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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1175503
審判番号 不服2004-10494  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-20 
確定日 2008-04-03 
事件の表示 特願2000-357774「レンタル建設機械の稼働管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 7日出願公開、特開2002-163576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月24日の出願であって、平成16年4月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月3日付で手続補正がなされ、この同年6月3日付の手続補正は平成19年7月27日付で却下され、さらに、平成19年10月22日付及び平成20年1月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成20年1月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月15日付の手続を却下する。
[結論]
(1)補正の内容
平成20年1月15日付の手続補正(以下「本件第1補正」という。)により、請求項1は、
「レンタル建設機械側に搭載された稼働情報収集装置と、この稼働情報収集装置から得られた情報を処理するための稼働情報処理装置と、所定の通信エリア内に存在する稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の無線通信を確立するための通信手段とを備えたレンタル建設機械の稼働管理装置であって、
上記稼働情報収集装置は、予め設定された稼働期間中に上記レンタル建設機械の稼働時間をカウントする時間算出部と、この時間算出部によりカウントされた稼働時間を累積して記憶する時間記憶部と、当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するためのレンタル建設機械の型式を含む識別データを記憶する情報記憶部と、整備が完了したことを示す整備完了データを生成するデータ生成部と、上記時間記憶部に記憶された累積稼働時間データに上記識別データを付加して上記通信手段に出力可能で、かつ、上記識別データに上記整備完了データを追加して上記通信手段に出力可能な送信処理部とを備え、
上記稼働情報処理装置は、上記送信処理部から出力されたデータを上記通信手段を介して受信可能な受信処理部と、この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部と、この累積稼働時間記憶部に記憶されている複数の累積稼働時間データを上記型式ごとの分類の中で累積稼働時間の少ないものから順に並び替えるソーティング部と、並び替えられた累積稼働時間を上記整備情報とともに出力する出力手段とを備え、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫して上記通信手段の通信エリア内に入ったときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、
入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されていることを特徴とするレンタル建設機械の稼働管理装置。」
と補正され、請求項2は削除された。
また、本件第1補正により、発明の詳細な説明の段落【0007】は、
「【課題を解決するための手段】
本発明のレンタル建設機械の稼働管理装置は、レンタル建設機械側に搭載された稼働情報収集装置と、この稼働情報収集装置から得られた情報を処理するための稼働情報処理装置と、所定の通信エリア内に存在する稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の無線通信を確立するための通信手段とを備えたレンタル建設機械の稼働管理装置であって、上記稼働情報収集装置は、予め設定された稼働期間中に上記レンタル建設機械の稼働時間をカウントする時間算出部と、この時間算出部によりカウントされた稼働時間を累積して記憶する時間記憶部と、当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するためのレンタル建設機械の型式を含む識別データを記憶する情報記憶部と、整備が完了したことを示す整備完了データを生成するデータ生成部と、上記時間記憶部に記憶された累積稼働時間データに上記識別データを付加して上記通信手段に出力可能で、かつ、上記識別データに上記整備完了データを追加して上記通信手段に出力可能な送信処理部とを備え、上記稼働情報処理装置は、上記送信処理部から出力されたデータを上記通信手段を介して受信可能な受信処理部と、この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部と、この累積稼働時間記憶部に記憶されている複数の累積稼働時間データを上記型式ごとの分類の中で累積稼働時間の少ないものから順に並び替えるソーティング部と、並び替えられた累積稼働時間を上記整備情報とともに出力する出力手段とを備え、上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫して上記通信手段の通信エリア内に入ったときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、上記受信処理部は、上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されていることを要旨とする。」
と補正された。
また、本件第1補正により、同段落【0010】は、
「上記稼働管理装置においては、通信手段を上記稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の無線通信を確立することが可能に構成し、レンタル建設機械が稼働情報処理装置との間で無線通信できる通信エリア内に入ったときに、受信処理部が上記稼働情報収集装置から累積稼働時間データを受信するように構成されている。」
と補正された。
また、本件第1補正により、同段落【0035】は、
「ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して、当該レンタル機械が上記無線通信機16、21の通信エリア内に入っている状態で整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、つまり、レンタル機械の入庫後に上記無線通信機16、21の通信エリア内に存在するレンタル機械の整備完了スイッチ11cが押されると、当該レンタル機械の無線通信機16と無線通信機21との間の無線通信が確立されるとともに、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」
と補正された。
また、本件第1補正により、同段落【0036】は、
「無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時(上記入出庫検知センサ22a、22bから出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうち遅くとも入庫を示す信号を受けた時)に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データがあった旨を累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」
と補正された。
さらに、本件第1補正により、段落【0043】は、
「さらに、本発明によれば、レンタル建設機械が稼働情報処理装置との間で無線通信できる通信エリア内に入ったときに、稼働情報処理装置の受信処理部が稼動情報収集装置から累積稼働時間データを送信するため、人手を介さず短時間で累積稼働時間データの読込みを完了することができる。」
と補正された。

(2)本件第1補正に対する審判請求人の主張
平成20年1月15日付の意見書における本件第1補正に対する審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
「この補正は、上記下線部分について限定したものであり、以下のように補正の要件を満たすものです。
・『・・・と、所定の通信エリア内に存在する・・・無線通信を確立する・・・』(下線部1)について
下線部1の補正は、願書に最初に添付した明細書の[請求項5]、[0023]段落、[0024]段落、及び願書に最初に添付した図面の[図1]及び[図2]に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部1の補正は、原請求項1の発明特定事項である通信手段の限定であり、かつ、補正前後における産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるため、特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしています。
・『・・・識別するためのレンタル建設機械の型式を含む識別データ・・・』(下線部2)について
下線部2の補正は、願書に最初に添付した明細書の[0021]段落に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部2の補正は、原請求項1の発明特定事項である識別データの限定であり、かつ、補正前後における産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるため、特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしています。
・『・・・入庫して上記通信手段の通信エリア内に入ったときに・・・』(下線部3)について
下線部3の補正は、願書に最初に添付した明細書の[0023]?[0027]段落等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部3の補正は、原請求項1の発明特定事項である受信処理部の限定であり、かつ、補正前後における産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるため、特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしています。
・『入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された・・・』(下線部4)について
下線部4の補正は、願書に最初に添付した明細書の[0023]段落、[0024]段落及び[0039]段落等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部4の補正は、原請求項1の発明特定事項である稼動情報収集装置の限定であり、かつ、補正前後における産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるため、特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしています。
・『・・・上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に・・・』(下線部5)について
下線部5の補正は、願書に最初に添付した明細書の[0025]段落、[0034]段落、及び[0036]段落等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部5の補正は、原請求項1の『受信処理部がどのような情報をどのように情報処理して、レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するのか』という不明りょうさを正して、その記載本来の意味内容を明らかにするものであるため、特許法第17条の2第4項第4号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するものです。また、下線部5の補正は、今回の拒絶理由通知における9頁下から3行目?10頁2行目の指摘を受けて行ったものであるため、特許法第17条の2第4項第4号かっこ書に規定する要件も満たしています。
・『・・・整備完了データの入力があった旨を・・・』(下線部6)について
下線部6の補正は、願書に最初に添付した明細書の[請求項1]、[0032]段落?[0034]段落等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではありません。
さらに、下線部6の補正は、原請求項1の『累積稼働時間記憶部が、整備完了データの入力があった旨を記憶しているのか、整備完了データを記憶しているのか』という不明りょうさを正して、その記載本来の意味内容を明らかにするものであるため、特許法第17条の2第4項第4号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するものです。また、下線部5の補正は、今回の拒絶理由通知における10頁下から7?8行目の指摘を受けて行ったものであるため、特許法第17条の2第4項第4号かっこ書に規定する要件も満たしています。
そして、上記下線部1?4の補正を行った請求項1に係る発明は独立して特許を受けることができるものであり、上記補正は特許法第17条の2第5項に規定する要件も満たしているものと考えます。」

(3)当初明細書記載事項
審判請求人が本件第1補正の根拠にしている願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載は、平成20年1月15日付の意見書における上記主張からみて、以下のとおりである。
(a)「【請求項1】 入庫されたレンタル機械から累積稼働時間情報を取り込み、記憶手段に記憶されているそのレンタル機械の累積稼働時間を更新し、入庫後の整備作業が完了したかどうかを示す整備情報をその累積稼働時間に対応させて記憶し、上記記憶手段に複数記憶されているレンタル機械の累積稼働時間を低いものから順に並び替え、上記整備情報とともに出力手段に出力することを特徴とするレンタル機械の稼働管理方法。」
(b)「【請求項5】 上記稼働管理装置が上記レンタル機械と通信可能に構成され、上記レンタル機械が上記稼働管理装置との間で無線通信できる通信エリア内に入ったときに、上記取込手段は上記レンタル機械から累積稼働時間情報を受信するように構成されている請求項4記載のレンタル機械の稼働管理装置。」
(c)「【0021】
累積稼働時間データを受けた情報送信処理部14は、識別情報記憶部15に記憶されている自己のレンタル機械の型式情報、機番情報(以下、識別データと総称する)を読み出してその累積稼働時間データに付加し、無線通信機16のアンテナ16aを介して基地部に送信するようになっている。
【0022】
また、上記情報送信処理部14は、累積稼働時間データ及び識別データの送信するだけでなく、整備完了スイッチ11cが押下されたときに整備完了データ生成部17で生成される整備完了データも基地部に送信することができるようになっている。なお、この整備完了スイッチ11cは、レンタル機械の例えばエンジンルーム内に設けられており、レンタルが終了して入庫されたレンタル機械の整備を終えた時に整備作業者が押下できるようになっている。
【0023】
一方、基地部において入庫または出庫する際にレンタル機械Rが通過するゲート30には、上記稼働情報処理装置20に接続された無線通信機21が備えられており(図2参照)、レンタル機械側から送信される情報をアンテナ21aを介して受信するようになっている。なお、上記した無線通信機16及び21は例えば2.4GHz帯の簡易無線機で構成することができる。
【0024】
レンタル機械Rはレンタル期間が終了すると、機体の破損をチェックしたり洗車等を行う目的で搬送車両31の荷台上に載せられて基地部に戻り、その際、上記ゲート30を通過する。このとき、レンタル機械側の無線通信機16とゲート30に設けられている無線通信機21とが接近し互いの通信エリアに入るため、電波の到達距離が短くて通信エリアが狭い簡易無線機で無線通信が可能となる。
【0025】
また、上記ゲート30にはレンタル機械Rの通過方向に沿って一対の入出庫検知センサ22a,22bが配設されている。従って、入庫時には第1センサ22a→第2センサ22bの順に検知信号が出力され、この逆に出庫時には第2センサ22b→第1センサ22aの順に検知信号が出力されることになる。すなわち、各センサから出力される信号の順序に基づいてレンタル機械Rの入庫または出庫を特定することができる。
【0026】
この入出庫検知センサ22a,22bから出力される検知信号をトリガとして情報受信処理部23は、レンタル機械Rに対し累積稼働時間データの送信要求を行う。
【0027】
送信要求を受けたレンタル機械Rの情報送信処理部14は、累積稼働時間記憶部13に記憶されている累積稼働時間データを読み出し、その累積稼働時間データに、識別情報記憶部15から読み出した自己の識別データを追加し、両データを無線通信機16を介して基地部に送信する。」
(d)「【0032】
例えばSK60SRの欄L1を例に取って説明すると、累積稼働時間の最も少ないものから順に機番が並べられており、012459号機が最上段(先頭)に表示されている。この012459号機では累積稼働時間“467HR”に対応して整備情報セルC4に整備作業が完了していることを示す○記号が表示されている。
【0033】
一方、012459号機の下段には、その次に累積稼働時間の少ない012454号機が表示されており、累積稼働時間“481HR”に対応して整備情報セルC4には整備作業が完了していないことを示す×記号が表示されている。すなわち、この機種は入庫されているものの整備が完了していないことを示している。
【0034】
レンタル機械が入庫された時に累計稼働時間データ及び識別データが受信されると、累積稼働時間記憶部24内の累積稼働時間が更新される。詳しくは、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された識別データに含まれる型式、機番データと一致する型式、機番が検索され、該当する機番の欄の累積稼働時間が、受信された累積稼働時間と書き換えられる。なお、この時点では、もちろん整備が行われていないため整備完了データは受信されない。従って整備情報セルC4には入力データなしを表す×記号が表示される。」
(e)「【0036】
従って、レンタル機械の貸し出し依頼があると、整備情報セルC4に○記号が表示されており、且つ累積稼働時間セルC3列の中で累積稼働時間の少ないものから貸し出しを行えばよい。」
(f)「【0038】
ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して整備完了データに追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。
【0039】
無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。」
(g)第1図及び第2図

(4)新規事項の追加についての当審の判断
(a)本件補正後の請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0007】の「入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、」との事項について
当初明細書等の発明の詳細な説明の段落【0023】-【0027】の記載からみて、レンタル建設機械が入庫及び出庫の際にレンタル機械側の無線通信機16とゲート30に設けられている無線通信機21とが接近し互いの通信エリアに入るため無線通信が可能となり、センサにより入庫か出庫かを特定し、入庫の場合に、累積稼働時間データに、識別情報記憶部15から読み出した自己の識別データを追加し、両データを無線通信機16に送信していることは記載されている。
しかしながら、同段落【0023】-【0027】の記載からみて、レンタル建設機械がゲート30を通過した後は、レンタル機械側の無線通信機16とゲート30に設けられている無線通信機21が離れて、レンタル建設機械が入庫後には、レンタル機械側の無線通信機16とゲート30に設けられている無線通信機21との間では、無線通信が確立しなくなることは明らかであるので、「入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され」との事項は当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められない。

(b)補正後の請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0007】の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項について
当初明細書等の発明の詳細な説明の段落【0025】及び【0026】の記載からみて、入出庫検出手段である入出庫検知センサ22a,22bは、累積稼働時間データの送信を行うために入庫を特定するのに用いることが記載されているものの、当初明細書には、入出庫検出手段である入出庫検知センサ22a,22bが、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するのに用いることは記載されているとは認められないので、「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められない。

(c)補正後の発明の詳細な説明の段落【0035】の「ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して、当該レンタル機械が上記無線通信機16、21の通信エリア内に入っている状態で整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、つまり、レンタル機械の入庫後に上記無線通信機16、21の通信エリア内に存在するレンタル機械の整備完了スイッチ11cが押されると、当該レンタル機械の無線通信機16と無線通信機21との間の無線通信が確立されるとともに、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」の事項について
補正後の発明の詳細な説明の段落【0035】に対応する当初明細書等の段落【0038】には、入庫されたレンタル機械側の無線通信機16とゲート30に設けられた無線通信機21とが互いの通信エリア内に入っている状態であることは記載されておらず、また、同明細書の段落【0024】等の記載からみて、レンタル機械がゲート30を通過して入庫する時に、レンタル機械の無線通信機16とゲート30の無線通信機21とが接近して互いの通信エリア内に入っていることは記載されているが、レンタル機械がゲートを通過した後は、レンタル機械の無線通信機16と無線通信機21が離れて互いの通信エリアから外れて通信が確立しなくなることは明らかであるので、補正後の発明の詳細な説明の段落【0035】の「ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して、当該レンタル機械が上記無線通信機16、21の通信エリア内に入っている状態で整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、つまり、レンタル機械の入庫後に上記無線通信機16、21の通信エリア内に存在するレンタル機械の整備完了スイッチ11cが押されると、当該レンタル機械の無線通信機16と無線通信機21との間の無線通信が確立されるとともに、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」との事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められない。

(d)補正後の発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時(上記入出庫検知センサ22a、22bから出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうち遅くとも入庫を示す信号を受けた時)に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データがあった旨を累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」の事項について
補正後の発明の詳細な説明の段落【0036】に対応する当初明細書等の発明の詳細な説明の段落【0039】には、「情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時(上記入出庫検知センサ22a、22bから出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうち遅くとも入庫を示す信号を受けた時)に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データがあった旨を累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」ことは記載されておらず、またそれらの記載からみて自明な事項とも認められない。
また、当初明細書等の発明の詳細な説明の段落【0025】及び【0026】の記載からみて、入出庫検出手段である入出庫検知センサ22a,22bは、累積稼働時間データの送信を行うために入庫を特定するのに用いることが記載されているものの、当初明細書には、入出庫検出手段である入出庫検知センサ22a,22bが、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するのに用いることは記載されているとは認められない。
したがって、補正後の発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時(上記入出庫検知センサ22a、22bから出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうち遅くとも入庫を示す信号を受けた時)に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データがあった旨を累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」との事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められない。

(5)まとめ
以上のとおり、補正後の請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0007】の「入庫後の上記レンタル建設機械であって上記通信手段の通信エリア内に存在するものに搭載された上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、」との事項、請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0007】の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械の入出庫を特定可能な入出庫検出手段から出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうちの遅くとも入庫を示す信号を受けた時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データの入力があった旨を上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項、補正後の発明の詳細な説明の段落【0035】の「ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して、当該レンタル機械が上記無線通信機16、21の通信エリア内に入っている状態で整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、つまり、レンタル機械の入庫後に上記無線通信機16、21の通信エリア内に存在するレンタル機械の整備完了スイッチ11cが押されると、当該レンタル機械の無線通信機16と無線通信機21との間の無線通信が確立されるとともに、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」、及び補正後の発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時(上記入出庫検知センサ22a、22bから出庫を示す信号を受けてから入庫を示す信号を受けるまでの期間のうち遅くとも入庫を示す信号を受けた時)に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データがあった旨を累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」の事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められないので、本件第1補正は、新規事項を追加するものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって、本件第1補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載について
以上のとおり、平成20年1月15日付の手続補正は却下されたので、特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載は、平成19年10月22日付の手続補正書により補正された、以下のとおりのものである。
(1)特許請求の範囲
「【請求項1】
レンタル建設機械側に搭載された稼働情報収集装置と、この稼働情報収集装置から得られた情報を処理するための稼働情報処理装置と、これら稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信を確立するための通信手段とを備えたレンタル建設機械の稼働管理装置であって、
上記稼働情報収集装置は、予め設定された稼働期間中に上記レンタル建設機械の稼働時間をカウントする時間算出部と、この時間算出部によりカウントされた稼働時間を累積して記憶する時間記憶部と、当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するための識別データを記憶する情報記憶部と、整備が完了したことを示す整備完了データを生成するデータ生成部と、上記時間記憶部に記憶された累積稼働時間データに上記識別データを付加して上記通信手段に出力可能で、かつ、上記識別データに上記整備完了データを追加して上記通信手段に出力可能な送信処理部とを備え、
上記稼働情報処理装置は、上記送信処理部から出力されたデータを上記通信手段を介して受信可能な受信処理部と、この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部と、この累積稼働時間記憶部に記憶されている複数の累積稼働時間データを上記型式ごとの分類の中で累積稼働時間の少ないものから順に並び替えるソーティング部と、並び替えられた累積稼働時間を上記整備情報とともに出力する出力手段とを備え、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫したときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、
上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されていることを特徴とするレンタル建設機械の稼働管理装置。
【請求項2】
上記通信手段は上記稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の無線通信を確立することが可能に構成され、上記レンタル建設機械が上記稼働情報処理装置との間で無線通信できる通信エリア内に入ったときに、上記受信処理部は上記稼働情報収集装置から累積稼働時間データを受信するように構成されている請求項1記載のレンタル建設機械の稼働管理装置。」

(2)発明の詳細な説明の記載
「【0035】
ところで、入庫されたレンタル機械の整備作業が完了して整備作業者が整備完了スイッチ11cを押すと、つまり、レンタル機械の入庫後に整備完了スイッチ11cが押されると、整備完了データ生成部17によって整備完了データが生成され、情報送信処理部14に与えられる。この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。
【0036】
無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」

4.当審の拒絶の理由の概要
(1)特許法第17条の2第3項に関する理由について
特許法第17条の2第3項に関する当審の拒絶の理由(以下「理由1」という。)の概要は、平成19年11月9日付の拒絶理由通知の記載からみて以下のとおりである。
「A.平成19年10月22日付でした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(中略)
(3)まとめ
以上のとおり、請求項1の「上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、」との事項、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項、及び発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」との事項は、当初明細書等に記載されているとは認められず、また、それらの記載からみて自明とも認められないので、本件補正は、新規事項を追加するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。」

(2)特許法第36条第4項に関する理由について
特許法第36条第4項に関する当審の拒絶の理由(以下「理由2」という。)の概要は、平成19年11月9日付の拒絶理由通知の記載からみて以下のとおりである。
「B.本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備であるので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。



1.段落【0035】について
補正後の段落【0035】の「この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」の記載では、簡易式の無線通信機器では、レンタル建設機械の入庫後に、無線通信機16と無線通信機21の間では通信を行うことができるとは認められず、また車庫内に別の無線通信機を設けることが記載されているとは認められないので、レンタル建設機械の入庫後にどのようにして無線通信機16と無線通信機21の間の通信を確立して、整備完了データを無線通信機16を通じて基地部に送信するのか不明である。

2.段落【0036】について
補正後の段落【0036】の「無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」の記載では、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの状態にあることをどのように検知し、その検知を基にどのようにして整備情報セルの情報を書き替えるのか不明であるので、どのようにして、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換えるのか不明である。」

(3)特許法第36条第6項第2号に関する理由について
特許法第36条第6項第2号に関する当審の拒絶の理由(以下「理由3」という。)の概要は、平成19年11月9日付の拒絶理由通知の記載からみて以下のとおりである。
「C.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1の「これら稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信を確立するための通信手段」の記載では、通信手段がどのように構成されているのか不明であるので、移動するレンタル機械に搭載された稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信をどのようにして確立するのか不明である。

2.通信手段がどのように構成されているのか不明であるため、レンタル建設機械が入庫したときに移動するレンタル機械に搭載された稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信が確立できるのかどうか不明であるので、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫したときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、」の記載では、レンタル建設機械が入庫したときに受信処理部が、レンタル建設機械の稼働情報収集装置から累積稼働時間データを取り込むことができるかどうか不明である。

3.通信手段がどのように構成されているのか不明であるため、レンタル建設機械の入庫後に通信が確立できるのかどうか不明であるので、請求項1の「上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、」の記載では、送信処理部がデータ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを通信手段を介して受信処理部に出力できるのかどうか不明である。

4.請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去する」の記載では、受信処理部がどのような情報をどのように情報処理して、レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するのか不明である。

5.請求項1の「当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するための識別データ」の記載では、識別データにレンタル建設機械の型式が含まれるのかどうか不明であるので、請求項1の「この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部」の記載において、識別データからレンタル建設機械の型式を取得できるのかどうか不明である。

6.請求項1の「上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、」記載では、受信処理部が、整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させているのに対し、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」の記載では、受信処理部は、整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去しており、累積稼働時間記憶部が、整備完了データの入力があった旨を記憶しているのか、整備完了データを記憶しているのか不明である。」

5.理由1について
(1)補正の内容
平成19年10月22日付の手続補正(以下「本件第2補正」という。)により、請求項1は、
「レンタル建設機械側に搭載された稼働情報収集装置と、この稼働情報収集装置から得られた情報を処理するための稼働情報処理装置と、これら稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信を確立するための通信手段とを備えたレンタル建設機械の稼働管理装置であって、
上記稼働情報収集装置は、予め設定された稼働期間中に上記レンタル建設機械の稼働時間をカウントする時間算出部と、この時間算出部によりカウントされた稼働時間を累積して記憶する時間記憶部と、当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するための識別データを記憶する情報記憶部と、整備が完了したことを示す整備完了データを生成するデータ生成部と、上記時間記憶部に記憶された累積稼働時間データに上記識別データを付加して上記通信手段に出力可能で、かつ、上記識別データに上記整備完了データを追加して上記通信手段に出力可能な送信処理部とを備え、
上記稼働情報処理装置は、上記送信処理部から出力されたデータを上記通信手段を介して受信可能な受信処理部と、この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部と、この累積稼働時間記憶部に記憶されている複数の累積稼働時間データを上記型式ごとの分類の中で累積稼働時間の少ないものから順に並び替えるソーティング部と、並び替えられた累積稼働時間を上記整備情報とともに出力する出力手段とを備え、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫したときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、
上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、
上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されていることを特徴とするレンタル建設機械の稼働管理装置。」
と補正された。
また、本件第2補正により、発明の詳細な説明の段落【0036】は、
「無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」
と補正された。

(2)当初明細書等の記載
審判請求人が本件第2補正の根拠とした当初明細書等の記載は、平成19年年10月22日付の意見書における主張からみて、以下のとおりである。(なお、上記2.(2)で摘記したものは省略する。)
(a)「【請求項1】 入庫されたレンタル機械から累積稼働時間情報を取り込み、記憶手段に記憶されているそのレンタル機械の累積稼働時間を更新し、入庫後の整備作業が完了したかどうかを示す整備情報をその累積稼働時間に対応させて記憶し、上記記憶手段に複数記憶されているレンタル機械の累積稼働時間を低いものから順に並び替え、上記整備情報とともに出力手段に出力することを特徴とするレンタル機械の稼働管理方法。」
(b)「【請求項3】 上記整備情報が少なくとも整備完了を示す情報を有し、その整備完了情報を上記レンタル機械から無線で受信して上記記憶手段に記憶する際に累積稼働時間に対応させる請求項1または2に記載のレンタル機械の稼働管理方法。」
(c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した管理方法では、アワーメータの読み取り、管理台帳への記入が手作業で行われているために正確な管理が行えず、また、レンタル機械が返却されて稼働時間を管理台帳に記入したとしても、その記入された稼働時間を頼りにしてレンタル機械を貸し出せないことがある。なぜなら、レンタル機械の入庫後には洗浄や整備作業が必要であり、その作業が完了しない限りは貸し出しが行えないからである。」
(d)「【0017】
同図において稼働管理装置は、レンタル機械側に搭載された稼働情報収集装置10と、この稼働情報収集装置10から無線通信で送信される稼働情報を受信して加工する稼働情報処理装置(稼働管理装置)20とから主として構成されている。この稼働情報処理装置20はマイクロコンピュータからなり、例えば複数のレンタル機械を所有し、貸し出しを行う企業或いはレンタル会社(以下、基地部と総称する)に設置される。なお、この稼働情報処理装置20は、必ずしもレンタル機械が入庫される敷地内に設置する必要はなく、レンタル機械を集中管理することができれば、任意の場所に設置することができる。」
(e)「【0019】
検出器11は、キースイッチ11aとオルタネータ11bと整備完了スイッチ11cとからなり、キースイッチ11aに始動キーが差し込まれ、“LOCK”位置から電源“ON”→“START”位置に切り換えられると始動モータが回転してエンジン(図示しない)が駆動するが、キースイッチ11aがonであり且つオルタネータ11bが発電している期間、稼働時間算出部12はレンタル機械の稼働時間をカウントし、カウントされた稼働時間は累積稼働時間記憶部13に記憶されて累積される。
【0020】
この累積稼働時間記憶部13の記憶内容は情報送信処理部14によって読み出されるようになっており、詳しくは、基地部側から送信要求信号を受けると、累積稼働時間記憶部13に記憶されている累積稼働時間データが読み出され、情報送信処理部14に与えられる。 」
(f)「【0028】
基地部では、両データを無線通信機21を介して受信し情報受信処理部23を通じて累積稼働時間記憶部24に記憶する。この累積稼働時間記憶部24に記憶された累積稼働時間はソーティング部25によって、稼働時間の少ないものから順に並び替えられる。なお、上記情報受信処理部23は取込手段及び更新手段として、累積稼働時間記憶部24は記憶手段として、ソーティング部25はソーティング手段としてそれぞれ機能する。
【0029】
以下、ソーティング処理について詳しく説明する。
【0030】
累積稼働時間記憶部24にはレンタル会社が保有する多数のレンタル機械の稼働情報が、型式毎に分類されて記憶されており、図3はその記憶内容を出力手段としての表示装置26の画面上に可視表示したものである。
【0031】
図3において、L1?L4の各欄はレンタル機械のTON数によって分類されており、L1?L4の各欄は、さらにレンタル機械の型式が入力される型式セルC1、機番データが入力される機番セルC2、累積稼働時間が入力される累積稼働時間セルC3及び整備情報が入力される整備情報セルC4に分割されている。
(g)「【0035】
次いでソーティング部25は、同一クラス内、例えばL1グループ内で累積稼働時間を時間の少ないものから順に並び替え、整備情報とともに累積稼働時間記憶部24に再度記憶する。同時に並び替えられた結果は表示装置26の画面上に表示される。」
(h)第3図

(3)当審の判断
(a)請求項1について
(a-1)請求項1には、「上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、」と記載されている。
しかしながら、当初明細書等の上記摘記事項からみて、どのようなタイミングでどのようにして、整備完了データを受信処理部に出力するのかが当初明細書等に記載されているとは認められない。
そして、「ゲート30」以外に「無線通信機21」を設けることが当初明細書等に記載されているとは認められないため、レンタル建設機械が入庫して「無線通信機16」と「ゲート30」に設けられた「無線通信機21」とが互いの通信エリヤから外れた後では「無線通信機16」と基地部とが通信することができるとは認められないので、レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、整備完了データを通信手段を介して受信処理部に出力することが当初明細書等に記載されておらず、また、それらの記載からみて自明な事項とは認められない。
したがって、請求項1の「レンタル建設機械の入庫後に稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力する」との事項は、当初明細書等に記載されているとは認められず、また、それらの記載からみて自明な事項とも認められない。

(a-2)請求項1には、「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」と記載されている。
しかしながら、当初明細書等の上記摘記事項からみて、どのようなタイミングで、受信処理部が、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去することが当初明細書等に記載されているとは認められない。
そして、受信処理部が、レンタル機械が出庫後から入庫前までの状態にあることをどのように検知するのか不明であり、また、センサによりレンタル建設機械の出庫時及び入庫時を検知していることは記載されているものの、レンタル建設機械の出庫時または入庫時にセンサの信号をトリガとして整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去することが当初明細書等に記載されているとは認められないので、受信処理部が、レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去することが当初明細書等に記載されておらず、またそれらの記載からみて自明な事項とも認められない。
したがって、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項は、当初明細書等に記載されているとは認められず、また、それらの記載からみて自明な事項とも認められない。

(b)発明の詳細な説明の記載について
発明の詳細な説明の段落【0036】には、「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」と記載されている。
しかしながら、当初明細書等の上記摘記事項からみて、どのようなタイミングで、「情報受信処理部23」が、当該レンタル機械に対応する「整備情報セルC4」に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ことが当初明細書等に記載されているとは認められない。
そして、「情報受信処理部23」が、レンタル機械が出庫後から入庫前までの状態にあることをどのように検知するのか不明であり、また、レンタル機械の出庫時及び入庫時をセンサで検知することは記載されているものの、レンタル機械の出庫時及び入庫時にセンサの信号をトリガとして整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去することが記載されているとは認められないので、「情報受信処理部23」が、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する「整備情報セルC4」に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ことが当初明細書等に記載されているとは認められず、またそれらの記載からみて自明な事項とも認められない。
したがって、発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」との事項は、当初明細書等に記載されているとは認められず、また、それらの記載からみて自明とも認められない。

(4)まとめ
以上のとおり、請求項1の「上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、」との事項、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」との事項、及び発明の詳細な説明の段落【0036】の「一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」との事項は、当初明細書等に記載されているとは認められず、また、それらの記載からみて自明とも認められないので、本件第2補正は、新規事項を追加するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
したがって、本件第2補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

6.理由2について
(1)当審の判断
発明の詳細な説明の段落【0035】及び【0036】の上記記載について以下に検討する。
(a)段落【0035】について
発明の詳細な説明の段落【0035】の「この情報送信処理部14は、上記整備完了スイッチ11cが押されると、上記情報送信処理部14からの整備完了データに対して自己の型式データ及び機番データを識別情報記憶部15から読み出して追加し、無線通信機16を通じて基地部に送信する。」の記載では、簡易式の無線通信機器では、レンタル建設機械の入庫後に、無線通信機16と無線通信機21の間では通信を行うことができるとは認められず、また車庫内に別の無線通信機を設けることが記載されているとは認められないので、レンタル建設機械の入庫後にどのようにして無線通信機16と無線通信機21の間の通信を確立して、整備完了データを無線通信機16を通じて基地部に送信するのか不明である。

(b)段落【0036】について
発明の詳細な説明の段落【0036】の「無線通信機21を介して受信された整備完了データ及び識別データは、情報受信処理部23に与えられ、情報受信処理部23は、累積稼働時間記憶部24に対し、受信された型式データ及び機番データと一致する機種を検索し、その機種の整備情報セルC4に表示されている×記号を○記号に書き換える。例えば012454号機の×記号を○記号に書き換える。それにより、012454号機も貸し出し対象となる。一方、情報受信処理部23は、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換える(つまり、整備完了データを累積稼働時間記憶部24から消去する)ようになっている。」の記載では、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの状態にあることをどのように検知し、その検知を基にどのようにして整備情報セルの情報を書き替えるのか不明であるので、どのようにして、レンタル機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル機械に対応する整備情報セルC4に表示されている○記号を×記号に書き換えるのか不明である。

(2)まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載が上記の点で不明であるため、発明の詳細な説明が請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

7.理由3について
(1)当審の判断
特許請求の範囲の請求項1の上記記載について以下に検討する。
(a)請求項1の「これら稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信を確立するための通信手段」の記載では、通信手段がどのように構成されているのか不明であるので、移動するレンタル機械に搭載された稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信をどのようにして確立するのか不明である。

(b)通信手段がどのように構成されているのか不明であるため、レンタル建設機械が入庫したときに移動するレンタル機械に搭載された稼働情報収集装置と稼働情報処理装置との間の通信が確立できるのかどうか不明であるので、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が入庫したときに当該レンタル建設機械の稼働情報収集装置から上記累積稼働時間データを取り込んで、上記累積稼働時間記憶部に記憶された累積稼働時間データの更新を行うように構成され、」の記載では、レンタル建設機械が入庫したときに受信処理部が、レンタル建設機械の稼働情報収集装置から累積稼働時間データを取り込むことができるかどうか不明である。

(c)通信手段がどのように構成されているのか不明であるため、レンタル建設機械の入庫後に通信が確立できるのかどうか不明であるので、請求項1の「上記レンタル建設機械の入庫後に上記稼働情報収集装置に接続された操作体による入力操作が行なわれたときに、上記データ生成部が上記整備完了データを生成してこの整備完了データを上記送信処理部に出力するとともに上記送信処理部が上記データ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを上記通信手段を介して受信処理部に出力し、」の記載では、送信処理部がデータ生成部から入力された整備完了データに対して上記識別データを追加したものを通信手段を介して受信処理部に出力できるのかどうか不明である。

(d)請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去する」の記載では、受信処理部がどのような情報をどのように情報処理して、レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するのか不明である。

(e)請求項1の「当該稼働情報収集装置が搭載されたレンタル建設機械と他のレンタル建設機械とを識別するための識別データ」の記載では、識別データにレンタル建設機械の型式が含まれるのかどうか不明であるので、請求項1の「この受信処理部によって受信された累積稼働時間データ及び整備完了データを上記識別データに含まれる上記レンタル建設機械の型式ごとに分類して記憶する累積稼働時間記憶部」の記載において、識別データからレンタル建設機械の型式を取得できるのかどうか不明である。

(f)請求項1の「上記受信処理部は受信した識別データに対応する整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させるように構成され、」の記載では、受信処理部が、整備完了データの入力があった旨を累積稼働時間記憶部に記憶させているのに対し、請求項1の「上記受信処理部は、上記レンタル建設機械が出庫されてから入庫されるまでの期間のうちの遅くとも入庫時に、当該レンタル建設機械に対応する整備完了データを上記累積稼働時間記憶部から消去するように構成されている」の記載では、受信処理部は、整備完了データを累積稼働時間記憶部から消去しており、累積稼働時間記憶部が、整備完了データの入力があった旨を記憶しているのか、整備完了データを記憶しているのか不明である。

(2)まとめ
以上のとおり、請求項1の記載が以上の点で不明であるため、請求項1に係る発明が明確でないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

8.むすび
上記5.で述べたとおり、平成19年10月22日付の手続補正は、新規事項を追加するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
仮に、平成19年10月22日付の手続補正が、新規事項を追加するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、本件第2補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとしても、上記6.で述べたとおり、発明の詳細な説明が、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められないので、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
仮に、発明の詳細な説明が、請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとしても、上記7.で述べたとおり、請求項1に係る発明が明確でないので、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2008-02-01 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-19 
出願番号 特願2000-357774(P2000-357774)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (G06Q)
P 1 8・ 536- WZ (G06Q)
P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 久保田 昌晴
久保田 健
発明の名称 レンタル建設機械の稼働管理装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 村松 敏郎  

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