日出願公開、特開2001-217607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成12年2月3日の出願であって、平成16年10月20日付で拒絶理由が通知され、同年12月24日付けで手続補正がされ、平成17年10月19日付けで拒絶査定され、同年11月24日に審判請求がなされるとともに、同年12月26日に手続補正がされたものである。

2.平成17年12月26日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月26日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成17年12月26日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)による特許請求の範囲は、以下のとおりである。

(補正後)
「【請求項1】
多数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板に形成された平衡入出力方式のアンテナ部と、
前記誘電体基板内に形成され、少なくとも前記アンテナ部と接続される入出力部分が平衡入出力方式であるフィルタ部とを有し、
前記アンテナ部とフィルタ部とが前記誘電体基板において一体化され、
前記フィルタ部は、その上下にそれぞれアース電極が形成され、
前記アース電極と前記アンテナ部は、同一平面上にないことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板のうち、前記アンテナ部が形成された誘電体層の誘電率が、前記フィルタ部が形成された誘電体層の誘電率よりも低いことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板内に形成される前記フィルタ部は、
外部と接続される第1の入出力部分が非平衡入出力方式であり、かつ、前記アンテナ部と接続される第2の入出力部分が平衡入出力方式であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部の開放端と容量を構成するアース電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板の外周面に少なくとも入出力端子が形成され、
前記フィルタ部は、前記誘電体基板中に複数の両端開放型の1/2波長共振器がそれぞれ平行に配置されて構成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部とフィルタ部は、前記誘電体基板上、平面的に互いに分離された領域に形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載のアンテナ装置において、
前記複数の1/2波長共振器のうち、アンテナ部側における1/2波長共振器の長さ方向中心に対して線対称の位置に配置された2つの入出力用電極を誘電体基板内に有し、
前記2つの入出力用電極が前記アンテナ部の平衡入出力端子にそれぞれ接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項7記載のアンテナ装置において、
前記2つの入出力用電極は、前記アンテナ部側の1/2波長共振器とそれぞれ容量結合されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項7記載のアンテナ装置において、
前記2つの入出力用電極は、前記アンテナ部側の1/2波長共振器とそれぞれ直接接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項5?8のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記フィルタ部は、前記誘電体基板内において隣接する1/2波長共振器に対して誘電体層を挟んで重なり、かつ、これら隣接する1/2波長共振器を容量結合させる結合調整電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
請求項10記載のアンテナ装置において、
前記結合調整電極が複数形成され、
これら複数の結合調整電極が前記1/2波長共振器の長さ方向中心に対して線対称の位置に形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項12】
請求項5?11のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記フィルタ部は、前記各1/2波長共振器の両開放端に誘電体層を挟んで重なるように配置された内層アース電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項13】
請求項1?12のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部の電極パターンが前記誘電体基板の上面から側面にかけて形成されていることを特徴とするアンテナ装置。」

一方、本件補正前の特許請求の範囲は、平成16年12月24日付け手続補正による、以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
誘電体基板に形成された平衡入出力方式のアンテナ部と、
前記誘電体基板内に形成され、少なくとも前記アンテナ部と接続される入出力部分が平衡入出力方式であるフィルタ部とを有し、
前記アンテナ部とフィルタ部とが前記誘電体基板において一体化されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板内に形成される前記フィルタ部は、
外部と接続される第1の入出力部分が非平衡入出力方式であり、かつ、前記アンテナ部と接続される第2の入出力部分が平衡入出力方式であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部の開放端と容量を構成するアース電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板は、多数の誘電体層が積層されて構成され、かつ、その外周面に少なくとも入出力端子及びアース電極が形成され、
前記フィルタ部は、前記誘電体基板中に複数の両端開放型の1/2波長共振器がそれぞれ平行に配置されて構成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部とフィルタ部は、前記誘電体基板上、平面的に互いに分離された領域に形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載のアンテナ装置において、
前記複数の1/2波長共振器のうち、アンテナ部側における1/2波長共振器の長さ方向中心に対して線対称の位置に配置された2つの入出力用電極を誘電体基板内に有し、
前記2つの入出力用電極が前記アンテナ部の平衡入出力端子にそれぞれ接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項6記載のアンテナ装置において、
前記2つの入出力用電極は、前記アンテナ部側の1/2波長共振器とそれぞれ容量結合されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項6記載のアンテナ装置において、
前記2つの入出力用電極は、前記アンテナ部側の1/2波長共振器とそれぞれ直接接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項4?7のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記フィルタ部は、前記誘電体基板内において隣接する1/2波長共振器に対して誘電体層を挟んで重なり、かつ、これら隣接する1/2波長共振器を容量結合させる結合調整電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項9記載のアンテナ装置において、
前記結合調整電極が複数形成され、
これら複数の結合調整電極が前記1/2波長共振器の長さ方向中心に対して線対称の位置に形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
請求項4?10のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記フィルタ部は、前記各1/2波長共振器の両開放端に誘電体層を挟んで重なるように配置された内層アース電極を有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項12】
請求項4?11のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記誘電体基板のうち、アンテナ部が形成された誘電体層の誘電率とフィルタ部が形成された誘電体層の誘電率とが異なることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項13】
請求項12記載のアンテナ装置において、
アンテナ部が形成された誘電体層の誘電率が、フィルタ部が形成された誘電体層の誘電率よりも低いことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ部の電極パターンが前記誘電体基板の上面から側面にかけて形成されていることを特徴とするアンテナ装置。」

すると、補正後の請求項2に記載した発明特定事項は、補正前の請求項13に記載した発明特定事項に一応対応している。そして、補正後の請求項2は、補正後の請求項1のみ引用している。
一方、補正前の請求項13は、補正前の請求項12を引用し、さらに、補正前の請求項12は、補正前の請求項4?11のいずれか1項を引用し、さらに、補正前の請求項4は、補正前の請求項1?3のいずれか1項を引用している。
したがって、本件補正は、以下の補正事項(a)を含むものである。

[補正後の請求項2に関して]
(a)補正前の請求項13が間接的に引用する補正前の請求項4に記載した発明特定事項から、「前記フィルタ部は、前記誘電体基板中に複数の両端開放型の1/2波長共振器がそれぞれ平行に配置されて構成されていること」を削除する補正。

(2)特許法第17条の2第4項に適合するかについての検討
上記補正事項(a)は、発明特定事項の一部を削除し、特許請求の範囲を拡張するものであり、補正前の請求項13に記載した発明特定事項を限定するものであるということはできないから、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しない。
また、上記補正事項(a)は、明らかに、請求項の削除に該当しない。さらに、誤った記載をその本来の意味内容に正すのもでもなく、不明りょうな記載についてその本来の意味内容を明らかにするものであるとも認められないから、誤記の訂正にも明りょうでない記載の釈明にも該当しない。
したがって、上記補正事項(a)は、特許法第17条の2第4項各号に掲げられた事項を目的とするものでないから、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定を満たすものではない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年12月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたものと認める。(上記「2.(1)(補正前)」参照。)

(2)引用発明
A.原審の拒絶の理由に引用された特開平11-330850号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0007】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態に係る円偏波クロスダイポールアンテナの構成を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)はアンテナ素子のみを抽出して示す平面図である。
【0008】図1の(a)において、Aはアンテナ部であり、Bはバラン部(平行線路/不平行線路の変換用整合トランス部)である。アンテナ部Aは,厚みTを有するブロック状の誘電体10の表面上に、例えばリソグラフ法により幅が0.5mm程度のストリップ導体からなる第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11及び12と、これらのアンテナ素子11,12の各屈曲部にそれぞれ一端を接続された平行二線式のフィーダ13とを設けたものとなっている。誘電体10の裏面には第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11および12から逆方向(図中下方向)へ放射された電波を主放射方向(図中上方向)へ反射し、主放射方向へ放射される電波と合成させるための反射板14が張り付けてある。」(2頁2欄46行?3頁3欄13行、段落7?8)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.及び図1(a)において、円偏波クロスダイポールアンテナは、アンテナ部Aの誘電体10に形成された、第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11,12を有しており、第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11,12は、平行二線式のフィーダ13により、バラン部B(平行線路/不平行線路の変換用整合トランス部)を介して同軸線路に接続されているから、平衡入出力方式であるといえる。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

「誘電体10に形成された平衡入出力方式の第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11,12を有する円偏波クロスダイポールアンテナ。」

B.原審の拒絶の理由に引用された特開2000-22404号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ロ.「【0078】次に、第3の実施の形態に係るフィルタ10Cについて図10?図13を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
【0079】この第3の実施の形態に係るフィルタ10Cは、図10に示すように、第1の実施の形態に係るフィルタ10A(図1参照)とほぼ同じ構成を有するが、図11及び図12に示すように、誘電体基板12の一方の側面に互いに独立に形成された2つの入力端子16A及び16Bと、誘電体基板12の他方の側面に互いに独立に形成された2つの出力端子18A及び18Bを有する点で異なる。
【0080】そして、第5の誘電体層S5の一主面には、一端が第1の入力端子16A(図11参照)に接続され、かつ、前記入力側の共振素子14aと容量結合される第1の入力用電極60Aと、一端が第2の入力端子16B(図12参照)に接続され、かつ、前記入力側の共振素子14aと容量結合される第2の入力用電極60Bと、一端が第1の出力端子18A(図11参照)に接続され、かつ、前記出力側の共振素子14dと容量結合される第1の出力用電極62Aと、一端が第2の出力端子18B(図12参照)に接続され、かつ、前記出力側の共振素子14dと容量結合される第2の出力用電極62Bとが形成されている。」(7頁12欄45行?8頁13欄18行、段落78?80)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.及び図10乃至12において、フィルタ10Cは、誘電体基板12を有し、誘電体基板12内に、第1の入力用電極60A、第2の入力用電極60B、第1の出力用電極62A及び第2の出力用電極62Bが形成されている。また、第1の入力用電極60A、第2の入力用電極60B、第1の出力用電極62A及び第2の出力用電極62Bは、入力用及び出力用とも第1及び第2の2つの電極によって、入力又は出力を行っているから、平衡入出力方式であるといえる。

したがって、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。

「誘電体基板12内に形成され、第1の入力用電極60A、第2の入力用電極60B、第1の出力用電極62A及び第2の出力用電極62Bが平衡入出力方式であるフィルタ。」

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
a.引用発明1の「誘電体10」と本願発明の「誘電体基板」とは、いずれも「誘電体」である点で一致している。
b.引用発明1の「第1,第2のL形ダイポールアンテナ素子11,12」は、本願発明の「アンテナ部」に対応する構成であり、それぞれの間に実質的な差異はない。
c.引用発明1の「円偏波クロスダイポールアンテナ」は、アンテナ装置の一種である。
したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>

「誘電体に形成された平衡入出力方式のアンテナ部を有するアンテナ装置。」

<相違点1>

「アンテナ部」に関し、本願発明は、「誘電体基板」を用いているのに対し、引用発明1は、誘電体であるものの、「基板」ではない点。

<相違点2>

「アンテナ装置」に関し、本願発明は、「誘電体基板内に形成され、少なくともアンテナ部と接続される入出力部分が平衡入出力方式であるフィルタ部とを有し、アンテナ部とフィルタ部とが誘電体基板において一体化されている」ものであるのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

(4)判断
次に、上記相違点1及び2について検討する。
引用発明2の「誘電体基板12」、及び「第1の入力用電極60A、第2の入力用電極60B、第1の出力用電極62A及び第2の出力用電極62B」は、それぞれ本願発明の「誘電体基板」、及び「入出力部分」に相当する。よって、引用発明2は、
「誘電体基板内に形成され、入出力部分が平衡入出力方式であるフィルタ。」
と表現することができる。
そして、例えば、特開平10-303640号公報、特開平7-321550号公報に開示されるように、アンテナ装置において、アンテナ部に、誘電体基板を用いるとともに、アンテナ部とフィルタ部とを誘電体基板において一体化することは周知技術であるから、上記引用発明2を引用発明1に適用することに格別な困難性はなく、アンテナ部に、「誘電体基板」を用いるとともに、アンテナ部とフィルタ部の入出力部分を接続し、本願発明のような構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明1、2及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-23 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-13 
出願番号 特願2000-26845(P2000-26845)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01P)
P 1 8・ 121- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻生 哲朗宮崎 賢司  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 阿部 弘
萩原 義則
発明の名称 アンテナ装置  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千葉 剛宏  

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