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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1175326
審判番号 不服2006-18375  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-26 
確定日 2008-03-28 
事件の表示 平成 8年特許願第118160号「複合電波吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-275296〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成8年4月3日に出願されたもので、平成18年2月9日付け拒絶理由通知書(以下、「本件拒絶理由通知書」という。)が送付され、同年6月15日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定に対して、請求されたもので、平成18年7月26日付け審判請求書が提出されている。
なお、請求人は、審判請求書において、特許請求の範囲を補正する意向を示すものの、手続補正書を提出して、特許請求の範囲を補正したとの事実は認められない。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願は、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない。」

そして、本件拒絶理由通知書には、上記要件を満たしていない理由について、以下の指摘が認められる。

「(イ)請求項1には、「複合電波吸収体」との記載があるが、どのような構成であるため「複合」であるのかが不明確である。
・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。)。
(ニ)請求項1には、「形状とする。」との記載で文章が終了しているが、このような記載では、請求項1に係る発明が、物の発明、方法の発明、又は、物を生産する方法の発明のいずれであるのか不明確である。
(ホ)請求項2?4には、「特徴とする。」との記載で文章が終了しているが、このような記載では、請求項2?4に係る発明が、物の発明、方法の発明、又は、物を生産する方法の発明のいずれであるのか不明確である。
(ヘ)請求項2、4には、図面の記載で代用されている記載があり、その結果、請求項2、4に係る発明の範囲が不明確である。
・・・。」

なお、ここにおける(イ)の理由を、「本件理由(イ)」といい、他についても同様とする。

3.当審の判断

3-1.特許請求の範囲の記載について
この出願の、特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 複合電波吸収体の周囲を導電体によって囲まれ、その複合電波吸収体の形状は凹状に中空部底面の構造を持ち、格子形、ハニカム形、歯形、三角形、若しくは円形状の特徴を持つ形状とする。
【請求項2】 中空部底面に導電体繊維を電波入射方向に向け備え付ける複合電波吸収体を特徴とする。
【図1】10に拡大図を示す。
【請求項3】 複合電波吸収体組立用外枠の周囲電波入射方向の形状をクサビ形とすることを特徴とする。
【請求項4】 電波反射防止クサビ形枠の上部に電波吸収体用クサビ形パッキンを周囲電波入射方向に取り付け電波吸収体として利用する方法を特徴とする。【図3】11に拡大図を示す。【図3】の4に電波反射防止枠のクサビ枠を示す。」

3-2.本件理由について
本件理由(イ)、(ニ)?(ヘ)、それぞれについて、以下に、検討する。

3-2-1.本件理由(イ)について
請求項1には、「複合電波吸収体」との記載が認められ、「複合」の意味が「2種以上のものが合わさって一つとなること。」(「広辞苑第5版、2317頁」、「複合」の項、1998年11月11日、株式会社岩波書店発行 、参照。)であることを考え合わせると、複合電波吸収体とは、2種以上のものが合わさって一つとなっている電波吸収体と解することができる。
そこで、この複合電波吸収体について検討すると、少なくとも、この2種以上といわれるものが、如何なる観点で種類として区別されるものなのかが、請求項1において不明であり、また、この出願の発明の詳細な説明においても、複合電波吸収体について、これを定義するなどして、その内容を規定する記載がある訳でもなく、やはり、不明である。
そして、発明の詳細な説明に、複合電波吸収体の内容を規定する記載がないのであるから、当然といえば、当然であるが、ここには、電波吸収体が2種以上のものが合わさって一つとなっていることの技術的意義を示す記載はなく、複合電波吸収体なるものが技術的に意味ある思想として記載されてはいない。
してみると、請求項1に記載の複合電波吸収体は、技術的思想である発明を特定する事項としては、不明確といえ、結局、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることに適合しているとはいえない。
また、発明の詳細な説明においても、請求項1に係る発明を特定する事項である「複合電波吸収体」が、上述したように、不明であるから、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しているとはいえない。
よって、本件理由(イ)は相当である。

3-2-2.本件理由(ニ)について
請求項1の記載では、ここで記載しようとする発明の対象が不明であり、また、不明であることから、発明の対象を特徴付ける、物の発明、方法の発明、又は、物を生産する方法の発明など、カテゴリーに関する事項も不明である。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることに適合しているとはいえない。
よって、本件理由(ニ)は相当である。

3-2-3.本件理由(ホ)について
請求項2の記載では、ここで記載しようとする発明の対象が不明であり、また、不明であることから、発明の対象を特徴付ける、物の発明、方法の発明、又は、物を生産する方法の発明など、カテゴリーに関する事項も不明である。
また、請求項3及び4の記載についても同様に不明である。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることに適合しているとはいえない。
よって、本件理由(ホ)は相当である。

3-2-4.本件理由(ヘ)について

1)請求項2には、「【図1】10に拡大図を示す。」との記載が認められる。
そこで、この記載について検討すると、この記載は、そもそも、何を拡大図にして示しているかが、文章上、不明である。
また、この記載は、何らかの事項につき、その拡大図に示す旨を単に記載するものなのか、或いは、請求項の記載を、願書に添付した図面の記載に代える旨を記載するものなのか、その記載の趣旨が不明である。そして、仮に、後者とした場合、図面は、一般的に、多義的に解釈できるもので、図面からでは、必ずしも、出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項を、客観的に把握することは、きわめて困難といえ、結果として、図面の記載に代えた請求項の記載は、その記載された事項が明確とはいえないのであるが、いずれにしても、上述したように、この記載は、その記載の趣旨が不明なのである。

2)請求項4には、「【図3】11に拡大図を示す。」との記載が認められるが、この記載も、先に「1)」で請求項2の記載について述べた理由と同じ理由により、不明である。
更に、同項には、「【図3】の4に電波反射防止枠のクサビ枠を示す。」との記載が認められ、ここに記載の「電波反射防止枠のクサビ枠」なるものと、同項の他の記載との関係が、不明りょうであり、用語が統一されていないものの、「電波反射防止枠のクサビ枠」なるものは、同項に記載の「電波反射防止クサビ形枠」を意味していると仮定すると、この記載は、請求項の記載を願書に添付した図面の記載に代える旨を記載するものと解することができるが、先に「1)」で述べたように、やはり、図面の記載に代えた請求項の記載は、その記載された事項が明確とはいえないのである。

3)したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることに適合しているとはいえない。
よって、本件理由(ヘ)は相当である。

3-2-5.まとめ
本件理由(イ)、(ニ)?(ヘ)は相当であって、この出願は、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない。

4.結び
原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-16 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願平8-118160
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H05K)
P 1 8・ 537- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
近野 光知
発明の名称 複合電波吸収体  

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